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『第224章 うごめく闇』

逆恨み全開のオルトと戦うタクマの二人は気付かぬうちに根城から離れた森の中にいた。

だが二人はお構いなしに激しく戦い木々が次々となぎ倒されていく。

「進化した俺の魔法を見せてやる!フレイムホーミング!」

無数の火の玉を放ちタクマを追跡するように飛んできた。

(追尾型の魔法、確かにオルトは強くなってやがる。)

ホーミングを全て避けるがすかさずオルトは魔法を放ってくる。

「フレイムレーザー!」

今度は熱線を放ち、これもなんとか避けたが炎魔法の連続で辺りの木々に火がついてしまっている。

「ふん!」

水魔法で辺りの火を鎮火させる。

「環境破壊もお構いなしか。とことん俺しか見えてないようだな。」

このままこの場で戦っては周りに影響が出てしまうかもしれない。

タクマは背を向け走り出した。

「あぁ?逃げるのか!この腰抜けが!」

「言ってろ。だが地下の世界で引きこもってた臆病者には言われたくはないな。」

そう鼻で笑うと血管が浮き出るほどキレたオルトが追いかけてきた。

(よし引っかかった!)

そのままチェイスをしながら森の中を疾走し木々の無い広い岩場までやってきた。

「ここなら心置きなく大技をぶっ放せるぜ!」

「タクマぁ‼」

怒りのまま炎を纏った剣を振り下ろすオルト。

だがタクマは居合の構えを取り、抜刀。

「居合・水刃爆!」

水の一閃が描かれた直後、オルトの炎の剣が触れると水蒸気爆発が起き、オルトは吹っ飛ばされた。

「うおっ!」

態勢が崩れた隙を逃さずタクマが剣で突き飛ばす。

オルトは受け身を取りダメージを抑えたが武器に亀裂が入ったことに気付く。

「テメェ・・・!」

「成長してんのはお前だけじゃねぇんだよ。この広さならいけるな。」

そう言うとタクマは剣に雷を纏わせる。

髪は黄色へ変色し足に雷のかぎ爪を纏わせた雷の竜化へと変身した。

「一気に決めてやる!」

しかし当のオルトは秘策ありのような笑みを浮かべていた。

「調子に乗るなよ・・・。」

突如魔法陣を展開し手を突っ込むオルト。

そして引きずり出したのは・・・、

「っ⁉リーシャ⁉」

なんと気を失ったリーシャだった。


 数分前、過激派の魔族を掃討しているバハムートとリヴをグレイス・ド・ラルに乗って上空から様子を見るリーシャとメルティナ。

別の上空ではアルセラが飛行能力を持つ魔族たちと戦っている。

「バハムートさん達なら大丈夫なはずです。ラル!私達はアルセラさんの援護に・・・!」

その時、ラルの軌道を遮るかのように何かの影が横切る。

振り返ると大口を開けたヴァンシーが襲い掛かってきたのだ。

「きゃぁ⁉」

驚いたリーシャは咄嗟に杖を振り上げヴァンシーの不意打ちを防いだ。

「近づいてきた気配がなかった⁉リーシャ!コイツ危険だよ!」

ラルでさえヴァンシーの接近に気付かなかったらしい。

ゴーストのように浮遊するヴァンシーは見ての通り不気味さを醸し出していた。

「この魔獣がタクマさんの言っていたヴァンシー・・・。あれの叫び声を聞いてしまうとタクマさんでさえ動けなくなってしまう。メルティナさんは私の後ろに!」

リーシャとラルは相手の出方を伺っていると突如ヴァンシーが迫りその鋭い爪でリーシャを引っ掻く。

間一髪対処できたがヴァンシーの予測できない速さに驚かされる。

「速い!一瞬でも気を抜くとやられる!」

「二人はしっかり捕まってて!『ヘル・ブリザード』!」

ラルが広範囲の吹雪のブレスを放つがヴァンシーは理に反した動きですり抜けるように避け、気付けばリーシャの目の前にまで迫っていた。

「しまっ・・・!」

動いた時には既に遅く、至近距離でヴァンシーの叫びに当てられてしまったのだった。


 そして気を失った彼女をオルトが転移魔法を利用して引き寄せたのだ。

「コイツはお前の仲間なんだろ?どうだ?仲間を捕られた気分は?」

リーシャの胸を掴みながら嘲笑うオルトにタクマは怒りで額に血管が浮き出る。

「いいぜいいぜぇ、その顔だ!テメェのその顔ごとぶっ潰すのが最高なんだよ!」

(・・・本当に堕ちる所まで落ちたんだな、お前は。まあ昔から人としては落ちてたが。)

