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『第209章 深紅の冒険者』

港町にあったギルドの調べで過激派は近くの森に隠れる廃墟を根城にしているらしい。

タクマ一同はその森へ足を運んでいた。

「メルティナ。絶対バハムートの背中の魔法壁から出るなよ?」

「分かった。」

「子供を攫うとか、典型的な悪党だわ。」

道なき道を歩いていくと無数の足跡を見つけた。

何度も往復したように入り乱れているが。

「久しぶりに使ってみるか。『鑑定』プラス『追跡』!」

バハムートのスキルを発動させると足跡が光りだし一つのルートを写し出す。

「これを追えば奴らの足取りが分かるぜ。」

「懐かしいな。このスキルで昔従魔結石を盗み取ったリーシャを追いかけたのだったな。」

「そうだったんですか⁉」

光る足跡を辿っていくと崖上に大きな要塞の廃墟にたどり着いた。

足跡は要塞に向かっている。

「ビンゴだ。」

要塞に向かうとウィンロスがふと違和感な足跡を見つけた。

(他の足跡と比べてやけにちっこいな?女児くらいか?)


 廃墟となった要塞を根城に群がる魔族。

各地から奪った宝や食料を広間に集めていた。

「今回の襲撃は結構いい収穫だったぜ。」

「今夜は宴だな。ぎゃはは!」

すると他の男が魔族の少年を連れてきた。

「おいおい、またガキを攫ってきたのか?」

「あぁ。コイツを人質に()()()()()()()()()()()()。俺達の天下もグッと近づく。」

「ちげぇねぇ!」

悪い声で笑っていると捕まった少年が腕に噛みつき男達から逃げ出した。

「痛って⁉このガキ!」

腹を立てた男たちが少年を追いかける。

崩れて通路が入り乱れる廃墟の中を無我夢中で走る。

しかし迷い込んだ部屋は行き止まりで窓はあるものの人が通れる程の隙間ではなかった。

「もう逃がさねぇぞクソガキが!」

追い詰められた少年はじりじりと後ずさる。

「生意気なお子様にはお仕置きしてやらねぇとな。大人を舐めてると痛い目見ることを教えてやる!」

鈍器を持って一斉に少年に襲い掛かる。

その時、少年の陰から人影が現れ腕から魔鎖を放出し男たちを弾き飛ばした。

「何だ⁉」

少年も驚いていると影から現れたのは黒いフードを深く被った赤い瞳の少女だった。

「て、テメェは・・・⁉『深紅のヴァンパイア』!」

「逃げて。」

少女が床に触れると少年は陰に沈み、外の木陰から放り出された。

「『影移動』のスキル、間違いねぇ・・・!」

「俺達『過激派』の邪魔をしまくる小娘だ!」

少女は男達に向き直りジャラジャラと魔鎖を構える。

「今度こそ逃がさない。捕らえて他の過激派の居所を吐いてもらうわ。」

「・・・へ!たかが冒険者の小娘一人が大人の俺達三人に、いや、この要塞にいる大勢の魔族を相手に出来るかな?」

男の一人が既に伝達を送っており要塞内の魔族全員が戦闘態勢に入っていたのだ。

(流石に全員相手にするのは無理。一人でも捕まえて退ければそれでいい。)

魔鎖をバネに少女は一気に距離を詰める。

一人が防御を請け負いもう二人が攻撃に出る。少女も魔鎖を操り三人を同時に相手する。

(やっぱり動きに統率が取れてる。噂通り、過激派を統率する何者かがいることは確かね。にしても・・・。)

戦っている中で次々と増援がやってきて次第に数で押され始めていく。

(思いのほか増援が早い。このまま戦ってたら対処しきれなくなる。)

少女は天井にジャンプし魔鎖で身体を固定。

陰に手を触れると無数の影コウモリが飛び出し魔族たちに襲い掛かる。

「うおぉぉ⁉」

「鬱陶しい!」

群がる影コウモリの大群に揉まれる魔族たち。

今のうちに一人捕らえようと鎖を構えると、突如聞き覚えのある発砲音がし、影コウモリが一匹撃ち落されたのだ。

「っ⁉」

「この音は・・・!」

魔族たちが振り返ると奥からゆっくり歩いてくる黒いハットとロングコートを身に着けた人物が現れた。

(アイツは・・・!)

ハットの人物は()()()()()()()()()()で発砲し次々と影コウモリを一匹、また一匹と撃ち落していく。

何より、その速度が尋常ではなかった。

たった数発しか発砲したにも関わらず、影コウモリの大群が全て撃ち落されたのだった。

過激派の魔族たちが歓声を上げ少女は天井からハットの人物の前に飛び降りる。

「やっぱり、その武器を扱えるのは一人しか知らないわ。まさか過激派に属していたとはね。『夜襲の亡霊』!」

人物がハットの鍔を上げるといかつい目つきの骸骨の顔、スケルトンだった。

「何故過激派とつるんでるの?貴方ほどの男が。」

「雇われたからな。過激派に。」

「コイツ等が今この国で何をしてるのか分かってて協力してるの?」

「コイツ等が何をしてようが俺には関係ない。お前も知っての通り俺は傭兵だ。報酬さえもらえれば仕事はする。それが俺の流儀だ。」

「・・・そうね。貴方は昔からそういう人だったわ。でも、今私の前に立ち塞がるのなら、貴方は敵よ!」

「それは、こちらも言える言葉だな。」

二人は互いに武器を向け沈黙が包み込む。

そして、二人のぶつかり合いは一瞬で起こり凄まじい戦闘へと発展した。

亡霊の即連射。

少女の巧みに操る魔鎖。

互いに一歩も退かぬ攻防が辺りに響き渡る。

(やっぱり強い。でも、互いに手の内が分かってるからうまく隙をつければ・・・!)

