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『第212章 魔大陸の食材』

ギルドを後にしたイビルは街道を歩いてると後方から大きな影が追いかけてきた。

瞬時に胴体から魔鎖を放出し背後に突き出す。

「あぶね⁉オレやねん!」

「っ!さっきの鳥!」

「鳥ちゃうドラゴンや!」

「あ、ごめん・・・。」

鎖を収納しウィンロスに向き直る。

「何の用?お父さんに頼まれて私を連れ戻しに来たのなら帰ってもらうけど?」

「ちゃうわ。お前を追っかけてきただけや。ちょいと話し合おうや。」

二人は木の下のベンチに腰を降ろし暫しの沈黙が包む。

「話って?」

「実はさっきお前の父ちゃん、魔王に思いっきし説教してきたで。」

「え、お父さんに⁉」

「あまりの軟弱さに腹が立ってな。胸倉掴んで突き飛ばしたわ。」

「お父さんにそこまでできるなんて・・・。」

「ただの勢いや。まぁあっちはタクマ達がなんとかしてくれるやろう。んで本題。お前、母ちゃん探しとるんやろ?事情は魔王から聞いたわ。」

「お父さん、家庭事情をペラペラと・・・。」

呆れるイビルにウィンロスは話を続ける。

「母ちゃん探し、オレ等も手伝ったるわ。」

「え、何で⁉」

「あそこまで聞かされて黙ってられる訳ないやろ。乗りかかった船や。多分タクマ達も同じこと言っとるはずやで。」

ウィンロスの言葉にイビルは、

「・・・気持ちは嬉しいけどこれは私達家庭の問題。他人の貴方が手伝ってくれる理由なんて無いわ。それにこの国は今問題を抱えてるの。部外者を巻き込みたくないからこの国を出ることを進めたんだけど?」

「そんなんで引き下がるオレ等やないで。オレの仲間には綺麗ごととお人よしがおるんでな。」

「はぁ、言うだけ無駄そうね。」

「観念せい。」

「脅してどうするのよ。」

背後からリヴのチョップがウィンロスに炸裂。

「脅しちゃうわリヴ。」

「貴女も来たの?」

「私は飛び出したウィンロスを追いかけてきただけ。でもさっきウィンロスが言ってた事は大体正解だと思うわ。主様は、特にリーシャはこの事態を放っておくことは出来ないと思うからこの国の抱えてる問題を解決させようと動くはずよ。」

「・・・変わってるわね。貴女達。」

「誉め言葉として受け取っておくわ。」

「つーわけでオレ等も手を貸すで。よろしくな。」

いい笑顔でグッドサインを出すウィンロスとリヴにイビルは思わず笑いを零した。

(ふ~ん。ちゃんと笑えるんだこの子。)

「改めて、私はイビルよ。よろしく。リヴ。ウィンロス。」

「おうよ。んで、まず何をしたらいいんや?」

「私はこれから食材調達に行くところ。ソロだと結構手間がかかる内容だから手伝ってくれるとありがたいわ。」

「なら決まりね。早速レッツゴー!」


 イビル、リヴ、ウィンロスの三人は現在、砂漠に来ていた。

「なんでやねん!」

「見渡す限り砂の斜面ばっか・・・。こんな所に食材になる物があるの?」

「問題ないわ。このササラ砂漠は岩山を境界に挟んだ完全孤立型の地帯。岩山内の洞窟を抜ければすぐこんな光景が見れるわ。」

「魔大陸もなかなか面白い地形をしてるわね。」

「五核竜に比べたらマシや。」

気を取り直し、ウィンロスを先頭に砂漠を進む三人。

途中リヴがイビルに話題を振る。

「意外と思ったでしょ?あんなドラゴンがアンタを気に掛けるなんてさ。」

「・・・えぇ。魔獣にしては人並みに知能があるし、一瞬ドラゴンという事を忘れそうになるわ。」

「あ、それ私達にも当てはまるわ・・・。ちなみに言っとくけど私もドラゴンよ。」

「え⁉人間じゃなかったの⁉」

「人化っていう珍しいスキルで人間の姿になってるのよ。持ってるのは私だけね。」

自分の唯一無二の特権にピースする。

「・・・私ね、家族関係が滅茶苦茶で苦労した事があったのよ。」

「え?」

「自己中な父親のせいで母親を失い、つい最近弟も失った。私も父親のせいで一度死にかけたわ。でもね、それを救ってくれたのは他でもない、ウィンロスなのよ。」

リヴは先頭を歩くウィンロスの背中を見る。

「アイツが助けに来てくれなかったら今私はここにいなかった。癪だけどアイツは私の恩人な訳よ。・・・あの時、ウィンロスは私のために本気で怒ってくれた。クソな父親もぶっ飛ばしてくれて、命を投げ打った私を必死に手繰り寄せ助けてくれた。感謝してもしきれないわ。」

