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『第二十五章 三体目のドラゴン』

日が暮れすっかり暗くなったカリブル街。

依頼を終えたタクマ達は報告のためギルドに戻ってきていた。

「あ、お帰りなさい!」

あの受付の少女が出迎えてくれた。

「お話の方はガインさんから伺っております。清掃の依頼と追加の依頼の件ですね?」

「あぁ、頼む。」

ガインのサインが書かれた依頼書を提出すると大量の金貨が乗ったトレイを出される。

「こちら、合わせて百万ゴールドになります!」

「多くねぇか⁉」

「大半はガインさんの感謝の印だそうです。」

何だか申し訳なくなる金額だが感謝の印なら素直に受け取っておいた方がいいだろう。

(ありがたく受け取っておこう。)

「あの、ところで・・・?」

「はい?」

受付の少女の目はリヴの方を向いていた。

「彼女はどなたですか?」

「こいつは俺の新しい従魔だ。」

受付の少女含めギルドにいた冒険者たちが驚いた。

「あんな可愛い少女を従魔にだと⁉」

「人間を従魔にするなんてこいつ何考えてるんだ⁉」

周りから浴びせられる批判と痛い視線。

受付の少女も邪を見る目で引いている。

(あ、そうか。リヴが海竜・リヴァイアサンてことを知らないんだったか。)

「カカカッ!連中いいリアクションするやないか!」

「あ、そういうことですか。今理解しました。」

高笑いするウィンロスと納得するリーシャ。

バハムートは空腹が限界なのかぐったり座っている。

「あ、あの!人間を従魔にってまずいですよ!言い方を変えれば奴隷と変わりませんよ⁉」

受付の少女がわたわたと言う。

このままでは誤解が広がる可能性がある。

「なんか誤解しているようだがリヴは・・・。」

と言いかけ、ふと考える。

(口で説明するより直接見せた方が信じてもらえるか?室内も広いし人もそれほど多くない。そこまで大きな騒ぎにはならないだろう。)

「おい小僧!さっさとその女を解放しろ!」

「いやだからこいつは・・・。」

「そうだそうだ!」

「女の子がかわいそうだろ!」

周りの冒険者たちにに言いたい放題され流石のタクマも堪忍袋の尾がキレた。

「リヴ、元に戻って周りの連中を黙らせろ・・・(怒)‼」

「はーい!」

気さくに返事するリヴは自身の人化のスキルを解除し元の海竜の姿へとなった。

「キシャァァァ‼」

「ギャァァァァァァ⁉」

冒険者たちは竜となったリヴに吠えられ全員が泡を吹いて倒れた。

「弱っ‼」

思わず声が漏れてしまったリーシャだった。

「・・・にしても改めてみると結構巨体やな。オレや旦那よりも大きいんちゃうか?」

「確かに。リヴさんお二人よりも大きいですね。」

「ふふん!これでも五百年は生きてるからね。」

どや顔で言うリヴ。

「え?五百?」

「そういえば貴方、ウィンロスだっけ?貴方はいくつなのよ?」

「・・・二百十歳。」

ウィンロスは声を籠らせた。

「アハハハッ!まだ全然子供じゃない!」

「うるせぇ!オレはこれから何だよ!年上だろうが絶対あんさんより強くなるかんな!」

爆笑するリヴとクエーっと意気込むウィンロス。

案外打ち解けてすぐ仲良くなれそうな感じだ。

「あわわ・・・。」

リヴの気迫に完全に腰を抜かした受付の少女にタクマが話しかける。

「という訳で、リヴは人間じゃなくてドラゴンてことで従魔契約したんだ。信じてくれるか?」

「は、はい。すみません・・・。」

「いやこちらこそ驚かせてすまない。」

「あ、もういい?主様。」

「ん?あぁ、人型になって良いぞ。」

リヴは再び人化スキルを発動し人間の姿になる・・・が、

「わぁー⁉隠してください‼」

ずっと布を巻いていた服装だったので竜から人になると再び全裸になってしまいリーシャが慌てて布を被せた。

「人前で人間になるときは気を付けてください!」

「人間の常識って面倒ね。」

報告を済ませタクマ達はギルドを後にした。

受付の少女が手を振って見送る。

「・・・ハァ、怖かった~!」

デジャヴ。

「昼間もそうだけどあの子なんなの⁉しかもドラゴンを三体も従魔って・・・。でも・・・楽しそうだったな。」


 そしていよいよバハムートのお待ちかね。

夕食の時間だ。

一同は屋外テラスが有名のレストランにやってきた。

ちなみに従魔OKである。

「タクマさん!ここの席が良さそうです!」

リーシャが選んだ席は水面に月が映り夜の海の景色がよく見えるいい席だった。

さっそく席に着き料理を頼み次々とテーブルに料理が並んだ。

「へぇ~、これが人間の料理・・・。」

リヴは人間の料理は初めてのようだ。

バハムートはもうすでに料理に食らいついていた。

「旦那すげぇ勢いやな・・・。」

「大分待たせちまったからな。」

その隣でリヴはぎこちない持ち方でフォークを料理に刺して一口で食べる。

「一口⁉」

「⁉」

料理を食べたリヴは驚いた。

「何これ⁉人間の料理ってこんなに美味しいの⁉」

出された料理のほとんどをリヴが平らげてしまった。

「主様!もっとないの?」

「まだ入るのか⁉ドラゴンの食欲は凄まじいな・・・。」

結局その晩はリヴに料理をごちそうする結果となった。

だが彼女が喜んでくれるのならそれで良かったと思うタクマだった。

 

 カリブル街付近の森林にて怪しい人影が三人。

その三人は黒いローブに身を包んだ信教者のような格好だった。

「計画の進行はどうだ?」

「それが少々誤算がありまして・・・。」

「誤算?一体何があった?」

信教者の一人が説明をする。

「アンクセラム王国の壊滅に失敗だと⁉」

「はい、リーダーの伝達によると先に侵入したリードから直接報告されたとのことです。」

「リードが言うのなら間違いないか。しかし奴が失敗するとは思えないのだが?」

「それが実はある人物が現れてから計画に支障が出始めたんです。」

「ある人物?」

「ドラゴンを従魔にしたテイマーです。」


 翌朝、タクマが目を覚ますと何やら身体がいつもより重かった。

(身体が重い。疲れが出てたのかな?)

