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『第260章 魔女の誘い』

「・・・ん。」

リリアが眼を覚ますとそこは見覚えがあり、そして懐かしさを感じた。

「ここは?」

「あ、目が覚めたみたいです!」

椅子に座っていたリーシャが立ち上がりタクマたちも集まる。

気付くとリリアは手を後ろに縛られていた。

リリアはタクマたちを睨んでいると、

「儂の家で錬金術を使われたらたまらんからの。」

彼らの後ろから小笑いするセイグリットが現れた。

「っ!()()・・・。」

「・・・先生⁉」

驚いた一同は一斉にセイグリットに振り向いた。

「・・・全て話そう。」


 席に座りミニセイグリットにお茶を出してもらった。

「そやつの名はリリア。かつて儂の錬金術を教えていた唯一の弟子じゃ。」

「セイグリットが弟子を取ってたなんて、私たち以来じゃない?」

「イフルとレイガは弟子というより家族じゃったな♪カカカッ!」

そんなことより気になる単語があった。

「錬金術を教えた?」

「うむ。長生きしてると魔法以外の技術にも興味が湧くというもの。儂は既に魔法を極めていたからな。」

「それで錬金術を・・・。」

一人納得するイフルだった。

「・・・じゃがある日を境に儂はリリアを破門とした。」

タクマは驚きお茶を吹き出す。

「ゲホッ!破門⁉なんでいきなり、お前何かやらかしたのか?」

「失礼だね・・・。」

「まあデリケートな理由故言葉は慎むが、それよりもリリアよ。まさか儂らが嫌う帝国軍に入るとはの。儂はお主を軍の犬に育てた覚えはないぞ。当然()()()()もな。」

「ボクがどこに居ようが貴女には関係ない。・・・ボクはお父さんを殺したアイツを倒したいだけ。だから錬金術を学んだ。」

「あやつを殺したアイツ?一体誰の事じゃ?」

「・・・()()()。」

「「っ⁉」」

タクマたちは驚き思わず席を立ってしまった。

そして驚いたのはタクマたちだけじゃない、セイグリットもだった。

「お主、何を言っておるんじゃ・・・⁉機神龍が、あやつを殺したじゃと⁉」

これまで見せたことないほど驚愕の表情を見せるセイグリットにイフルも内心焦りだす。

「どうしたのセイグリット?貴女らしくないよ?」

「す、すまん。あまりにも予想外じゃったものでの。しかし・・・。」

セイグリットは険しい顔で腕を組み考え込む。

「リリア。そのことをどこで教えられた?」

「貴女には関係ない。そんなことよりも早くボクを解放して。そろそろ戻らないと軍がボクを探しにこの場所がばれるよ?」

「・・・いや、今の言葉を聞いて尚更お主を軍に置いとくことは出来なくなった。()()()()()()()()()()・・・。リリア、お主はしばらく儂が見張る。」

「なんで?ボクはもう貴女の弟子じゃない!ボクはお父さんの仇を取るため軍に入った!いくら貴女でも邪魔したら許さない!」

感情的になるリリアにセイグリットは指を鳴らすと突然意識を失ったように倒れた。

「セイグリット⁉」

「安心せい。眠らせただけじゃ。しかし・・・!」

何やら思いつめるように頭を抱え表情を曇らせるセイグリット。

「すまんがお主らももう休んでよいぞ。」

「そ、そうか?なら風呂借りるぜ。さっきの戦闘で埃まみれだからな。」

「あ、私も後で入りますので終わったら呼んでください。その間夕飯の準備しときます。」

「なんや飯か!」

「がめつ⁉」

話が長くて寝ていたウィンロスが飛び起きる。

そんな彼らを見てイフルが思わず笑ったのだった。


 各々が過ごしてる間、セイグリットは一人月明かりの下で帝国を眺めていた。

「誰がリリアにあんなことを吹き込んだ。何者かは知らぬが、家族の愛を踏みにじった行為は万死に値する!」

怒りを見せオーラが荒々しく巻き起こるがすぐに落ち着かせる。

「ふぅ・・・。やはりリリアも連れていくしかないの。元々はタクマたちをあやつに紹介するつもりじゃったが、とんだ大所帯となったな。」

するとセイグリットの背後から何かが歩み寄ってきた。

「来おったか。もうしばらく待っておれ。直に準備を済ませる。」


 寝る準備が済んだタクマたちにセイグリットはあるものを用意した。

「なんだこの繭みたいなやつ?」

「『安眠コクーン』じゃ。その名の通りこの中に入ればぐっすり寝られる。今回は儂のせいでお主らに大変な思いをさせてしまったからの。せめてもの詫びじゃ。」

「ささ、皆入ってみて。」

イフルに勧められまずタクマがコクーンに入る。

すると次第に眠くなりぐっすり寝た。

「あ、鼻提灯(はなちょうちん)。」

「タクマさんですらこんなに気持ちよさそうに、私も入ってみます!」

「私も入りたい!」

「あ、すまんがドラゴンほどの高魔力持ちは効果があまり効かん。」

「じゃあリヴはお預けだな。」

「えぇ~⁉」

ガビーンとショックを受けるリヴだった。

タクマとリーシャ、アルセラ、メルティナの四人はそれぞれ安眠コクーンの中でぐっすり。

