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『第百九十八章 罪の大厄災』

世界会議一日目の夜。

とある貴族の屋敷にある訪問者がやってきた。

「夜分遅くに申し訳ない。イグリド殿。」

とんがりマスクをかぶったブリーストの男がデスクに鎮座するワイングラスを持つ貴族の中年男性。

「何用かな?教会の者。」

「教皇ヴィル・ホーエンが我ら聖天新教会を瓦解させる決断をしました。」

「あの老いぼれめ、とうとう気付いたか。今教団を潰されては()()()()の恩恵を受けることが出来なくなる。どうにかしたいところだが。」

「幸いにもこの事実を知ってるのは竜王とその主人の冒険者のみです。」

「竜王の主人だと?噂ではあの誇り高い竜王が一人の少年の従魔となったと聞いたが、事実だったか。竜王も堕ちたものよ。」

「そうとは言い切れないと思いますよ。」

「・・・どういうことだ?」

「あの竜王が主人として認めているという事はあの冒険者の少年は竜王に匹敵する力を持っている。とは思いませんか?」

「・・・なるほど。その可能性もあるか。では真っ当な方法ではその冒険者は始末できそうにないな。」

「えぇ。ですので、この私に一つ提案があります。」

「聞こうではないか。我ら聖天新教会を存続させるその方法を。」


 その頃、タクマ達はオリヴェイラの泊まる別荘に招待され、その広い庭でバーベキューを開いていた。

ラセン達やエリック先生、そしてフュリア国王も一緒である。

料理を振舞うのは勿論リーシャであり、何やら怒涛の勢いで料理を作っている。

(昼間の理不尽な目に遭った冒険者たちを思い出して憂さ晴らししてるのかな?)

