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『第百八十一章 恋する戦神』

天界。

神々の住まう世界で一人の少女が自宅で何やら荷物をまとめていた。

「着替え、小道具、あと神器・・・。」

天界に七人存在する最高神、七天神の一人、戦神ジームルエである。

ジームルエがリュックに荷物を詰めているとノックが聞こえ親友の天使ミレオンが入ってきた。

「入るよ~ジームルエ・・・、って何してるのアンタ⁉」

「見ての通り旅支度。」

「旅⁉何で急に⁉」

「私、思った。神を辞めるなら自分から堕ちればいいって。」

「待って待って待って‼堕天神は罪の烙印なのよ⁉自分から堕ちに行こうなんて馬鹿⁉もう二度と天界に戻ってこられなくなるのよ⁉」

「大丈夫。彼と駆け落ちすれば烙印も怖くない。」

「彼って、まさか・・・?」

「タクマ♡」

不愛想だったジームルエが乙女な顔でVサインを出し、ミレオンは言葉を失い頭を抱える。

(あ~・・・、親友がどんどんおかしな方向に進んで行っちゃう・・・。あのタクマとかいう人間、何でジームルエに勝っちゃうかな?アイツに負けてからジームルエったらボ~ッとしてる時が多くなったし私とご飯食べてる時もそうだった。アイツのせいで親友が完全乙女になっちゃったじゃない!しかしこのままだとジームルエ、本当に勝手に下界に行っちゃいそう・・・。どうにか烙印だけは避けないと・・・!)

爪を噛んで考えるミレオンはジームルエを待たせ宮殿に直行する。

「セレス様!」

「うおっ⁉びっくりした!」

七天神の一人セレスの部屋を訪問するミレオン。

セレスは今目覚めたばかりの死神のガミウと天騎士アムル。

そしてもう一人の七天神の一人、従神のジエトを治療していた所だ。

「何だ?ジームルエんとこのオレンジキッズじゃねぇか。」

半笑いながらジエトがいう。

「ジエト様、私こう見えてもアムルさんと同年代なんですが?」

「え。このキッズお前と同い年⁉」

天騎士のアムルの方が遥かに大人のお姉さん感が強いため同年代であることが信じられないジエト。

そんな話は置いとき本題を話す。

剣星ヒルデとの戦いで神核を負傷した創造神ラウエルはセレスの下で療養をしており、ミレオンはラウエルに用事があることを伝える。

「一天使が創造神を直接訪問するとは。分をわきまえた方がいいぞ?」

「まぁまぁアムル。彼女は七天神に匹敵する実績と実力を持ってるんだ。何も問題はないはずだ。」

「セレス様がそうおっしゃるなら・・・。」

「創造神様だったら先ほど自室に戻られたね。」

「行き違いか・・・。」

「急いで追いかければまだ追いつけると思うよ?」

「はい。ありがとうございました!」

お辞儀をしミレオンは部屋を退室していった。

「いいのか?天使の身でありながら創造神様に直接会おうだなんて。」

「創造神様はお優しい御方だ。天使であろうが身分関係なく接してくれる。それよりもジエト。完治したからってすぐ行動するのは控えてくださいよ?君の事ですから治った瞬間例のドラゴンテイマーに報復しようだなんて言いかねませんから。」

