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『第百五十八章 影の揺らめき』

タクマ達が妖狐族と一悶着やってる頃、別の街で行動しているネクト、リルアナ、アヤメ、メルティナとラルの五人はとある飲食店で休憩していた。

「・・・分かった。じゃぁこっちは和国軍の連中の動きを掴めばいいんだな?」

『あぁ、妖狐族の話じゃ奴等、何か裏で企んでるみたいだ。念のため調べといてくれ。・・・無茶はすんなよ?』

「うわ、お前に心配されるとか吐き気がする・・・。」

『あぁ⁉んだとテメッ・・・⁉』

スマホもどきを切り割愛させるネクト。

「タクマ達が鳳凰の祠を見つけたの?」

肉まんをもきゅもきゅ食べるリルアナが問う。

「あぁ。それと同時に和国軍の連中、なんかきな臭い事を陰でやってるみたいだ。俺達はそれを探る。」

「わらわも異論はない。ネクト様の行き先にアヤメありじゃ!」

一緒に食事するラセンの妹アヤメにリルアナは鋭い視線を飛ばす。

(度々耳にした魔力持ちの人間の失踪、理由はそう言う事か。しかし何故連中は魔力持ちの奴を連れ去るんだ?その共通点に何か意味があるのか?)

考え込んでいると何かデジャブのような感覚がした。

「ネクトさん?」

「どうしたの?」

「・・・いや、なんでもない。」

(まさかな・・・。)


 その日の夕方、一通り調べ物を終えたネクトたちは宿にやってきた。

「ん?ガキどもはどうした?」

「なんか買いたい物があるって言って三人で出かけたわ。」

窓の外を見ると日が沈みそうだ。

「はぁ、こんな時間にガキだけで出歩くなよ。アイツ等に何かったら俺がタクマにどやされるんだぞ。」

「すっかり保護者だね。」

「うるせ。」


 アヤメとメルティナ、ラルの三人が買いたかったもの。

それは食材だった。

「今日は二人に沢山お世話になったから手料理をご馳走したいなって思って。」

「料理ならわらわも得意じゃ。ネクト様の胃袋を掴むには持って来いの作戦。リルアナに度肝を抜かしてやるぞ!」

楽しそうな二人。

「そう言えばあの小さい小竜は?」

「鞄の中で寝てる。あちこち動き回ったから疲れちゃったみたい。」

鞄を開けるとメルティナの言う通り、ラルが丸くなって寝ていた。

するとメルティナも小さなあくびをする。

「まだまだ子供じゃな。どれ、お姉さんとしてわらわがおぶってやっても・・・。」

その時、ガラの悪い小太りの男が人混みをかき分けメルティナを連れ去ってしまった。

「っ⁉なんじゃ⁉」

アヤメは更に驚く。

あんな大勢の前で子供を攫ったのに街の住民たちは気付いた素振りも見せないのだ。

(何故周りの連中は気付かんのじゃ⁉)

「いや!そんな事疑問に思ってる場合じゃない!メルティナ!」

アヤメも急いで後を追った。


 メルティナを攫った男は建物の路地裏にやってきた。

そこにはもう二人の男もいる。

「認識疎外の札はしっかり動いてるか?」

「あぁ、問題ねぇ。」

「その子供は?」

()()に貰った呪具を使って見た所、とんでもねぇ妖力量だった。多分数千人分、いや、数万の妖力を持ってやがる。」

口を押えられもがくメルティナ。

「こんな子供が数万人の妖力量・・・!」

「コイツを旦那の所へ連れてけばとんでもねぇくらいの金が貰えるんじゃねぇのか?」

「そうと決まればすぐ蓮磨の都に・・・!」

「ちぇすとー‼」

背後から追いついたアヤメが拳を突き下ろす。

だが寸前の所で気づかれ避けられてしまった。

「な、コイツ一緒にいたガキ!」

「先ほど聞こえた話じゃが、わらわの友人を連れ去りおって!メルティナを返してもらうぞ!」

鋭い気迫が溢れ出ている。

「くそっ!そこまで妖力を持ってなかったからスルーしたのに!おい!お前等なんとか足止めしてくれ!その間俺はコイツを連れてくからよ!」

「報酬の山分け忘れんなよ!」

他の男二人もアヤメに襲い掛かるがアヤメは鬼族。

人間を遥かに上回る身体能力で二人をあしらい、殴り蹴飛ばし壁に叩きつける。

鬼族らしく荒々しい戦い方だった。

「チッ!」

メルティナを抱えた男は路地裏を逃げ回り、アヤメが後を追う。

逃げ回ってるうちに行き止まりに追い込まれた。

「もう逃げられんぞ!」

拳を構え走り出そうとした瞬間、

「それ以上近づくとこのガキの首をへし折るぞ!」

メルティナの首に手をかけアヤメは立ち止まる。

「下劣な・・・!」

「金は惜しいが命の方が惜しいんでね。」

そこへ先ほどぶっ飛ばした男二人がアヤメの背後から現れた。

(こやつら!気配がしなかった⁉)

「あぐっ!」

メルティナを人質に取られ動けないところを取り押さえられてしまうアヤメ。

「下手に抵抗するなよ?このガキは勿論、お前自身の身にもな!」

メルティナを人質にされてはいくら鬼族のパワーでも迂闊に動けない。

アヤメはガクッと力を抜いた。

(アヤメさん!)

