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『第百九十章 明かされる関係』

突然の天使軍による襲撃を乗り越えた和国。

その晩は二度目の祝勝会と称した宴を行い、後日復興作業に取り掛かった。

「復興してばっかやな。」

「言うな。」

そして都の復興がほとんど完了した翌朝。

まだ日が昇り切っておらず薄っすら空が明るくなってる時間帯。

城の一番高い屋根の上で空を見上げる神、レイガ。

その彼の下へタクマがやってきた。

「来たか。タクマ。」

「あぁ。アンタに呼び出されたからな。」

タクマはレイガの隣に腰を降ろす。

「・・・教えてくれ。母さん、セナの事を。」

「セナ?あーそうか。アイツ下界に逃げた後そう名乗ってたのか。」

レイガはしばらく沈黙し、話始める。

「お前の母、セレンティアナは俺の師匠だったんだ。二百年前、ある大きな事件を解決した後、俺は一度大切な仲間を失ってしまった。そいつらを取り戻すため当時知り合いだったセレンティアナに無理を通して頼み込み、天界へ連れてってもらった。」

「・・・ん?てことはレイガは元々人間だったのか⁉人間から神になるなんてそんな・・・!」

「普通はあり得ねぇよ。セレンティアナに無理やり頼み込んだからな。人間が神々の住む天界に足を踏み入れるなんて前代未聞すぎだ。でも、そうまでしても、どうしてもアイツ等ともう一度会いたかったんだ。当時の創造神にも必死に頼み込み、特別にセレンティアナの眷属として貰ったんだ。それから俺はセレンティアナにたくさんの事を教え学び、長い時を重ねて人間から神へと成り上がった。おかげで大切な仲間と再会することが出来た。セレンティアナには、本当に感謝している。」

「師匠ってそう言う事だったのか。」

「あぁ。でもあの時、突然下界へ逃げると言ったときは度肝を抜いたぜ。」


――――――――――


 「レイガ。」

王宮の廊下で突如セレンティアナに呼び止められるレイガ。

「ん?どうしたセレンティアナ。」

「・・・私の最後のお願い、聞いてくれる?」

彼女の表情は何やら曇っている。

「最後のお願い?何言ってるんだ。」

「実は、ラウエルの事で・・・。」

ラウエルの名を聞いた瞬間レイガは目つきが鋭くなる。

セレンティアナから話を聞き終えると、

「あの野郎、そんな下らない事企んでんのか。ただでさえ今の下界は人間同士の戦争で頭を悩ませてるってのに・・・!」

「えぇ。単なる暇つぶしなんて理由で世界を作り変えるのはご法度以前に愚かの所業。」

「戦乱の世を作り人類同士を争わせ人類削減。それをアイツは玩具のようにしか思ってない。下らな過ぎて頭が痛いな。」

レイガは呆れるように頭を抱えた。

「でも、彼は本気みたいよ。」

「だろうな。だが引っかかる。ラウエルは天界でも随一に頭の切れる奴だ。そんなアイツがただ暇つぶしに世界を作り変えようと考えるか?」

「どうでしょうね。彼ほど理解できない神を私は知らないわ。」

「人類同士の争いは俺達にとっても課題だが、奴に任せるのは危険な気がする。でもそれ以前に世界を作り変えるには創造神の力が必要だろ?あの人がそんな理由でラウエルに力を貸すとは思えないが?」

「・・・これはまだ誰にも伝えてない情報なんだけどね。」

セレンティアナはレイガに耳打ちをすると、

「創造神の座を奪う、だと・・・?」

「偶然聞いたけど、確かにそう言ってたわ。しかも創造神様の方針に批判する派閥を取り込んでクーデターを我策してるみたいなの。」

「おいおい、それはヤバすぎるだろ。あんな奴が天界を牛耳ったら天界愚か他の世界そのものが総崩れになるぞ?」

「分かってる。だから私はこれを持ち出したの。」

そういい彼女は装飾が施された水晶を取り出した。

水晶の中には三つの異なる光が封じ込まれてる。

「おいこれ、『原初(げんしょ)涙珠(るいじゅ)』じゃねぇか!宮殿に厳重に保管されていた天界具、神器の一つの!」

「私はこれを持って下界へ行方をくらませるわ。世界を作り変えるには()()()()()が必要となる。でもその中の一つでもかければ世界を作り変える事は不可能。だからレイガ、天界の事、悪いけどお願いできる?」

「お願いって、そう言う事なのか?」

セレンティアナは黙って頷く。

「・・・もう二度と会えないんだな。」

「ごめんね。でも世界の均衡を守るにはこれしか思いつかないの。他でもない、貴方だからこそ頼みたい。」

レイガはしばらく沈黙すると、

「・・・分かった。これでもアンタの弟子だからな。創造神も必ず守って見せる。なんたって俺には最強の仲間が七人もついてるんだからな。」

彼の言葉にセレンティアナはクスッと笑いを零す。

そして彼女は最後にレイガを抱きしめた。

「皆の事、お願いね。」

「あぁ、今までありがとう。師匠。」

その会話を最後に二人はそれぞれの使命を背負うのだった。


――――――――


 「・・・でも、結果はこのざまだ。」

話を終えたレイガは両手の拳を強く握る。

「創造神を守り切れず、ラウエルに座を奪われ、前任の創造神も行方不明。天界は奴等『新生創造派』の連中に乗っ取られ俺達『旧創造神派』はお尋ね者。ラウエルに不満を抱く連中は多いが奴が創造神の権能を持ってる今、迂闊に手が出せないでいる。」