だがその時、

「今だ!やれ!」

魔族の男が合図を送ると他の連中が魔法を放ち天井を崩壊させた。

そして眩い太陽光が少女の頭上に降り注いだ。

「っ⁉」

その瞬間、少女の動きが急に鈍くなり亡霊の発砲が足に着弾してしまった。

少女が倒れた瞬間、亡霊も発砲を止める。

「ハハハッ!上手くいったぜ!コイツはヴァンパイア、太陽が弱点だ!お前等!今のうちにそいつを捕まえろ!」

太陽光と足の怪我で弱った少女を拘束する魔族たち。

「助かったぜ『夜襲の亡霊』。奴の注意を引いてくれてよ。」

肩に手を置く魔族だが亡霊の眼は少なからず怒りの視線が向けられた。

「おいおい、夜襲と在ろう者が真剣勝負に水を差されてご立腹か?」

「・・・俺の仕事は足止めだ。それ以上は何も言わん。」

「それでいい。」

亡霊はその場を後にするがやはり彼の眼は小さな怒りが伺えたのだった。

「さて、散々俺達の邪魔をしてくれた落とし前、しっかり払ってもらうぜ。」

群がる魔族たちに虫の息の少女がその深紅の瞳で睨む。

男達が少女に手を伸ばしたその時、後方から紅蓮の炎が魔族たちを焼き殺してきた。

「っ⁉」

「何だ⁉」

炎の壁から飛び出してきたのは緑翼の翼で羽ばたくドラゴン。

「はいどうもー!魔族専の洗濯屋でございまーす!なんつってな!ウィング・サイクロン!」

ウィンロスの竜巻が魔族たちを一気に吹き飛ばした。

「ぎゃぁぁぁ⁉」

一緒に巻き上げられる少女をウィンロスが器用に翼でナイスキャッチ。

「大丈夫やったか?お嬢ちゃん。」

「え、えぇ・・・。」

その時、少女の心にとある感情が芽生え始めたのだった。

「な、何だこの鳥は⁉」

「鳥ちゃう!ドラゴンや!」

ウィンロスがクエーっと怒鳴ると再び後方から炎が放たれ魔族たちが炙られる。

そして奥から現れたのはバハムートだった。

「状況は大体察しておる。先ほど牢のような所で()()()()()()()を見たからな。」

彼の背からタクマ、リーシャ、アルセラの三人も飛び出し次々と魔族たちを倒していく。

「あの牢屋にいた人たちの無念、晴らさせてもらうぜ!」

そして三人の大技を最後にほぼ全員の魔族を打倒した。

(な、何なんだアイツ等⁉異国の連中か?ドラゴンを従えた人間なんていやがったのか。早くこの事を奴に知らせねぇと!)

唯一生き残った魔族は暗闇へと姿を消したのだった。


 要塞に群がってた魔族を掃討したタクマ達。

「スイレンから聞いた話と少し違うな。魔族ってこんなに悪徳好戦的な奴らなのか?」

剣をしまうタクマ達に助けた黒いフードの少女が口を挟んだ。

「コイツ等は『過激派』の魔族。古の呪縛に囚われ続ける哀れな同族よ。」

「えっと、貴女は・・・?」

「・・・首都ヴァンプローナの冒険者。それだけよ。」

何やら籠る返答だったが礼儀により深くは追及しなかった。

「そうだ!連れ去られた商人の息子を探しに来たんじゃない!」

「息子?そう言えばついさっき連れてこられた男の子を助けたと思うんだけど?」

「そいつだ!どこにいるか教えてくれ!」

少女に案内され要塞の外の木陰に隠れてた商人の息子を見つけたタクマ達は港町へ戻った。

商人と息子は涙を流し互いの無事を喜んだ。

タクマ達に感謝とお礼を渡した後、二人は仕事に戻ったのだった。

「これで依頼は完了だな。」

「貴方達、見た所魔族じゃないみたいだけど?」

「あぁ。俺達はただの人間。こいつ(リヴ)は除いてな。俺達はこれから首都ヴァンプローナにいる魔王に届け物をしに行くんだ。」

「魔王に・・・。」

彼女の声色が少し沈んだ気がした。

「そういえば貴女はヴァンプローナの冒険者と言ってましたね。よろしければ首都まで案内してくれますか?現地の方がいて下さればとても心強いです。」

「・・・別にいいよ。私も仕事を終えたから首都に戻る予定。」

「なら決定やな。」

「よろしく頼む。えっと・・・。」

「・・・イビル。冒険者イビルよ。」

「そうか。よろしくなイビル。」

握手の手を差し出すがイビルはその手を握らず振り返る。

「案内はしてあげる。でも、私には深く関わらないでね。」

そういい先に行ってしまった。

「何なんだあの子は?」

タクマの背後からアルセラが前のめりに顔を覗かせる。

「冒険者には訳アリの奴がほとんどだ。せっかく現地人が案内してくれるんだ。早く行こうぜ。」

タクマに続き彼女を追う一同。

するとリヴが珍しく物静かなウィンロスに気を止める。

「どうしたのウィンロス?」

「ん?んにゃ、なんでもあらへん。ほないこか。」

「?」

(あの女の眼、燃えるような深紅の色なのに、妙に冷たい感じがしたな。まるで前のリヴみたいや。)

ただ一人、ウィンロスが何かに訝しんでいたのを知らずに一同は首都ヴァンプローナへ向かうのだった。


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