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『第229章 運命の月』

バハムート達ですら手も足も出なかった原初の龍をいとも容易く打倒し、その魔核を喰らったヘルズ・ラルマは堕天使と竜の特徴を得た『ギ・ドラム』へと進化したのだった。

「そんな、ヘルズ・ラルマから更に進化なんて・・・!」

「ギ・ドラム。それが私の名前だ。」

バハムート達ドラゴンは原初との戦いで既に動ける状態ではない。

そこにヘルズ・ラルマ、ではなくギ・ドラムという更なる脅威が現れ絶望的な状況となってしまう。

「さて、完全に目覚めることが出来た事だし、派手に暴れるとするか。」

「そうはさせません。」

その場から去ろうとしたギ・ドラムを呼び止めたのはポーションで回復したリーシャだった。

「またお前か。前みたいに私の邪魔をするのか?」

「その前に聞きたいことがあります。貴女は何者でなんのために暴れまわるのですか?」

「・・・完全に目覚めたし、もう隠す必要もねぇな。私は創造神によって生み出された存在。なんでもこの世界を壊すためにとか言ってたな?」

「世界を壊す、だと?」

(やはりラウエルが関わっていたか・・・!)

「んで、創造神・・・、メンドクセェな。ラウエルは前任の創造神に私の種を植え付けたんだよ。途中何度か先に発芽してたが、今は違う。この地の魔力で私は完全に目覚めた!ここへ連れてきてくれて感謝するぜ。リーシャ。」

「ちょっと待って!前任の創造神に種を植え付けたって、アンタずっとメルティナの中にいたじゃない!」

リヴの問いにギ・ドラムはニヤリと笑い応える。

「なんだ?知らなかったのか?お前等の言うメルティナがラウエルに座を奪われた張本人、()()()()()()()()()()。」

衝撃の事実を告げられた全員が驚愕する。

「メルティナが、創造神・・・⁉」

その事実を知って驚いたのはカリドゥーンも同じだった。

(覚えのある気配がすると思っておったが、まさか()()()()()()()だったとは・・・!)

だがリーシャだけは至極冷静だった。

「特殊な魔力を持ってましたから薄々は気付いてましたが、確信しました。メルティナさんは記憶を失った後に私達と出会ったんですね。貴女が何者なのかはわかりました。貴女が暴れる理由は世界の破壊。ラウエルは貴女にメルティナさんの創った世界を壊させ、自分の世界に創り変えようとしているのですね。」

「ご明察だ。」

拍手を送るギ・ドラム。

「では、メルティナさんはどうしたんですか?」

「さあな。消えちまったんじゃねぇか?昆虫もそうだろ?寄生主を食って生まれる虫もいる。それと同じだろうな。ハハハ!」

するとリーシャが杖を強く握りしめる。

「どうして貴女達は、そう自分勝手で人の命を弄ぶのですか・・・!許せない・・・!メルティナさんの創ったこの美しい異世界を壊させはしない!貴方達の陰謀は、必ず打ち砕く‼」

激昂したリーシャは杖を構えオーラを放つ。

「丁度いい。ウォーミングアップがてら相手してやるよ。リーシャ!」

振り下ろされる竜首の右腕を杖で受け止めぶつかった衝撃波が辺りに吹き荒れる。

二人が戦っている隙に動けるまで回復したラルがバハムート達をタクマ達の元へ連れ戻す。

「ありがとうラル。」

「お姉ちゃん達も休んで。僕はリーシャの加勢に行くから。」

するとバハムートがラルを止めた。

「お主も全快しておらんだろう。それに、リーシャからは助太刀を求める気配が一切しない。おそらくあやつは一人でヘルズ・ラルマ、いや、ギ・ドラムと決着をつけるつもりだ。我らが割って入ったところで真の解決にはならぬだろう。」

