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『第百六十五章 将軍襲来』

和国城の地下では激しい戦いが繰り広げられていた。


 アルセラと将軍、二人の剣士による剣同士のぶつかり合い。

アルセラの両手剣に対し、将軍は魔力で形造った刀。

しなるような剣筋で美しく舞うその姿は水蓮の葉が浮かぶ夜の湖のよう。

時折つい見惚れてしまうほどだ。

『何ボケッとしておる!来るぞ!』

「っ!」

カリドゥーンの声に我に返るも既に目の前には体勢を低くして刀を構える将軍がいた。

「『水遁(すいとん)の龍・滝登り』‼」

振り上げる刀から水の竜が現れ水流のごとくアルセラに襲い掛かる。

「ぐうっ⁉」

なんとかガードするも勢いが強くアルセラは後方へ押し飛ばされる。

「私の前で水竜を模すなんていい度胸じゃない!」

リヴも負けじと飛び掛かり拳を振るう。

しかし将軍の剣捌きに悉くいなされあしらうように転がされてしまう。

「キィ~!なめられてるみたいでムカつく!」

そして将軍は呑気に準備運動をしているラセンに目が止まった。

「さてと、そろそろ俺のリベンジマッチに付き合ってもらおうか?」

「余裕でいられるのも今の内だ。一瞬で貴様の首を斬る。」

「やってみろよ?」

一瞬の沈黙から一遍。

先ほどの比にならない程の激戦が始まった。

彼女の剣、そして右手にガントレットを装着したラセンの拳。

その二つのぶつかり合いが火花を散らしていた。

「それが貴様の本気か。」

「まぁな。」

復活したアルセラとリヴ二人も加わり三対一となる。

だが有利になるどころか戦況は変わらない。

三人の攻撃をいとも簡単に同時に相手しているのだ。

「刀一本で私達を同時にいなすなんて・・・!」

剣士としてのレベルが以上に高かったのだ。

しかし果敢に攻めている内に少しずつだが将軍を押せてきた。

「やっぱ俺達を同時に相手するのは難しいみたいだな。」

ギリギリとガントレットで刀を抑え込むラセン。

「一本ならな。」

すると彼女は左手からもう一刀の刀を具現化させ振り上げる。

身体をそってかわしたラセンは後方に下がる。

「マジかよ・・・。」

将軍の両手には魔力の刀が。

「二刀流!」

将軍は二本の刀を構えると刀身にそれぞれ水と炎を纏う。

「『灼熱の龍・焔舞(ほむらまい)』‼」

左の刀から炎の龍が燃え上がり、焔を纏って突進してくる。

「うわっ!」

「きゃぁっ!」

アルセラとリヴを容易く蹴散らしラセンに迫る。

「おらぁっ‼」

だがその焔の龍をラセンは力づくで止めた。

「っ⁉」

「『鬼気闘魂』‼」

黄金のオーラを纏ったラセンは力づくで焔の竜を巴投げ、中から将軍が飛び出す。

「なんつー怪力・・・!」

「流石鬼族と言うべきか。」

しかし将軍はすぐさま攻め直し今度は水を刀に纏ってラセンに切り掛かる。

「臨機応変に加えて複数属性たぁ面倒だな!だが俺も鬼族として意地がある!なめんじゃねぇぞ!」

ラセンもギアを一段階上げ激しい戦闘へと移行する。

「くっ!貴様ら鬼族は、絶対に許さん!」

将軍の剣技も更に激しさを増した。

するとアルセラはある違和感を感じ取った。

「・・・何故彼女はあそこまで鬼族を敵視しているんだ?それにあの眼、憎悪が込められてる。」

『分かるか小娘。』

定かではないとはいえ、いくら鬼族が人族を殺したとしてもあそこまで憎悪を露わにすることはないはずだ。

「双方の言い分には矛盾がある。もし彼らの対立の真実が明白になれば、もしかしたら彼女と戦う必要は無くなるかもしれない。」

「でも確証も何も情報が少なすぎてるわ。今すぐ解明しようにも・・・。」

将軍とラセンの戦いは地下の天井を崩す勢いだった。

このまま長引けば全員生き埋めとなる可能性がある。

「一度戦いを止めさせる!」

「そもそも聞く耳持つの?あの女?」

「分からない。もし止められなかったら、リヴ、君が氷か重力の魔法で彼女を止めてくれ。」

「・・・頑張るわ!」

アルセラはカリドゥーンにシルバーパイソンのアーティファクトを装着し手足に氷の手甲を装備する。

「一度頭を冷やしてもらうぞ。二人とも!」

刀身が青くなったカリドゥーンを滅茶苦茶に振り回し冷気の風を起こす。

