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『第百五十五章 妖狐族の縄張り』

未だコヨウから信用を得られていないタクマ達。

だがリーシャにだけは心を開いている様子。

そんな彼女に案内されてきたのはつる草に覆われた洞窟の入り口だった。

「見事にカモフラージュされてるな。言われなきゃ気付かないほどだ。」

ラセンが言う。

「ここは縄張りへの門みたいなもんや。人間は勿論、他の種族もあまり立ち入らない妖狐族の砦。でもアンタ等はウチを助けてくれた。アンタ等を特別に縄張りに入れたる。ついてきや。」

そう言いコヨウが洞窟に入って行った。

「コヨウさん待って下さ、きゃぁぁぁ⁉」

「リーシャ⁉」

後に続いて入って行ったリーシャの悲鳴が上がり慌ててタクマ達も洞窟に飛び込む。

と、

「おわぁぁぁ⁉」

飛び込んだ全員が入口手前で落下したのだ。

まるで滑り台のように洞窟を落ちていき、狐の石像の口から出てきた。

「いてて・・・。」

「ゴグマ、どいてくれ・・・。お前が一番重い。」

「おっと、すまん。」

ゴグマのマッチョな体重に押しつぶされる前になんとか一命を取り留めたタクマ達。

「ほら、ついたで。」

起き上がるとタクマ達の眼に映ったのは、陥没した地形の中央にそびえ立つ巨木を中心に街が広がっていた。紅葉がなんとも美しい街並みだった。

「ここが妖狐族の縄張り?完全に街じゃないか!」

ラセンが驚いた表情で言う。

「この規模の街なら外からでも気づいたはずなのに?」

リーシャが疑問に思ってるとコヨウが説明してくれた。

「この里は母様の妖術によって守られとるんや。外からはただの森の一帯にしか見えへん。」

これ程の規模の街を覆うほどの妖術。

コヨウの母親はとんでもない人なのかもしれない。

「でも入ったはいいが、今更だが他種族の俺達が入って大丈夫なのか?」

ラセンが不安になるのも無理はない。

人間、ドラゴン、人間に似せているが鬼族。

他種族に対する問題がないわけではない。

「そこはウチがなんとかするやさかい。とにかくアンタ等には一度母様に合わせときたいんや。」

何やら強情気味なコヨウだが深く詮索せず身を任せることにした。


 コヨウに案内され一同は街の中央通りを歩いていく。

道中街の妖狐族達から強い視線を浴びせられるが鬼の里でも同じことがあったのである程度は平気だった。

(他種族に対してというより、俺達人間に対して視線が強い。この国の人間は何をしでかしたんだ?)

