『第245章 治癒神セレス』
投稿が遅れてすみません。
PCトラブルにより多くのモノを失ってしまったのでそれらを徐々に取り戻していくため、少しずつ投稿を続けていきますのでどうかよろしくお願いします。
タクマがジエトの召喚した大鷲を倒した直後、強大な気配が一つ消えたことに気づく。
(強い気配が一つ消えた。ということは、やったんだな。バハムート!)
ジエトも気配が消えたことに気づき攻撃の手を止めた。
「まさか、ニーズヘッグが倒されたのか?」
「どうした?さっきまでの余裕が伺えないが、ニーズヘッグが倒されたことがそんなに予想外だったか?」
多少の煽り口調で言うタクマにジエトはしばらく黙る。
「・・・そうだな。正直アレが倒されるとは思わなかった。・・・だが、何も問題はない。」
その時、遥か後方から大きな爆発と土煙が巻き起こった。
「状況は一切変わらないぜ。何故なら、七天神は俺だけじゃないからな。」
「っ!まさか・・・⁉」
ジエトはニヤリと笑みを浮かべるのだった。
時は少し遡り、シルバーパイソンの力を解放したアルセラが宙に氷の橋を生成しながらその上を滑るように移動し、襲い来る大型魔獣を次々と切り伏せていく。
しかし、
「くそ!何かがおかしい!」
二体の大型魔獣を両足で鷲掴み飛び上がるウィンロス。
地面にたたきつけそのままの勢いで爆走。
それを追う三体の魔獣。
そこへ高台に飛び乗ったガンズ・ド・ラルが両腕両肩のキャノン砲を構えて狙いを定め、三連発砲。
見事被弾し魔獣を打倒した。
「フリージング・ゲイザー!」
リヴが氷のブレスを吐いて大軍を凍結させ尻尾を叩きつける衝撃で粉砕する。
そこにリーシャ達全員が一か所に集まった。
「気づいたか?皆。」
「えぇ。さっき倒したはずの魔獣がまた現れてる気がする。それに、一向に数も減らない。」
違和感を覚えているとリーシャは後方のメルティナに振り向く。
彼女は上下に展開した魔法陣の中心でまだ詠唱を唱えている。
(メルティナさんの魔法発動まで種を解かないと、こっちの体力が尽きる・・・!)
リーシャが辺りを見回しているとふと一体の魔獣に目が止まった。
「っ!」
するとリーシャは杖に魔力を溜め始める。
「ライト版、『死滅の光神』!」
光の槍を放ちその魔獣に命中。
しかしその瞬間、槍が魔獣をすり抜けたのだ。
「すり抜けた⁉」
「やはり魔獣に紛れて隠れてましたね。明らかに魔獣とは違う魔力反応、姿を現してください!」
リーシャがそう叫ぶと、
「・・・まさか僕の『蜃気楼』を見破るなんて。神殺しと言うのは伊達じゃないようですね。」
魔獣の身体が幻のように消えると中から現れたのは神々しい杖を持つ中性な見た目の少年だった。
だが少年は背に六枚の翼を有している。
「女の子⁉」
「よく間違われますが僕は男です。正直性別を間違えられるのはコンプレックスなんですがね。」
そうため息をつく少年だった。
「六枚の翼に貴方から感じる魔力量、七天神ですね?」
「その通り。僕は七天神の一人、セレスと申します。」
礼儀正しい挨拶を返すセレスに一同は警戒を強める。
「倒したはずの魔獣が再び現れるのはあなたの仕業ですか?」
「はい。君たちの足止めをジエトから託されています。願わくば全滅させられたら上々ですが。」
セレスは倒された魔獣に向かって杖を振るうと、魔獣の傷や損傷個所が再生し復活したのだった。
「あのダメージを一瞬で⁉」
「僕が司る力は治癒。あらゆる傷を癒す権能です。故にこう呼ばれています。『治癒神セレス』と。」
更に杖を振るうと魔獣の大群が復活しリーシャ達を取り囲んだ。
「僕は癒す。醜い争いですだれたこの悲しき世界を。」
一方、和国にそびえる反り返った岩山の上では合流した魔王軍に対して帝国軍が銃を向けていたのだ。
「これはどういうことですかな?ルスターブ中将。」
魔王ヴリトスの問いに焦り余裕のない表情でルスターブ中将がわめいていた。
「このタイミングで貴様ら魔族がやってくること自体おかしいのだ!さてはあの巨竜は貴様らの仕業だな⁉竜の力をもって我らルイラス帝国の軍事力を削ごうとする魂胆だろ!いやそうに違いない!貴様らのせいで飛行軍艦を多く失った!その代償は貴様らの命で償ってもらうであるし!」
ルスターブ中将の被害妄想が爆発し、ヴリトス達魔王軍は呆れた表情で困惑、ため息をつくものもいた。
