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『第256章 伝説の魔女』

イフルの古い知り合い、セイグリット・アントモーメンの自宅に訪問したタクマたちはお茶とお菓子でもてなされていた。

用意しているのは、セイグリットに似た妖精サイズの人形達だった。

「可愛いぃ♡ミニセイグリットさんですぅ♡」

あまりの愛らしさにリーシャはもうメロメロである。

「儂の生活を手伝う自立型ゴーレムじゃ。ゴーレムと言っても作りはぬいぐるみと変わらんがの。」

ミニセイグリットたちが一斉にグッドサインをし、リーシャは更に虜になった。

「さてと、では改めて自己紹介じゃ。儂はセイグリット・アントモーメン。イフルと共に罪の大厄災を鎮めた当事者の一人じゃ。お主らの事は知っておるぞタクマ。竜王、超天竜バハムートを従魔としたドラゴンテイマー。世間の話題にならないはずがない。」

「俺たちってそんなに有名になってるのか?」

「神や神龍と闘い数々の国を救った英雄が何を今更。」

そう鼻で笑うセイグリットだった。

「さて本題じゃ。お主らはこの帝国の現状をどう見る?」

セイグリットの質問にタクマたちは顔を見合わせた後答える。

「以前から亜人差別が強いと聞いてたが、噂通りというのが率直な感想だ。だが一つ疑問が湧く。差別の強い国と言われながら何故亜人が帝国にいるんだ?」

セイグリットは紅茶を一すすりする。

「この国で亜人は労働力。いわば奴隷じゃ。この地域ではもともと亜人は住んでおらず、人間だけが住む地域じゃった。じゃが五十年前、世界の環境が突如一変した影響で育る場を失った多くの亜人がこの地域に流れ着いた。」

これまで何度も耳にした五十年前の突然の環境変動。

その影響で世界全体の生態系が崩れ、幾年にも及ぶ混乱期となったと歴史に残っている。

「その混乱に起きた突然の多種族との衝突。恐れを抱く者や下げずむ者。当時の帝国を納めていた大総統はその混乱を防ぐため、亜人を労働力として受け入れる方針とした。彼奴にとっても苦渋の決断であっただろう。」

「当時の亜人たちはそれを受け入れたのか?」

「そうしなければ生きていけぬ環境じゃったからのう。」

そういいまた紅茶をすすった。

「和国や魔大陸の時もそうだったが、今の時代どこの国も何かと問題を抱えているんだな。」

「まあその辺は今に始まったことではない。現状一番の問題は、イフル。」

セイグリットに呼ばれイフルは一つの黒いマーブル石を机の上に出した。

「これは・・・!」

「そう。ギルティマーブルじゃ。お主も同じ石を一つ持っておるじゃろ?」

そう言われタクマも懐から黒いマーブル石を取り出し机に置いた。

「やはりか。イフルに知らされた時はもしやと思っておったが、既に各地にばら撒かれ始めておる。」

「よくわからず持ってたが、ギルティマーブルってのは具体的に何なんだ?」

「・・・罪の魔物という化け物を知っておるか?」

ギルティマーブルは罪の概念が濃く凝縮された魔石の一種。

強い負の感情を抱いた者がこの石に触れた時、石に飲み込まれ罪の魔物と変貌してしまうという。

「当時はそこまで解明しておらず、出現する罪の魔物の対応には骨を折った。じゃが魔物の正体が小動物を初め、あらゆる生命が変貌した存在だと判明したのじゃ。」

「だからエレアがあんな怪物に・・・。」

あの時、エレアは身代わり人形とはいえ祖父である教皇が殺害されて少なからず動揺していた。

セイグリットは二つのギルティマーブルを手に取る。

「でもその石と帝国、どのような関係があるんですか?」

ミニセイグリットを愛でていたリーシャが問いかけた。

「・・・ここ数年、ルイラス帝国にこのギルティマーブルが出回っておるんじゃ。」

全員が驚く。

「一大事じゃないか!」

「うむ。今のところ石による被害は出ておらんようじゃが、いつ罪の大厄災の再来になるかわからん。イフルに調査を頼んだが如何せん人手不足。そこで・・・。」

「・・・俺らが呼ばれたってわけか。納得した。」

エルフであるイフルだけでは帝国での調査が滞ってしまう。

だからタクマたちが呼ばれたのだ。

「俺たちに石の調査を任せたいんだな?」

「できれば回収も頼みたい。これを封じれるのは今の時代儂しかおらん故。」

「わかった。皆もいいよな?」

振り向くと全員が同じ眼差しをしていた。

「セイグリット、イフル。その依頼受けるぜ。」

「っ!ありがとう皆!」

そんな彼らを見ていたセイグリットはふと呟く。

「・・・試してみるか。」


一先ず話し合いはここまででその日はセイグリット宅で一泊することとなった。

「さて、話も一度一段落したところで・・・。」

セイグリットは立ち上がると人間形態でくつろいでいたカリドゥーンに歩み寄った。

「ん?なんじゃ?」

「お主が伝説の魔聖剣カリドゥーンじゃな?」

するとカリドゥーンも立ち上がりセイグリットの前に仁王立つ。

「さっきから思っとったがお主、()()()()()()()()()()()()()!」

全員が一斉にズッコケた。

「た、確かに二人とも幼い見た目だし口調も同じだね・・・。でも見た目は大分違うじゃん?」

「エルフの娘。これはお主の思っておるより由々しき事態じゃ。ロリババア枠は儂で十分なんじゃ!」

「そうは言うが儂の個性を指摘されてもどうすることも出来んぞ?」

「じゃが儂と区別がつかなくなるじゃろ!」

「なんやねんこのメタい論争・・・。」

流石のウィンロスも呆れずにはいられなかったのだった。


 その夜。

それぞれが様々な箇所で雑魚寝中。

スリープ状態のミニセイグリットたちと眠るリーシャを跨ぎ寝ているタクマに杖の先端でつつく。

「起きろ。」

「んあ・・・?」

セイグリットに起こされたタクマは寝ぼけながら身支度を整え二人は扉の前へ。

セイグリットが扉のダイヤルを回し開けると霧の漂う外へ出た。

「うぅ寒!こんな早朝に起こして何なんだ?」

あくびするタクマが問う。

「老人の朝散歩に付きおうてくれ。若い者と散歩なんて久方ぶりでの。」

しばらく歩くと立ち止まるセイグリット。

「標高が高いとはいえ霧が濃いな。何も見えねぇ。」

「これは霧ではない。()じゃ。」

「・・・え?」

風が吹き霧が晴れると、二人が立っていたのは浮遊島に建設された闘技場の上だった。

「え、なんだここ⁉家から出てそんなに歩いてないだろ⁉しかもここ空の上じゃん⁉」

「儂の家の扉はポータルでもある。ダイヤルを回せばあらかじめ設定した場所にファストトラベルできるのじゃ。」

「転移魔法みたいだな・・・。」

「まあ近いの。さて、お主をここに連れてきたのには理由がある。」

「理由?」

「・・・お主を見てるとな、不思議とあの()()()()鹿()を思い出す。二百年前のように、年甲斐もなく高ぶってしまうの!」

「っ⁉」

セイグリットが振り返った瞬間、足元が爆発し噴煙からタクマが飛び出す。

「今の奇襲をかわすか。幾つもの修羅場を抜けてきただけはある。」

杖を手に浮遊し背後の複数の魔法陣が展開される。

タクマも剣を抜いた。

「俺を試そうってか。上等だ!」


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