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『第203章 協力者』

教皇の孫である僧侶の少女が言うには、昨晩教皇の部屋へ夜食を届けに向かったがその時教皇は留守にしていた。

彼女自身も仕事上がりで少し疲れていたので隣の仮眠室で寝ていたという。

そこに教皇が戻り、気配で彼女が眼を覚ました直後、教皇は背後から何者かに突き刺され殺害されたのだ。

その一部始終を隣の部屋から覗いていた少女は気配を押し殺し人物が去るのを待った。

そして、残されたのは血まみれの教皇の遺体だけだった。

「貴女はとてもお強いのですね。目の前で大切な祖父が殺害されてしまったのに・・・。」

「強くなんてありません。一番近くにいたのに、お爺様を助けられなかった自分の無力さを思い知り、ショックも大きかったです。」

「話を戻して悪いが、ホーエンさんを殺害した人物の特徴を覚えているか?」

「薄暗くて全体像は見えませんでしたが、黒いフードを被ってて、左腕に翡翠色の光が光ってたと思います。」

「翡翠色・・・。」

タクマは自身の従魔結石を見た。

「親衛隊の連中はこれで俺が犯人だと決めつけていた。」

「従魔結石の腕輪。確かにその魔石は希少で身に着けてる者も少なく、腕輪型にしているのは貴方以外に見たと牙ありませんね。」

その唯一無二さが裏目に出てしまったのだ。

「とにかく!アンタは真犯人は俺じゃないって確信してるでいいんだな?」

「はい。現在私はその人物を特定すべく情報を集めております。」

「なら俺達にも手伝わせてくれ。濡れ衣着せられて少しばかり腹立ってるんだ。俺を貶めたそいつを閉め上がてやる!」

「っ!それはとてもありがたいです!親衛隊や他の権力者の方々は皆貴方が犯人だと信じ切り誰一人真実を追求する協力者が得られなかったのです。」

「なら丁度いい。俺達の他にもコイツの主人である貴族が協力してくれてる。俺の仲間は・・・、各々の事情で協力は得られないな・・・。」

「十分です。協力者がいてくださるだけでも心強いです。」

僧侶の少女は手を差し出した。

「貴方からは人を殺すような邪悪さを感じません。むしろその逆です。」

「感じるってオーラ的な?」

「私達の家系は少々特殊で人の善悪の気配を感じやすいのです。」

笑顔で笑う彼女にタクマは彼女の手をしっかり握った。

「俺はタクマだ。俺を信じてくれてありがとうな。」

「私はエレア・ホーエンと申します。どうか祖父の真実を、皆の間違いを正しい方向へ共に導きましょう!」

二人は固い握手を交わしたのだった。


 教会側から協力者を得られたのはとても大きい。

タクマとエレアの関係を悟られぬようしばらく教会を離れるタクマとヴォルフ。

「エレア様は教会内で情報を探るとおっしゃってましたね。」

「あぁ。後はこっちの問題だ。」

教会の親衛隊や彼らに協力する他の国の精鋭。

現時点で敵がかなり多い状況だ。

「リヴさん達には協力を仰がないのですか?」

「アイツ等は今ダンジョンに潜ってる。バハムートも国を離れてるしウィンロスとメルティナは宿で寝ている。アイツ等に余計な心配をかけさせたくないんだ。」

「しかしお一人で抱え込むのは少々よろしくないかと。」

「一人じゃねぇよ。お前等がいてくれる。」

「っ!そうでしたね。不躾をお許しください。」

「いいっていいって。後いちいち固ぇよ。もっと気楽に話してくれ。」

「善処しましょう。」

一先ずタクマ達は相手の眼を掻い潜りシュヴァロフ家の別荘へ足を運んだ。

「タクマ!ヴォルフ!」

出迎えてくれたのはメーレンだった。

「大丈夫だった?」

「大丈夫。むしろ教会側から協力者を得られたよ。」

「え⁉ホントに⁉」

メーレンにもエレアの事を話し、シュヴァロフ家の皆に匿われることになったタクマ。

「メーレンから話は聞いた。とんでもない事に巻き込まれてしまったね。」

「むしろ巻き込んだのは俺の方なんだがな。」

「何を言う。君達はメーレンやヴォルフの恩人だ。それに君の人柄は誰よりも理解してるつもりだ。遠慮なく頼ってくれ。」

ブルファムの信頼、優しさにタクマは思わず泣きそうになった。

「さて、先ほどヴォルフくんの話では教皇殺害の犯人はやはり別にいたという事かな?」

「はい。教皇のお孫さん、エレア・ホーエン様がその瞬間を目撃されており、彼女の協力も得られてます。」

「教会側の協力を得られたのは嬉しい誤算だ。不幸中の幸いとも言えよう。」

だが肝心の真犯人についてはまだ情報が不足している。

「お父様、他の協力者は得られたのですか?」

するとブルファムはドヤ顔で答える。

「勿論だ。とても心強い協力者にありつけた。そろそろ来る頃だと思うけど。」

噂をすれば、扉を開け四人の人物が入室してきた。

「タクマ様~!」

「はい平常運転だなオリヴェイラ!」