するとメルティナが男の手に噛みついた。

「痛っ!このガキ‼」

苛立った男は腹を蹴り、メルティナは気絶してしまった。

「き、貴様ぁぁ‼」

幼子をいたぶられアヤメは更に怒る。

「おいお前等!その女が抵抗できないようしっかり調教してやれ!」

「という訳だ。その身体にたっぷり叩きこんでやるぜ!」

抵抗も空しく、アヤメは服を破かれ始める。

「ざまぁねぇな。」

だがその時だった。

気絶したメルティナの眼が開き、赤い眼光を放ったのだ。

『リンクジャック‼』

鞄の中にいたラルを取り込み漆黒の球体に包まれる。

そして球体が爆散すると漆黒の髪に黒い翼。

左右非対称な黒い服装に顔の半分を禍々しい仮面で覆った少女が現れる。

『ヘルズ・ラルマ‼』

突如として現れた漆黒の堕天使。

ヘルズ・ラルマは自分を捕まえていた男ごと上空へ飛翔する。

「な、何だ⁉誰だお前は⁉」

「ヒャハハハハ!さっきは随分調子に乗ってたみたいだな?すぐにその面歪ませてやるよ!」

男の後頭部を掴み急降下し、地面へと叩きつけた。

土煙が晴れると顔面がぐしゃぐしゃにされた男がヘルズ・ラルマに掴み上げられていた。

「デブだから多少衝撃を吸収したか。まぁもう一度やればいいだけだがな!」

今度は壁に思いっきり叩きつけ、追い打ちで男を壁ごと蹴り崩した。

「あ、兄貴・・・?」

唖然とする男二人をおぞましい笑顔で睨むヘルズ・ラルマ。

「ひぃぃぃ⁉」

「化け物だぁ⁉」

逃げ出す男二人。

だが、

「逃がさねぇよ。」

ヘルズ・ラルマは右手をかざす。

「『デッドリーネビュラ』!」

青黒い炎が噴射され男二人が飲み込まれる。

「「ぎゃあぁぁぁぁぁ⁉」」

そして塵一つ残らず燃え尽きたのだった。

「他愛のねぇ連中だな。」

その光景を一部始終見ていたアヤメは顔を青くしたまま空いた口が塞がっていなかった。

「おい。いつまでアホみてぇに口開けてやがる。」

正気に戻ったアヤメはヘルズ・ラルマに問う。

「お、お主はなんなんじゃ?メルティナなのか?」

「初見の奴は大体そう言うが、私はヘルズ・ラルマだ。白い奴、メルティナとは別人だ。」

「で、ではメルティナはどうしたのじゃ?彼女はどうなったのじゃ?」

すると突然ヘルズ・ラルマはアヤメの口元を掴んだ。

「のじゃのじゃうるせぇぞ。私がいちいち質問に答えると思うか?白い奴の知り合いかどうかは知らねぇが、分をわきまえろよ?」

(メルティナ・・・!)

その時、頭上から長刀が振り下ろされ、ヘルズ・ラルマはアヤメから離れた。

「おい。何だこの状況は?」

現れたのはネクトだった。

「ネクト様!」

ネクトは服を破かれたアヤメを見て羽織っていたマントを被せた。

そして周りの惨状を見渡す。

「お前がやったのか?メルティナとラルはどうした?」

ネクトが睨むもヘルズ・ラルマは平然とギザギザの歯を見せて笑っている。

「ネクト様、彼女がメルティナなのじゃ。」

「なに?」

アヤメはこれまで見た事をネクトに話す。

「メルティナとラルが融合、どおりでお前から二人の気配がするわけだ。」

「んで?この後どうするんだ?さっきの一撃からして私を殺そうって言う気を感じたが?」

確かに先ほどはヘルズ・ラルマがメルティナだと知らなかった。

だが、

「勘が騒いでる。お前をこのままにしちゃいけないってな。」

長刀から緑のオーラを纏った細長い槍へと変化させ構える。

ネクトの本気モードだ。

「ずっと引き籠ってて身体が鈍ってんだ。せっかくアイツ等が近くにいねぇんだ。このまま自由にさせてもらうぜ?」


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