するとセイグリットが魔法で四人のコクーンを浮かせた。

「ドラゴンたちはどうじゃ?」

「彼らもぐっすりよ。()()()()()()()()()()()()が効くかどうか不安だったけど今のところ大丈夫みたい。」

「ではイフル、そっちは頼むぞ。」

「了解。そっちもタクマたちをよろしくね。」

セイグリットは優しく微笑んだ後、四つのコクーンとリリアを連れて外に出た。

「・・・待たせたの。()()()()。」

彼女を待っていたのは機械のティラノサウルス、護竜(ガーディアン)であった。


 しばらくしてドラゴン組三頭とラルがまとまって寝る中、ラルが寝返りでウィンロスのくちばしの上に転がり落ちる。

するとラルの毛が彼の鼻をくすぐり・・・、

「ぶぇっくしょい!」

特大のくしゃみを暴発させドラゴンたちが眼を覚ました。

「え、何⁉」

「痛い・・・。」

因みにラルはくしゃみにより吹っ飛ばされていた。

「びっくりさせないでよウィンロス。」

「すまん鼻かゆくて・・・、ん?」

ウィンロスはタクマたちの入っていた安眠コクーンが無くなってることに気付く。

セイグリットとリリアも。

「アイツらどこ行った?」

バハムートが起き上がり外に出ると奇妙な臭いが残っていることに気付いた。

「これは合金(ごうきん)の臭い。それにこの大きな足跡・・・。」

バハムートは鑑定スキルと望遠スキルを発動させると遥か向こうで安眠コクーンを背負った機械のティラノサウルスを発見した。

その背にはセイグリットと眠るリリアも乗っている。

「一体どういうことだ・・・!大賢者よ!」


 皇都を通り過ぎ帝国の奥に広がるキャニオン渓谷を突き進むティラノサウルス。

するとリリアが眼を覚ました。

「あれ?ここは?」

「なんじゃ、もう目が覚めたのか。相変わらず魔法態勢が強いの。」

「先生?え、ここって⁉」

リリアは護竜(ガーディアン)ティラノサウルスの上にいることに気付いた。

「なんで護竜(ガーディアン)が⁉それになんで先生を乗せて⁉」

「今説明するのは面倒じゃ。今一度眠っておれ。」

セイグリットが再び睡眠魔法をかけようとしたその時、上空から強い気配が追ってきていることに気付いた。

「やはり侮れんな。」

上空からバハムートとウィンロスがティラノサウルスを追っていたのだ。

「おじ様!あそこよ!」

「おらぁ!なんやようわからへんけどタクマたちを返せやぁ!ウィングエッジ!」

風の刃を放ちティラノサウルスを攻撃する。

「アカン!遠距離じゃ被弾してまう!どうにか近づかへんと!」

するとバハムートがウィンロスを雑につかんだ。

「いでで⁉その掴み方アカン!羽毛が抜ける!」

「行ってこい!」

タイミングを見計らいウィンロスを護竜(ガーディアン)目掛けて槍のように放り投げた。

「ウソーーーン⁉」

凄い勢いで真っ直ぐ落とされるがティラノサウルスが急ブレーキしたことでタイミングがズレ、ウィンロスは地面に突き刺さった。

「なんで避けるの先生!」

「儂ではない。こやつ(グレイド)に言え。」

だが彼は諦めてない。

起き上がってすぐ全力ダッシュで距離を詰めてきた。

「おにょれぇ~!」

追いついたウィンロスはティラノサウルスの尻尾に噛みつき引き留めた。

「捕まえたでメカトカゲ!おいロリババア!なんやよう知らんけどタクマたち返さんかい!」

「悪いがこやつらとは別行動してもらう。お主らには別件を頼みたいからの。詳しくはイフルに聞け。ラプター!」

ティラノサウルスの身体から機械のヴェロキラプトルが飛び出しウィンロスの前に立つ。

「ホワッツ?」

するとラプトルはカンガルーのように尻尾で立ち、足でウィンロスの顔面をラッシュした。

たまらずウィンロスは尻尾を離してしまいティラノサウルスの後ろ蹴りで蹴飛ばされた。

そしてティラノサウルスは再び走り出し渓谷に隣接する海岸沿いにやってきた。

「あの勢いじゃ海に落ちる!」

「何をする気だ?」

ティラノサウルスはスピードを落とすことなく走り海へ向かって飛び降りた。

その時、海から巨大な機械のモササウルスが現れる。

「うわあぁぁぁぁ⁉」

セイグリットたちを乗せたティラノサウルスはモササウルスの口の中へ飛び込み、彼らは夜の海へと姿を消したのだった。

追いついたウィンロスと地上へ降りたバハムートたちは茫然と夜の海を眺める。

「特殊な電磁波のせいか気配が途絶えた。これ以上は追えん。」

「セイグリット、どうして主様たちを連れてったの?」

「なんやようわからんけど、オレらに別件を頼みたい言うとったで。詳しいことはイフルに聞けって。」

そこへグレイス・ド・ラルに乗ったイフルがやってきた。

「やっと追いついた・・・!皆速すぎるよ・・・!」

「イフル。これはどういうことだ?お主は何か知っておるのか?」

「・・・うん。ある程度はね。皆にお願いがあるの。私と一緒に、ある場所に来てほしい。」

イフルの表情はこの上ないほど真剣であった。


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