少し照れ臭そうに笑うリヴにイビルは、

「家族関係が滅茶苦茶、今の私みたいね。」

「父親がアンタを想ってくれてる時点で違うわよ。私からしたら羨ましいわ。」

「でも分からない。何で彼は他人のためにそこまで怒ってくれるの?」

「さぁ?見てて気に喰わないからじゃない?・・・アンタの父親の事情を聞いてウィンロスはアンタのために怒ってたわ。アイツ魔王になって言ったと思う?『ちったぁ父親らしいことしてみろや!馬鹿野郎が‼』って叫んでたわ。」

「お父さんに・・・⁉」

イビルは驚いた表情でウィンロスに向く。

「例え他人の事でも本気で怒ってくれる。ウィンロスはそういうドラゴン、いえ、男なのよ。」

イビルのウィンロスを見る目に変化が現れる。

(初めてだ。私のために、そこまで怒ってくれる人は・・・。)

するとウィンロスの歩みが止まった。

「何やあれは?」

彼等の目線の先にはかつて街が栄えていたであろう跡地が砂漠の真ん中に現れたのだ。


 砂漠の廃墟にやってきたウィンロス達。

土器などの遺物が散乱としかなり古い廃墟だった。

「こんな砂漠の真ん中に街が?」

「砂漠と言っても初めから砂漠だった訳じゃないわ。大昔はこの辺りも緑で溢れてたはずよ。ほら。」

廃墟の外れにポツンとオアシスがあった。

「ところで今更だけど、私達はどういう食材を探してるのかしら?」

「あー、説明してなかったね。私達が狙うのは『乾鳥(かんちょう)』という鳥よ。」

「カンチョー?」

「『乾鳥』‼乾いた鳥って書くのよ!まぁ目的は鳥自体じゃなくてそいつの卵だけどね。」

オアシスに近づくと水溜まりの付近に鳥の巣があり、その上にダチョウのような鳥がジッと佇んでいた。

しかしその鳥はまるでミイラのような姿になっておりピクリとも動かなかった。

「干からびてるやん⁉」

「正確には違うけど、乾鳥は有精卵を体内に留め栄養を卵に集中させてるの。だから肉体があんな干からびたような状態になってるの。」

「凄い生態ね・・・。」

「で、私達の目的は巣の中にある無精卵。」

イビルが指を指すと巣の中にいくつかの卵が陳列してあった。

「体内の有精卵を外敵から守るため無精卵を囮にしてるのよ。無精卵なら被害はないからね。」

「なるほど。よく考えられてるわ。」

無精卵を回収するためゆっくり近づこうとしたその時、遠くの砂丘から何かが迫ってくることに気付いた。

「なんや⁉」

「タイミング最悪・・・!」

砂から飛び出したのはサメのような魔獣だった。

「『砂鮫(すなざめ)』。この辺りに生息する魚類種よ。空腹になるとかなり獰猛になるからここの卵は諦めた方がいいかも。」

「その必要はないわ。」

「え?」

砂鮫が乾鳥諸共捕食しようと飛びついた瞬間、下顎から強烈な蹴りを食らいひっくり返った。

「ドラゴンから獲物を横取りしようなんざいい度胸やな。魚が!」

ウィンロスは竜巻を起こし砂鮫を砂ごと天高く巻き上げ思いっきり蹴飛ばし、砂鮫は遥か彼方へ吹っ飛んでいった。

(嘘でしょ⁉私でも手こずる魔獣なのに⁉)

驚くイビルを他所にウィンロスは巣の中を漁る。

「おーいイビル!卵は全部回収するんか?」

「え、いや、一、二個は残しといて。」

「あいよ。」

ウィンロスは巣の中の卵を一つ咥え取ると乾鳥に向く。

「安心せい。全部は貰わへん。あんさんの卵はこれから大勢の人を救うんや。感謝しとる。せやからしっかり元気な子供産むんやで。」

リヴを介してリーシャの異空庫に卵を収納させるウィンロス。

イビルは彼を見て自分の心がおかしいことに気付き始める。

(何で、彼を見てると胸が苦しくなるんだろう?)

そんなイビルの様子にリヴは何かを察するのだった。


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