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『第百九十三章 聖公国サンドリアス』

天気は晴天。

大きくそびえる入道雲から二頭のドラゴンが姿を現す。

「馬鹿正直に突っ込む奴があるか!おかげでびしょ濡れじゃないか!」

ずぶ濡れの状態で叫ぶタクマとその仲間たち。

彼らは現在和国の将軍、鬼族のラセンとその妻スイレンを連れて聖公国サンドリアスに向かっていたのだ。

「ワハハ!途中落雷も降ってきてスリル満点やったで!」

「君達ドラゴンはいいのかもしれないが人間の私達にとってはかなり危なかったぞ・・・。」

ウィンロスの背でぐったり横たわるアルセラが言う。

リーシャもタオルを配り髪を拭く。

「和国を出発してから三日経ちましたけど、目的地はまだでしょうか?」

「そろそろのハズだ。」

「お、噂をしたらなんとやらだぜ。」

一同の視線の先には緑豊かな森に囲まれ海岸沿いに栄える大きな都市が見えてきた。

その都市は少し物珍しく円盤状の土台が無均等に何層も重なったようになっており、その上に都市が栄えている作りだったのだ。

「何じゃあの街並み?見たことないぞ?」

「凄く近未来的な造形ですね。街並みは異世界特有の中世ヨーロッパみたいな作りですが。」

「よーろっぱ?」

「こっちの話です。」

ラセンとスイレンはリーシャが転生者だと知らないため首を傾げた。

そして階層の一番上、てっぺんには建設途中の神聖的な大きな教会が建っていた。

あれが聖公国サンドリアスのシンボルなのだろう。

「ともあれ目的地に着いた。入口手前で降りるぞ。」


 正門前に降りサンドリアスに入国するとこれまで行った街とは一味違う雰囲気にタクマ達は心を躍らしていた。

「ここが聖公国サンドリアス!凄く綺麗な所ですね!」

「ここはサンドリアスのエントランス。水辺に最も近い階層だ。」

スイレンの言う通り、街のあちこちに水路が流れておりまさに水の街と言った街並みだった。

「俺達も目的地はもっと上の階層、向かってあの左上の円盤か。」

「あのエリアは王族貴族の護衛で雇われた者達の宿場町だ。宿は勿論、冒険者ギルドもあるぞ。で、向かい側の右上のエリアは王族や貴族が泊まる別荘地のような所だ。雇い主の許可があれば護衛もあっちで宿泊できる。他にもエリアごとに様々な施設があるから後で探索してみるもありだぞ。」

