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『第227章 古龍対竜』

復活した原初の龍。

天龍王、雷帝王、海龍王がタクマ達に牙を向く。

襲い来る彼らをバハムートとリヴが相手をするが自分たちよりも遥かに格上の原初に苦戦を強いられていた。

「くっ、強すぎる・・・!」

(竜王の我ですら全力を出しても歯が立たんとは・・・!亡霊と言えど当時世界を支配した龍の力は健在という事か!)

ドラゴン達が戦っている頃、魔力過剰反応を発症してしまい動けないタクマはリーシャに支えられながらアルセラ達と合流していた。

「タクマ!」

気絶していたラルとメルティナは既に起きておりアルセラに状況説明をしてもらっていた所だった。

「タクマさん本来の魔力が器に収まりきらなくてパンク寸前なんです。」

「魔力無しの身体で生きてきたから器が小さいのか。しかしまさかタクマの体内にあんな強大なドラゴンが三体も潜んでいたとは・・・。」

「この人には沢山驚かされてきましたが・・・、あれは別次元です・・・。」

二足歩行型となり腕を得た天龍王の一撃がバハムートに直撃し、浮遊する岩にぶつかりながらクリスタルに叩きつけられる。

「おじ様!」

「おっさんの心配してる場合か?」

「っ!」

よそ見してしまった隙をつかれ、雷帝王の雷の蹴りをくらってしまいリヴもクリスタルに叩きつけられる。

「しばらく大人しくしててもらうわ。」

海龍王が口部に氷の魔力を溜め始める。

二頭を凍らせるつもりだ。

「ぐぅっ!」

ダメージを受けた直後では動けない。

絶対零度のブレスが二頭に放たれたその時、

『ロンギヌス‼』

突如強力な大技が横切り絶対零度のブレスをかき消した。

「何⁉」

技の中から現れたのはおんぶ紐でイビルを背負ったウィンロスだった。

ウィンロスはクリスタルに儂掴み壁に立つ。

「なんやねんあのドラゴン共!なんかオレ等にそっくりなんやけど⁉」

「原初の龍とかいう私達の先祖みたいなのよ。」

「先祖⁉んじゃあの黒い鳥がオレの先祖かいな⁉」

「誰が鳥だコラ。」

先祖と確信したウィンロスだった。

ダメージが落ち着いたバハムートとリヴは再び飛翔し、ウィンロスはアルセラ達の元へ降り立つ。

「悪いがイビルを頼むで。」

「イビルさん!どうしたんですかこれ⁉顔色凄く悪いですよ⁉」

「これでも応急処置してマシにした方や。コイツ致死性の超猛毒を患ってた事を隠してたんや。大分解毒はできたが危ない状態には変わりないで。」

「致死性の超猛毒って、まさかイビルさん・・・あのロシアンチェリー、ハズレを食べてたんですか⁉」

苦しそうな顔色でイビルは眼を逸らした。

「どうしてそのことを・・・!」

「・・・この国やお母さんのために尽くしてくれてる貴女達にこれ以上迷惑をかけたくなかった。隠しててごめん・・・。」

「イビルさん・・・。」

「悪いが後は頼むで。本能が疼くんや。あの三頭は絶対ぶっ飛ばさなアカンてな!」

そう言いウィンロスは勢いよく羽ばたいていった。

「ウィンロス・・・、一番大事な事伝え忘れてる・・・。」

「一番大事な事?」

イビルはゆっくり身体を起こす。

「早く地上に戻らないと。お父さんたちが危ない・・・!」


 一方地上では一斉に転移した過激派の魔族が首都ヴァンプローナを侵略しており、魔王軍が応戦していた。

しかしジエトの庇護で強化された過激派相手に魔王軍は苦戦を強いられていた。

「兵隊でこの強さなのか⁉」

「怯むな!竜王殿たちが戻るまで少しでも奴等を食い止めるんだ!」

魔王軍も奮闘しているが時間の問題だ。

魔王軍屈強な戦士も前線に出て過激派を薙ぎ払う。

しかしそんな彼らに更なる脅威が襲い掛かる。

過激派幹部、グリガロンの襲来だ。

「雑魚共は引っ込んでろ!」

竜の力で変身したオークドレイクの怪力で手斧を振り回し魔王軍の屈強な戦士をいともたやすくぶっ飛ばしてしまう。

「全軍突撃しろ!城に隠れる臆病者の魔王を討ち取れば軍の指揮は一気に崩れる!進め進めぇ!」

勢いに乗り過激派はどんどん魔王城へ進軍する。

(首都に住民が一人もいない。事前に避難させてたのか?なるほど、過激派との全面戦争をお望みか。舐めた真似してくれるじゃねぇか!)