訝しんでる間に一同は中央の巨木の麓に立つ大きな屋敷にたどり着いた。

「こっちや。」

すると門を潜り抜けた瞬間、鋭い殺気が迫ってくることに気付く。

咄嗟に剣を引き抜き迫ってきた剣を受け止めた。

「なっ⁉」

「・・・。」

切り掛かってきたのは妖狐族の若い男だった。

髪を後ろに束ね刀を持ってる辺り侍のような背格好だ。

男は咄嗟にタクマと距離を取る。

「人間が、俺の剣技を見切ったのか・・・?」

「おい!ウチの客人に何すんのや!シュウ‼」

シュウと呼ばれた男はぐっと固まる。

「客人つってもお前リーシャにしか心開いてねぇやん。」

ウィンロスに指摘されぐうの音も出ないコヨウ。

「・・・コヨウ様、何故他種族を我々の縄張りへ入れたのです。ましてや人間が・・・。」

シュウはタクマとリーシャ、アルセラを見た。

疑いの意識がその瞳に込められている。

「彼らは和国の者やない。外国の人達や。和国の連中と一緒じゃない事は一目瞭然やろ。」

「確かにこの国では見慣れない身なりですが・・・、それでも、人間共が我らにしてきたことが、どうしても・・・!」

怒りの籠った表情で刀を握るシュウ。

彼等も鬼族同様和国の人間たちに虐げられてきたのかもしれない。

「どうなってんのよ。この国の人類・・・。」

「同じ人間として恥ずくなってきたぜ・・・。」

「これは早急に汚名返上しなくてはですね・・・。」

「・・・・・。」

『どうした小娘?』

アルセラだけだんまりだったためカリドゥーンが問う。

「いや、人間たちがこれほど恨みを買っているのは理解できたんだが、この国で一番偉い将軍。あの少女はそれほど悪人とは思えないんだ。」

ゴグマ達を処刑しようとしたのは事実だが、彼女からは何か違和感を感じずにはいられないアルセラだった。


 一悶着あったがタクマ達は無事屋敷に入ることができ、鮮やかな和風装飾が成された広間に案内された。

「ようこそおいでなすった。旅の者。」

背景に紅葉の巨木が映りこんだ玉座にて佇む一人の美女。

だが腰から九本の尻尾を生やしており頭に耳もある。

まるで、

「九尾!」

リーシャが思わずしまった。

九尾の美女とコヨウは驚いた表情をしている。

「はっ!ごめんなさい!」

「よいよい。なかなか愛い幼子よの。」

袖で口元を隠し笑う美女った。

「妾はこの里の長、タマモと申す。此度、我が愛娘を暴走から救ってくれたそうじゃな。例を言うぞ。」

頭を下げるタマモ。

軽くではあるが屈むことで彼女の豊満な胸が揺らめく。

(デケェな。)

(デカい。)