すると辺りが徐々に霜がついていき、将軍とラセンが我に返る。

「っ!アルセラ?」

「ラセン!このまま戦ってはこの場が崩れて生き埋めになってしまう!それに、彼女と一度話がしたい!」

必死に呼び掛けるが、

「貴様らに話す言葉など、ない!」

将軍は聞く耳を持たず刀に炎を纏いアルセラの冷気を吹き飛ばした。

「ぐっ!」

「うわっ⁉」

空中に居たためかラセンが身動き取れず、将軍の刃が完全に彼を捉えてしまった。

「やべっ!」

「ラセン!」

その時、

「居合・炎突(ほむらとつ)‼」

将軍が現れた天井の大穴から炎の突きが打ち出され、将軍の剣筋を弾き飛ばした。

「っ⁉」

ラセンが地面に腰を打った直後に降り立ったのは、タクマだった。

「タクマ!」

「主様!」

将軍は立ち上がり刀の埃を振り払う。

「ようやく相まみえた!異国の剣士!」

将軍の目つきが先程よりも鋭くなる。

「この大穴、あの将軍が空けたのもだったか。」

「それにしてもタクマ、どうして君は穴からやってきたんだ?」

「あ?落とされたんだよ。あのクソネコに!」

「く、くそねこ・・・?」


 時は少し遡り、上階ではちあった糸目の侍と対峙するタクマ達。

「お前を退けてタマモさんの居場所を吐いてもらおうか。」

「・・・ん?タマモって、妖狐族の長の事だよね?こっちに来てるの?」

「しらばっくれんなや!貴様んとこの宰相が母様を連れ去ったんやろが‼」

コヨウは今にも飛び掛かりそうな勢いだ。

「ちょ、ちょっと待って!本当に知らないって!宰相さん自ら動いてたってこと⁉」

激しく動揺する糸目の侍。

まるで何も知らなかったような演技、いや、本当に何も知らないのか?

妙な疑問が頭を飛び交う中、ゴグマとコヨウの背後から彼に声をかけられた。

「ふ~ん、なんか面白そうな事になりそう。」

「ふぎゃぁっ⁉」

「っ⁉」

毛を逆立てて驚くコヨウと珍しく驚くゴグマ。

二人の間をすり抜けるように猫耳フードの少年ナナシが現れた。

「お前また・・・。」

幽霊(ゴースト)なので♪」

糸眼の侍は突然現れたナナシにキョトンとしているとナナシは急に立ち止まり耳を澄ました。

「・・・・・なるほど。」

「ナナシ?」

「皆、少しこの辺りから離れた方がいいかもしれないよ?」

「「?」」

するとどこからか地響きが鳴り、次の瞬間天井が水と共に崩れ落ちてきたのだ。

「うわぁ⁉」

全員が大慌てで離れると大量の水はそのまま床を破壊しどんどん下層へと落ちていった。

「な、何だ今の?」

タクマが空いた大穴を覗き込むと、

「てい!」

ナナシに尻でど突かれた。

「え?」

そして案の定、タクマは大穴に落ちていった。

「ナナシ~⁉お前~⁉」

「いや~ごめんね。ちょっとあそこの侍と話したいことがあってね。それに、()()()()()()()()()()()()()()()があるかもしれないから、それもついでに探ってみてね。」

ニッコリと手を振るナナシにタクマは怒鳴りながら奈落へと消えていった。

途中むき出しになった城の骨組みに掴まり落下を防いだタクマだが、穴の奥で何かが戦っている音がしたため登るのも不可能な今下へと向かったのであった。


 「次アイツと会ったらケツ蹴飛ばしてやる!あのクソガキ!」

恨み増し増しで愚痴るタクマにアルセラは苦笑するしかなかった。

瓦礫を押し退けラセンも復活する。

「・・・ずっと探し求めていた。」

すると将軍は刀をタクマに向けた。

「私と戦え!異国の剣士!」

「俺か?」

「そうだ。貴殿はあの処刑の日、私の剣技を初見で見切った。私の、いや、私達の剣技は絶対の威厳。それをいとも簡単に見切られては私達の恥だ!その汚名を、貴殿を倒し取り戻す!」

将軍は腰を低くし居合の構えを取る。

「威厳ね。たまたま、て言ったら尚失礼か。・・・分かった。それでお前の気が済むなら、相手してやるよ。」

タクマも腰を低くし剣に触れる。

「あ、まずいかも!」

何かを悟ったリヴはアルセラとゴグマを抱え上げ慌てて二人から距離を取る。

その瞬間、二人の居合抜刀が炸裂し強烈な風圧がリヴ達を吹き飛ばした。

そしてタクマと将軍、二人の最強格がついに激突したのだった。


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