「ここまで自暴論を拗らせた者は初めてだ・・・。そこの鬼の青年、君が新たな和国の将軍だね?初めまして。私は魔大陸を治める魔王、ヴリトスと申す。」
「初めまして。将軍ラセンです。」
ルスターブ中将を無視して挨拶の握手を交わす二人。
「何故ルイラス帝国の軍がここにいるのかは後で話すとして、あのルスターブという男、どうも自己中心的な面が目立つ。」
「えぇ、奴らは己の欲で和国に入り込もうとし、抗った結果家臣が銃撃で腕を負傷しました。」
後ろではゴグマが撃たれた腕をスイレンと和国軍、そして魔族の治癒士によって治療を施してもらっていた。
「大体の状況は把握した。このままでは地神龍どころの問題ではないな。」
ヴリトスはルスターブ中将に向き直る。
「ルスターブ殿といったな。貴殿が初対面の人物相手に銃口を向けさせる理由をお教え願おうか?」
「あぁ⁉理由も何も貴様ら魔族はそこの鬼族と同じ亜人であるし!亜人は人類よりも劣った種族!故に貴様らは人類であるこの私の言うことに従う!これは必然であるし!」
彼の言葉にヴリトスは呆れて頭を抱えた。
「ルイラス帝国は亜人差別の強い国とは聞いていたが、まさかここまでとは・・・。貴殿の言い分はよくわかった。そして理解した。今この場に、貴様らは必要ない!」
ヴリトスが指を鳴らすとルスターブ中将と帝国軍全員が黒い半透明の箱に閉じ込められたのだ。
「な、なんだこれは⁉」
「闇魔法『シャドウキューブ』。人的害はないためしばらくその中で大人しくしていたまえ。」
「き、貴様!この私にこんなことしてただで済むと思うなであるし!」
「一国の王二人に銃口を向ける者が何を言う。それに貴様の言動は、耳障りだ!」
再び指を鳴らすと、シャドウキューブからの音が消えた。
ルスターブ中将がものすごい剣幕で叫んでいるが一切無音だった。
「何をしたんですか?」
「『防音』。初歩的な魔法だ。これでしばらくは我々も向こうに集中できるだろう。」
そう言い、はるか向こうから迫ってくる地神龍に向き直るヴリトスであった。
「エア・ショット!」
リーシャが風の魔弾を放つもセレスの纏う魔法壁に打ち消される。
間髪入れずに攻め入り杖で鋭い突きを繰り出すもセレスの魔法壁はびくともしなかった。
(手ごたえがない。私の知る魔法壁の比じゃない強度。)
距離を取り連続で魔法を放つがどんなに攻撃してもセレスは微動だにしなかった。
その時、物陰から小さなラルが飛び出し魔法壁を搔い潜ってセレスの頬をひっかいた。
「よし!」
そそくさと離れリーシャの下へ戻る。
セレスは傷つけられた頬に触れると、
「この程度ですか。」
すると傷が一瞬のうちに治癒された。
「さっきも言いましたが僕は治癒の神。たとえダメージを与えられたとしても即座に回復できます。貴女たちがどんなに足掻こうとも全て無駄に終わります。」
「噓でしょ⁉魔法壁でさえ厄介だってのに!」
魔獣に巻き付きながら驚愕するリヴだがリーシャは違った。
「では、その耐久力を上回ればいいだけですね。」
彼女の驚きの発言にセレスは目を丸くした。
「意外な答えですね・・・。やはりレーネと双子神を倒し、エルエナたちを退け続けたことで慢心しているようです。神がどれほど偉大で強大な存在か、改めて認識させてあげますよ。」
セレスが杖を地面にコツンと打つと巨大な緑の魔法陣が地面に展開され、倒された魔獣がより強化された状態で復活したのだ。
「なんかパンプアップされとるで⁉」
「再生と同時にバフも施されたみたい・・・!まずいわ!」
これほどの数が強化された状態で襲い掛かれたら詠唱を続けているメルティナを守り切れないかもしれない。
密かな焦りが全員に抱かれる。
だが、
「皆さん、大丈夫です。どんな状況になろうと私たちは力を合わせて乗り越えてきました。今回もきっと乗り越えられます。」
「その根拠はどこにあるんですか?」
「ありますよ。目には見えませんが、繋がりがある限り希望は絶えないんです。そうでしょ。イビルさん!」
その時、神速で駆ける何かが周りの魔獣を次々と倒していき高く跳躍。
リーシャの前に降り立ったのは吸血鬼モードのイビルだった。
「イビル!」
突然の助っ人の登場に一同は驚きを見せる。
「微力ながら力をお貸ししますわ!」




