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『第251章 二国の大宴会』

天界。

神々が住まう世界である一人の男に信じがたい事実が突き付けられた。

「・・・・・‼」

「そ、創造神様?お顔が怖いですよ?」

側近天使のミルルが恐れ石柱に隠れる。

「・・・従神(ジエト)がやられた!おまけに私が前任に植え付けた破壊神(ヘルズ・ラルマ)も敗北し、音信不通・・・!ここまで私の計画を阻まれたのは初めてだ・・・!」

頭を抱え俯く創造神ラウエルが眼鏡越しに見せる眼は憤怒を超えていた。

「やってくれるじゃないか。セレンティアナの息子(タクマ)・・・!」


 ついにジエトを倒し、地神龍ガイアデロスを止めたタクマたちはホウライに連れられる道中気絶していたバハムートを拾い和国で待ってくれていたラセンやヴリトスたちと合流した。

「本当スゲェよタクマ!」

「ぐえ!」

再会直後、疲弊したタクマの肩に組むラセン。

「和国を救ってくれてありがとな!お前は最高の友達だぜ!」

「わかったから話してくれ・・・。疲れてんだよこっちは・・・。」

リーシャ達もスイレンたちと再会を喜ぶ。

そしてイビルとヴリトス。

「お帰り。イビル。」

「・・・うん。ただいま。」

バハムートもホウライから降りてくる。

「ホウライにコヨウ。よくこやつらを守ってくれた。礼を言うぞ。」

「急に念話寄こされてびっくりしたけど間に合ってよかったで。」

「竜王様ノ命トアラバ即駆ケツケマスル。」

実は万が一を予測しバハムートはホウライたちに念話を飛ばしていたのだ。

特急な呼び出しだったが二人が来てくれたおかげで被害は抑えられたのだ。

「んで?こいつら何や?」

ウィンロスが振り向くと薄暗いキューブの中に捕らわれているルイラス帝国軍とその責任者、ルスターブ中将。

未だにルスターブが無音のキューブの中凄い形相で騒いでいるようだ。

ラセンが一通り説明すると、

「何よそれ。頭おかしいんじゃない?」

リヴが直球にディスった。

(サンドリアスで会ったライグル・スチュアードとかと言い、ルイラス帝国は随分尖ってんのか?)

