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『第218章 歪』

バハムート達がデビルカジノで情報収集をしている頃。

ダンジョン『クリスタルドーム』ではぐれたタクマとウィンロスは、未だに洞窟内を彷徨っていた。

「あ~・・・、いつになったら出られんねん。トラップに引っかかりまくるわ魔獣が襲ってくるわもう散々やで。」

愚痴りながら自身に刺さった矢を引っこ抜くウィンロス。

幸い魔獣は生息しているため食料には困らないでいるが。

「早いとこ出たい所だが土地のせいか魔法の発動が微妙に悪い。あまり魔法やスキルに頼る事は出来ないからな。」

「せやけど上に向かうどころかトラップに引っかかりまくって下ってへんか?もう何回も落っこちたで?」

「もういっそ壁を掘るか?」

「落盤で生き埋めは勘弁やで。ここ地盤緩いし。」

タクマはむむむと腕を組む。

「よし!もう一度直感で行くか。こっちだ。」

「ちょい待てい!そう言って選んだルート全部トラップやねん!お前に任せたらロクな目に合わへんわ!こっちや!」

半ば強引に反対側のルートへ引き釣り込まれるが、

「ああぁぁぁ違ったぁぁぁ⁉」

案の定トラップに引っかかり思いっきり回転しながら二人は坂を転がり落ちていった。

「だぁくそぉ‼こんな調子じゃ一生出られへんわ!」

キレ気味にクェーッと叫ぶウィンロス。

するとタクマは今までとは異なる空気感に気が付いた。

「何だ?この微量な魔力は?」

その微量な魔力を辿っていくと地面に大きな穴が空いており、それを獲り囲うように施された装置のようなものが置かれた広い空洞に出たのだ。

「何だここは?こんな洞窟の奥深くにこんな物が?」

明らかに場違いな場所に戸惑う二人。

見たことない技術で作られているがかなり古かった。

「これは何百年も経ってるな。でも魔大陸にこれほどの技術力があるとは知らなかったが・・・?」

「察する辺り、古代文明的な奴ちゃうか?」

「となると歴史的発見だな。不幸中の幸いか?」

そんな事を話しながら調べを進め、大穴の中を覗いてみた。

「深いな。落ちたら一環の終わりだなこりゃ。」

「ん?何やこれ?」

ウィンロスがふと気になったタッチパネルに触れた途端、起動音と共に装置が動き出したのだ。

「お前何した⁉」

「いや軽く触っただけやで!」

「いやダメだろ!」

すると起動した装置により大穴に光る魔力の渦が現れた。

「何が起きてるんだ?」

見るからにヤバそうな雰囲気だ。

引き返そうとしたその時、起動の振動でか後ろの方で地鳴りが響き、入口が落盤で塞がってしまった。

「嘘やろ⁉これじゃ帰れへんやん⁉」

退路を塞がれ完全に閉じ込められてしまった。

「・・・いや、まだ退路はある。」

そう言いタクマは大穴の渦の方を見た。

「おいおい、まさかとは思うが・・・?」

「そのまさかだ。」

「こんな得体の知れない穴に突っ込むつもりかいな⁉ヘタすりゃオレ等おしまいやで⁉」

「でも他に道はない。このまま生き埋めになるか、一か八か賭けるか、答えは明白だろ。」

そう笑うタクマにウィンロスはぐぎぎと歯を食い縛る。

そして、

「あーはいはいわーったよ!俺は従魔や!主人の命令は絶対や!」

「そう言ってくれると思った。」

「ほんま信じるで⁉」

「安心しろ。テイマーと従魔は、一蓮托生だ!」

そう叫びタクマは大穴の渦へダイブした。

「こうなったらヤケクソや!バンジーィィィ‼」

続いてウィンロスも飛び降り二人が渦に消えた後、渦は消滅し元の静寂な空洞へと戻ったのだった。


 「十四番。」

夜襲の亡霊が指定したカードをめくり、ミニゲームを容易くクリアし星を獲得した。

星の数はバハムート陣営を多く上回っている。

「ほぼ全てのミニゲームをアウトも取らずに一人でクリアするなんて、あの人とても強いですよ。」

指定されるミニゲームは毎ゲームランダムに選ばれる。

それをいとも容易くスタイリッシュに決めていくあたり、やはり侮れない相手だった。

「どうする?星の数は向こうが多い。カードの残り枚数も考えてそう簡単に巻き返すのは難しいぞ。」

アルセラの言う通り、カードの数は半分を切っている。

このまままともに続けていては勝ち目はない。

バハムートは向かいに佇む夜襲の亡霊を見る。

(このゲームはそう単純ではない。それに奴はゲームの初めにこう言った。ゲームの本質を知れ、と。)