そう思いながら肉を貪るラルだった。

「いやはや、彼女の作る料理はどれも絶品だな。我が国の給仕に迎え入れたいくらいだ。」

「引き抜きは勘弁してください国王様。俺の大事な仲間なんで。」

エリック先生も酒を片手に串焼きを喰らう。

「そう言えばアルセラ嬢。君の兄君、ワールド騎士団の団長殿は来られなかったのですか?」

「お誘いはしましたが、兄は護衛仕事があるとの事でネオン先輩と共にそちらに向かいました。」

ちなみにネオンは行きたがっていたらしいがウィークスに連行されていったとの事。

ご愁傷様である。

そしてタクマの方はバハムートの側で料理を食べながら隣に座るリヴに教皇からの依頼を密かに話していた。

「そんな事があったの?」

「あぁ。聖天新教会を瓦解させるためにまず情報を集めたい。これはまだお前にしか話してないが手伝ってくれるか?」

「何言ってるの。私は主様の従魔よ?遠慮なく頼って!」

「はは。頼もしいな。」

手持ちの串焼きを食べきるリヴは串を舐めながら話を続ける。

「リーシャ達には話さないの?」

「それは考えたが・・・。」

タクマは楽しそうにバーベキューをする彼女たちを見つめる。

「アイツ等に余計な心配はかけさせたくない。一先ずリーシャ達には内緒で俺達三人の内密にしててくれ。」

「了解♪」

追加の料理を貰おうと立ち上がった瞬間、オリヴェイラにダイブされた。

「タクマ様~!」

「おっふ⁉」

不意打ちであったため避けられなかった。

「オリヴェイラ様ももう少し王女としての自覚を持って欲しいな。」

「ですがあのようにはしゃげるのはタクマ様といらっしゃる今だけ。自由に羽を伸ばしてもらいましょう。」

「それもそうですね。」

イフルとアサシンもそう微笑むのだった。

「ごめん。ちょっとお手洗いに行ってくる。」

「場所は分かりますか?」

「そこまで子供じゃないです!」

イフルが席を外した直後、とある客人が来賓してきた。

アサシンが出迎え庭へ連れてくる。

それはイフルと同じ薄緑の髪で眼鏡をかけたエルフの男だった。

「やぁ。久しぶりだねタクマ。」

「ランバル⁉」

エルフの考古学者、ランバルとも再会した。

「お前もこの国に来てたんだな。」

「あぁ。この国の王立図書館に用があってね。それよりも聞いたよ。和国では随分活躍したみたいだね。」

「大したことじゃない。乗りかかった船に乗っただけだ。そのおかげで得られたものも多いがな。」

ランバルがラセンとスイレンや国王二人にも挨拶を済ました頃、イフルが戻ってきた。

「思いのほか探すのに手間取っちゃった。屋敷広いから、・・・。」

イフルはランバルを見た瞬間硬直した。

それはランバル自身も同じだった。

「え、ランバル・・・?」

「イフルちゃん・・・?」

タクマは交互に二人の顔を見る。

そして次の瞬間、イフルはランバルに掴みかかった。

「貴方今までどこにいたの⁉百五十年も音信不通で!」

「苦しい苦しい、イフルちゃん、苦しいって・・・!」

興奮状態のイフルをなんとか落ち着かせ理解が追い付かないタクマ達は話を伺った。

「私とランバルは二百年前からのちょっと特別な知り合いというか・・・。」

「君達も歴史で知らないかい?二百年前、世界を恐怖に陥れたある魔物の災害を。」

「魔物?魔獣とは違うのか?」

「全くの別物だ。あれは、怪物そのものだった。」

しばらく考え込んだフュリア国王が口を挟んだ。

「二百年前・・・、それはもしや『罪の大厄災』の事かね?」

「ご名答です。」

「罪の大厄災?」

それは二百年前に世界を揺るがせた大災害。

突如として世界中に罪の魔物と呼ばれる人をも喰らう怪物が蔓延り、人々は常に恐怖していたのだ。

「そうか。君達はエルフ。その厄災を直に見てきた当事者か!」

エルフの二人は頷く。

「僕とイフルちゃんは当時の仲間たちと共に罪の魔物を世界から駆逐させるために戦いました。そして、ある人間の男とその仲間たちによって罪の魔物を根絶させたのです。」

ランバルの話を聞いてたオリヴェイラは眼を丸くして驚いていた。

「イフルさん、そんな凄い英雄だったのですね・・・。」

「英雄なんておこがましいですよ。オリヴェイラ様。私も全力を尽くしましたが最後は()()()が大災厄を打倒したんです。」

「と、そんな訳で、僕とイフルちゃんはそういう関係だ。まぁ、彼の仲介あっての間柄だけどね。」

そこまで話したランバルはふと思い出したようにタクマに話しかけた。

「そう言えばタクマ。僕の上げた紫のネックレス。まだ大事に持っててくれてるかい?」

「これか?」

懐から紫の結晶がついたネックレスを取り出す。

「これには和国でもの凄く助けられたぜ。」

「そうなのかい?お守りになればと渡したけど役に立てて何よりだよ。」

「お守りなんてもんじゃねぇよ。コイツを座標にレイガって神が降りてきて助けてもらったんだから。」

「・・・え?」

その言葉を聞き硬直するランバルと、お皿を落とすイフル。

「タ、タクマ?君は、彼、レイガに会ったのかい・・・⁉」

「あー、そういやレイガの奴、ランバルとも古い知り合いだって言ってたな?確かに会ったけど、それが何か?」

「いや、僕よりも・・・。」

その時、もの凄い勢いでイフルがタクマに飛びつき、勢い余って倒されてしまった。

「どこ‼レイガは何処にいるの⁉教えてタクマ‼」

今までにない程必死な形相でタクマの胸倉を掴み叫ぶイフル。

「落ち着いてイフル!主様が死んじゃう!」

リヴやエリック先生、ランバルたちが興奮するイフルを引き剥がし落ち着かせる。

そしてウィンロスが軽く伸びてるタクマに回復魔法をかけた。

「ごめん。僕から話すよ。彼女、イフルは二百年もの間レイガを探し続けてたんだ。彼女にとって、唯一家族と呼べる彼を。」


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