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『第253章 大海原の境界線』

しばらく投稿をお休みします。

昨日、和国から逃げるように出立したルイラス帝国の空中戦艦。

その船に乗っていたのはルスターブ中将とその部下たちだった。

「おのれ亜人共め!この私をコケにするとは!」

怒り任せに台を叩きつけるルスターブに船を操縦している部下たちはビクつく。

「多くの飛行艦隊も失い亜人の国に門前払いされるとはなんたる失態!このままおめおめ帝国に帰還などできるわけもないであるし!」

しばらく暴言を吐き続け騒いでいたルスターブだが急に大人しくなった。

「・・・貴様ら、和国へ引き返すであるし。」

「っ⁉何をなさるおつもりですか!ルスターブ中将!」

「奴らの国の資源特許を奪い取るのだ。多少強引でも所詮亜人の国。我らの軍事力には遠く及ばんであるし。このまま手ぶらで帝国に戻るつもりはない。何が何でも土産を持ち帰るであるし!でなければ、()()()()に消されるやもしれん!」

あの御方と発せられた瞬間に部下たちは冷や汗をかき、ルスターブの命令通りに船を引き返そうと操作する。

だがその時、壁の奥から何かを叩きつける鈍い音がしたのだ。

「なんであるし?」

ドアが蹴り壊されると大勢倒れる兵を後ろに現れたのは、機械のヴェロキラプトルだった。

「ガ、護竜(ガーディアン)⁉いつこの戦艦に潜り込んでいた⁉」

「こいつがいるということは・・・!」

機械のラプトルがジャンプしルスターブの前に飛び降りると胸のパーツが光り、ホログラム映像が映された。

映像に移ったのは陰で顔が見えない人影だった。

『・・・やぁ、帝国の者。相変わらずと身勝手な素行が目に付きますね。』

()()()・・・!」

突然の人物にルスターブをはじめ、部下たちもざわつく。

「何の用であるし!今は貴様に構ってる暇はない!」

『我が同胞の暴走を止め救ってくれた恩人たちは戦いの疲れを癒しています。そこに横やりを入れるのは些か野暮ではありませんか?』

「貴様には関係ないであるし!これは我ら帝国の意地!此度の件が終えたら次は貴様の番であるし!今度こそ貴様の全てを我が帝国の物とする!覚悟するであるし!」

そうわめくルスターブだが機神龍は静かに笑いを零した。

「何がおかしい!」

『いや、実に貴方達が滑稽でつい・・・。失礼したお詫びに私から贈り物をあげます。そして、二度と会うことはないでしょう。』

「何訳の分からぬことを!貴様は次期に・・・っ⁉」

・・・気が付くとルスターブの額を細長い爪が貫通しており、引き抜かれるとラプトルのワイヤーで伸びた腕がガチャンと戻った。

そして脳天を貫かれ絶命したルスターブはその場に倒れたのだった。

「ちゅ、中将⁉」

部下たちは大慌て。

すると今度は船体のあちこちが爆発し始めた。

「な、なにが起きて・・・⁉」

『私からの贈り物です。あの世への片道切符と言うね。』

ホログラム映像が消え機械のラプトルはガラスを突き破り外へ飛び出す。

そこへ煙の奥から『機械のプテラノドン』が飛来しラプトルを背に乗せ離れていった。

船体に響く帝国軍の悲鳴は爆発音にかき消され、崩壊した飛行戦艦は海へと墜落した。

海面から上がる煙を上空から見下ろす機械のラプトルとプテラノドン。

『ご苦労様です。ラプター、フライム。もう直グレイドとトルプス、プレルが魔大陸から戻ってきます。モーザを迎えに向かわせますのでそのまま帰還してください。』

そう指示を受け、機械のラプトルとプテラノドンはその場から去っていったのだった。



 そして現在、和国ではルイラス帝国へ出発するために準備を進めるタクマとリーシャの二人は森の奥にあるあの鍛冶屋へ足を運んでいた。

「こんにちはー!」

出迎えたのは和国に住む中年男性、火蔵宗一だった。

彼はリーシャと同じ世界から来た異世界人である。

「タクマ君!リーシャちゃんも!久しぶりだね!」

「宗一さんもお元気そうで。」

今回彼に用があるのはリーシャだった。

「ペンダント?」

「はい。この子のためのペンダントが欲しいんです。」

リーシャが見せたのは美しい緑色の小さな宝玉だった。

「これは?」

「地神龍ガイアデロスです。」

「え⁉それってこの前国中で騒ぎになってた、あの・・・⁉」

驚くのも無理はない。

タクマでさえもそれを知らされた時は度肝を抜いたのだから。

「地神龍をテイムしたら宝玉になっていたと?」

「はい。流石にこのまま持ち歩くのは危険かと思いまして。この子を狙う人たちは大勢います。だから肌身離さず持って守りたいんです。それがテイムした私の責任ですから。」

リーシャの気持ちに宗一はしばらく考え込む。

「・・・わかった。他ならぬ君たちのお願いだ。勿論引き受けよう。」

「っ!ありがとうございます!」

