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『第百四十九章 目指したいもの』

無事、鬼族の二人を救出したタクマ達は鬼の里に戻ってきた。

「あに様ー‼」

「うおっと!アヤメ、久しぶりだな。といっても大体一週間か。」

無事戻ったラセンとゴグマに里の住民は大喜びだ。

「今まで国に乗り込んで帰ってきた奴は一人もいなかったからそりゃこうなるわな。」

ネクトもそう言っていると、

「この馬鹿者が‼」

突然長の怒鳴り声が響き全員が凍り付く。

「親父・・・。」

長はラセンの前に立ち、拳を突き付けた。

「勝手に都に行きよって、心配かけさせるな阿呆共!」

「・・・・・。」

「ゴグマ!」

「っ⁉」

「ぬしもじゃ!事実を知りたいがために無謀に攻めおって。ラセンや客人が助けてくれなかったらどうなったか。」

「・・・すんません。しかし長。ラセンはともかく、俺はあの人間共に助けられたとは微塵も思っていません。」

その言葉を聞いた女性陣がピクッと反応した。

「まだそんな事言ってるのかゴグマ。」

ラセンが割って入ってきた。

「お前が人間嫌いなのは知ってるが、やっぱり恩人に対してその態度は見逃せねぇな。ゴグマ。」

ラセンとゴグマ。

二人の睨み合いは辺りの空気を震わせる。

「・・・やっぱ、ルガンの事か?」

「っ!」

ラセンが口走った瞬間、ゴグマは彼の胸倉を掴んだ。

「あに様⁉」

「やめんかゴグマ‼」

だがラセンは手を出すなと二人に合図する。

「・・・チッ!」

そのままラセンを押し飛ばし広場から立ち去るゴグマ。

「俺に、二度とその話をするな・・・!」

そう言い残し人混みをかき分けていった。

「図星か・・・。」

ラセンは掴まれた胸倉をアヤメに直してもらっていた。

「何よアイツ!図体デカいだけじゃなく態度もデカいわ!」

リヴはぷんすかと頬を膨らませて怒っていた。

「相当人間を憎んでんな。」

「すまんの。気を悪くさせてしまって。」

長が謝罪をする。

「いや、大丈夫だ。にしても、あのゴグマって男、人間に対してかなり恨みを抱いてるみたいだが・・・。」

「・・・十二年前、都の軍隊が里を襲撃してきた。当時のゴグマはまだ物心ついたばかりの幼子での。村の者総出で逃げおおせたが、彼奴の兄がゴグマを守るため兵士に・・・。」