「何で分かったよ?」

「分かりますよ。どれだけ一緒にいると思ってるんですか。」


 ミレオンは宮殿内を走り、治療を終えて自室に戻る途中の創造神ラウエルを見つける。

「創造神様!」

「ん?おや。君は確かジームルエの・・・。」

「えっと、お身体は大丈夫なんですか?」

やや緊張気味に話すミレオン。

「あぁ。問題ない。優秀なセレスに診てもらったからね。」

ラウエルは前回の降臨で剣星ヒルデと戦いで神核を一部破損していたのだ。

その傷にはタクマも関与している。

「それで?私に何の用だね?」

「じ、実は、ジームルエと共に下界へ降りる許可を頂きたく・・・。」

緊張で声が小さくなっていくミレオンにラウエルはしばらく考え込むとニヤリと笑みを浮かべる。

「確か彼女は今休暇を取っていたね。気分転換は最も大事だ。神であることを隠す事と極力下界の生命と関わらなければ許可しよう。」

「あ、ありがとうございます!」

一先ずこれで下界に降りてもジームルエに烙印が押されることは無くなった。

「それと、これを。」

ラウエルは一つの()()を手渡した。

「これは?」

「お守りだよ。ジームルエに渡しといてくれ。」

「はい!ありがとうございました‼」

勢いのあるお辞儀をしてミレオンは戻って行った。

すると物陰から側近の天使ミルルが顔を出した。

「創造神様、今渡した指輪はもしかして・・・?」

「あぁ、丁度いい機会だ。あの指輪の力、見せてもらおうじゃないか。」

眼鏡を上げるラウエルは不吉な笑みを浮かべていたのだった。

その様子を上から白い鳩が見ており、その後王宮から飛び去って行った。


 その頃の下界。

和国では都の復興の最中、一頭の銀竜が城の地下を歩いていた。

そのまま彼はスライムと戦っていた神龍の眠る地下空洞へとやってくる。

「神龍・・・。よもやその一体がこのような大国の底に眠っていようとはな。」

バハムートが神龍の封じ込まれた巨大な結晶を見上げていると一際強い存在感を感じ取り身構えた。

「何奴!」

すると暗闇から出てきたのは大きな六枚の白い羽を有した美しい女性だった。

「こうして対面するのは初めてだな。」

女性からはあの七天神、いや、それ以上に強い気配がし警戒するバハムート。

「そう身構えるな。私は君達の敵ではない。」

敵意が無いことを示すため手を広げる女性。

「貴様、この魔力。以前から我らを監視していた者だな?」

「気付かれてたか。まぁ正解だ。とある事情で君達の動向を見守らせてもらってたぞ。」

「貴様からは神気を感じる。神の類であることは間違いなさそうだな?」

「確かに私は天界の者だ。だが安心しろ。私は『旧創造神派』の者だ。君達と敵対している『新生創造神派』ではない。」

彼女の気配からして嘘はついていない。

一先ず矛を納めるバハムート。

「改めて名乗ろう。私はルシファード。かつて七つの大罪と謳われた魔王の一人だ。」

「魔王が神?随分厚生したような様変わりだな。」

「少々事情があってね。一先ず君達の味方だと思っててくれればいい。」

話を切り替えルシファードは神龍の結晶を見上げる。

「神龍、この大陸にもいることは把握していたが、このような形で見つかるとはな。」

「神龍は世界に五体存在する。そのうちの一頭は従神の手により目覚め、解き放たれておる。今は何処にいるのかは不明だがな。」

「神龍は一体でも世界を揺るがす程の力を有しておる。特のこの三つ首の巨龍。コイツは特に厄介だ。」

「知っておるのか?神龍の詳細を?」

「君達と既に遭遇し目覚めた奴と、この神龍だけだがな。・・・コイツは神龍の中でもずば抜けた破壊の力を持つ。この神龍の名は、『悪神龍・アジ・ダハーカ』。」

「アジ・ダハーカ・・・。」

「アジ・ダハーカは神龍の中で随一強大な破壊力を持つ。もしこやつが目覚めていたらこの国は一瞬で滅んでいただろう。」

そのような存在が解き放たれたらと思うと正直考えたくもない。

「とことん我の主には感謝せねばなるまい・・・。」

「あぁ。君の主、タクマは特別な人間だ。普通神を葬るなんて人間業ではないわ。」

からかい混じりに言うルシファードだった。

「だが、君達の存在はあの()()にとっても大きい。これからもよろしく頼む。」

「ん?あの御方とは誰の事だ?」

「いずれ分かるだろう。さぁ、君の知りたがっていたこの神龍の事は片付いた。早いとこ彼らの下へ戻るといい。君もまだ万全ではないのだから。」

「・・・そこまで知っておるのか。つくづく気味の悪い神だ。」

「誉め言葉として受け取っておこう。」

去り際にバハムートは立ち止まり振り返る。

「まだ貴様の全てを信用したわけではない。不可侵であるのなら我からも何も言わん。監視でもなんでも好きにするがいい。」

そう言い残し地下空間を後にしていった。

「流石は現役の王。とんでもない覇気だ。」

ルシファードは再び神龍を見上げる。

(奴らは既に神龍を手中に収めようと我策し始めてる。そろそろ従神も傷が癒えてる頃合い。この先より厳しい激戦となってくるだろう。すまないが頼むぞ、ドラゴンテイマー。)

その時、仲間から念話が届いた。

「どうしたレイガ?珍しく連絡を入れてくるとは。」

『ルシファード。お前今例のドラゴンテイマーと同じ所にいるよな?』

「無論共に和国に鎮座している。それで要件はなんだ?」

『フェニスが情報を持ち帰ってきた。奴め、とうとう()()を使いやがったんだ。』

「・・・まさか!」

『あぁ。ジームルエに、『心理の指輪』を持たされた!』


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