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『第百七十四章 絆と決意』

「おらぁぁぁぁ‼」

鬼気闘魂により強化されたゴグマは次々と襲い掛かるスライムの操る屍をぶっ飛ばしていく。

「っ!すまねぇ。ラジルのおじき・・・!」

知り合いだった鬼族のアンデットもぶっ飛ばすと女性型のアンデットにのしかかられる。

「フーリンの姉さん・・・!くそ!」

彼女を蹴飛ばしすぐさまアンデットの群れから距離を取る。

「くそ!埒が明かねぇ!」

何度も立ち上がるアンデットの大軍に嫌気がさしていると兄ルガンのアンデットの動きがおかしいことに気付いた。

何かに抵抗するように苦しんでおり、何度も壁や棺にぶつかっている。

「何やってるんだ?」

何かに抵抗しながら歩んでいく先には犠牲者の所有物であっただろうガラクタの山に向かっており、ルガンのアンデットがこちらに何かを訴える始める。

すると直感が何かを悟りゴグマは大軍を払い除けガラクタの山にダイブした。

物をかき漁っていると一冊の本が目に止まった。

「兄貴!」

ゴグマは本を取りルガンに向かって投げつける。

ルガンが本を受け取ると眩い光に包まれた。

すると取りついていたスライムの分体が退き剥がれアンデットの身体がみるみる浄化されていく。

「っ!」

そしてそこには細身ながら筋肉質な眼鏡の青年が立っていた。

「ふう、俺の考えていたことをしっかり悟ってくれるとは、流石俺の弟だな。ゴグマ。」

「兄貴!」

なんとアンデットからルガンが元に戻ったのだ。

ゴグマは何が起きたのか分からなかったが兄ルガンとの再会に涙した。

「本当に、兄貴なんだよな・・・!」

「正真正銘、兄のルガンさ。」

「良かった・・・、兄貴が無事で・・・!」

「・・・それは違う。ゴグマ。」

「え?」

ルガンは説明し始める。

「俺はもう既に死んでいる。だがお前を残してしまった未練が身体に染みついていたみたいでな。そんな中お前の鬼気に当てられ僅かに意識が戻り、俺の魔導書の魔力で一時的に蘇生したんだ。」