バハムートは互いに入手したカードを見直す。

(一見星の数を奪い合うゲームに見えるが、本質はそうじゃない。これは、()()()()()()()()()()()()()()()()()で勝敗を分ける!)

ゲームの本質を理解したバハムートの目つきが一気に変わる。

「皆、絶対にクリアをしてくれ。行くぞ!八番!」

引いたカードは星が五つも付いた高難易度のミニゲームだった。

「星五⁉」

夜襲の亡霊が一瞬眉を引きつらせたのをバハムートは見逃さなかった。

(やはりこれは奴にとっても得意なゲームだったか。そしてこの星の数、絶対に奪われてはならん。)

ゲーム内容は単純な魔獣の討伐。

しかしその魔獣のレベルが段違いに強かった。

「ここは私に行かせてもらおう。」

名乗り出たのはドレスから普段着に着替えたアルセラだった。

ディーラーリベルの合図で魔獣が放たれ、それは巨大な異形の蟹だった。

「ディザスタークラブ。魔大陸でもとてつもない被害をもたらす危険な魔獣よ。」

「アルセラさん!気を付けて!」

外野の声援に腕を上げ応える。

「なかなかの強敵だ。行くぞ、カリドゥーン!」

『おうさ!』

勢いよく飛び出し鋭い一閃を皮切りに始める激しい戦闘。

蟹の魔獣はかなり強敵だがアルセラもこれまでの旅でとてつもなく成長している。

多少は手こずるも難なく倒すことが出来たのだった。

「ふう・・・。」

「お疲れ様です!アルセラさん!」

「あぁ!」

リーシャとアルセラはハイタッチをした。

「どうだ?我らの仲間はなかなかだろう?」

「あぁ、よく鍛えられている。」

アルセラのおかげで星を五つも獲得でき、夜襲の亡霊と並んだ。

「これで逆転に追いついたぞ。」

カードは残り六枚。

このままバハムートが二枚高得点のカードを当てられれば勝機は十分ある。

問題は相手の得意なゲームと星の多いミニゲームを如何に奪えるか。

「十一番!」

リベルがカードをめくると、髑髏が描かれた禍々しい絵を引いた。

「何だこれは?」

その異様な絵から不穏な空気を感じれる。

「ジョーカーだな。それをクリアすればポイント関係なしに即勝利できる、まさに切り札のカード。ただし、その難易度は尋常でない程難しく危険。下手をすれば死人が出るかもな。」

「なんだと・・・?」

クリアすれば即勝利となるがデメリットがあまりにも大きい。

そして引き当ててしまった以上プレイしなくてはならないが、

「・・・パスだ。」

「バハムートさん⁉」

流石に誰かを犠牲にすることは出来ず、やむなしのパスを宣言した。

「では手番は亡霊殿に移ります。」

「クリアしないのか?なら残りは貰うぞ。」

あっという間に三枚のカードをめくりミニゲームをクリア。

星の数も圧倒的な差がついてしまった。

手番が再び移るが残りカードは三枚。

そのうち一枚はジョーカーカード。

もう後がない。

「バハムートさん!残り三枚全てクリアしませんと!」

(確かに、もはや星の数で勝つことは不可能だ。であれば・・・。)

バハムートはジョーカーカードを見つめる。

(賭けるしかあるまい!)

「全てのカードを獲る!頼むぞ!」

「はい!」

「任せろ!」

三人の気迫にずっと見ていたイビルは困惑していた。

(何で?仲間が死ぬかもしれないのに・・・、それほど仲間を信じてるって事?信じる・・・。)

イビルは父親である魔王を思い出す。

(お父さんは、心の中ではまだお母さんを・・・。)

「九番!」

ミニゲームをクリア。

「十五番!」

ミニゲームをクリア。

残りは、

「・・・ジョーカー。」

死ぬ可能性がある最後のカード。

「行くぞ。十一番!」

ジョーカーを引き当てる。

(これをクリアせねば、勝てない・・・!)

