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『第241章 空船発進』

地底世界から無事地上へ戻ったウィンロス達は甲冑男を追いかけてた鍛冶師の男性の下へやってきた。

甲冑男は気まずそうに腕を組む鍛冶師の前に立つ。

「ご主人、その・・・、すんません・・・。」

「全く、人様に迷惑かけやがって。ウチの馬鹿が迷惑をおかけした。連れ戻してくれて感謝する。」

そう言い自身と甲冑男の頭を下げさせ謝罪した。

「よう。久しいな。」

「ん?その身なり、夜襲じゃないか!お前生きてたのか⁉」

「いや死んださ。でなきゃスケルトンになんてならないだろ。」

そういえば夜襲は鍛冶師の男性と知り合いの様子だった。

「どういう関係なん?」

「この男とは生前共に冒険をした戦友だ。俺が死んだ後引退し、鍛冶師になったと聞いたが・・・。随分老けたじゃないか。」

「あたりめぇだ!あれから何十年経ってると思ってやがる!まあでも、骨でもいいからまたこうして会えて嬉しいぜ!」

笑顔で亡霊をバシバシ叩くのだった。

そして本題に戻る。

「ご主人、その、俺を手放すって話は・・・。」

「あぁ、俺はこの通りもう老いぼれのおっさんだ。お前を着て冒険なんてできる歳じゃない。俺が持ってても宝の持ち腐れだからな。」

「でも、俺を分解するって言ってたよな⁉なんで分解する必要があるんだよ!そもそも捨てなくったって一緒に暮らせばいいじゃないか!」

「・・・理由は何だ?」

亡霊が代わりに問うと、

「確かに分解するし手放すと言った。けどな、捨てるなんて誰が言った?」

「え?」

「お前は『鎧人(アーマノイド)』。意志を持つ鎧だ。鎧人(アーマノイド)にとって何より栄光な事は人に装備してもらう事。俺の所に居たってそんな栄光とは一生無縁だ。だから手放すんだ。俺の時代は終わり、お前は次世代の英雄の力になるんだ。」