腰を低くし居合の構えを取るととてつもない怒気がタクマを覆い尽くす。

「ぶっ潰れるのはお前だ!オルト‼」


 各所でタクマ達が暴れている頃。

根城近くの地下洞窟を歩く一人の影。

夜襲の亡霊である。

彼は入り組んだ洞窟を進んで行くと緑色に輝く結晶が存在感を放つ空洞へやってきた。

「コイツか。」

巨大結晶に近づきしゃがんだその時、後ろから何者かに声をかけられた。

「このような場所で何をなさってるんですか?」

振り返るとそこには少女のような見た目をした少年が立っていた。

だが背には()()()()()()()()()()、神々しい杖を手に持つその姿はまさに、

「神か。」

「僕を一目見ただけで神と気付くんですね。」

「ジエトとかいう奴を既に見てるからな。」

「なるほど。彼も好き勝手やってるようですね。僕はジエトの同僚、セレスと申します。さて、話を戻しますが貴方は何用でここへ?」

「調べ物だ。古い友人の頼みでもあるからな。」

「それで、貴方はその巨大結晶をどうするつもりなんです?」

「・・・この結晶からは膨大な魔力が溢れてる。言わば高純度の魔力タンクだ。過激派の連中はコイツを利用して強くドーピングされてる。じゃあコイツを破壊すればどうなると思う?」

「・・・過激派の魔族は大きく弱体化するでしょう。その結晶を破壊するのが貴方の目的、いや、()()()()()()()()。」

「流石にそこまで読まれるか。・・・俺は魔王ヴリトスの旧友であり傭兵。魔王の依頼で過激派の魔力供給源を破壊するため忍び込んだスパイだ。アイツ(タクマ)等が派手に暴れてくれたおかげでここに忍び込むことが出来た。後はこの結晶を破壊するだけ・・・。」

その直後、夜襲の亡霊は目に見えない魔法に当てられバラバラに砕けてしまった。

「のうのうとしゃべっていたら撃ってくださいと言っているようなものですよ。」

夜襲の亡霊を始末したセレスは引き返していく途中、ふと違和感に覚える。

(・・・用心深いと聞く夜襲の亡霊がこうも容易くやられるとは思えない。)

