『第243章 ドラゴンVS従神』
バハムートがニーズヘッグに掴みかかり墜落した直後、二頭は地面を突き抜け古い遺跡の空洞へと落ちた。
ニーズヘッグがブレスで反撃し距離を取るバハムート。
「以前相まみえたとは言え、こうして立ち塞がったのは千年ぶりだな。」
「グルルル・・・!」
「言葉を発せぬほどあの従神に支配されておるか。かの混沌竜の末裔が聞いて哀れだ。だが、お主をそうしたのは他ならぬこの我だ。故に、この不始末は我がつける!もう眼をそむけはせん。我に全てをぶつけてこい、ニーズヘッグよ!」
「グワァァァ‼」
走り出すニーズヘッグとバハムート、二頭の強大なドラゴンが激突するのだった。
一方、背上の遺跡ではタクマ達が魔獣の大群を相手していた。
個々の強さはそれほどでもないが数が無限に等しく湧いて出て一向に数が減らなかった。
「倒しても倒しても減った気がせえへんで!」
「主人のジエトを倒さない限りこの大群は無限に湧き続けるのか?だとしたら相手をしている暇はない!」
アルセラが強力な斬撃を繰り出し大群の間に道を作る。
「行けタクマ!この作戦は君が要なんだ!」
「分かった!皆も持ちこたえてくれよ。ジエトは、必ず俺が倒す!」
剣と鞘の二刀流を持ってタクマは道を真っ直ぐ突き進む。
当然回りの魔獣が妨害してくるがアルセラやリーシャ達の援護もあって大群の包囲を抜けたのだった。
「彼の邪魔はさせません!」
反り返る岩山の麓に不時着した空飛ぶ帆船から魔族たちを救助する和国軍。
「お手をどうぞ。」
「ありがとう。」
イビルが船から降りると遥か遠くから迫ってくるガイアデロスを見た。
「・・・・・。」
「彼らが心配か?」
次に降ろされた魔王ヴリトスが話しかける。
「彼らは強い。我が国を救ってくれたんだ。彼らを信じ私達は私達の出来ることをしよう。」
「私達に出来る事・・・。」
イビルは母の月のペンダントを握りしめる。
「私、行ってくる。」
「イビル?」
「タクマ達が強いのは分かってるけど、あれほど強大な存在を相手にするのはきっと厳しいと思う。だから少しでも彼らの力になれれば・・・!」
「イビル、お前はもう十分彼らの力になった。だから後は彼等を信じて私達は待ー・・・。」
「お父さん。私を心配してくれてるのは分かってる。でもね、皆は友達のために戦ってる。誰かのために戦ってる彼等を、私はほっとけない!」
決意の眼差しを向けるイビルにヴリトスは、
(・・・母親にも似てきたな。)
「分かった。イビル、お前はお前の心に従え。今も、これまでのように。」
「っ!うん!」
イビルは吸血鬼モードに変身し、クラウチングスタートで加速。
荒野を疾走していった。
「・・・私もいい加減、前に踏み出さないとな。」
「グギャギャァ!」
「邪魔だ!」
襲い来る魔獣の大群を蹴散らし樹海を突き進むタクマ。
(地神龍の頭部から強い反応を感じる。奴がいるとしたらきっとそこだ!)