「ご主人・・・。」

「それにな。実はお前を受け入れたいって言う威勢のいい若造がこの前ウチに来たのさ。人間の若造でな。なんでもSランクの冒険者らしいぞ?」

「Sランク⁉最高ランクの冒険者じゃない⁉」

同じ冒険者のイビルが驚愕する。

「手放す理由は分かった。分解というのは?」

再び亡霊が質問をすると、

「そんな英雄様の防具になるんだ。今のままじゃ性能面で時代遅れなんだよ。だから一度分解して、最高の鎧に作り直すのさ。他ならぬ俺の手でな。」

「じゃ、じゃあ全部、俺の早とちりだったってことか・・・?」

「そう言う事だ。馬鹿野郎が。」

そう言い甲冑男の腹を殴った。

「お前のおかげで俺は最高の人生を贈れた。これでも感謝してるんだ。だからこそ俺の手で、お前を生まれ変わらせたいんだ。俺にお前の門出を飾らせてくれ。相棒。」

今度は胸に拳を突きつけ二ッと笑う。

「っ!ご主人・・・!」

甲冑男も彼の手をぎゅっと握ったのだった。

「・・・これで本当に一件落着ね。」

「いやまだだ。例の件、報告に行くぞ。」


 イビル達はヴリトス達の下へ戻り手に入れた魔石を船の魔導エンジンに装填。

すると動力が起動し船体が宙に浮いたのだった。

「成功だ!」

技術班全員が歓喜の雄たけびを上げる。

「まさか娘達と一緒に動力源を見つけてくるとはね。」

「偶然会っただけだ。だがコイツ等がいなければ魔石を手に入れるのはもうしばらくかかっていただろう。」

「そうか。イビル、そしてウィンロスも。ありがとう。」

ウィンロスはリヴ達仲間からも褒め称えられる。

「お手柄じゃないウィンロス!」

「まあな!オレ等にかかればこんなもんよ!ほんで?そっちはどうなんや?」

「こっちもばっちりだ。アルセラもアーティファクトの力を十分使いこなせるようになった。」

「特訓に付き合ってくれたタクマ達もそうなんだが、何より()()()()()()()()()が具体的に教えてくれたおかげだ。」

「せっかく記憶が戻ったもの。皆の力になりたくて・・・。」

少し照れ臭そうに言うメルティナだった。

「何はともあれ、これで地神龍を追えるな。」

「時間が惜しい。魔王よ、すぐに出発の準備だ。」

「あぁ、すぐに船を出す!各自準備に入れ!」

「「はいっ‼」」

整備は既に済ませているため技術班が各自迅速に作業を進め、夕暮れには出航準備が完了した。

「皆、これから地神龍を追う。当然七天神、従神ジエトとの戦いになる。地神龍に加え神が相手だ。きっと俺達もただじゃ済まないだろう。それでも付いてくるか?」

「今更何言っとんのや。これまで奴等に喧嘩を売られるたびに返り討ってきたやろ。」

「そうよ!今度こそあのいけ好かない神をボコボコにしてやるんだから!」

「彼らは和国に向かっています。ラセンさんやスイレンさん、国の皆さんを守るためにも、必ず止めなければなりません。それに、私達は仲間です!ずっと一緒ですよ!」

リーシャの笑顔にタクマは思わず笑みを零す。

「私達も忘れるなよ。でなきゃ特訓して強くなった意味がない。」

アルセラも意気込みを見せた。

そして、創造神としての記憶が戻ったメルティナ・・・。

「メルティナ。」

「大丈夫。記憶が戻っても私の気持ちは変わらない。地神龍は必ず止める。そしてタクマ。どうか、ジエトを倒して!」

真っ直ぐ決意の眼差しを見せる彼女にタクマは頭を優しく撫でる。

「任せろ。」

そのままタクマは仲間たちの間を通り越して振り返り、全員の顔を伺った。

「それじゃ行くぞ!必ず神龍を止めるんだ!」

「「「おうっ‼」」」

一同は空飛ぶ帆船に乗り込み、ヴリトスが操舵を握る。

「これより、和国へ向かって出航する!皆、覚悟は良いな?」

同乗した魔王軍やイビルが雄たけびを上げる。

「帆を開け!翼を広げろ!魔導回路全開!いざ、和国へ!」

魔導エンジンが火を噴き船は力強く発進。

夕焼け空の大海原へと突き進んでいくのだった。

「覚悟しろよ、ジエト!」


 ・・・夕焼けの横日が照らす聖公国サンドリアス。

その国の一番高い見張り塔で二人の兵士が仕事をしており、一人がお茶を持ってきてくれた。

「ほれ。」

「おう、ありがとう。」

「しっかし前の親衛隊の連中、余計なことしたよな。」

「教皇様殺人冤罪の事件か?無理もないさ。教皇様が殺害されたなんて大事件も大事件さ。」

「前の親衛隊が全て降板された影響で下っ端の俺達にもこういった重要な仕事が回されるわけだ。おかげで毎日忙しい。まあ嫌な気はしないがな。」

「教皇様の名誉のためだ。頑張らないとな。」

頬を叩いて気合を入れ見張りの仕事を再開すると、ふと違和感を感じた。

「なんだ?」

「どうした?」

兵士が身を乗り出すと海が先程より荒れている事に気付いたのだ。

「さっきまで穏やかなさざ波だったのに。もしかして嵐でも近いのか?いや、そんな気候は感じないが・・・。」

不審に思い望遠の魔法陣で海を見渡す。

すると彼の目に映ったのは、()()()()()()()()()()()()()()()()

「な、何だあれは⁉」

「た、大陸が、泳いできてるだと⁉」

緑の結晶の背びれを有した大陸は真っ直ぐサンドリアスに迫ってくる。

兵士は急いで避難警報の汽笛を国中へと促す。

その音を聞きつけた教皇ヴィル・ホーエンとその孫娘、エレアも慌てて外へ出る。

「何事だ⁉」

大陸は岸に迫ると突如海が盛り上がり、水しぶきと共に巨大な前足が大地を踏みしめる。

海から上がってきたのは巨大な大地の龍『地神龍・ガイアデロス』であった。

地神龍は岸へと登り上がりサンドリアスを横切っていく。

そのあまりの巨大さに教皇とエレアは言葉を失っていた。

地響きと共に地神龍はサンドリアスを通り過ぎ、荒野へと進行していくのだった。

「あの方角には和国が・・・!お爺様!」

「すぐに和国の将軍へ連絡を!其国に危機が迫っていると伝えるのです!」

進行する地神龍の頭部には腕を組んで佇む神、ジエトの姿があったのだった。


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