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『第231章 自分との決着』

「決着をつけよう。ギ・ドラム!」

全ての記憶を取り戻し美しい天使へと覚醒したメルティナはギ・ドラムを指さす。

「~っ!ふざけんじゃねぇ!」

怒りのギ・ドラムがメルティナに飛び掛かる。

メルティナは大きな鍵の杖を装備しギ・ドラムの突進を受け止める。

「記憶が戻ったからなんだ!思い出したところでどのみちテメェ等に勝ち目はねぇ!」

竜の右腕で殴り飛ばし、左手で剣を構え突進する。

「それでも、私は諦めない!」

魔法壁を展開し攻撃を防ぎ反撃する。

「調子に乗るんじゃねぇぞ!『ディヴァインバイト』!」

紫の牙が突起しメルティナにけしかけた瞬間、彼女は突如元の少女の姿に戻ってかわしたのだ。

「何っ⁉」

メルティナには翡翠色のオーラが纏われている。

それはリーシャが杖先の従魔結石でサポートしていたからだ。

「仲間との想いが、力となる!メルティナさん!」

「ありがとう!リーシャ!」

再び天使の姿に変身しギ・ドラムの頬に強烈なパンチを食らわせた。

「チィッ!『D・レイザー』!」

盾の眼から放たれるホーミングレーザーを浮遊岩を利用して掻い潜りギ・ドラムの死角から鋭い蹴りを入れる。

「ぐはっ⁉コイツ!」

脚を掴むとメルティナは輝く翼で衝撃波を放ちギ・ドラムを吹っ飛ばす。

「テメェ、堕天のくせに!」

「確かに私は間違えた。私がここにいる事がなによりの証拠。でも、ここまで旅をして、たくさんの人たちと出会って、間違えてもやり直して頑張ってる人たちも沢山見てきた!だから私も過ちを受け入れ前に進む!それを教えてくれたタクマやリーシャ、支えてくれた仲間のために返す恩、私の成すべき事!」