ガイアデロスの背に広がる広大な森を真っ直ぐ突き進むと森が開けた場所にたどり着いた。
この辺りにも崩壊した遺跡が陳列しており、その中央には赤い魔石が浮遊する真新しい魔導装置が設置されていた。
「なんだあの赤い石は?どこか従魔結石に似てるが?」
「当然さ。同じ従魔結石なんだからよ。」
「っ⁉」
振り返ると遺跡の上に座るジエトがいた。
「その魔石の名は『オリジン』。お前たちの知る従魔結石の始まりの姿。」
ジエトは遺跡から飛び降り装置の前に立つ。
「始まりの姿?」
「自然生成された直後の従魔結石は例外なくこんな赤い色だ。純度も魔力も馬鹿げてるほど高い。ここから長い年月をかけて魔力が抜けていき、最後はお前等の知っている翡翠色になるのさ。」
ジエトの説明を聞いて納得がいった。
「なるほど。それほどの魔力量なら前みたいに神龍のテイムを失敗する心配がないってことか。」
そう言いタクマは翡翠の剣を構える。
「じゃあそいつを奪い取れば地神龍は止まるかもな。」
「やれるもんならやってみろよ。俺を倒せたらなぁ!」
槍の神器ラウタールを装備したジエトが一気に迫ってくる。
即座に見切りカウンターを打つが六本の槍に阻まれ距離を取った。
「牙浪!」
無数の狼の魔獣を召喚しタクマにけしかける。
四方八方から襲い来る狼を剣と鞘の二刀流で捌き切りジエトとの距離を詰める。
「二刀流を得たというのは本当のようだな!だが手数はこっちが上だ!」
魔法陣を展開すると鮮やかに光る巨大なタコを召喚した。
『アビスオクト!』
「っ⁉」
タクマは巨大タコに対し、強いデジャヴを感じた。
(初めて見る魔獣のはずなのに、どこか覚えがある?)
違和感を感じつつも巨大タコはそのタコ足でタクマに襲い掛かる。
うねるタコ足を掻い潜り高く跳躍。
脳天に剣を突き刺した。
「~~~~‼」
「焼きだこにでもなってろ!」
剣から炎を放ち巨大タコはこんがり丸焦げになったのだった。
「チッ、お前もこれを容易く葬るか。奴を思い出してムカつくぜ・・・!」
ジエトが次に召喚した魔獣は巨大な大鷲だった。
「お前はどれほど持ちこたえられるかな?」
そして、地下遺跡で戦う二頭のドラゴン。
「グルアァ‼」
「むんっ‼」
ニーズヘッグの拳を額で受け止めるバハムート。
即座に腕に噛みつきニーズヘッグを何度も叩きつけ放り投げる。
だが翼で上手く旋回しすぐさま立て直した。
バハムートが掴みかかり二頭は遺跡階段を転がり落ちていく。
そして天井が開き日の光が差し込む広い空間へ出た。
「来い!我はお主を倒すまで逃げはせん!」
「グルアァ‼」
荒々しい肉弾戦が繰り広げられ、バハムートは腹に鋭い一撃を受けてしまった。
「ぐふっ⁉」
殴り飛ばされ横たわるバハムートにニーズヘッグが更に襲い掛かる。
だが寸前で炎ブレスを吐き追撃を防いだ。
「千年前の我とは違うぞ!」
地面を叩きつけると周りの瓦礫が浮かび上がった。
「リヴに教わった重力魔法だ!『封重岩玖』!『鍵閉』!」
前足を手のように叩き合わせると瓦礫がニーズヘッグに集まり、更に重力魔法によって圧力をかけ岩の球体となったのだった。
・・・静寂の中しばらく凝視していると球体が少しずつ揺れ始めた。
「まあ、この程度でお主を止められるとは思っておらんわ。」
球体が爆散し黒い影がバハムートを勢いよく殴りつけ空間の片隅までぶっ飛ばされた。
そして現れたニーズヘッグ。
しかし彼の姿が先程とは異なっていた。
逞しい腕とまるで黒い鎧を纏うような全身の鱗と翼膜に炎の模様が描かれた翼。
頭部の形はより洗礼され眼が揺らめく炎のような模様をし、角と身体中から青い炎が纏うように溢れ出ていた。
「変わっておらんな。お主の覚醒した姿は。」
暗闇からバハムートが歩いてくる。
だがバハムートの姿も先程までと異なっていた。
「だが忘れたのか?覚醒の力を持つのはお主だけではないと。」
現れたバハムートは覚醒したニーズヘッグと姿形は全く同じであるが白銀の鎧のような鱗を纏い、翼の模様も赤と金のグラデーション。
そして全身から溢れる赤い炎を纏った二足歩行型のドラゴンであった。
「封印していた覚醒の力だが、お主が相手だ。出し惜しみはせず、全力で戦わせてもらうぞ!ニーズヘッグ!」
更に覚醒した強大な二頭のドラゴンは凄まじい威圧を放ち睨み合うのだった。
外伝編
世界最強のドラゴンテイマー外伝 キング・オブ・メモリア
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