正直このままにはしておけないため、ヴリトスが指を鳴らしキューブを解除した。

「貴様、貴様ら‼よくもこの吾輩にこのような扱いを!許されざる行為であるし‼」

解放されるや否やわめき散らすルスターブにラセンたちは呆れ顔だった。

タクマたちもルスターブの本性を見て若干引いてる。

するとスイレンがつかつかとルスターブに近づく。

そして次の瞬間、思いっきり彼の顔面をぶん殴り飛ばしたのだ。

「ぱぶらっ⁉」

何度もバウンドし完全ノックアウトした。

「これはゴグマを銃撃した分だ!今度和国に手を出してみろ。私が貴様らを切り刻んでやる!」

魔力の刀を構え威嚇するスイレンに帝国軍は後ずさる。

「そういうことだ。ルイラス帝国の者ども。これ以上責め立てるのなら、それ相応の対応をさせてもらう。教皇殿も交えてな。早急にこの国から立ち去れ!」

魔王であるヴリトスの言葉が止めとなり、帝国軍は伸びてるルスターブを連れて和国から逃げるように退いていくのだった。

流石に二つの国を敵に回すことは避けたいようだ。

女性陣がべーっと舌を出す中、ラセンがスイレンに歩み寄る。

「俺がぶん殴ってやろうと思ったのに。先を越されたな。」

「お前には立場がある。あんなクズに夫の手を汚させはしないさ。」

「そうか。でもお前も無理するなよ?身体。」

そう言うとスイレンは自分のお腹に触れ優しく微笑む。

そうして従神ジエトが起こした一連の騒動が全て終息したのだった。


 その夜・・・、和国の首都『蓮磨の都』まるごと貸し切り、魔王軍も交えた超大宴会が開催されていた。

「今宵は祝勝だ‼思う存分騒ぎまくれぇ‼」

ラセンの演説に大歓声が轟く。

数多くの出店や屋台が陳列し広場の方では巨大な魚の解体ショーなど様々な催しで賑わっていた。

「申し訳ないラセン将軍。このような宴に我々も参加させてもらえ、心より感謝する。」

「堅苦しいことは無しですよヴリトスさん!今の和国は懐も心も広いんだ。むしろ毎日こんな宴したいくらいだぜ!」

「それはやりすぎだ・・・。」

呆れるようにゴグマがツッコミを入れるのだった。

そんな中、女性陣はスイレンからとんでもない朗報を知らされた。

「ええぇぇぇ⁉スイレンさん、おめでたですか⁉」

なんとスイレンが子宝を授かっていたのだ。

「つい先日わかってね。」

「わぁ♡おめでとうございます‼」

「うぅ、先を越されたわ・・・!」

「何と張り合ってるの?リヴお姉ちゃん・・・。」

女子たちの話し合いをテーブル席で見守るタクマとバハムート。

「楽しそうだな。皆。」

「魔大陸からしばらく気を張り続けていたからな。無理もなかろう。束の間の平和だ。自由にさせようではないか。」

するとバハムートが話を切り出す。

「・・・とうとう従神(ジエト)を倒したのだな。」

「あぁ。七天神を倒した。この影響で奴らがどう動くかが今後の問題かもな。」

「レーネに双子神、そしてジエトの三人も葬ったのだ。流石の神々もそろそろ本気で絡んでくるやもしれん。今まで以上に厳しい戦いになるぞ。」

「わかってる。絶対負けないさ。あいつ等を守るためなら尚更な。」

そう決意を固くするタクマにラセンたちが声をかけた。

「お~いお前ら!せっかくだし和国の新料理食ってみてくれ!」

魚の解体ショーをしているカウンター席にヴリトスとイビルも交えて座らされるタクマたち。

そして目の前に握り寿司を出された。

「寿司か。でも初めて見るネタだな?」

「あれからいろんな魚も釣りやすくなったからな。新しい種類の寿司も増やしたんだ。で、これはその試作の一つ。お前らの感想次第で市場に出すつもりだ。ささ、食ってみてくれ。」

そう薦めるラセンに押され、タクマたちは寿司を一口。

すると大波のごとき衝撃が走った。

「旨っ⁉めちゃくちゃ新鮮で脂身もタンパク!これ相当いい魚じゃないのか⁉」

「思い切って沖の奥まで漁をしてみたら新しい魚が捕れてな。俺らも初めて食ったときは感動したぜ。で、いけそうかこれ?」

すると料理に詳しいリーシャが一言。

「単体で出してもいいですが一工夫ほしいですね。ここに海ブドウを添えてみてはどうです?」

言われた通り寿司職人が軍艦巻きを握り試食してみると、

「やべ。醤油要らなくて?」

「無しでも十分味がしっかりしてるな。食感もいい。」

ドラゴンたちも魚料理を堪能していた。

そして魔族の親子は、

「魚を生で食べるのか?正直気が引けてしまう・・・。」

「お父さんは初めてなんだっけ。美味しいよ。私も初めて食べたときは新しい食文化になるって思ったもん。」

「そんなにか。では見習って私も・・・。」

ヴリトスも寿司を食べると眼を見開いた。

「確かにこれは新たな食文化になる。魔大陸でも魚料理のレパートリーを増やしてみよう。」

「これでもっと魔大陸が豊かになるわね。」

「・・・イビル。すまなかった。母さんの事、信じてやれず・・・。」

「・・・。」

「お前は僅かな可能性を信じ、真実に辿り着いた。それに比べ私は目先の事すら見ようとせず、僅かな可能性すら否定した。お前には辛い思いをさせてしまったな。父親として恥ずかしい限りだ。」

そう悔やむヴリトスにイビルは、

「お父さんの言うことは正しい時もあった。そのおかげで免れた窮地も多かったわ。お父さんの教えは全部無駄じゃない。私の方こそずっと迷惑をかけて、心配かけてごめんなさい・・・。」

「イビル・・・。」

ヴリトスはイビルの肩を優しく引き寄せる。

「お互い様だな。私たち。」

「うん。親子だもん・・・。」

「これからは二人で頑張っていこう。母さんの分も一緒に。」

「・・・うん!」

二人の仲直りの様子を見守っていたウィンロスは優しく微笑むのだった。

「あれ?そういやアルセラは?」

「いつの間にかいなくなってたな?」

「アルセラさんなら少し前に宴を切り上げてカリドゥーンさんとどこか行っちゃいました。就寝までには戻ると言ってましたから大丈夫でしょう。」

「そうか。」

(二人だけで抜けるなんてな。さっきの戦いで思いつめることでもあったのかな?)

タクマの勘はおおむね当たっていた。


 和国が宴で盛り上がっている中、夜の荒野で鍛錬の音が響いていた。

「はぁっ!」

振り下ろす太刀筋が岩を一刀両断した。

『いつにも増して力が籠っておるな。まだ昼間の事を引きずっておるのか?』

「当たり前だ。」

戦いの最中、ジエトの召喚したゴブリンの大群にトラウマを持つアルセラは戦意を失ってしまい、メルティナが危険に晒されてしまった。

そのことを悔やんだアルセラは宴を抜けて一人(と一本)で鍛錬をしていたのだ。

(情けない。トラウマとは言えゴブリンごときでメルティナを危険に晒してしまうなんて。ウィンロスのおかげで無事だったが、もし彼が来てくれなかったら・・・。)

そこまで想像し頭を振った。

「もう二度と仲間を危険に晒すわけにはいかない!絶対!」

(こりゃ相当思いつめておるの・・・。)

再び鍛錬を再開すると月が雲に隠れ辺りが暗くなった。

『この暗さで剣を振るうのは危ない。晴れるまで大人しくするのじゃ。』

「そうだな。」

しばらく佇んでいると、突然暗闇の中から()()()()()()()()()()()を感じたのだ。

「っ⁉」

カリドゥーンを構え暗闇の中警戒するアルセラ。

「今のは何だ?一瞬何かが近づいてきたのような気配を感じた、気がしたのだが?」

意識を集中するも何も感じない。

感じるのは暗闇の中の自分の鼓動だけ。

そして雲が晴れ月光が荒野を照らし出すと、アルセラは驚愕の表情で息を呑んだ。

それはあのカリドゥーンも同じである。

(なぜ、気付かなかった・・・?これほど闇夜と対極の存在感を放ちながら、これほどの距離に接近されるまで・・・⁉)

アルセラのすぐ目の前には月光で露わになる純白の巨大な魔狼『フェンリル』がその姿を現したのであった。


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