レイガはガクッと肩を落とす。

「情けねぇ。セレンティアナに任されたのに、俺は役目を果たせなかった。師匠に合わせる顔がねぇよ・・・。」

黙って話を聞いていたタクマは、

「多分、セナはアンタを責めないと思うぞ?たった二年だけだったけど、セナと一緒に過ごしたから分かる。」

「・・・だろうな。俺も二百年近く一緒にいたから分かるぜ。小言はうるさそうだけどな。」

「言えてる。セナの小言は結構キツイからな。」

互いに彼女を知っている二人は顔を合わせた瞬間笑い出す。

「久しぶりにセナの話が出来て楽しかった。」

「俺ならいくらでもアイツの話し相手になるぜ?セレンティアナの恥ずかしいエピソードとかな。」

「そんなこと言ったら神でも化けて出て来るかもしれねぇぞ?・・・でもぶっちゃけ聞きたい欲もある。」

「おい。」

そうして二人は再び笑い合い、それぞれの大切な人との思い出話に花を咲かせるのだった。

そして気づけば日が昇りそうな時間帯となっていた。

「そういやタクマ。お前首飾り持ってないか?紫の結晶の付いたやつ。」

「ん?紫の結晶の首飾り?・・・あ。」

以前エルフの考古学者、ランバルに貰った首飾りを取り出す。

「そうか。どおりで座標がこの国にあると思ったら。」

「どゆこと?」

「実はそのランバルというエルフ、昔からの知り合いでな。アイツとは神になった後一度だけ会いに行っててさ。俺がすぐ駆けつけられるよう座標を渡してたんだが、そうか。アイツ、タクマに渡してたんだな。」

「え、そんな重要なアイテムだったのかこれ?」

「いつでもって訳じゃねぇがそれがあればすぐ俺が駆けつけられるから大事に持っててくれ。」

「・・・分かった。いざって時には頼らせてもらうせ。」

首飾りを仕舞うとふと太陽光が差し込み目がくらむ。

「そろそろ戻るか。宗一さんの鍛冶場も直して剣を仕上げてもらわねぇと。ありがとなレイガ。セナ、母さんの事いろいろ教えてくれて。」

「いいっていいって。それよりも、この先ラウエルの奴らがお前にちょっかいをかけてくるかもしれない。十分気を付けろ。」

「あぁ。」

そうしてタクマが屋根を飛び降りようとすると、

「あ、ちょっと待て!最後にもう一つ聞きたいことがあった!」

ギリギリ踏み留まるタクマを呼び止めたレイガ。

「タクマ、お前セレンティアナから天界具を預かってないか?アイツが死んだあと野放しにするとは考えられないんだ。」

「天界具?あー、そう言えばセナが死ぬ間際に家の地下にある天界具を持ってってくれって言われたのを覚えてる。」

「こう、綺麗に装飾がされた水晶の中に三つの異なる光がある物なんだが?」

「持ってるぞ。()()()。」

そう言いタクマが指したのは()()()()()だった。

「え?」

レイガは一瞬理解が追い付かないでいた。

「実はさ。セナに言われた通り地下にあった綺麗な水晶を取りに行ったは良かったんだが、手に取ろうとした瞬間水晶が割れて中に入ってた三つの光?みたいなものが俺の体内に入ったんだよ。」

「えぇ⁉マジで⁉お前、大丈夫なのか⁉」

レイガはこれまで見せたことない程の表情で驚く。

「全然平気。もうかれこれ十年は経ってるが何ともないぞ。」

「そ、そうか?ならいいんだが・・・。」

「っと、そろそろリーシャ達を起こさなきゃ。ジームルエの心配もあるし。それじゃあなレイガ。今回は助かった。ルシファードにも礼を言っといてくれ。」

そうしてタクマは屋根を飛び降りていった。

残されたレイガは真剣な表情で口元を押さえる。

「『原初の涙珠』が砕けたってことは、()()()()()()()()()()が放たれた?しかもタクマの肉体の中に?アイツは今は何ともないと言ってるが、あの三体の事だ。ろくでもない事を企んでるやもしれない。」

レイガはガシガシと頭をかいた。

「くそ~!ラウエルに続いて原初の龍まで!問題が積み重なるなぁ~!」

ぐ~っと身体を逸らすレイガだがすぐ冷静になる。

「・・・こんなに頭を悩ませるのは久しぶりだな。あの時以来か。」

レイガはまだ人間だった頃を思い出す。

「イフル、セイグリット。お前等は、まだ俺の事を覚えててくれてるか?」


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