「リベルさん、このミニゲームは?」

「ご説明しますね。こちらはある食材を食べていただきます。その食材はロシアンチェリー。二粒の内どちらかが致死性の超猛毒であり、代表者がそのどちらか一粒を食べていただきます。」

「じゃぁ、もしハズレを引いたら・・・?」

「その人は残念ながら。」

究極の二択ゲーム。

誰が出るかで相談していると、

「私が出るわ。」

なんとイビルが名乗り出たのだ。

「イビルさん⁉」

「私なら万が一が起きても大丈夫。吸血鬼はそう簡単に死なないから。」

「でも・・・。」

「お願い、私を信じて。」

彼女の覚悟は固いようだ。

「・・・分かった。お主を信じるぞ。」

「ありがとう。」

目の前に毒々しい紫のさくらんぼ、ロシアンチェリーが出される。

リーシャがギュッと祈る緊張な空気の中、チェリーを一粒手に取り口に入れた。

しばらくの沈黙が続き、そして・・・、凄いドヤ顔でグッと親指を立てた。

「や、やったぁ‼」

歓喜したリーシャがイビルに抱き着いた。

バハムートとアルセラも安心して胸を撫で下ろす。

「ジョーカーをクリアしたぞ。」

「えぇ、この勝負、竜王様たちの勝利でございます!」

審判が下りバハムート達の勝利が決まったのだった。

それに夜襲の亡霊が拍手を送っていた。

「俺の負けだ。」


 バハムート達の勝利により賭けの情報を夜襲の亡霊から聞かされる一同。

「・・・では、それがお主等過激派の目的だと言うのか?」

「あぁ、俺は雇われの身だから全てを知っている訳じゃないが。」

「十分だ。例を言う。()()()()()も知れた事だからな。」

「ふっ。」

その話はリーシャ達も聞いており、イビルは目を見開いていた。

「貴方がそっちにいる理由は分かったわ。・・・もう一つの駆けの情報は?」

二つ目はイビルの母親についての情報だ。

「・・・あまり期待はするな。お前の母親は数年前に消えたと聞いた。俺も当時その事件に携わっていたがその遺体は何処を探しても見つからなかった。アイツは絶望に撃ち死枯れ諦めてしまったが、その後独自で俺が調べた結果ある可能性を得た。」

「可能性?」

亡霊の話ではこの地で生命がその命を終えればその身に宿った魔力は大地、マナへ還ると言う。

生命が死ねばその分マナの増減が微量ながら現れると言うが、彼の調べではそのような現象は起きていなかったらしい。

「て、事はつまり・・・。」

「死んでいない。お前の母親はまだ生きてる可能性があるってことだ。」

その事実を知ったイビルは膝をつき涙を流した。

「確実性はない。だがお前にとっては少なくとも、これ以上ない情報だろう。」

「お母さん・・・!」

事件当時に術式の炎に飲まれ消えたと思っていた母がまだ生きているかもしれない。

その事実にイビルは希望を抱いた。

「今も生きてるとは限らないぞ?」

「それでも、私は信じる!お母さんは生きてるって!」

彼女の決意に満ちた瞳を見た夜襲の亡霊は小さなため息をついた。

「その眼、昔の魔王(アイツ)にそっくりだな。」

「え?何か言った?」

「気のせいだ。さて、俺はさっさとずらかる。次会う時はまた敵同士だろう。だが、お前たちの未来に賭けてみるのも面白そうだ。」

「それはどういう?」

「じゃぁな。」

アルセラの返答を聞かずに亡霊は暗闇の奥へ消えていったのだった。

「良かったですね。イビルさん。」

「うん・・・!」

「ではヴァンプローナに戻るぞ。この事を魔王にも話さねばならぬからな。」

「カジノも楽しめたし、成果は申し分なしだな。あとはタクマ達の安否だが・・・。」

それを思い出しアルセラとバハムートは飽きれた表情をするのだった。

「では引き上げるぞ。」

「はい!」

一同が引き上げる途中、イビルが一瞬ふらついた事に誰も気付かなかった。


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