「???」

「・・・。つまりな、今だけ生き返ってるって意味だよ。」

「お、おう・・・。そうなのか・・・?」

頭がこんがらがってるとアンデットの大軍が再び立ちはだかってきた。

「積もる話は後だ。まずは彼等を苦しみから解放してあげるんだ。」

「オーケー、兄貴と一緒なら不思議と負ける気がしねぇ!」

ゴグマとルガン。

二人の兄弟が肩を並べる。

そして先にゴグマが飛び出した。

自慢の怪力で次々とアンデットをなぎ倒していくがやはり何度も立ち上がってくる。

「ゴグマ!受け取れ!」

そこへルガンが魔導書から光の玉を放ちゴグマの籠手に付与させる。

「聖魔法を付与した!それで殴ればアンデットを浄化できる!」

「流石里一番の魔導士だ!サンキュー兄貴!」

聖魔法が付与されたゴグマの一撃はアンデットを浄化させ消滅させた。

「いけるぜ!」

ルガンの知恵、ゴグマのパワー。

その二つが合わさり強大的な力を発揮する。

次々とアンデットを開放していくゴグマとルガン。

知り合いだった鬼族のアンデットも塵となり消滅していく。

「ラジルのおじき、フーリンの姉さん、ゆっくり眠ってくれ・・・。」

その時、一際大きな気配を感じ取った。

「ゴグマ!気を付けろ!」

ゴグマが身構えると暗闇の奥から重い地鳴りと共に巨大なアンデットが姿を現した。

「コイツは、オーガ⁉」

「奴め、オーガまで利用してたのか!」

オーガは鬼族と遠い関係に当たる魔獣。

しかも一部のオーガとは有効な関係になっている。

「やりづれぇな・・・。」

「ゴグマ、よく考えろ。コイツも恐らく奴らの被害者だ。だったら俺達がやることは一つ、あの苦しみから解放してやるんだ・・・。」

「・・・そうだな。遥か遠くと言えど親戚だ。安らかに眠らせてやる!」

ゴグマは武術の構えを取り妖気を身に纏う。

「行くぜぇ!」

一気に攻め入りオーガは棍棒を振り上げる。

「兄貴!指示してくれ!」

「あぁ!右にサイドステップ、その後に奴の顎の付け根を殴れ!」

指示の通り振り下ろされた棍棒を右にかわし跳躍。

顎の付け根を思いっきり殴りオーガはふらつく。

「脳が揺れれば意識が朦朧とする。この隙にゴグマに身体強化術を付与!」

「うおぉぉぉ‼」

鬼気闘魂に加え身体強化のなされたゴグマは素早いスピードでオーガの懐に入る。

そして強烈なアッパー攻撃で宙に浮かせ更に跳躍。

オーガの背にしがみ付いた。

「これが代々長を護衛してきた一族!そして、俺達兄弟の力だぁ‼」

そのまま回転し強力なジャーマンスープレックスをお見舞い。

取りついたスライムの分体ごと叩きつぶし、オーガは塵となって消えたのだった。


 「ハァ、ハァ・・・。」

立ち上がるゴグマにルガンが手を貸す。

「流石の怪力だな。」

「兄貴の補助のおかげだ。・・・またこうして兄貴と戦えるなんて、夢でも見てるみたいだ。」

「でもその夢も、そろそろ覚めてしまうな。」

するとルガンの身体が徐々に光の粒となって消え始めたのだ。

「兄貴⁉」

「さっきも言っただろう。俺は一時的に生き返ってるだけだって。つーか蘇っただけでも奇跡みたいなもんだぞ?」

「そんな・・・。」

「そんな顔をするな。らしくない。・・・あの時の事があってから、お前は人間を酷く憎んでいるんだろう?でもな、全ての人間が悪って訳じゃない。それはお前ももう分かってるだろ?」

