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『第百五十三章 妖狐の少女』

紅葉に包まれる森の中、狐の少女が駆け回っていた。

「そっちに行ったぞ!追え!」

少女の後方から馬に乗った兵士が追いかけてきていた。

(はぁ、はぁ、エライもん聞いてしもうた!アイツ等は、とんでもねぇことしでかしとる!)

少女は必死に走るが木の根っこに躓いてしまい兵士に捕まってしまった。

「やめろ!離せ!」

すると少女の目の前にある男が現れる。

「我らの計画を知られたからには生かしておくわけにはいかない。」

「くっ!」

死を覚悟する少女。

だが、

「しかし妖狐族はなかなかに利用価値がある。どれ。一つ実験でもしてみましょうか。」

男が取り出したのは赤い魔石が埋め込まれたチョーカーだった。

それを少女の首につけると内側から棘が飛び出し少女に突き刺さる。

「あがっ⁉」

「決して外れぬよう返しがついています。直に慣れるでしょう。」

チョーカーに付けられた魔石が光出すと狐の少女は徐々にその姿を変え、大型の狐の魔獣へと変化した。

「ウォォォォン‼」

「では手始めに、近くの村を壊滅させてください。」

狐の魔獣は赤い眼をギラつかせ街の方へ走って行った。

「思う存分暴れてください。なるべく人を殺して、ね?」

顔色の悪い男はニヤリと頬を上げていたのだった。


 「・・・う~ん。」

狐の少女が目を覚ますとそこはとある宿の寝室だった。

「ここは?ウチは一体・・・?」

すると襖が開き誰かが入ってくる。

少女は布団から飛び出し低い姿勢で威嚇をする。

「あ!目が覚めましたか!」

入ってきたのは浴衣姿のリーシャだった。

(見慣れない髪色の人間?それにこの匂い・・・。)

リーシャが外国に人間だとすぐに気付く。

すると続けてタクマ達も顔を覗かせてきたため、少女は再び警戒した。

「ほら、あの子がびっくりしてしまいますからタクマさん達はそっちで待っててください。」

「ほーい。」

すぐに引っ込み、リーシャは少女の前に正座する。

リーシャからは敵意を感じないため少女は徐々に警戒を緩めていく。

「アンタ等は何者なんや?ウチをどうするつもりや?」

「ウィンロスさんと同じ関西弁・・・。あ、んんっ!すみません。私はリーシャと言います。不躾ですが、貴女は昼間の事を覚えていますか?」

まだ警戒する狐の少女だが覚えている範囲をポツリポツリと話してくれた。

彼女の名は『コヨウ』と言い、ある薬草が欲しくて人里に降りてきたという。

「キュアリ草?聞いたことのない薬草ですね。」

「当たり前や。キュアリ草は和国でしか生えてない独自の薬草や。外国人が知っとるはずがないで。」

彼女はまだ警戒をしているみたいだ。

意識が常にこちらを見張っている感じが肌に伝わってくる。

「・・・そうですか。それで、どうして街で暴れていたのかは覚えてますか?」

「・・・正直ハッキリとしてへん。最後に覚えてるのは大勢の人間に兵士に追いかけられ、捕まり、そして偉そうな男に変な物を付けられたくらいや。」

「人間の兵士?それは一体・・・?」

するとコヨウのお腹がなり、本人は顔を赤めてそっぽを向いた。

「すみません。起きたばかりなのに質問攻めにしてしまいましたね。夜食を注文しますので皆さんの部屋で待っててください。」

そう言い先に退出していった。

しばらくたってコヨウも襖を開けると、大広間で浴衣姿のタクマ達が各々過ごしていた。

「お。おはようさん。いや今、夜か。」

コヨウは尻尾を逆立て姿勢を低くした。

「ヴゥゥゥ!」

「相当警戒されとるがな。」

「去り際にリーシャから聞いただろ。狐娘は人間にあのように暴れさせられてたんだぞ。」

「シャァァァァ⁉」

ドラゴンに話しかけられ驚いたのかまるで猫のように威嚇している。

「落ち着けって。何もしねぇよ。」

しばらくコヨウに睨まれ続けてるとリーシャが夜食のおにぎりを持ってきてくれた。

匂いに気付いたのか耳を立ておにぎりに飛びついた。

「わっ⁉」

飛び掛かるコヨウに驚き尻もちをつくも彼女は無我夢中でおにぎりを貪っていた。

「相当お腹が空いていたみたいね。」


 翌日。

再び鳳凰の祠を探しに情報を集めようとした時、リーシャからある提案を出された。

「コヨウの母親の下へ行く?」

「はい。この子から聞いた話によるとコヨウさんのお母さんは妖狐族の長だと言います。妖狐族は寿命が長いそうでもしかしたらコヨウさんのお母さんなら何か知っているのではないかと。」

悪くない提案だと思う一同。

現状情報集めには行き詰ってるため、妖狐族の長の下へ行くことにした。

すると、

「タクマ、ここはもう二手に別れぬか?」

「バハムート?」

バハムートが更に別れる提案を出してきた。

「これだけ人数が多いのだ。我は一度鬼族の里へ戻りある方法で情報を探る。何かあれば召喚で我を呼び出せ。」

「お、おい!」

有無を言わす暇もなくバハムートは飛び去って行った。

「何やねん旦那?」

「さあ?おじ様の事だからきっと大丈夫よ。私達はこのままコヨウのお母さんの所に行きましょ。」

「あ、あぁ。そうだな。」

そして上空を飛ぶバハムート。

(国に入った時から感じるこの違和感。妙な魔力の流れ。嫌な感じだ。)

鬼族の里へ飛翔していくバハムート。

その地中では薄紫に輝く光がある方向へと流れていたのだった。


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