「っ!リーシャ・・・。」

するとタクマが起き上がった。

「・・・ウィンロス、動けるか?」

「なんやタクマ?」

「何人かは先に地上へ向かってくれ。こうしている間にも過激派が地上を攻めている。魔王たちの加勢に行くんだ。」

「なら私も行こう。ここでは私は何の役にも立ちそうにない。ウィンロスと共に地上へ向かおう。」

「なら乗りぃや。アルセラ。」

アルセラがウィンロスに乗ろうとした時、魔鎖がウィンロスの首に巻き付かれたのだ。

「私も、行くわ・・・。」

「イビル⁉」

「お前まだ毒が残っとるやろ。安静にしときや。」

「もう動ける程度まで解毒してもらったわ。それにこれは私達魔族の問題、全て貴方達にゆだねるつもりもないわ。」

イビルの深紅の瞳からは覚悟が伺える。

それを見たウィンロスは、

「・・・分かった。乗りな。」

「ウィンロス・・・。」

「安心せい。オレが常に付いとくわ。それにまだグリガロン(アイツ)との決着もついてへんからな。・・・覚悟はできてんやな?イビル。」

イビルは力強く頷く。

「ほな行くで!」

イビルとアルセラを乗せウィンロスは飛翔する。

「このまま大穴に突っ込むで!しっかり掴まっときや!バンジーィィィ‼」

そうして三人は大穴の渦へ姿を消した。

見送ったタクマはゆっくり起き上がり戦うリーシャを見守るのだった。

「・・・リーシャ。」


 ギ・ドラムの猛攻を杖一本で捌くリーシャ。

するとギ・ドラムは左腕の竜の盾を構えると盾が半回転し備えていた剣が射出される。

リーシャが打ち返した剣を掴み取り剣技による猛攻へと切り替わる。

片手に剣、片手に竜の首。

一切の死角がない完全なる強者へと成り上がった。

「どうしたどうした!前より弱くなってねぇか?」

竜の腕で殴り飛ばされたリーシャは風魔法の応用で受け身を取る。

「違うか。私が強くなったんだな。ハハハハ‼」

(確かに攻撃が激しすぎて防ぐので精一杯。両手に武器、二刀流・・・、っ‼)

タクマの二刀流を思い出したリーシャは異空庫から()()()を取り出した。

「なんだ?そりゃ?」

「クーレスロッド。デビルカジノで手に入れた新しい杖です。」

しかしそのクーレスロッド、入手した時より形が変わっている事に気付く。

(杖の形が変わっている?()()()()()()()()()()()()・・・。)

違和感を覚えるが今はギ・ドラムとの戦闘に集中しなくては。

リーシャは両手に杖を構える二刀流となる。

「タクマの真似事か?両手に杖を持つ魔術師なんて聞いたことないぜ。」

「未知な分、対処が難しいかもしれませんよ?」

リーシャは二つの杖を構え攻め入りギ・ドラムも剣と竜を構え正面からぶつかり合う。

互いに一切隙の見せない猛攻。

リーシャは杖を一本投擲し魔術で操り、もう片方の杖で接近戦に持ち込む。

互いに手数は互角。

その時、

「『イグジスデリート』!」

竜の口に金色の黒炎が纏いリーシャに振り下ろされる。

咄嗟に回避するも炎の触れた個所が()()していたのだった。

「コイツに触れたら存在そのものが消えるぜ?」

(あれに触れたら一環の終わり!)

リーシャが距離を取ろうとすると、

「下がったな!『(ディ)・レイザー』!」

竜の盾の眼からレーザーが放たれ杖でガードするも弾き飛ばされてしまった。

(多種多様な技、それも全て高威力・・・!一瞬でも隙を見せるとギ・ドラムの餌食になってしまう!それでも・・・!)

