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『第254章 魔械の護竜』

投稿を再開します。

 曇天覆う暗い大海原。

視界がままならない霧の奥から無数の爆発音が鳴り響く。

対立する幾つもの軍艦隊が激しい水上戦争を繰り広げていたのだ。

「どうだ?奴らの動きは?」

戦艦長らしき男が双眼鏡で見回す兵に問いかける。

「今のところ現れる気配はありません。」

「もうここは()の領域内だ。情報が正しければこの近くに奴の潜む島があるはず。そしてそれを護る存在『護竜(ガーディアン)』がいるはずだ。これほど奴の艦隊を沈めていれば自ずと現れる。敵戦艦を破壊しつつ警戒を続けろ。」

「了解!」

無数の戦艦が侵攻を進めると、レーダーが反応を示した。

「レーダーに反応あり!」

「っ!」

上空の霧を掻き分け飛来したのは機械のプテラノドンだった。

プテラノドンは横腹に搭載された機関銃を発砲し戦艦の主砲を一つ破壊した。

「来たか!全艦砲撃準備!護竜(ガーディアン)を撃ち落とせ!」

一斉に艦隊が砲撃を開始。

弾幕の雨を掻い潜るプテラノドンは隙を見ては攻撃を仕掛ける。

「相手は一機だ!奴だけでも討ち取るんだ!レーザー主砲準備!」

「了解!レーザー主砲準備!」

一部の艦隊が砲撃をやめ別の主砲がプテラノドンに狙いを定める。

「撃てぇ!」

放たれた魔力レーザーがプテラノドンに直撃しようとしたその時、何処からかの狙撃によりレーザーが打ち消された。

「何だ⁉何が起こった⁉」

とある島の断崖にて自身の身体を変形させたライフルキャノンを構える機械のトリケラトプスが遥か霧の彼方をロックオンしていたのだ。

「くっ!やはり別機体がいたか!」

「艦長!前方より巨大な影が!」

前方の海が波打ち、艦隊の下を巨大な魚影が横切っていく。

そして背中面を浮かせると複数の何かが飛び出し船体に乗り込んできた。

「ガ、護竜(ガーディアン)・・・!」

「グオオォォォ‼」

乗り込んできた機械のティラノサウルスは咆哮を上げ船体の上で暴れだす。

撃ち出された主砲の弾を口で受け止め投げ返し砲台を破壊。

その隙に艦橋によじ登り船を転覆させた。

転覆する寸前にティラノサウルスは機械のプテラノドンに掴まれ別の戦艦に降り立つ。

「グルルル・・・!」

砲撃で向かえ撃つ帝国軍だがその弾幕を素早い動きで掻い潜り足元の戦闘機を咥え盾とする。

そして燃える戦闘機を投げ捨て砲台を破壊し、その飛び火で戦艦が一隻、また爆破した。

「くっ!人造種だか知らんが魔獣の分際で!たかが機械が!こうなったら奥の手だ!『ブラックカノン』の用意を急げ!奴らを殲滅せよ!」

艦長の命令で三隻の戦艦が動きを止め、船体が大きく割れるように開いた。

そして砲口が突き出し魔力が収束していく。それに気付いたティラノサウルスは他の護竜(ガーディアン)に叫ぶと機械のスピノサウルス、そして海から機械のモササウルスが動き出した。

