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『第221章 過激派の真相』

 デビルカジノから戻ったリーシャ達はヴァンプローナの大図書館で様々な文献に眼を通していた。

「リーシャ!見て!美味しそうなケーキのレシピ本!」

「リヴさん・・・、真面目にやってください。」

リーシャは魔大陸の歴史について調べていた。

過激派が何故同族の魔族と敵対しているのかを知るためだ。

(理由を知ればこの問題を解決する糸口が見つかるはず。そしてイビルさんのお母さんについても・・・!)

文献を調べていくうちに過激派について徐々に解ってきた。

まず魔族とは大昔に滅んだ悪魔族の遠い子孫であった。

滅んだ悪魔族の残留魔力から数千年の月日を用いて今の魔族が誕生したらしい。

(悪魔族、以前カリブル街近辺で邪教団によって蘇らせられたあの怪物・・・。そう言えばイビルさんが言ってたっけ?過激派は古の呪縛に囚われ続ける哀れな同族と・・・。)

そこへ丁度イビルが後ろを通りかかったので直接本人に聞いてみた。

「言葉通りの意味よ。偉大な祖先と思い込み悪魔族の悪逆非道な習わしを再現しているつもりなのよ。何が『魔族は魔族らしく力でねじ伏せるのだ!』よ。私達は他の種族と同じく平和に暮らしたいだけなのに・・・。」

「確かにこのまま彼らを野放しにしてたら他国との戦争の引き金になりかねませんね。」

「むしろそれが狙いの可能性もあるわ。ホント迷惑ったらありゃしない。だから過激派に与する輩は徹底的に叩き潰す。例え命を奪ってでも!」

イビルの決意は固く深紅の瞳からも殺意がにじみ出ていた。

(命を奪う、か。確かにそうせざるを得ないのかもしれませんが、敵対していたとしても救える命があるのなら、私は迷わずそっちを選ぶかもしれない・・・。)