華麗にツッコミと回避をしオリヴェイラの抱擁をあしらう。

そう、ブルファムが得た助っ人は王女のオリヴェイラを初め、ネオン、イフル、ランバル。

「私もいます。」

「びっくりした⁉」

天井から暗殺者装備のアサシンも集まった。

「皆・・・!」

「ま、しばらく護衛仕事ばかりで退屈してたんだ。ウィークス団長も承認して俺を派遣してくれたし、何よりこっちの方が面白そうだ!」

「私も!友人の危機と聞いて見過ごせませんわ!お望みなら王女の権力を全て使いましょう!」

「オリヴェイラ様、流石にその辺りは自重してください・・・。」

いつも通りの友人たちに少し肩の力が抜けるタクマだった。

「で、何でエルフのお二人さんも?」

「僕達は別件で気になることがあるんだ。勿論君の冤罪を晴らすことも目的だ。」

「気になる事ってのは十中八九・・・。」

「あぁ。ギルティマーブルの事だ。」

「もしアレが出回ってるのだとしたらいずれ取り返しのつかないことになる。そうなる前に確かめたいの。」

「・・・分かった。ありがとな。二人とも。」

こうして役者は揃い、それぞれ分担して情報をかき集め始める。

途中何回か親衛隊や各国の精鋭に事情聴取されるも上手くあしらった。

「協力してくれるのはありがたいけど、何で俺は留守番なんだ?」

タクマだけは一人シュヴァロフ家に取り残されていた。

「狙われてる張本人なんだからむやみに外に出すわけにはいかないよ。」

そう言いながらブルファムがコーヒーを差し入れてくれる。

「ども。」

「にしても君の人望は凄いね。ワールド騎士団副団長だけでなくエリエント王国の王女様まで手を貸してくれるなんて。まぁ僕達も人のこと言えないけど。」

「皆には感謝してもしきれないな。アンタも含めて。」

「・・・その縁、一生大事にしなさい。大人として、人生の先輩としてこれだけは言わせてくれ。」

「・・・勿論さ。」

タクマがコーヒーを一口すすった時、屋敷のドアを強く叩く音がした。

「何事だ?」

そこに執事のフロウがやってくる。

「ブルファム様!サンドリアス教会の親衛隊が押し寄せてきました!」

「っ⁉」

「遅かれ早かれここにも捜索の手が回るのも覚悟していたが、思いのほか早かったな。」

「すまねぇ!どこかに身を隠すか?」

「いや、屋敷中をくまなく探られたら終わりだ。君は裏から脱出しろ!」

「でも!」

「心配ない。私だって時間稼ぎくらいはできるさ。脱出の際はヴォルフを同行させる。フロウ。彼を脱出口へ。」

「かしこまりました。」

「いけ!タクマ君!」

「すまねぇ!この借りは必ず返す!」

そう言い残しタクマはフロウに連れられ屋敷の奥へ向かった。

「借りがあるのはむしろこっちだ。これでメーレンの借り、返したよ。」


 屋敷の地下室に案内されたタクマ。

そこにはヴォルフが待っていた。

「タクマ殿。こちらへ。」

「ヴォルフ!」

「ここから下水通路に出られます。ご武運を。」

「ありがとう。フロウさん!」

「急ぎましょう。先ほどアサシン殿の知らせでエレア様が確証を得たとご報告が。」

「マジか!なら大聖堂に行こう!」

サンドリアスの地下水道を駆け抜け、夕暮れの空を再びヴォルフを抱え飛ぶ。

「ホント便利ですね。飛行。」

「デジャヴってないで行くぞ!」

大聖堂の中を駆ける二人。

中央の円卓の間にたどり着くと中心に僧侶の少女が立っていた。

「エレア!」

タクマがエレアに駆け寄ろうとしたその時、

「っ!待ってください!」

ヴォルフに引き留められるとエレアがこちらに振り向く。

「た、たすけ・・・!」

次の瞬間、彼女は黒い靄に飲み込まれ腕のみが生えた竜のような形をした巨大な靄の化け物へと変貌してしまった。

「エレア‼」

「やれやれ。まさか殺害の瞬間をお孫さんに見られるとは。失態ですね。」

部屋の奥から現れたのはとんがりマスクを被ったブリーストの人物だった。

「この匂い・・・!タクマ殿!教皇殺害の真犯人は恐らく奴です!部屋に残留していた匂いと一致しています!」

「コイツがホーエンさん・・・!おいテメェ!何が目的でホーエンさんを殺し、俺に罪を擦り付けた!」

「・・・まぁ教えても良いでしょう。私は聖天新教会に所属する者です。貴方であれば、もうお分かりですよね?」

「・・・そう言う事かよ。」

タクマと教皇は内密で聖天新教会を瓦解させようとしていた。

その話がどこからか漏れ彼の耳に届いた。

そして瓦解を企てた教皇を殺害しその罪をタクマに擦り付け同時に始末しようとした。

無駄のない計画だ。

「知られちまったら隠す必要もねえな。ホーエンさんのためにも、力ずくで瓦解させてやる!だがその前に・・・。」

タクマは苦しむように悶える黒い靄の竜に向く。

「エレア。まずお前を助ける!」


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