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『第百八十九章 罪を喰らう神』

従魔結石から放たれた虹色の光に包まれたタクマ達。

地上でミレオンとルシファードが見上げていると光りからバハムートとウィンロス、リヴの三頭が地上に落ちてきた。

三頭は気を失っているがそれ以外に異常はない様子、無事のようだ。

「タクマとジームルエは⁉」

「あそこだ!」

光りが消えると同時に元に戻ったジームルエを抱きしめるタクマが落ちてくる。

ルシファードが着地点へ急ぎ二人を受け止めた。

「他の三頭同様、気を失っているのか。」

ジームルエの指には心理の指輪はない。

無事に外すことが出来たようでルシファードも安心の表情をした。

そこへミレオンもやってきて無事に戻ったジームルエを見て涙を流す。

「良かった・・・!ジームルエ、本当に無事でよかった・・・!」

ミレオンはジームルエを強く抱きしめた。

「・・・全然力入らねぇや。」

「気が付いたか?タクマ。」

「たった今な。だけど指一つ動かすことも出来ない。悪いがしばらく支えててくれるか?」

「それは構わないが、先の力は一体なんだ?突然虹色の光に包まれたと思ったらとんでもない魔力を感じたぞ?」

ルシファードでさえもさっきのタクマ達に起きた現象は知らないでいた。

「従魔結石による極限状態?いや違う。あれよりももっと、比にならない程の強い力を感じた。」

タクマは腕輪の従魔結石を見る。

(従魔結石には、一体何の秘密が隠されてるんだ?)

結石について訝しんでいるとふとミレオンと目が合う。

約束は守ったとタクマはグッと親指を立て、ミレオンは涙を流しながらも笑顔を見せるのだった。

その時、ルシファード突如蓮磨の都方面を振り向いた。

「どうした?」

「いや、数十年ぶりにあやつらも降りてきたようだ。」

「?」

ルシファードの表情は何やら楽し気な雰囲気を醸し出していた。


 「きゃぁっ!」

ガミウに弾き飛ばされアルセラに受け止められるリーシャ。

「このっ!」

グレイス・ド・ラルも攻めるが難なくあしらわれ強烈なカウンターを食らってしまう。

「ラル!」

「上空じゃ自慢の銃火器は使えねぇもんな!ただ飛び回るお前じゃ相手になんねぇよ!」

三対一にも関わらず彼の方が優勢だ。

「リーシャ、アイツ前より強くなってるよ。」

「うん。私も戦って分かってる。」

すると突如アルセラがバランスを崩してしまいラルの上に落ちた。

「アルセラさん⁉」

「すまない・・・、アーティファクトのタイムリミットだ・・・。」

アーティファクトを外し元に戻るアルセラ。

「おいおいどうした?もう来ねぇのか?ならとっととそこをどきやがれ!」

ガミウは鎌を掲げる。

「死術・怨霊貪我(おんりょうたんが)‼」

鎌から無数の怨霊が放たれラルに襲い掛かる。

「ラル!逃げて!」

リーシャの指示に従いラルは怨霊をかわしていく。

だが数が多く怨霊がラルの脚に噛みついた。

「うわっ‼」

「ラル!」

動きを止められ怨霊は一斉に迫ってきた。

「くっ!」

リーシャが杖を構えたその時、

「『神千切り』‼」

何処からか鎌を持った青年が現れ無数の怨霊を全て切り裂いた。

「っ⁉」

「よう。自分調子に乗ってるじゃねぇか?死神の見習い小僧。」

パラパラと怨霊だった塵が降る中、巨大な鎌を肩にかけた黒と白の髪を結った軽装の青年がリーシャ達の前に立っていた。

「なっ⁉ア、アンタは⁉」

あのガミウが相当焦った表情をしている。

そして瞬く間に青年はガミウに迫り凄まじい威力の鎌を振り下ろす。

とんでもない一撃を受けたガミウはそのまま地上の森へと落ちていった。

「嬉しいぜ?この『強欲のグリード』を覚えててくれてよ。」


 同時刻、蓮磨の都ではアムル率いる天使軍に劣勢を強いられてる和国軍。

足場として援護していた樹竜ホウライに集中攻撃を仕掛けられホウライも限界寸前だ。

「アカン!このままじゃホウライが!」

「待てコヨウ!表に出るな!奴らに狙われるぞ!」

「でもスイレン!ホウライが!」

天使軍が一丸となって強い一撃を放ちホウライはとうとう倒されてしまった。

(グッ、モハヤコレマデカ・・・!)

足場の樹木を維持できずホウライが倒れると同時に崩れてしまう。

「「うわぁぁぁ⁉」」

乗っていた和国軍が次々と地上に落ちてくる。

「うおっ⁉」

ゴグマとネクトも足場と共に地上に落とされる。

受け身を取り大事には至らなかったが・・・。

「くっ!これじゃ奴に攻撃が届かない。」

ネクトはロキの力を借りれば空中でも戦えるがゴグマはそうはいかない。

しかしそこへ容赦なくアムルは攻撃の刃を止めず急降下してくる。

「ゴグマ!」

ネクトがゴグマを突き飛ばし庇うがアムルの斬撃をモロに食らってしまい弾き飛ばされる。

(しくった!)

