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『第255章 錬金術師の少女』

イフルの手紙に記された場所まで足を運ぶタクマたちは皇国内で一番広い噴水広場までやってきた。

「広いなぁ。」

「見て主様!すごい形の噴水!」

噴水のてっぺんには紫色のクリスタルが浮遊しており全く新しいデザインをしていた。

「随分SF感が強い国ですね。路面電車みたいな交通もありますし、ちょっと違和感を覚えてしまいます・・・。」

「それほど文明が発展してるってことだろ。『大海原の境界線』の影響もあって鎖国国家だからな。ルイラス帝国は。」

見たところイフルはまだ来ていない様子なので広場で待つことにした一同。

「・・・あの、タクマさん。」

「ん?」

「ずっと気になっていたんですが、どうして帝国は亜人差別が強いんでしょうか?」

「さぁな。各種族の価値観や偏見が違うからじゃないか?これほど発展した国じゃ一部の亜人には理解できない部分も多いだろう。」

「本当に、それだけでしょうか?」

どうしても何かの違和感が拭えないリーシャだった。

すると、コツコツとこちらに近づく足音が聞こえてきた。

振り向くと黒い軍服と帽子を身に着け、分厚いコートを羽織り、ショートパンツに生足が際立つ謎の少女が近づいてきたのだ。

(イフル、じゃねぇな。)

少女はタクマの前で立ち止まった。

「何か用か?」

「・・・その腕輪、従魔結石か?」

少女はタクマの身に着ける腕輪の従魔結石を見る。

「あぁ、そうだが?」

「じゃぁ、お前が例のドラゴンテイマー。()()()()・・・!」

少女の眼が鋭くなる瞬間、全員の足元に足枷が現れ拘束されてしまった。

「っ⁉」

「なんじゃこりゃ⁉動けへん⁉」

(何もない所から急に足枷が⁉まさか、錬金術!)

「おい!なんのつもりだ!」

「お前たちの力が必要だ。帝国軍本部まで来てもらう。」

「帝国軍・・・⁉」

何故帝国軍がタクマたちを狙うのか?

訳が分からずだったがこのまま連れていかれるつもりは毛頭ない。

全員は足枷をいとも容易く破壊し逃れた。

「っ!」

「悪いが先約があるんだ。帝国軍へは行かないぞ。」

「そう。出来れば手荒なことはしたくなったけど、力ずくでも来てもらう!」

少女が地に手を付けると地面から鉄の棘が現れタクマたちに襲い掛かる。

即座に散開してかわし少女から距離を取った。

「やるしかねぇか・・・!」

騒ぎを起こしたくはないがやむ負えない。

それぞれが武器を構え臨戦態勢に入った。

するとそこへフードを深くかぶった何者かが頭上に現れ弓矢を両者の間に放った。

「今度は何⁉」

フードの人物はタクマの前に降り立つと懐から巻物を取り出した。

「皆そこから動かないで!」

「っ!お前は・・・!」

巻物を広げると足元に魔法陣が現れ、タクマたちはその場から姿を消したのだった。

「転移のスクロール・・・!どうして()()()の魔道具を・・・?」

一人残された軍の少女はその場に立ち尽くし、とある男性と女性の影を思い浮かべ首を振った。

「あのテイマーたちを見ると昔を思い出す・・・。思い出したくないのに・・・!」

少女は拳を強く握り空を見上げる。

「絶対に許さないぞ。機神龍・・・!」


 皇都から遠く離れた草原の丘に魔法陣が光り、タクマたちが現れた。

「あれ?ここは?私たちさっきまで皇都にいましたよね?」

「転移魔法のスクロールか。随分珍しい魔道具を持っておったな。」

「あぁ、でも助かったぜ。ありがとな。()()()。」

人物がフードを取ると薄緑のポニーテールに尖った耳のエルフの少女。

イフルだった。

「ごめんね。待ち合わせ場所が皇都内のせいでこんなことになっちゃって。」

「俺たちは別にいいけど、お前は大丈夫だったのか?亜人差別の強い帝国都内に入って?」

「隠蔽魔法をかけてたし耳も隠してたからね。ある程度は大丈夫よ。でもまさか帝国軍がタクマたちを狙ってたなんて思わなかったわ。手紙を送った後に気付いたけど間に合ってよかった。」