杖を地面に突き刺し体勢を無理やり戻す。

「私は負けない!」

両手の杖を回し構え炎と風の魔法を放つ。

「『ジェットファイア』‼」

風魔法で炎魔法を加速させギ・ドラムに命中させた。

「チッ!杖が二本あるからこその合体魔法か。」

「まだです!アイシクル!」

今度は氷塊を生成し風魔法で撃ち出す。

「何度も同じ手を食らうか!」

剣で氷塊を切り裂くと中から液体が溢れ出た。

(何だこれは・・・!)

()()()()()()()()です!」

液体が発火しギ・ドラムのすぐそこで大爆発を起こした。

(いろんな魔法を組み合わせて作ってみましたが、上手くいきました!)

土煙が静かに蔓延するその時、煙の中から突然剣が投擲され咄嗟に回避行動をとるリーシャだが反応が一瞬遅れ脚を切られてしまった。

「あぁっ‼」

そこへギ・ドラムが迫り金色の黒炎を纏わせた竜の腕を振り下ろす。

寸前で魔法を放って身体を回転させ回避できたが脚の痛みで上手く着地出来ず倒れ込んでしまい、その後の追撃を避けれず思いっきり蹴り飛ばされてしまった。

「オエッ、ゲホッ!」

胃液を吐いてしまい咳き込むリーシャ。

「どんな小細工しようが私は倒せねぇよ。人智を越えた存在に人間ごときが敵うわけがない。」

歩み寄るギ・ドラムはニトログリセリンでボロボロになった剣を竜の腕で噛みついて研ぎ、金色の黒炎を纏わせた。

そして竜の口にも炎を纏わせる。

「もうお前等は用済みだ。だが名誉だろ?私という神を育てたんだからよ。」

「ハァ、ハァ・・・。」

「ま、一応感謝はしてやるよ。そんじゃ、あばよ!」

金色の黒炎を纏わせた竜の腕と剣をリーシャに振り下ろされる。

だが次の瞬間、ギ・ドラムの左肩から突然純白の翼が現れ彼女の動きが硬直した。

「っ‼」

「なっ⁉お、お前、消えたはずじゃ・・・⁉」

よく見るとギ・ドラムの左腕を取り押さえるメルティナの姿が見えた。

メルティナはリーシャを見て優しく微笑み、頷いた。

「・・・っ!」

彼女の真意を察したリーシャはゆっくり立ち上がる。

「分かりました。メルティナさん・・・!」

リーシャはクーレスロッドを構えると杖が開くように変形し、もう一つの杖を重ねるように突き刺す。

そして開いたパーツが閉じ固定され一本の槍へと合体した。

月神槍(げっしんそう)・ツクヨミ‼』

(私がクーレスロッドを手に入れたのは偶然なんかじゃない。私の魔力と杖が共鳴し相応しい姿へと変化した。運命の出会い!)

槍から蒼白い魔力が螺旋状に纏い凄まじいオーラがリーシャごと包み込む。

「この一撃を持って、貴女を八倒します‼」

「ほざけぇ‼『イグジスデリート』‼」

「『死滅の三日月(ミスティルクレセント)』‼」

二つの眩いオーラがぶつかり合い大地を震わせる。

「メルティナさんを、返してもらいます‼」

竜のアギトにヒビが入りリーシャの杖が懐に当たる。

そして杖と共に壁へ吹っ飛ばされ、メルティナがギ・ドラムの身体から分離したのだ。

倒れ落ちるメルティナをリーシャがギリギリで受け止める。

「メルティナさん!」

「・・・ずっと聞こえてたよ。リーシャの声が。」

「メルティナさん・・・‼」

涙目になり彼女をギュッと抱きしめる・・・。

すると突然メルティナがリーシャを突き飛ばした。

「うわっ⁉」

その直後、眼を疑う光景がリーシャの眼に映る。

背後から剣に貫かれ血を吐き出すメルティナを。

「え・・・?」

剣を放ったのは瓦礫を押し退けるギ・ドラムだった。

「余計なことしてくれたな。真っ先にお前を始末しとくんだったぜ。」


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