振り返るが亡霊は骨の破片が散らばるバラバラ状態だ。

「まあどうでもいいでしょう。どのみち、()()()()()()()()()()()()()()()()。」

意味深な言葉を残しセレスは洞窟へ消えていった。

残された夜襲の亡霊の残骸。

その頭蓋骨の眼の奥では青い炎が燃えていたのだった。


 場所は変わり根城の地下に広がる遺跡空洞内にてグリガロン相手に戦うウィンロスとイビル。

竜の力を宿したオークドレイクとなったグリガロンの暴力的戦闘に初めは数有利に戦えていたウィンロス達だったが次第に動きを対処され始めてきた。

「心なしかこっちの攻撃が当たりづらくなってきてんけど?」

「私達の動きを読み始めてきてる。戦いが長引くと厄介よ。」

グリガロンは両手の手斧を投擲し二人が避けたタイミングを見計らい接近。

ウィンロスに体当たりし突き飛ばす。

「おわぁ⁉」

「ウィンロス!」

「よそ見はいけないぜ!」

見えない魔力の鎖で手斧を手繰り寄せイビルに振り下ろす。

軽快な動きで手斧をかわしたイビルは投げナイフを投げて反撃し、手斧でガードされた隙をつきグリガロンの股下を通り抜け魔鎖を足に絡みつかせる。

そして思いっきり鎖を引き転倒させた。

「この野郎、小賢しい真似を!」

「イビルがお前の馬鹿力に真っ向から勝てるわけないやろ。」

立て直ったウィンロスがグリガロンを鷲掴み上昇。

そして急降下し地面に叩きつけた。

「フリーフォール決まったで!こういうのは知恵のある奴が上手(うわて)やねん!」

ガッツポーズを決めるウィンロスだった。

しかしグリガロンは多少傷を負うもダメージを物ともせず立ち上がった。

「俺が馬鹿とでも言いたげだな?まああながち間違いではないが、鳥頭風情に言われたくはないな。」

「鳥ちゃうドラゴンや!」

クエーッとツッコむウィンロスだった。

「しっかしタフやなあのオーク。ドラゴンの肉体で強化されたのもあると思うが、なかなかに厄介や。次はどんな手で攻める?イビル。」

イビルに問うが彼女からの返答はなかった。

「イビル?どしたんや?」

気になり顔を覗き込むと、突然彼女は倒れてしまった。

「イビル⁉」

慌てて起こすと彼女の顔色が酷く悪かった。

「お前、どないしたんや?なして急に?」

「・・・さっきから妙に動きが悪いように見えたが、そういう事か。深紅のヴァンパイアともあろうものが毒に侵されてたとはな。」

「毒やと⁉いつんなもんを⁉」

思い当たる節は一つ。

デビルカジノで口にした致死毒のロシアンチェリー。

それを食べ賭けに勝利したのだが本当はハズレの猛毒を食べてしまっていたのだ。

しかし彼女は事が有利に進むようその事実を隠していたのだ。

「ごめんウィンロス・・・。前に食べた物がちょっと悪くて、でも心配しないで。私は大丈夫だから・・・。」

起き上がろうとするも胃液を吐き出してしまい酷く咳き込むイビル。

「無理や・・・。そんな状態で戦えるわけないやろ・・・!」

回復魔法をかけるが毒が強すぎるのかなかなか回復しない。

そんなことはお構いなしにグリガロンが手斧を持って歩み寄ってくる。

「一人離脱か?俺は全然かまわねぇぜ?」

手強いグリガロンが相手だ。

イビルを庇いながらこの狭い空間で戦うのは分が悪い。

イビルを抱きかかえ身構えるウィンロス。

その時、グリガロンが突然立ち止まった。

「・・・あ?何だこんな時に。何?今から決行するのか?」

誰かと話し始めるグリガロン。

何者かと念話しているようだ。

「チッ。いい所だったが上からの命令だ。勝負はお預けだぜ。」

「おい待て!どこ行く気や!」

「地上だ。もしまだ俺とやり合う気があるなら追いかけてきな。そん時は命令関係なしに相手してやるぜ。あばよ。」

懐から緑色の魔石を取り出し握り砕くとグリガロンはその場から消えたのだった。

「転移・・・。いや今はそれよりも!」

ウィンロスはイビルを抱え急いでその場を後にしたのだった。


 グリガロンが何処かへ転移した頃、地上の魔族たちも緑色の魔石を手にし、砕くと次々と転移して消えていった。

「何だ?」

戦っていたバハムートやアルセラも突然の出来事に理解が追い付いていない。

それはリヴも同じである。

「よくわからないけど、一先ずは助かったのかな?」

振り返るとリヴの後ろに気絶したグレイス・ド・ラルとメルティナが倒れていた。

「急に上から落ちてきた時はびっくりしたけど、こんな状況で気絶するなんて。絶対何者かの仕業よね。一先ず無事に守り切れてよかったわ。多勢に無勢だったもの・・・。」

だが一つ気がかりな事があった。

一緒にいたはずのリーシャがいない事だ。

「何処に行っちゃったの?リーシャ・・・。」

その時、ウィンロスから念話が送られてきた。

「旦那!そっちの魔族どもはどうなっとる?」

「ウィンロスか。奴らは突然魔石を砕き何処かへ消えた。見た所転移の類だと思われるが・・・。」

「こっちも相手してたグリガロンが同じように消えたんや。地上に行く言うてたで。」

「何だと⁉」

「っ‼」

他のメンバーも焦りの表情を見せる。

守りを固めているとはいえ魔王陣営だけではあれほどの数の過激派を守り切るのは時間の問題。

急ぎ奴等を追い地上へ向かわなくては・・・。

「タクマはどうした?」

「それがさっきから念話飛ばしてんけど繋がらへんねん!」

「それほど向こうの戦いが激しいという事か。」

「こっちはイビルが大変な事になっとる。オレはコイツをどうにかしてから向かうさかい先行っとってや!」

「イビルが?それはどういう・・・?」

返答の間もなく念話が途切れた。

「向こうも何かあったみたいだが今は地上へ向かうが最優先だ。動けるものは二人を背負え。我らがやってきた洞窟の出入り口へ向かうぞ!」

バハムートを初め、アルセラとラル達を乗せるリヴは自分たちが地底世界へやってきた出入り口の洞窟へと向かうのだった。

だがその道中、気絶したメルティナの奥底から深い心音が鳴っていたのだった。

『・・・そろそろだな。』


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