グリガロンはデブ腹が大きくなるほど空気を吸い込む。

「『ノーズフレイム』‼」

そして思いっきり鼻から炎のブレスを噴射し大通りに炎が迸る。

「熱っ!全軍退け!」

指揮官の指示で後退する魔王軍。

「くそ!奴め、まだこれ程の力を!」

更に悪いことは続き、オルトの従魔ケルベロスとヴァンシーまでもが現れたのである。

突然の脅威に魔王軍は絶望に暮れるがその二体は何故か魔王軍に見向きもせず、建物の上を伝って真っ直ぐ魔王城へ向かっていったのだ。

「我らを相手にするまでもないという事か!」

指揮官は発光弾を打ち上げ城に構える魔王軍に伝達をする。

「敵接近の信号弾!警戒態勢‼」

そして次の瞬間、城門を破壊してケルベロスとヴァンシーが侵入してきた。

ケルベロスは城下の広場で魔王軍を相手にし、ヴァンシーはそのまま上昇し城の広い外廊下に降り立つ。

そこへぞろそろと兵士が出てくる。

「直接魔王様を狙う気か!絶対に城内に入れるな!必ず討ち取れ!」

攻撃を仕掛けようとした時、

「待て!」

突如魔王ヴリトスに止められた。

「ま、魔王様⁉何故ここに⁉」

「これ以上戦力を減らすわけにはいかない。君達は下の軍隊に加勢に向かってくれ。」

ヴリトスはマントを脱ぎ捨て細剣を手にする。

「あれの相手は私が受け持つ。行け!」

「・・・承知しました。どうかお気をつけて!」

そうして兵士たちはその場を後にしたのだった。

残ったヴリトスは細剣をヴァンシーに向けて構える。

「私の首が欲しいのだろう?だがそう易々とくれてやるつもりはない。覚悟するがいい、異形の者よ!」


 魔力を纏う天龍王とバハムートの二体が正面から力強くぶつかり合う。

そこへ海龍王が零線を放ちバハムートを凍らせる。

「うおぉぉ‼冬眠はさせへんでー!おらぁ!」

飛来したウィンロスが翼に光りを溜め海龍王に衝撃波を食らわせ怯ませる。

そして凍り付いたバハムートに迫る天龍王をリヴが阻止し、熱エネルギーで凍結を砕いたバハムートは海龍王に掴みかかった。

「よし!ん?おわっ⁉」

ウィンロスの後方から雷が放たれ寸前でかわす。

「俺とのチェイス中に他に構ってる余裕があるのか?」

角の間から雷を撃ってくる雷帝王の攻撃をかわしながらクリスタルの隙間を飛び回る二頭。

リヴは天龍王の首元に噛みつき共に地上へ落下。

噛みつくリヴを引き剥がし尻尾によるしなり打ちで更に殴り飛ばす。

そして熱戦を吐きリヴも咄嗟に水のブレスで相殺、が出来ず押し負け紙一重でかわした。

(なんて熱量・・・!おじ様のブレスの比じゃない!)

「なかなかやるではないか。どうした?かかってこい。」

ドラゴン達が大乱闘を繰り広げている中、タクマとイビルの治療に勤しむリーシャ達。

「アルセラさん、この解毒薬を。効くかはわかりませんが何もしないよりはマシです。」

「分かった。」

アルセラがイビルの看病をし、リーシャはタクマの体内に溢れる魔力を常時減らし続けていた。

(少しでもペースを遅らせると瞬く間に魔力が肉体を蝕んでしまう。)

タクマは苦しそうに唸る。

「絶対、助けますから!」

そんな彼女らを見ていたラルはバハムート達の方を向く。

「・・・おじさん達が苦戦してる。それほど相手が強いってことなの?」

「・・・見ての通りだろう。あの彼等ですらあの様子だ。ましてやオルトと繋がった影響で地底世界のマナと言うリソースを得ている。どれだけ戦っても相手は魔力が枯渇しない。長期戦になれば勝ち目は無くなる。早急に何とかしなければ。」

そう言うアルセラだが今はタクマとイビルの方が先決だ。

すると話を聞いたラルはしばらく考え込むとある案が閃く。

「・・・僕が何とかしてみるよ。」

「ラル?」

「確証って訳じゃないけど、うまくいけばおじさん達が勝てるかも!リーシャ!異空庫を開けて!」

訳が分からずだが言われた通り異空庫を開けラルが頭を突っ込む。

そして何かを取り出した。

「それは!」

「これを使えば・・・!」

取り出したものを持ってラルが飛び立とうとすると、

「わ、私も行く!」

突然メルティナがラルの背に飛び乗ったのだ。

「メルティナさん!危ないですよ!」

「・・・ごめんリーシャ。戦う力のない私はいつも皆に守られてばかり。そんな弱い自分がずっと嫌だった。でも、何も出来ないまま皆が傷つくのを見てるだけなんて、もう耐えられない・・・!」

メルティナはギュッと拳を握る。

「図々しいとはわかってる。でも、もう足手纏いでいるのは嫌だ!もうこれ以上、何も失いたくないの!」

「メルティナさん・・・。」

「・・・リーシャ。メルティナの気持ち、僕にもよくわかる。進化の力を得る前の僕も同じことを思ってた。だから分かるんだ。何も出来ない無力さが、どれだけ悔しいか。」

その気持ちはアルセラにもよく分かっていた。

だがリーシャの反応は、

「認めません・・・。」

「「「っ⁉」」」

「メルティナさんはか弱くて、すぐ私達が守ってあげないといけないくらい弱い。それは事実です。」

「おいリーシャ・・・!」

「ですが‼貴女の気持ちはよくわかります。戦える力が無くても、貴女は旅の中私達を励まし元気づけてくれました。だからもう、足手纏いなんて言わないでください!私達だって、貴女を失いたくないんです・・・!メルティナさんは私達の、とっても大切な仲間で、家族なんですから・・・!」

感情が溢れて涙目で訴えるリーシャ。

「・・・・・。」

三人は涙をふくリーシャの言葉に驚きを隠せないでいると、

「・・・行け。メルティナ。」

タクマが声をかけたのだ。

「タクマ!」

「お前の気持ちは分かった。だから一つ約束しろ。必ず、俺達の元に帰ってこい。」

弱々しくも微笑むタクマにメルティナはこみ上げる涙を拭き前を向く。

「お願い!ラル!」

「しっかり掴まってて!」

力強く羽ばたきラルとメルティナは低空飛行で飛翔していった。

見送ったタクマはバハムート達の方を見る。

(すまないが頼むぞ。皆・・・!)


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