「?」

男性陣の内、ゴグマだけは頭に?が浮かんでいた。

片や女性陣は嫉妬の眼差しで彼女の胸を睨んでいた。

「本題に入る前に、術氏の娘よ。」

「はい?」

途端にタマモの目つきが鋭くなる。

「何故妾を見て、九尾と言った?」

鋭い視線に当てられリーシャは背筋が凍る。

「・・・私の知る九尾と言う生き物と同じ姿形だったからです。」

「ではその情報はどこで知り得た?先に行っとくが妾に嘘は聞かぬぞ?妖術で真偽を見抜いておるからな。」

彼女に嘘は見抜かれる。

リーシャはタクマを見ると、

「ありのままを話してもいいぜ。ラセンもゴグマも信頼できる。ただ長!これからリーシャが話すことは他言無用で頼みたい!」

「・・・いいだろう。話してみよ。妾を九尾と言った真意を。」

タクマは頷き、リーシャは自身の全てを話した。

前世の記憶を持つ転生者であることを。

「そんな、ありえない・・・!」

「ホンマか・・・?」

シュウとコヨウ。

そしてラセンとゴグマも驚きを隠せないでいた。

「・・・嘘偽りではない。術氏の娘の言っていることは全て事実じゃ。」

タマモも少々驚いている様子。

「転生者ってそんなに珍しいものなんですか?」

タマモは深呼吸し落ち着きを戻す。

「魂が生まれ変わるのは理としてあるが、記憶を引き継ぐ、ましては異界の者が別の世界で生まれ変わる事例は初めてじゃ。異界の知識か。妾を九尾を呼んだ理由は納得した。」

そもそも九尾という単語に何故あそこまで反応したのか分からなかった。

理由を聞いてみると、

「九尾と言う名は我ら妖狐族の隠された名じゃ。太古の昔の呼び名故知るものは数少ない。」

「確かにこれまでは妖狐族と呼ばれ続けてたな。親父からもよく聞かされてたぜ。」

ラセン達の理解も得られたことで本題に入る。

「そうか。コヨウは蓮磨の都の兵士に暴走させられたのか。」

「これが彼女の首についてたチョーカーだ。」

リーシャの異空庫からチョーカーを取り出し見せた。

シュウがチョーカーに鼻を近づけ匂いを嗅ぐ。

「・・・コヨウ様の血と人間の匂いがついてます。間違いありません。」

「彼奴等め、いよいよ強行にでおったか。」

「何か知ってるのか?」

ラセンが問う。

「・・・そこのシュウに探らせた情報なのじゃが、近ごろ国内に住む亜人種、そして数は少ないが人間までもが消えてしまうという噂が立っておる。」

「人が、消える・・・?」

「そして、最後にシュウが得てきてくれた情報があっての。シュウ。」

「はい。亜人種や人間が行方をくらましていた原因は、攫いです。」

「攫い?」

「はい。そして攫っていたのは、蓮磨の都の兵士だったんです。」

全員が驚愕の表情をする。

「兵士が国民を連れ去る?何でそんなのことするの?」

「知らんがな。」

シュウは話を進める。

「そしてその兵士たちを指揮していた人物もいました。」

「何奴じゃ?」

「紫の髪をした顔色の悪い男です。」

「っ!」

その男には覚えがあった。

和国の将軍に仕える宰相、ジャバルである。

「胡散臭い野郎とは思うとったが見た目通りやん。」

タクマの肩に乗るウィンロスも呆れた顔で翼を組む。

「紫の男・・・、思い出した!ウチにそのチョーカーを付けた人間もそいつやったわ!」

「なるほど。彼奴らはいよいよ本格的に我ら妖狐族にも手を出し始めておるという事か。」

タマモの表情が一気に険しくなる。

大事な娘を利用されて相当腹の虫が悪いようだ。

「里の防衛を見直さねばならん。タクマと言ったか?其方にも協力を願いたいが良いか?」

「っ⁉待ってくださいタマモ様!いくら人手不足と言えど憎き人間に協力を求めるなど・・・⁉」

人間を毛嫌うシュウはタマモに意を反する。

「シュウ。お主の気持ちもよくわかる。じゃが事態は一刻も争うんじゃ。妾とて未だ()()()()()()()()。少しでも協力を要したい。例え人間であっても。」

「ぐっ!」

シュウがそう思うのも無理はない。

だがこのまま彼等といがみ合っていてはいざという時足かせになってしまう。

そこにラセンがある提案を出してきた。

「だったら俺らの力量を知ってもらえばいいじゃねぇか?」

「ラセンさん?」

「タマモの姉さん。こんな見た目してるが俺とゴグマは鬼族だ。」

妖狐族の三人が驚く。

「国外に住む鬼族じゃと⁉」

「なして国内におんねん⁉」

「訳あって認識疎外ってスキルをかけてもらって人の見た目になってる。そして俺は鬼族の長の息子だ。親父にお願いすれば向こうからも協力関係が築けるかもしれない。」

「そ、それはこちらとしてもありがたい話じゃが、協力できたとしても向こうがこちらに来ることは出来んのでは?」

ラセンはタクマを見る。

「もし協定を結べたらなんだが、バハムートの旦那に頼ることになっちまうけど・・・?」

「大丈夫だ。数十人程度ならアイツの魔力量でも負担にならねぇよ。」

「助かる。」

ラセンとタクマはバハムートの認識疎外の事も説明する。

そしてタマモが出した答えは、

「全く、外国には規格外な人間も居ったものじゃ。ではラセンよ。其方の人脈、借り受けようぞ!」

「あざす!」

「さて、後はお主等じゃな。」

タマモはタクマ達人間組を見る。

「其方らにはそこにいるシュウとコヨウ。この二人と模擬戦をしてもらう。そこで其方らの力を示してみよ。」

コヨウとシュウの二人はやる気のようだ。

「その前に一つ良いか?」

「何じゃ?申してみよ。」

「一つ教えてほしいことがある。この国に鳳凰を祀る祠があるらしいんだが、何か知らないか?」

「鳳凰?あぁ妖狐族の聖域の事か。」

「知ってるんですか⁉」

「知っておる。じゃが今は言えんな。其方らが見事力を示せたら教えてやろう。」

コンコンと笑うタマモだがようやく祠のありかを見つけることが出来た。

「絶対勝つぞ皆!」

「はい!」

「オッケー!」

「あぁ!」


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