「・・・殺されたのか?」

「・・・。」

言葉を詰まらせる長。

「アイツは目の前で兄貴が惨殺されるのを見ちまってるからな。人間を恨むのも仕方ねぇ。」

ラセンも口添えをした。

「和国の人達はどうしてそこまで鬼族の皆さんを亡き者にしようとするんですか?」

「それが分かってたら苦労はしねぇな。」

重い空気が辺りを包む。

するとパンと手を叩く音がした。

「はいはい。しんみりした空気はおしまい。せっかくラセンたちが戻れたんだから何かお祝いをしましょ。私達の親睦も深めるためにも。」

そうリルアナが提案してきた。

「・・・そ、そうだな。」

「アヤメさん。調理場へ案内してくれませんか?私こう見えてお料理には自身があるので。」

「自身どころかマジで美味いで。」

「それは楽しみです!では案内します。こちらへ。」

一同がその場を離れ広場にはネクトとリルアナが残る。

「まさかお前があの空気を和らげるとはな。」

「これもネクトが私の感情を少しでも取り戻してくれたおかげ。だから、凄く感謝してる。ありがとう。」

優しい笑顔で言うリルアナにネクトはフッと笑った。

「礼ならお前の感情全部取り戻してからにしろ。」


 その晩、里は広場で大宴会となっていた。

里の者はリーシャの料理に感服。

アヤメまでリーシャの料理を気に入り弟子入りを志願する程だ。

ちなみにバハムート達ドラゴンチームは酒を飲みながら子供たちの相手をしていた。

特にクロスの子供の扱い方が尋常がないくらい上手かった。

流石は子供好きのドラゴン。

「ふう、ちょいと食休憩。」

広場を離れひらけた丘の上にやってきたタクマ。

だがそこには先客がいた。

「あれ、ラセン?」

「おうタクマ!お前も食い覚ましか?」

「まぁそんなとこだ。」

タクマはラセンの隣に腰を降ろし、夜空の星空を見上げた。

「結構いい場所だな。」

「ガキの頃からのお気に入りだ。よく親父やお袋、アヤメとも来てた。」

「そういやアンタの母親には会ってないな。一応挨拶はしときたいんだが・・・。」

「・・・お袋は十二年前に天国にいるぜ。」

「・・・すまない。無粋な事言って。」

「いや、気にするな。」

しばらく沈黙が続いた。

「・・・十二年前?じゃぁアンタの母親は・・・?」

「あぁ、俺は人間にお袋を殺されてる。」

「マジかよ。だんだん人間側が悪いみたいに思えてきたぞ・・・。」

タクマはガシガシと頭をかく。

「俺も詳しい事は知らねぇが、和国、あの国を調べれば絶対真実が分かる。俺は、何故鬼族がここまで虐げられるのか。そして散っていったお袋たちの無念も晴らしたい。」

「ラセン・・・。」

「そのために俺は、和国の将軍になる!」

「・・・ん?」

一瞬フリーズし耳を疑った。

「今、なんて言った?」

「あ?和国の将軍になるって言った。」

(聞き間違いじゃなかった!)

ラセンから発せられた耳を疑う発言にタクマは動揺を隠しきれていなかった。

「何で将軍になんかに?」

「トップになれば入りたい場所も入り放題じゃないか。」

「そんな安直な・・・。」

「・・・何も将軍になりたい理由はそれだけじゃねぇよ。」

ラセンは立ち上がり星空を見上げる。

「太古の昔、鬼族は和国の連中とうまくやれてたんだろう?俺はそんな時代を再び取り戻したいんだ。長の息子としてじゃねぇ。俺の意志で、争いを無くし、里の奴等を幸せにしてやりたい!親父も、アヤメも、ゴグマも!」

「随分デカい目標だな。けどあまりにもデカすぎる。途中で折れても知らねぇぞ?」

ラセンは振り向き、ニッと笑う。

「男ってのは一度決めた事、なりたいものを簡単に曲げないんだよ。」

ラセンの言葉に、タクマは自分の気持ちに意を唱えた。

「決めた事か・・・。」

(特にそう言った事は考えたことなかったな。仲間と世界を旅できればそれでいいと思ってたが、それだけじゃダメな気がする。明確な目指すものがないと人間長続きしない。信念を持てない。)

タクマは深く考え込む。

「タクマはそう言った物は特になさそうだな。でも必ず必要って訳じゃない。時間はまだたくさんあるんだ。必要になったらゆっくり考えればいいさ。」

ラセンの言葉にタクマは少し心がほぐれた。

「そうだな。何も急ぐことじゃねぇな。今は和国との問題を解決することが先だ。俺達の探してる物も見つけるために。」

「へぇ気になる。お前等は何を探しにここに来たんだ?」

興味本位で聞いてくるラセンにタクマはアルセラ、カリドゥーンのアーティファクトの事を説明した。

「え、あの女の持ってる黒剣、おとぎ話に出てくる魔聖剣なのか⁉」

ラセンは度肝を抜いた。

鬼族にもカリドゥーンの伝説は伝わっているみたいだ。

「カリドゥーンのアーティファクト、フェニックスの力を宿した物らしくてな。それが和国にあるって情報を得たから来たんだが、何か心当たりはないか?」

「う~む。悪いが俺は聞いた事ねぇな。フェニックスって別名『鳳凰』とも言うだろ?鳳凰伝説は何度か聞いたことあるがそのアーティファクトって言う道具の事は知らねぇな。」

「そうか・・・。」

「あ、でも親父なら何か知ってるかも!ああ見えて結構博識だからさ。」

「なるほど。でも今は宴で盛り上がってるし、明日にでも聞いてみるか。」

「そうだな。んじゃそろそろ戻ろうぜ。まだまだ騒ぎ足りないからな!」

「鬼族ってのは体力スゲェな。」

そう笑い合いながら二人は宴会会場へ戻って行ったのだった。


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