次第に意識がはっきりしてくると布団が異様に膨らんでいた。

まさかと思い布団を上げると素っ裸でタクマの腹の上に頭を乗せ爆睡しているリヴがいた。

「うん、すっごく見たことある光景・・・。」

今回リーシャは来なかったが代わりにリヴがタクマのベッドに忍び込んでいた。

だが彼女の場合は意図的に入ってきたのだろう。

「起きろ。」

「ぎゃん⁉」

リヴの頭にチョップをして起こすタクマだった。


 さて、朝支度を終え一同は依頼の仕事・・・の前にやることが一つあった。

「リヴさんの服を買いましょう!」

商店街の前でリーシャにずいっと顔を詰め寄られる。

「いつまでも布を巻いただけの服装ではいつまた裸体が晒されるか分かったもんじゃありません!」

「お、おう?」

「私はこのままでもいいんだけど?」

「人の姿で過ごすときは最低限人間のマナーを守ってください‼」

めんどくさそうにふてくされるリヴに必死の表情で怒鳴るリーシャ。

「という訳でタクマさん!一緒に服屋に来てください!」

「え、何で俺も⁉」

「彼女の主として同行する義務もあります。さ、行きますよ!」

「えぇ~・・・。」

リーシャの勢いに乗せられ三人は商店街へと消えていった。

「・・・・我らはあそこの広場で待つとするか。」

「せやな。」

タクマ達は商店街の服屋に足を運び、リーシャがあれこれと服を選びリヴに試着させる。

心なしかリーシャが少し楽しんでいるように見えた。

リヴもまんざらでもなさそうだった。

一通り服を着せてみたはいいがやはり竜の姿に戻った時の事を考えるとなかなか買うことが出来なかった。

「いい服はたくさんあったんですけど変身時の事を考えると難しいですね・・・。」

リーシャも腕を組んで考え込む。

するとタクマは壁に貼られている一枚のチラシが目に止まった。

「従魔専門店?」

「従魔に関する物が一通りそろってるお店のようですね。」

「行ってみる価値大だな。」

三人はチラシにあった地図を頼りに専門店に足を運んだ。

店の前に到着するがその店は周りの店より若干貧相な佇まいだった。

「・・・ボロくない?」

「声に出すな。」

「誰もいませんね?すいませーん!どなたかいませんかー!」

リーシャが呼び掛けるが返事がない。

「留守か?」

「いえ、建物から人間の匂いがする。人がいるのは確かね。」

リヴは竜だから嗅覚が鋭いみたいだ。

「すいませーーーん‼誰かいませんかーーー‼」

聞こえなかったと思いリーシャが特段大声で叫んでリヴ共々耳が壊れかけた。

「耳が・・・。」

「子供の甲高い声は頭に響くな・・・。」

すると奥の部屋からのそのそと一人の女性が現れた。

「だ、誰よ・・・。せっかく集中してたのに・・・。」

出てきたのは髪を後ろに束ねた眼鏡をかけた女性だった。

「すみませんうちの連れが・・・。」

タクマ達はリヴ専用の服がないか女性に聞いてみる。

「へぇ珍しいね。人間に変身できる魔獣なんて。」

「あぁ、それでさっきも説明した通り服装の問題があってな。変身しても無事な服装を見繕ってほしいんだ。」

女性はリヴをマジマジと眺めしばらく考え込むと、

「いい・・・。」

「はい?」

「すっごくいいわ‼何この子⁉魔獣とは思えないほど可愛いしスタイルも抜群!しっかりした服を着せれば更に磨きがかかるわ‼」

リヴの整った容姿に大興奮の女性はリヴの腕を掴む。

「早速採寸しよう!こっち来て!」

「あ、ちょっと⁉」

そのままリヴを引っ張り奥の部屋へ消えていった。

「・・・え?」

完全取り残されたタクマはただ立ち尽くす。

「タクマさん見てください!おっきい首輪!」

「お前はブレねぇな・・・。」


 一方、街の噴水広場でタクマ達の帰りを待っているバハムートとウィンロス。

二頭は噴水の隣でただ座っているだけだが周りにはたくさんの人だかりが出来ていた。

「凄い存在感だな、ドラゴン・・・。」

「二頭にスカーフがついてる。誰かの従魔なのか⁉」

ざわざわと人だかりが増えてくる。

「えらい人集まってきたな。」

と言いながら噴水の水を飲む。

「気に留めるな。いちいち気にしていたら埒が明かぬ。我らは我らでただ主の帰りを待つのみよ。」

すると人混みの向こうから何かが近づいてくるのを感じた。

よく見るといかにも貴族が載っていそうな豪華な馬車がこちらにむかってくる。

馬車は広場の前に止まると御者が赤い絨毯を敷き、馬車のドアを開けた。

そして出てきたのは幼い令嬢だった。

「む?」

「何や?」

二頭が首をかしげていると幼い令嬢がつかつかと近寄ってくる。

「タクマという冒険者を知りませんこと?」


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