そう思い自身の手を見つめるリーシャだった。

「ん?バハムート、ちょっとこれを見てくれ。」

「どうした?」

アルセラが見つけた本には壁画のような絵柄で五体の竜が描かれている。

その内の二体には見覚えがあったのだ。

「これは、神龍!この羽衣のように纏う鱗粉、間違いない。」

「そしてこの巨大な翼と四本の腕を持つ三つ首の龍、これは和国の地下で結晶に封じられてた龍に似てないか?」

「似てると言うがまさにそやつだ。確か名はアジ・ダハーカと言ったな。よもや神龍に関する文献をここで見つけるとは・・・。」

「気になるのはこのページだ。」

パラパラとページをめくるとこの魔大陸に神龍が眠っている可能性があると綴られていたのだ。

「この地に神龍が⁉」

「今思い出したんだが、過激派の根城を襲撃した際、地下に沢山の魔族の遺体があっただろ?そしてこれまで神龍の復活には大勢の命が糧とされてきた。もしかすると・・・。」

「・・・神龍は一体でも世界を覆す程の力を有する。それがあのような連中に利用されれば取り返しのつかぬ事態になりかねん。」

「時は一刻を争うかもしれない。この事を魔王にも知らせないと!」

アルセラが立ち上がるとベストなタイミングで魔王が大図書館にやってきたのだ。

「皆ここにいたのか!」

「ヴリトスさん!」

何やら急いできたかのように息が少し荒かった。

そして父親である魔王が来たことでイビルの表情が少々鋭くなる。

「何用だ魔王?」

「実はつい先ほど、首都の医療施設にタクマとウィンロスが搬送されてきたんだ。」

「「「っ⁉」」」

「タクマさんとウィンロスが⁉」

ダンジョンではぐれてから音沙汰が無かったが二人が無事だったことにリーシャ達は安堵した。

しかし、

「二人は無事なのか?」

「我が魔王軍が巡回の帰りに泉で倒れていた二人を保護したんだが、二人とも酷く疲弊して弱ってたんだ。特にタクマは内側的な重傷で非常に危険な状態だ・・・。」

そこまで聞いたリーシャとリヴが慌てて図書館を飛び出した。

二人を追うようにバハムート達も医療施設へ向かう。

現場に着くと処置をされ横たわるタクマとウィンロスを発見した。

「タクマさん!」

「主様!」

二人が彼の下に駆け寄るも依然タクマの意識は途絶えたままだ。

「大丈夫です。バイタルも徐々に安定してきてるので定期的に治癒魔法をかけ続ければ直に目を覚まされるでしょう。」

医師の言葉に一先ず落ち着く二人だった。

「あの~、オレの心配は?」

「む。お主は起きておったか、ウィンロス。」

「ついさっきや。」

ウィンロスも弱ってはいるがいつも通りの彼で安心した一同だった。

するとバハムートはウィンロスの違和感に気付く。

「ん?お主、従魔契約が切れかけているではないか?」

バハムートの言葉にリーシャ達が驚く。

「マジで?・・・あ~、となるとあの時か。あれくらいしか思い当たる節がないで。」

「・・・何があった?」

「それが・・・。」

「そこからは俺が話す。」

突如タクマが意識を取り戻し弱々しくも起き上がった。

「タクマさん!」

「無理するな。まだ身体が癒えてないんだぞ?」

「大丈夫だアルセラ。皆も心配かけたな。」

「それで、話とは何だ?」

「・・・あぁ。全て話すよ。俺達が見てきた全てを。」

タクマは話した。

地底世界の事やそこにたむろう過激派の魔族。

そこで望まぬ再会をしたかつての同級生と従神、そして・・・、

「ニーズヘッグ・・・!」

バハムートの表情が急に険しくなる。

「地底世界、まさか過激派がそんな所に潜んでたなんて・・・。お父さんは知ってた?」

「いや、地底世界の事は都市伝説程度でしか知り得なかったが、まさかそれが実在しそこに奴らの本拠地があったとはな。」

「しかもオルトはヴァンシーっていう得体の知れない魔獣を従魔にしていた。そいつのせいで俺はこんな状態なんだ。」

「ヴァンシー、その魔声で死を呼ぶ精霊の類。そのような者が向こうについてるとなると厄介だ。」

「はい。タクマさんですらここまで弱らせてしまうのですから・・・。」

「だが脅威はそれだけではない。あのオルトとかいう愚か者はウィンロスの従魔契約を無理やり上書きしてこようとした。その術は我らにとってもかなり危険である。あのような者がそれほどの力を扱えるとは到底思えんが。」

「・・・ジエトがいた。おそらく奴の仕業だ。」

過激派の存在は従神ジエトの存在が大きいだろう。

「・・・大分話が繋がったな。」

まとめると、過激派の魔族は祖先悪魔族を装い暴れまわり、その裏には従神ジエトが潜んでいた。

過激派を束ねるオルトとその従魔ヴァンシー。

そしてニーズヘッグ。

「・・・タクマ、恐らく従神ジエトは、この地に眠る神龍を目覚めさせるつもりやもしれん。」

「神龍⁉」

「うむ。先ほど文献で得た情報だ。これまでの奴らの行動などを照らし合わせるとその可能性に合点がいく。奴にとって過激派は(てい)のいい駒なのだろう。」

神龍を知らないイビルと魔王にリーシャ達が軽く説明をする。

「そんな存在が過激派の手に渡ったら・・・!」

「一大事です。タクマさん!どうにかしてその目的を阻止しませんと!以前までのように沢山の犠牲者が出てしまいます!」

「勿論そのつもりだ。このまま奴らの好きにはさせない!」

起き上がろうとするも怪我の痛みで悶えるタクマ。

「しばらくは安静が必要だな。私は城に戻ってこの事を会議に出す。恐らく過激派との全面戦争になるやもしれない。話がまとまるまで君達は待っててくれ。」

そう言い残し魔王はその場を後にした。

「戦争、か。」

「だがどのみち奴等を放ってはおけん。神龍の復活は決してさせてはならん。」

「あぁ。そのためにも早く身体を治さねぇと。あいてて・・・!」

事が急に動き出し、まだ状況の整理が出来てないイビル。

「ママを探すのは少しお預けかもね。」

「リヴ、・・・大丈夫よ。お母さんは生きてる可能性があるって知れた。それだけでも十分希望になるわ。過激派は潰さなくちゃいけない。この国の未来のためにも。」

イビル、リヴ、リーシャの三人は力強く頷いた。

その時、突然タクマが意識を失ったかのようにバタリとベッドに倒れ込んだ。

「タクマさん⁉」

「わりぃ、()()()()()()()()。しばらく寝る。」

次第に眠気が増し、徐々に意識が薄れていく。

(地底世界に入った時から妙に身体が変な感じがする。土地特有の魔力に当たられたか?いずれにせよ、早く治さねぇと、な・・・。)

眠りについたタクマ。

だがそんな彼の内で密かに脈動する三つの灯が不吉な笑みを浮かべていたのだった。

『・・・もうすぐだ。』


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