鍵の杖を構え魔力弾を放つ。

ギ・ドラムはそれを弾き飛ばし剣を構えて急接近。

火花を散らしぶつかり合った瞬間、互いの武器が砕けてしまった。

「ハハハッ!テメェは私には勝てねぇよ!世の中は弱肉強食、強者こそが全てだぁ‼」

するとギ・ドラムは紫に渦巻く特大の魔力弾を生み出す。

「何あの技⁉」

「とてつもない魔力だ・・・!」

「逃げてメルティナー!」

リヴ達が呼び掛けるがメルティナとリーシャは真っ直ぐ前を向いていた。

「『ロスト・ビッグバン』‼」

放たれた巨大な魔力弾が迫ってくる。

「誰かに負けるのはいい。だけど、自分にだけは絶対に負けない‼」

その時、メルティナの右腕が翡翠色に輝き出しリーシャと動きがシンクロする。

『ビッグバンナックル‼』

輝く魔力を纏った拳を構え飛び出し、巨大魔力弾を打ち消す。

「っ‼」

「はあぁぁぁぁっ‼」

そのまま急接近しその拳をギ・ドラムに直撃させた。

「私はもう、自分自身から逃げない‼」

殴り飛ばされたギ・ドラムは浮遊岩を幾つも貫通し大きな浮遊岩に叩きつけられた。

土煙を掃うと元のヘルズ・ラルマへと進化が解けていた。

「やるじゃねぇか・・・!」

気息奄奄(きそくえんえん)の様子だがヘルズ・ラルマはまだ戦う気のようだ。

「こうなりゃとことんやり合おうぜ・・・!どっちが先に消えるかまでな・・・!」

その時、突然メルティナの眼が赤く発光し身体から白い霧が現れ女神の巨人へと形を造った。

「っ⁉」

白い霧の女神はヘルズ・ラルマを捕らえ口元へと運ぶ。

「おいテメェ!なにする気だ⁉おい⁉」

「メルティナさん⁉」

リーシャもメルティナの行動に理解が出来ないでいた。

女神の巨人はそのまま大きく口を開ける。

「やめろ、やめろぉぉぉ‼」

そしてヘルズ・ラルマは女神の巨人に喰われたのだった。

「・・・・・。」

リーシャが言葉を失っていると巨人は消え、メルティナの眼も元に戻ったのだった。


 「・・・・・っ!」

気が付くとヘルズ・ラルマは真っ白な空間に立っていた。

「・・・どういうことだ?()()()()()()()()()()()?」

振り返るとそこにはメルティナがニコニコした表情で立っていた。

「植え付けられたとはいえ、貴女ももう一人の私。そして、私の心の一部でもある。」

「・・・それだけか?てっきりお前の核を私が喰ったから私を取り込んだとばかり思ってたが?」

「それもあるけど、何だか助けたいと思っちゃって。」

気恥ずかしそうに頬をかくメルティナにヘルズ・ラルマは一瞬脱力する。

「助ける?私を?何狂ったこと言ってやがる。私は散々お前等を弄んできた存在だぞ?恐れられはすれど助けられる覚えなんてないぜ?」

「本当にそうかな?」

メルティナは歩み寄りヘルズ・ラルマの後ろに立つ。

「ずっと私の中にいたからかもしれないけど、貴女からは何処か寂しい感情がした。」

「寂しい?この私が寂しがってるって?はっ!馬鹿馬鹿しい。」

「誤魔化せないよ。だって貴女は私だもの。」

「・・・・・。」

ヘルズ・ラルマは黙りこくってしまう。

「・・・確かに、お前等が少し羨ましかったのかもしれねぇな。後付けされた存在だと言うのに、お前等の旅をずっと見てていつしか私もあの輪の中に入りたい、なんて思ってたのかもな。笑える話だぜ。」

「そんなことないよ。私も彼等と出会うまではあんなに楽しくて暖かい時間なんて味わったことなかった。その気持ちは貴女も感じてた。そうでしょ?」

「・・・それが私をまた取り込んだ理由か?」

「それだけじゃない。私はね、貴女も大事な仲間だと思ってる。」

「っ!」

「確かに貴女には沢山迷惑もされたけど、本当は私達に構って欲しかったんじゃないかな?生まれてからずっと、私の中で一人だったんだしさ。」

そこまで言われヘルズ・ラルマはまた黙ってしまう。

「貴女がどんな存在だろうと、私は貴女を拒んだりしない。貴女も私自身、同じメルティナなんだから。」

するとヘルズ・ラルマは呆れたようにため息をついた。

「とことんおめでたい頭してるな、お前は。・・・そこまで見透かされてるんじゃ、勝てるわけねぇわ。」

「え?今なんて?」

「なんでもねぇ。とにかく、今回はお前等の勝ちだ。弱肉強食、強者が全てだ。敗者の私は大人しく引き下がらせてもらうぜ。」

そう言い歩き出すヘルズ・ラルマ。

すると、

()()!」

メルティナに呼び止められた。

「これからもよろしくね!」

手を大きく振るメルティナにヘルズ・ラルマは思わす口角が上がり、手を上げて応え姿を消したのだった。


 決着がついたメルティナは地上へ降り立つとリーシャを初め、ようやく動けるまで回復したバハムート達も合流した。

「メルティナさん!」

リーシャはそのままメルティナを抱きしめた。

「終わったよリーシャ。皆も。」

「なんか大人な雰囲気、もしかして記憶が!」

「うん。全部思い出した。だけど記憶が戻っても私は私、皆の知ってるメルティナだよ。」

そう微笑むメルティナにリヴも溜まらず人化となり彼女を抱きしめた。

「っ!タクマ、見よ。」

頭上には三色の光の玉が浮遊している。

タクマが手をかざすと玉は引き寄せられタクマの体内に収まったのだった。

すると身体の調子も元通りになる。

「しかしお主には驚かされることが多いな。まさか我らの先祖、原初の龍を体内に宿しておったとは。」

「ずっと前から知ってた事だけどまさか本人らが出てくるとは思わなかったぜ。」

「この調子だとまだお主には何かあるのではなかろうな?」

訝しみの眼を向けられ眼を逸らすタクマ。

「まあよい。メルティナに関しても積もる話があるが、先を急ぐぞ。」

「あぁ。地上へ向かった過激派の魔族を追うぞ!行けるか?皆。」

「もち!」

「いけます!」

「私も戦えるようになった。私も皆の助けになりたい!」

「ははっ!心強いな。」

タクマ達はそのまま大穴の渦へ飛び込み地上へ向かうのだった。

だがもう一人、地上から大穴の渦へ飛び込む影があったことに気付いた者はいなかった。


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