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『第225章 因果激突』

気絶したリーシャを抱えるオルトとタクマの戦いは激しさを増すばかり。

リーシャを人質に捕られた現状大技を放つことが出来ないでいた。

すると突如オルトの攻撃が止まる。

「・・・いよいよ乗り出すのか。」

タクマも遠くの過激派の魔族の気配が次々と消えていくことに気付く。

(転移?いや、転移とは少し違う。)

「勝負はお預けだタクマ。まずは魔王の座を奪い、頂点に立った後にお前をぶっ倒してやるよ。」

オルトは懐から緑色の魔石を取り出し握り潰そうとした。

「お前を倒した後、この女は俺が貰う。王の妃として有効活用してやるからよ。」

「行かせるか!」

阻止しようと走り出すが間に合わない。

魔石に亀裂が入ったその時、気絶しているはずのリーシャが杖の先端で魔石を弾き飛ばしたのだ。

「「っ⁉」」

その直後、杖をオルトの腹部に押し当て風魔法の衝撃波で吹っ飛ばした。

「ぐはっ⁉テメェ、気絶してたはずじゃ⁉」

「えぇしてましたよ。ついさっきまでね。ですが、あんなに強く胸を掴まれたまま激しく戦ったら起きもしますよ!乙女の身体は敏感なんです!」

半ギレながら叫ぶリーシャはぷりぷり怒りながらタクマの元へ戻ってきた。

「リーシャ、良かった無事で・・・。」

するとリーシャは突然タクマの腕を掴み、自身の胸に触れさせた。

「え?」

「・・・よし!上書き完了です!」

「え⁇」

しばらくその小さな胸を触らせた後、リーシャは杖を持ち意気込みを見せた。

そしてタクマは困惑のあまり硬直していたのだった。

「貴方がタクマさんを恨んでる理由は知りませんが、言葉や行動からしてろくでもない人なのは間違いありませんね。どうせ身から出た錆なのにタクマさんに逆恨みしているんでしょう?」

(鋭い・・・。)

図星を突かれたオルトはわなわなと苛立ちが増している。

「どいつもこいつも俺をコケにしやがって・・・!もういい、タクマ諸共お前もぶっ潰す!」

オルトは剣を構え怒りの形相で迫ってきた。

「本当に話が通じませんねあの人。」

「理解しようとするだけ無駄だ。リーシャ、悪いが俺のいざこざに付き合ってくれるか?」

「何を言ってるんですか。私はタクマさんの仲間ですよ?勿論付き合います!」

可愛い笑顔で答えるリーシャにタクマは思わず笑みを零す。

「行くぜリーシャ!」

「はい!」

二人は互いに武器を構え走り出し、正面から迫るオルトの攻撃をタクマが受け止め背後からリーシャの風魔法が突風しオルトを吹き飛ばす。

飛ばされながらもオルトは火球のホーミングを放ち反撃。

二人は火球の雨を掻い潜りリーシャが杖を投擲しオルトの着地を妨害した。

体勢を立て直される前にタクマが猛スピードで走り一閃を繰り出しオルトは更に弾き飛ばされる。

だがオルトも受け身を取り再びタクマ目掛けて走り激しい剣技のぶつかり合いとなる。

三人の入り乱れる戦闘は空気を裂き、大地を抉っていく。

その時、三人の間に三つのブレスが放たれた。

「っ!ケルベロスか!」

森の奥から大ジャンプして現れたケルベロスとヴァンシーが乱入してきた。

「数は形勢逆転だな!今こそテメェをぶっ殺してやる!」

勢いの増したオルトの連撃に徐々に押されるタクマ。

(従魔が来たからと調子に乗り出したな。だが何より厄介なのはあのヴァンシーだ!)

ヴァンシーの音波を喰らったら動けなくなる。

そうなったら一方的に嬲り殺されてしまう。

しかしオルトとケルベロスも相手となるとヴァンシーを警戒しながら戦うのは正直厳しい。

そう思ってる矢先にヴァンシーが超音波を放ってきた。

オルトの剣を受け止めてる今避けきれない。

「アイシクル!」

リーシャが咄嗟に氷結生成した氷に超音波が相殺された。

「タクマさんはその人との戦いに集中してください!従魔の二体は私が対処します!」

「っ!わかった!任せるぜリーシャ!」

互いに目くばせし、リーシャはその場から離れた。

ケルベロスがブレスを放とうとするとリーシャが猛スピードで猛進する。

「タクマさんの邪魔はさせません!」

杖を投擲し口部の魔力黙りにぶつけ暴発させる。

そこへヴァンシーが超音波を放ちリーシャは回避と同時に杖を手元に戻し炎魔法で反撃。

幾つか直撃しヴァンシーは墜落する。

「っ!」

その瞬間、背後からのケルベロスの攻撃を受けてしまいリーシャは岩に叩きつけられる。

「ゲホッ!やっぱり魔獣を一度に二体相手をするのは無謀でしたか・・・。何か手は・・・。」

すると手元に何かが当たる。

それはオルトが持っていた緑色の魔石だった。

「これは、さっき弾き飛ばした魔石・・・?」

この魔石から感じる魔力はバハムートの使う転移の魔法に似ていることに気付くとリーシャは一つ閃いた。

そこへケルベロスとヴァンシーが迫ってくる。

「一か八か!」

リーシャは魔石を二つに砕き、杖で破片を撃ち飛ばす。

目の前で二体に魔石が当たるとその瞬間二体は光に包まれ何処かへ転移されたのだった。

「・・・はぁ~。」

気が解け脱力するリーシャ。

「ハッ!こうしちゃいられない!早くタクマさんの所に戻らないと!」

立ち上がろうとした時、バハムート達から念話が届く。

「・・・え?」


 リーシャが二体の相手に向かった直後、タクマとオルトは互いに攻防一体で一切隙の無い戦いをしていた。

「オルビス学園にいたころからお前の事は気に喰わなかったんだ!平民以下の身分のくせに教師や他の奴等からちやほやされやがって!お前なんかより俺の方が優れているのに!」