「至れり尽くせりやな。」

「ていうかスイレンめちゃくちゃ詳しいわね。」

「下調べは基本だ。」

ドヤ顔で頷くスイレンだった。


 一先ずタクマ達は手紙に書かれてた集合エリアまで移動する。

そこの広場には既に他国の王族や貴族が集まっていた。

「うへぇ~、権力者だらけや。オレ等場違いじゃね?」

「そうでもないぞ。ほれ、獣人族に人魚族のような亜人もおる。我らドラゴンもとてそう悪目立ちはせん。」

「いや旦那の竜王オーラは別格やねん・・・。」

「よくよく考えてみたらバハムートも一応王族じゃねぇか?」

「一応とは何だ一応とは。」

そんな事を話していると聞き覚えのある声がこちらに迫ってきていた。

「タクマ様~‼」

人混みはかき分けこちらに走ってきたのは、

「オリヴェイラ⁉」

別大陸の王国、エリエント王国の王女であり、友人のオリヴェイラだった。

以前のように彼女はタクマに抱き着こうとダイブしてきたが華麗に避け、ウィンロスのもふもふの羽毛に埋もれた。

それでも元気に笑顔を見せる。

「お久しぶりです!タクマ様、皆様!」

「あぁ、久しぶりだな!オリヴェイラ!」

「いやマジで久しぶりじゃない!元気にしてた?」

「はい!リヴさんもお元気そうで!」

するとメイドらしき女性もこちらにやってきた。

「お久しぶりです。タクマ様。」

「えっと、誰?」

そのメイドには見覚えが無かった。

「ふふ。無理もないですね。あの時はマスクをしてましたから。」

そう静かに笑うメイド。

「・・・ん?もしかして、アサシンか⁉」

「はい。タクマ様とネクト様と一緒にあの夜城に潜入したアサシンです。素顔をお見せするのは初めてでしたね。」

王女の影の従者アサシン。

彼女も以前タクマ達と共に行動した知り合いだった。

「貴女そんな可愛い顔だったの?それで暗殺業って・・・、わお。」

そこへ、もう一人知っている顔が現れた。

「オリヴェイラ様ぁ!置いてくなんてひどいで・・・、タクマ⁉」

「イフル!」

エルフの少女イフルとも再会した。

「わぁイフルさん!お久しぶりです!」

特に喜んだのは女性陣だった。

「タクマ、あのエルフの少女とも知り合いなのか?」

「あ、そっか。アルセラはあの時まだ仲間じゃなかったもんな。」

イフルも以前タクマ達と共に行動し、主に拠点を使わせてもらったことがある。

「お前もいるって事は・・・。」

「うん。オリヴェイラ様の護衛として雇われたのよ。」

「彼女は暗殺者の私にも匹敵する実力者ですし、何より教えがいがあります。」

「アサシンさんのしごきは地獄だよホント・・・。」

遠い目で苦笑するイフルだった。

懐かしい友人との再会に花を咲かせるタクマ達。

その後各国の王族貴族が集まり終えると広場の先頭にある台座の上に三人のブリーストの女性が上がってきた。

「各国の皆様。本日は我が聖公国サンドリアスにお集まりいただき誠にありがとうございます。五年に一度開かれる世界会議は明日執り行う予定としています。本日は皆様、長旅の疲れを癒されますよう今夜晩餐会を開きます。参加は自由ですのでぜひお越しくだされませ。」

お辞儀をしその日は解散となった。

ブリースト達が席を外した後、宿泊施設に向かう者やその場で交流を始める者で賑わい始めた。

「会議は明日か。俺達は王族や貴族様のように専用の宿持ってねぇから宿場町の宿で寝泊まりだな。」

「私達はまだ新参者だからな。」

「んじゃタクマ。俺達は宿取って来るからまた後でな。」

「いや仮にも将軍だろ?ついていこうか?」

「大丈夫だって。こんなナリだし誰も偉い奴だってわからねぇだろ。それに自身の身は守れる。お前等はそこの王女様たちと再会を楽しんでていいぜ。じゃぁ晩餐会でな。」

そう言いラセンとスイレンは先に宿場町へ向かっていった。

「良かったのですか?あのお二人はタクマ様たちの護衛の人達では・・・?」

「まぁアイツ等かなり強いし大丈夫だろ。」

そう言っていると、懐かしい人物に声をかけられた。

「なんだ?あの魔術馬鹿が随分と逞しくなったじゃないか!タクマ少年!」

振り返ると鍛え上がられた筋肉で鎧がパツパツの大男が目の前に仁王立ちしていた。

「え⁉エリック先生⁉」

その男はかつて故郷フュリア王国の学園に通っていた時とてもお世話になった教師兼軍隊長のエリック先生だった。

その後ろにはフュリア王国国王、フュリア十三世もいた。

「久しいな。タクマよ。」

「国王様!ご無沙汰してます!」

タクマの持つ従魔結石は国王から貰った物。

その大恩があるためタクマも国王には頭が下がる。

「元気そうで何よりだ。君の幼馴染のルナ君にいい土産話が出来たものよ。」

そう言い髭を触りながらニコニコとしていた。

「ルナは元気にしてますか?」

「勿論。それどころか彼女の牧場、どうやら喫茶店を構えたそうなのじゃ。」

「え⁉ルナが⁉」

「店主は彼女の父が持ち、今では我が国のみならず観光客にも人気の店となっておる。とても楽しく経営しておるよ。」

「そうですか。ルナのお父さん、いよいよ店を始めたのか。」

彼女の父が店を始めようとしていたことは幼い頃から知っていたためタクマ自身も嬉しい気持ちになった。

その間エリック先生はリーシャ達女性陣に挨拶をしていた。

「ちゃんと話すのは初めてだったな。改めて、俺はタクマ少年の教師兼フュリア王国軍隊長のエリックだ。いつも彼が世話になってる。」

「い、いえ!タクマさんにはむしろこちらがとてもお世話になってます!これまで何度も窮地を助けてくださいましたし!とても頼りになる人です!」

「ハハハッ!そう言ってくれると俺も嬉しい。」

まるで父親のように喜ぶエリック先生。

すると突然タクマの元へムーンウォークし彼の肩を組む。

「それにしても、あんなに美しい美少女達を侍らせて、君も存外隅に置けないなぁタクマ少年?」

「その顔やめてください。」

その後、国王とエリック先生、オリヴェイラ達と談笑したタクマ達がラセン達の待つホテルに戻ったのは夕暮れ時であった。


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