「帝国軍は何で俺たちを?」

「そのことも含めて後で話すわ。まずは場所を移しましょ。ついてきて。」

イフルに案内されるまま一同は草原の岩丘を登り少し標高の高い場所までやってきた。

「日も大分暮れてきたけどまだ着かないの?」

既にへとへとになっているリヴが言う。

「もう少しよ。」

「リヴさんも乗ります?」

メルティナとリーシャは流石に体力が持たなかったのでバハムートに乗せてもらっていた。

「じゃぁお言葉に甘えて。」

そういいリヴもバハムートに飛び乗るのだった。

「しっかし大分登ってきたな。帝都がちっぽけに見えるで。何よりこんな標高の高い場所に人間が住んどるんか?」

「住んでるわよ。たった一人ね。」

「・・・手紙にはずっと探してた知り合いと再会して匿ってもらってるって話だったが?」

「うん。二百年前からの、私とレイガの親みたいな人かな?」

「レイガも?」

そんな会話をしていると、ふと煙の臭いがしてきたことに気付く。

「来たわ。」

「・・・()()?」

すると丘の向こうから金属音の足音と共に巨大なガラクタの山が現れたのだ。

突然現れた動く謎の物体にタクマたちは空いた口がふさがらない。

ガラクタの山には四つ足が生えておりなんとも奇妙な形だ。

「何かまたガラクタが継ぎ足されてる。変な物の収集癖は相変わらずね・・・。」

「ななな、なんですかあれ⁉生き物⁉ガラクタ⁉どっちですか~⁉」

「どっちでもないわよ。」

ガラクタの山はタクマたちを跨ぐと動きを止めゆっくりと腰を下ろした。

そして目の前に扉が現れる。

「さ、入って。」

「入って⁉中入れるのか?これ?」

「見た目はこんなだけど一応居住なのよ。中は割としっかりしてるから安心して。」

まだ理解が追い付かない一同だが一先ず中に通される。

ガラクタの山の中は外見とは裏腹に割と普通の居住スペース。

しかし室内の広さが外の面積より遥かに大きいことに違和感を覚える。

そして極めつけは、吹き抜けの先には超巨大な図書館が広がっていたのだった。

「広っ⁉なんだこれ⁉」

「もの凄い数の本だ。何万、いや、何億冊あるんだ?」

「別空間と繋げておるのか。しかもこれほどの技術、その者はとてつもない魔導士だぞ。」

あのバハムートですら驚きを隠せないでいた。

「・・・ちょっと待て⁉お前ら何で普通に入ってこれたんだ⁉」

入り口は人間サイズのごく普通の扉。

にも関わらず体躯の大きいバハムートとウィンロスが普通に室内に入れたのだ。

「ほんまや!どうなっとんねん⁉」

「よくわからないけど、扉に魔法が掛かっていて扉より大きいモノも入れられるようにしたらしいよ?」

「魔法技術どんだけだよ・・・。」

一同が驚いていると部屋の奥から誰かがこちらにやってくる。

「現在世間で名の上がり始めたドラゴンテイマー。そして竜王に相まみえるとは、長生きはしてみるものじゃのう。」

現れたのは大きな杖を持つ十歳くらいの少女。

だがその雰囲気からは圧倒的な貫禄が感じられる。

「子供?」

「いや待て。このパターンは・・・。」

「ただいま。セイグリット。」

セイグリットと呼ばれた少女は杖をコツンと床に叩くと辺りに明かりが灯る。

「儂の名はセイグリット・アントモーメン。二百年前、罪の大厄災を鎮めた当事者の一人。そして今は大賢者と呼ばれておる魔女じゃ。イフルが世話になったようじゃの、ドラゴンテイマー。」


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