「ただ僕の専門はあくまで鍛冶だから、アクセサリーは少し時間がかかるけど・・・。」

「構わない。俺からもお願いします。リーシャに、守る力をあげてください。」

「・・・わかった。僕のチートに任せてくれ。」

胸を張る宗一のおかげで予定よりも早くペンダントが完成した。

「ほんとチートですね。あんたの力・・・。」

「・・・君には言われたくないかな?」

完成したペンダントは雫の形をした小さな籠でその中に地神龍の宝玉を納め身に着けるリーシャ。

「どんなに強い力が加わっても壊れないし紐もちょっとやそっとじゃ千切れない。自画自賛かもしれないけどこれほど安心できる入れ物はないよ。」

「ありがとうございます。宗一さん。」

リーシャはペンダントを握りしめる。

「これからよろしくお願いします。ガイアデロス。」

リーシャの準備も済み、数日後にはいよいよ出発の時となった。

「船の修理も済んだことだし、我ら魔王軍が途中まで送ろう。」

「感謝するぞ。魔王よ。」

その頃、タクマとラセンが握手を交わす。

「また寂しくなるな。」

「また遊びに来るって。」

「スイレンさんも元気な赤ちゃんを産んでくださいね。」

「あぁ。頑張る。」

アルセラとゴグマも拳を合わせて挨拶を済ませ、一同は魔王軍の空飛ぶ帆船に乗り込む。

そこへ、

「間に合ったぁ‼」

原始化したコヨウが空中歩行で物凄い勢いでやってきたのだ。

「うわ⁉コヨウ⁉」

「水臭いで!なんでウチには知らせへんのや!見送りくらいさせい!」

「すまん。流石に妖狐族の縄張りに行く時間は無くて・・・。」

「まぁええ。ウチからの土産や。お守り程度に持ってき。」

渡された袋には白い丸薬が一個入っていた。

「ウチが作れる最高傑作の漢方や。食えばどんな致命傷も一発で全回復やで。勿論激苦やけど・・・。」

「それ凄すぎない⁉」

「これ一個作るのに鬼ほど時間と手間かかるからもう二度と作りたないけどな!」

「サンキューコヨウ。いざとなったら使わせてもらうぜ。」

「よし!帆を張れ!魔導エンジン全開。向かうは『大海原の境界線』だ!」

ヴリトスの指示で帆船が起動し、海面から浮き始める。

「ルイラス帝国はあまりいい噂を聞かない!十分気を付けろよ!」

「あぁ!またな!ラセン!」

ラセンたち和国の者たちに見送られ、タクマたちを乗せた空飛ぶ帆船は空の海へと飛び去って行くのだった。


 和国を出発した翌日。

魔王軍の帆船は順調に海の空を航海し、とうとう辿り着いた。

「なんじゃありゃ⁉」

目の前に広がっていたのは海に広がる滝。

いや、海がどこまでも横に裂かれていたのだ。

幅は約百五十メートルはある。

「なんですかあの超巨大なナイアガラの滝みたいな光景は⁉」

「あれが『大海原の境界線』だ。どこまでも続く海の裂け目が巨大な滝となっているんだ。」

「あれじゃ普通の船で渡るのは無理なわけだ。ルイラス帝国が鎖国国家になってる理由がわかったよ。」

帆船は大海原の境界線の前で停止する。

「この先は帝国領だ。我々はこれ以上進めない。」

「わかった。ここまで送ってくれてありがとうヴリトスさん。」

「帝国は少々危険な国だ。十分気を付けるのだぞ。」

「わかった。」

タクマたちが話をしてるとウィンロスはふとイビルに気付く。

「寂しいんか?」

「ちっとも・・・。」

そうは言うが表情は嘘をつけていなかった。

「お前には大分世話になったで。ありがとな。」

「・・・それはこっちのセリフよ。貴方たちが来てくれたおかげでお母さんにも会えた。・・・また、会える?」

「当たり前や!オレ等は旅してるんや。世界をあちこち回ってればいずれ会えるやろ。」

眼くばせするウィンロスにイビルは思わず笑みが零れる。

「・・・私ね、初めて会った日からウィンロスの事が好きだったの。貴方の真っ直ぐな生き方に感化されて私も前に進む元気をくれたわ。」

「そうなんか?オレもイビルの事気に入ってるで。」

「・・・一応言っとくけど異性として好きってことよ?ドラゴンの観点で言うなら、いつか私を番いにしてね♪」

「・・・・・ん?え?そういう意味なん⁉」

ウィンロスの驚いた顔があまりにも独特すぎて聞き耳を立てていたリヴが声が出ないほど笑っていた。

「では皆の者、我らに乗るがよい。」

バハムートとウィンロスの背に飛び乗るタクマたち一同。

「それじゃあ魔族の皆さん!お元気で!」

「こちらこそ我が国を救ってくれてありがとう!君たちの旅の無事を祈ってるよ!」

イビルもウィンロスに手を振りグッドサインで応える。

「それじゃ行くぜ!ルイラス帝国!」

バハムートとウィンロスが帆船から飛翔し、大海原の境界線を飛び越えていった。

(また会おうね。皆。)

イビルは彼らが見えなくなる最後まで見送るのだった。


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