そこへゴグマも拳を振るうがアムルの剣技に成すすべなく返り討ちにされてしまった。

「どの位置で戦っても貴様らは天使には勝てん。」

アムルは倒れるゴグマの腕に剣を突き刺す。

「ぐっ!」

「これで貴様の拳は使い物にはならん。次は城に隠れてる臆病者だ。」

アムルが場を離れようとするとゴグマがアムルの脚を掴んだ。

「ラセンは臆病者なんかじゃない・・・!誰よりも他者を想うお人好しな馬鹿野郎だ。そんな馬鹿だから俺はアイツについていくと決めた。だから、俺の親友を侮辱するな!」

アムルは脚を掴むゴグマの腕を切りつける。それでもゴグマは離さない。

「亜人ごときが、天使に触れるな。」

トドメを指そうとアムルは剣を掲げる。

「ゴグマ!」

ネクトは傷を押さえながらも助けに向かおうと動く。

その時、とてつもない覇気が突如として蓮磨の都全体を包み込んだ。

「っ⁉」

全員が驚き硬直していると一人の青年がネクトたちの下へ歩いてくる。

青年は白いローブを揺らしながらネクトたちの前に佇んだ。

(な、何だ?誰だあれは?)

アムルを見ると彼女は今まで見たことない程焦った表情をしていた。

「やれやれ。暫く来ない間に下界がこれほど影響を受けてるとはな。」

その青年は髪もローブも白く、黒いズボンを履いている。

「おい。レーネの所の小娘。俺達が潜んでる間に随分と偉そうになったもんだな?」

「ま、『魔神皇(まじんおう)』・・・レイガ!」

レイガはローブを翻し手に力を籠めると先ほどよりも強い覇気が辺りに響き渡る。

ネクトたちも気を張ってないと意識が刈り取られそうになるレベルだ。

「軍を退け。アムル。そして二度とこの国に手を出すな。俺に喰われたくなかったらな。」

レイガの背から五つの竜のような影が現れアムルは恐怖し即座に後ろに下がる。

「くっ!全軍退却!負傷したものを連れ天界へ退却せよ!」

アムルの号令で天使軍は次々に天へと消えていく。

(今奴と対峙するのはまずい!)

アムルも焦りながらも飛翔する。

「おっと、東の森の方でガミウがグリードに倒されてるぜ。アイツもしっかり持ち帰ってくれよ?」

(ガミウがやられた⁉という事は例の鍛冶師も剣も始末できなかったという事か。おのれ・・・!)

アムルは転移の魔石を起動させ森の中で倒れてるガミウを天界へ転移させた後、自身も天界へと退いていったのだった。

「ふん。所詮は腰抜けの天使と言った所か?」

レイガは負傷したネクトとゴグマに向き直ると彼らに手をかざす。

すると緑色の炎が二人を包んだ。

「熱っ・・・くない?」

「傷が!切られた腱も再生していく!」

「不死鳥の炎だ。効くだろ?」

「・・・お前は、何者なんだ?神の類だよな?だったらアイツ等の仲間か?」

ネクトはレイガを警戒している。

「元、と言った方が正しいか?まぁ簡単に言や奴等と敵対している派閥でお前等の味方であると言っておこう。」

何はともあれ、突如として降り注いだ天使軍の襲撃は無事乗り越えることが出来たのだった。


 それからしばらくして、戦いの傷を癒す蓮磨の都へタクマ達とリーシャ達が戻ってきた。

「リーシャ、ミレオン。武器ありがとな。」

「いえ、ジームルエさんを無事救えて本当に良かったです。」

気を失ったジームルエはミレオンに背負われてる。

かくいうタクマも目を覚ましたバハムートの背に倒れ込んでいた。

「しかし我らに起こったあの現象、一体何だったのだ?」

「せやねん。急にぶわ~って力が湧いたと思ったら旦那とリヴと繋がったような感じになったわ。」

「おかげでくったくただけどね。」

タクマは従魔結石を見る。

(あの現象も結石をせいだと思うが、詳しく調べる必要があるかもな。)

ルシファードとも共に都を歩いていると前方でネクトとリルアナとメルティナがレイガと話してる所を見つける。

「ネクト!・・・と誰だあれ?」

「レイガ!」

ルシファードが呼ぶとレイガたちはこちらに気付く。

そして合流したタクマとレイガは互いに目を合わせた。

「会うのは初めてだな。セレンティアナの息子。」

「っ⁉お前、母さんを知ってるのか⁉」

「その話は後でゆっくりしよう。まずは・・・。」

レイガはルシファードの前に立つと突然彼女にげんこつを食らわせ、一同は唖然と驚く。

「焦る気持ちは分かるがもう少し言葉を選べよな?」

「ごめんなさい・・・。」

あの大人の雰囲気を出していたルシファードが正座させられうるうると涙目になっていた。

するとレイガの背から二頭の竜の顎が顔を出した。

「ねぇちょっと。ルシファードがお説教受けてるの数十年ぶりに見たわ・・・。」

「可愛いよね♡」

突如身体から生えたドラゴンの顎に一同は更に驚く。

「ドラゴン⁉しかも何だか身体から生えてます⁉」

「正確にはちょっと違うけどこの姿はただ模倣されたようなものだから。」

「アスモデニス。レヴィアス。一旦下がってくれ。」

「「は~い。」」

二頭の竜の顎はレイガの体内に引っ込んでいった。

(コイツも奇妙な神だな・・・。)

「さて。改めて自己紹介だな。」

泣き止み立ち上がるルシファードと建物の上から飛び降りてくるグリードを背に立つレイガ。

「俺は『魔神皇レイガ』。七つの魔王をこの身に宿す、前任の創造神の側近だ。そしてタクマ。俺はお前の母、セレンティアナと深い関わりがある。」


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