『幕間の外伝 魔大陸のその後』
タクマ達が空飛ぶ帆船で飛び去って数日後の事。
首都内の鍛冶屋で力強い鋼を打つ音が響いていた。
甲冑男と鍛冶師である。
「よし!出来たぞ!」
鍛冶師の男が金槌を置くと目の前には深紅のカブトムシ人間を彷彿とした鎧が出来上がっていたのだった。
「スゲェ!カブトだ!かっけぇ!」
そうはしゃぐ甲冑男。
「高位魔獣、レッドビートルの素材を使ったカブト装備だ。防御力は勿論、魔力も受け流すから相当頑丈だ。何より購入者希望のオーダーメイドだ!」
「ゴツそうな見た目だけど不自由なく動かせるし、流石ご主人だぜ!」
「ガハハ!俺も青臭い頃はカッコいい昆虫装備に憧れたものよ!」
そう笑い合う二人だがふと鍛冶師が少し寂しそうな表情になる。
「ご主人?」
「あぁ、すまねぇ・・・。三十年以上も一緒に居やこうもなるさ。・・・俺はお前のおかげで悔いのない全盛期を過ごせた。だからお前も、悔いのないよう生きろ!新たな主人と共にな!」
「っ!勿論!」
そうして互いに拳を突き合うのだった。
そこへ、
「ごめんくださーい!」
「お、来たな。」
鍛冶師が出迎えに出ると店内にいたのは、かつてタクマ達と共にフュリア王国を女神レーネの侵攻から守るため戦ったAランク冒険者パーティ。
『深紅の炎』のレオ、ルシア、セイゾウの三人であった。
いや、今は再上位のSランクパーティだ。
「準備は出来たぜ。ほら。」
奥から甲冑男が出てきてレオはカブト装備の彼を見て興奮気味に喜んだ。
「スゲェ!深紅のカブトだ!カッケェ。」
「同じこと言ってやがる。」
「ちょっとレオ。恥ずかしいからもう少し冷静になって。」
ルシアが顔を赤らめて注意するのだった。
「っ!アンタ、その左腕・・・!」
「あぁ、義手か?前にヘマしちまってな。しばらくはこれで活動してきたんだがそろそろ限界が近くてな。だから補うために君が必要なんだ。」
レオは手を差し出す。
「どうか、俺の相棒になってくれないか?」
甲冑男は鍛冶師を見ると彼は黙って頷く。
「勿論だ!よろしく頼む!」
そうして二人は固い握手を交わした。
「おい坊主。せっかくだ。コイツに新しい名前をやってくれ。」
「え?」
「コイツの新しい門出だ。相棒としての最初の仕事をしてくれ。」
鍛冶師に言われレオは甲冑男をジッと見つめる。
「う~ん。よし、決めた!アルマ。アルマってのはどうだ?」
「アルマ・・・。気に入ったぜ!」
「よろしくねアルマ!」
「良き旅にしようぞ。」
ルシアとセイゾウも受け入れ甲冑男改め、アルマは新しい仲間を得たのだった。
その頃、地底世界の地底湖で完全に沈んだ古代遺跡の中、稼働を停止していた機械のプレシオサウルスが再び起動し目覚めるのであった。