「確かにお前は生まれつき幸福だったさ。でもな、他人を見下し努力を棚に上げ天狗になってたお前じゃ全て持ってても宝の持ち腐れだ!本当に優れていたのなら今のお前にはなっていなかっただろうな!」

激しい一撃同士が二人の間を開かせる。

「分岐点なら幾つもあった。だがお前はその岐点の楽な道ばかりを選び続けた。その結果がこれだ。何がどうあれお前の人生に俺は関係ない。全てお前自身が招いた結果だ!」

タクマの言葉は至極正論だ。

だがひねくれたオルトにとっては火に油を注ぐこととなる。

「黙れ黙れ黙れ‼この世で正しいのは俺だ‼俺は何も間違ってねぇーーー‼」

逆恨みの怒りが臨界を越えオルトの右腕に炎が集束されていき、巨大な炎の巨腕となった。

「『イフリートハンド』!塵一つ残さずぶっ殺してやる‼」

己の限界を超えた火力量でオルト自身も焦げていく。

「・・・人間あぁはなりたくねぇな。」

あの火力を打ち消すにはそれ以上の火力が必要だ。

だが今のタクマが持てる技にあれを打ち消せる程の火力がない。

あるとすれば、

「シーナ。聞こえるか?」

『・・・何だい?』

自身に宿るシーナに声をかけた。

「一瞬だけでいい。黒炎を使わせてくれ。あの馬鹿げた魔力じゃこの辺り一帯が消し飛ぶ。当然俺やリーシャも無事じゃ済まないだろう。頼む。」

タクマの意思にシーナはしばらく黙り込むと、

『・・・いいよ。ただし私のアシストがあっての上だ。許容量を超えないよう制御させてもらうよ?』

「あぁ、構わない。ありがとう。」

タクマが眼を見開くと瞳が赤く変色し背中から黒炎の翼が噴き出す黒の竜化へと変化した。

「オルト、お前は救いようのないクズだが一つだけ感謝している。」

居合の構えを取りそのまま走り出す。

「タクマァァァァ‼」

炎の巨腕が空気を熱しながら振り下ろされる。

「・・・嫌味のつもりだったかもしれないけど、お前は最初学園で一人ぼっちだった俺に初めて声をかけてくれた。ありがとな。」

そう微笑んだタクマは居合を抜刀。

黒い一閃が炎の巨腕を切り裂き、剣を砕き、オルトに直撃したのだった。

斬られた巨腕は暴発しオルトが落ちてきた。

そしてタクマも黒炎の翼を羽ばたかせゆっくり降りてくる。

限界を超えた魔力を出したためオルトの身体はボロボロであり、もう戦える状態ではなかった。

こうしてタクマとオルトの因縁は決着がついたのだった。

「タクマさーん!」

合流したリーシャも無事そうだ。

「リーシャ!そっちも片付いたんだな。」

「いえそんな事よりも大変です!先ほどバハムートさん達から念話が届きまして、戦っていた過激派の魔族全てが突然消えたとのことです!」

「消えた?そういや戦闘中大量にあった魔力反応が次々と消えてたと思ったが?」

「なんでも転移先は地上かもしれないと言ってました!今あの軍勢がヴァンプローナに攻め込んだら・・・!」

流石に無事では済まず甚大な被害が出る可能性がある。

「急いで俺達も地上へ戻るぞ!」

「はい!バハムートさん達も既に入ってきた大洞窟へ向かってるそうです!」

「オーケー!最速で行く!」

タクマは再び雷の竜化となりリーシャをおぶった。

「身を屈めてしっかり捕まってろ。」

「はい!」

「行くぜ!」

雷のかぎ爪で地面を蹴り雷速の速度で駆け抜けるタクマとリーシャだった。


 その頃、タクマの精神世界に宿る故人シーナは活発化した黒炎を鎮静させていた。

「ふう。やっぱりこの力は応えるなぁ。・・・今の一瞬だけでもかなり魔力を消費してしまった。しばらくは動けそうにないな。・・・日々力が増してきている。このままじゃいずれ私でさえ手に負えなくなる可能性も。」

その時、突然シーナは大きな前足に押さえつけられてしまった。

「ぐっ⁉どういうつもりだ、天龍王!」

シーナを押さえつける原初の龍、天龍王。

「この時を待っていた。貴様が弱る瞬間を。」

「何?」

すると海龍王と雷帝王も姿を現す。

「この特殊な土地のおかげで十分な魔力を得られた。」

「後は外に出るだけね。」

「外にだと?思念隊のお前たちが現世に出られるわけないだろ!たちまち魔力の塵となって消えるぞ!」

「問題ない。丁度良いリソースも見つかった事だしな。貴様はそこで見ているがいい。我らが再び支配する世界を。」

「ま、待て!」

動けないシーナを無視し三頭は姿を消したのだった。

「まずい!アイツ等が外に出たら、タクマ・・・!」


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