スピノサウルスがモササウルスに飛び乗り三隻の戦艦に迫る。

護竜(ガーディアン)が二体接近してきます!」

「我らの軍艦を援護せよ!」

三隻を守るように周りの戦艦が一斉に砲撃する。

だが見えないバリアのような壁で全て防がれるのだった。

「『魔法壁』⁉機械が魔法を⁉」

するとスピノサウルスの背びれがガコンッと動き出し尻尾を軸に回転、巨大な円刃ノコギリが尻尾の先端へと変形した。

そしてモササウルスが潜ると同時にスピノサウルスの飛び出し、尻尾の円刃で戦艦の一隻を真っ二つに切り裂いた。

「か、艦長!」

「おのれ・・・!」

その直後、もう一隻も海面から浮上したモササウルスが戦艦に噛みつき海へと引きずり込むのだった。

そして残った艦長の乗る戦艦へはプテラノドンにぶら下がったティラノサウルスが迫ってくる。

「装填は⁉」

「まだです!」

しかし、二機は戦艦を横切り後方に浮上したモササウルスの上に降ろされた。

「射線の後ろならと判断したか?だが無駄だ!」

戦艦の砲口がぐるりと百八十度回転したのだ。

「装填完了です!」

「『ブラックカノン』、撃てぇ‼」

強力なエネルギー砲が放たれようとしたその時、海の奥から魚雷の様な何かが猛スピードで接近し、砲口を貫き破壊したのだ。

それはスピード形態に変形した機械のプレシオサウルスだった。

「ぶ、『ブラックカノン』が・・・⁉」

奥の手も潰され焦る艦長。

好機と見たティラノサウルスは力強く踏ん張り、顎が割れるほど大きく口を開くと喉から砲口が伸び出した。

「ま、まさか・・・⁉全艦回避行動‼」

各戦艦が回避を行うが間に合わず、ティラノサウルスから海を裂く『魔力粒子砲』が発射される。

「ぐあぁぁぁぁぁ⁉」

粒子砲は戦艦を貫き、そのまま薙ぎ払うように他の戦艦も爆破していく。

・・・全てが消し炭になった海の上には燃える船の残骸。

そして、魔械竜『護竜(ガーディアン)』たちの咆哮が暗い曇天の海に轟くのであった。



 「・・・やはり駄目であったか。」

暗い会議室で円卓に座る数人の人物。

「飛行艦隊があれば結果は違ったと思うが。」

「現在飛行可能軍艦は恐ろしく減少した。ルスターブ中将がしくじらなければな。」

「奴も殺された今、指揮権は貴殿に委ねられた。そのあたりの事は頼むぞ。ライグル・スチュアード大佐。」

円卓に足を乗せる態度の大きい男が答える。

「了解しました。ですが艦隊だけでは機神龍の領域に踏み入れるのは些か難しいですね。」

「何が言いたいのだ?ライグル。」

「戦力を確保しましょう。そうですね、例えば・・・、神龍を倒した竜王のドラゴンテイマーとか?」



 ルイラス帝国の領土内に位置する見渡す限りの大草原。

その平原にポツンとある野営場にて。

「あ~満腹や。リーシャの作る飯はいつ食っても最高やで。」

「ありがとうございます♪」

朝食の後片付けをするリーシャとそれを手伝うアルセラとメルティナ。

バハムートとウィンロス、ドラゴンたちも満足そうに身体を休めていると、テント内が妙に騒がしかった。

「なんや?」

「うおぉぉぉ⁉」

「待ちなさーい‼」

暴れるテントから飛び出してきたのはタクマとリヴだった。

「食後と言うのに随分と元気だな。」

「主にリヴがな!」

逃げるタクマをリヴが追いかけ大草原を全力疾走していた。

「待ちなさい主様!今度こそ私とまぐわってもらうわよ!」

「っ⁉」

リヴの発言にリーシャが度肝を抜いた。

「なんで急にそんなことを⁉」

「だってスイレンが子供授かってたのよ!結婚してすぐなのに早すぎるわ!私だって主様との子供欲しいのよ!だから是が非でも夜の営みしてもらうわよ!」

「・・・お子様には聞かせられない会話だ。」

「あの、私一応子供じゃないんだけど?」

アルセラがメルティナの耳を塞ぐのだった。

「捕まえた~‼」

リヴがタクマに飛び掛かったその瞬間、鈍い強打音がし、リヴはたんこぶを生やして気絶したのだった。

「もしかしてとは思ってましたが、本当に油断も隙もありませんね!あ、タクマさんは気にしないでくださいね♪」

可愛らしい笑顔を見せるリーシャだがどこか圧を感じずにはいられなかった。

「何なんだよお前ら・・・。」


 しばらく道なりを進んでいくと前方に目的地が見えてきた。

「あれがルイラス帝国の首都『皇都』か。」

その首都はとても広く、そして今までの国とは違う雰囲気を醸し出していた。

外壁は見たことない鋼鉄の壁で囲われており、街も他の国と比べ近未来的だった。

「なんだか、これまで訪れた街とはだいぶ雰囲気が違いますね。」

「文明が優れているというのはこういうことだったか。確かに今まで訪れた国とは違い見慣れないものも多々ある。中々に面白そうだ。」

そういいバハムートは少し笑みを見せるのだった。

ひとまず皇都内に入るため、入り口で検問等などいろいろ面倒な審査の後、タクマたちは入国した。

「随分厳重な検問でしたね。」

「亜人差別が強いって聞くからな。特にリヴとメルティナが引っかからないかヒヤヒヤしたぜ。」

「確かに私たち人間じゃないけど亜人に区別されるのは心外だわ。ドラゴンと神よ?私たち。」

さて、入国したはいいがタクマたちはさっそく帝国内の内政に驚かされる。

とある工事現場近くを通りかかると大勢の亜人が労働力として働かされていたのだ。

待遇などはイメージしてるほど酷くはないがそれでもどこか格差が感じられる。

「差別か。見ててあまり気持ちのいいものではないな。」

「そうだな。」

「それでタクマさん。待ち合わせ場所は本当に街中なんですか?その、あの人は・・・。」

「返信の手紙に同封された地図にはそう書いてあった。」

手紙の差出人であるイフルと言う少女は、エルフである。

「とりあえずその場所に行けばわかるだろう。行くぞ。」

先を急ぐ一同だったがそんな彼らを建物の屋上から見下ろす一人の人影には気付かなかった。

「・・・ドラゴン。」


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