そう言われゴグマはタクマ達の事を思い出す。

「忘れろとは言わない。むしろその経験を活かしラセンやお嬢に悪い奴等が近づかないようお前が守れ。それが俺達一族、そして、俺との最後の約束だ。」

ルガンは自身の魔導書をゴグマに投げ渡す。

「忘れるな。俺はいつでもお前等を見守ってる。」

「兄貴・・・、あぁ!ラセンは、親友は俺が守る!」

「それでこそ俺の弟だ!」

二ッと笑顔を見せ二人はグータッチする。

「じゃぁな。長生きしろよ。」

そうしてルガンは光の粒となって消えていった。

「兄貴、ありがとな。俺はもう、決して迷わない!」

ルガンの形見である魔導書を握りゴグマはそう決意したのだった。


 城の最上階、王の間ではタクマ、アルセラ、コヨウ、ラセン、スイレンの五人が堕天神ジャバルに果敢に挑んでいたが相手は腐っても神。

五対一にも関わらず向こうが優勢だった。

「『水遁の龍・滝登り』!」

「居合・牙贋炎焦(ががんえんしょう)!」

スイレンの水の龍をタクマの炎で加速させジャバルに食らわせる。

だがジャバルは吹っ飛ぶだけで大したダメージにはなっていない様子だ。

「合わせ技ですか。やりますね。」

そこへ畳みかけるように原始化したコヨウがラセンを乗せて駆け迫る。

「おら食らえ!」

マッハで繰り出されるラセンの拳が炸裂するがこれもやはり吹っ飛ぶだけでダメージは無かった。

それどころかむしろ元気だ。

「ハハハッ!いいですよ!最高の退屈凌ぎです!さぁもっとかかってきなさい!神龍復活までも余興はまだ終わりませんよ?」

そこへフェニックスのアーティファクトを開放したアルセラが切りかかるがジャバルの漆黒の翼に受け止められる。

「まだ退屈しのぎと愚弄するか貴様!貴様のせいでどれほどの命が失われたと思っている!」

「さぁ、どれ程でしょうね?」

悪びれる様子もなくヘラヘラと笑顔を見せるジャバルにアルセラは更に怒る。

凄まじい剣捌きで切りかかるも翼はまるで金属のように固くジャバルのはっけいで弾き飛ばされてしまう。

「ぐっ!」

「あまりアーティファクトの力を酷使するなアルセラ!まだ諸刃の剣だろ!」

「それでも、この力でなければ奴に致命傷は与えられない。」

確かにタクマ達がどれほど攻撃しても傷一つ付かなかったジャバルの翼が若干かけていた。

「聖獣、それも不死鳥の力ですか。なんとも厄介ですね。」

聖獣は神の獣。

神を倒すには同じ神をぶつけるという事。

(リーシャの神特攻の力も似たようなものなのか?)

しかし依然ジャバルは余裕の状態。

どんなに攻めても状況は変わらない。

(このままじゃアルセラのタイムリミットが・・・!)

「エレメントを返せ!ジャバル!」

スイレンの鋭い一撃がジャバルを捉えるが漆黒の翼に阻まれる。

「そこまで言うのでしたら取り返してみてください?出来るのならね。」

スイレンを弾き飛ばしエレメントの宝玉を手に取る。

「今しがたコレの有意義な使用法を思いついたのです。皆さんには特別に見せてあげましょう。私の研究成果を!スライム‼」

地下の方でバハムート達と戦っていたスライムが突如動きを止め、頭上へ向かって大きく口を開けた。

すると口部に強力な魔力渦が蓄積され轟音と共に放たれる。

「っ⁉」

「何⁉」

「何や⁉」

放たれた魔力の渦は城の階層を破壊しながらぐんぐん上昇していき、ジャバルのいる将軍の間へと到達した。

「何だ⁉」

「私が天界で研究していた物。それは命。生きとし生ける者は世界にとってとても儚く尊い。しかし、その泡沫の夢にも必ず終わりが訪れる。長く生きたい。もっと多くの事を知りたい。そう言った願いを抱く者はいるが誰一人それを成し遂げられない。死という概念がある限り。ですが私はその概念を打ち破ることに成功したのです。私の秘術があれば誰も死なない、永遠に生き続けられる事だ出来るのです!これぞ神のみにこそ成せる行幸‼」

ハイテンションで語っていたジャバルは途端に静かになる。

「・・・ですが、その偉大な私の研究を神々は認めなかった。私はただ日々力が衰弱していく()()()()のためにも不死の研究を行い、それがようやく実ろうとしたのに!それを他の神々に邪魔された。挙句の果てにあの御方に嘘の情報を流し、私を悪と決めつけさせ、私を天界から追放した。私は何のために頑張ってきたのだろうね?愛する御方のためにしてきたことなのに・・・、教えてくださいよ?」

彼から感じる憎悪の感情と表情にタクマ達は一瞬恐怖する。

「だから私は、神龍を蘇らせ私を愚弄した神々へ復讐、報復するのです!それを今度は貴方達に邪魔され私の堪忍袋はもう限界です。今こそ私の研究の全てを持って、貴方達を葬り去ってあげましょう‼」

ジャバルはスイレンの四属性のエレメントを魔力渦の中に放り投げ、手を複数回編みこむ。

すると渦を中心に魔法陣が展開される。

「さぁ死から蘇るのです!神龍の眷属!双頭竜よ‼」

手をパンと叩くとエレメントの宝玉を中心に骨が現れ骨格が生成。

肉もまとわりついていき鱗に覆われる。

眼がぎょろりと光り、一つの胴体に二つの首を持つ双頭竜がタクマ達の前に現れたのだ。

「「グオオォォォ‼」」

「やはり、貴様はあの時の・・・!」

その竜は過去、仲間の命を奪った同一個体であり、スイレンはギリッと歯を食い縛る。

「『死者蘇生』。それが私の到達した研究の全てです。さぁ、神の奇跡の前に絶望なさい!」


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