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『第百四十六章 鬼の里』

偶然再会したネクトたちに連れられタクマ達は深い森の中を歩く。

「着いたぜ。」

森を抜けると、そこには太い丸太で作られた城門が現れた。

「デカッ!」

ウィンロス達が見上げるほどの高さだった。

(何かに相当警戒している造りだな。)

バハムートが密かに訝しんでると城門の上から男が話しかけてきた。

「ん?ネクトじゃねぇか!あそこの下見はもう済んだのか?」

その男の額には角が生えている。

鬼族だ。

「鬼!初めて見ました!」

「人間と大して変わらない見た目だな。」

ネクトも大声で答える。

「いやまだだ。その前に長に紹介したい奴らがいるんだ。一度中に入れてくれるか?」

「紹介したい奴?もしかしてお前の後ろにいる連中の事か?ネクトの言う事だから信用できるんだろうけどこれ以上余所者を里に入れるのはちょっと・・・。」

「大丈夫だ。こいつ等は信用できる。俺が保証するぜ。」

「・・・分かった。ちょっと待っててくれ!」

そう言い鬼の男は城門の上から消えた。

「随分鬼族と親しいみたいだな。」

バハムートが問いかけてきた。

「二週間前に鬼族の姫さんを助けた事がきっかけでな。最初こそは嫌悪されてたが一緒に過ごすうちに打ち解けた。」

「私も頑張ったよ。」

無表情のままダブルピースをするリルアナだった。

「お前が人助けか。こりゃいつか嵐が来るな。」

「おいコラ。」

ニヤニヤするタクマにネクトがツッコんでいると城門が開き先ほどの鬼の男が出てきた。

「長の許可が下りた。ただ他の里の者はアンタ等にあまりいい視線を向けるとは限らないけど気を悪くしないでくれ。これには深い事情があるんだ。」

「事情?」

「詳しい事は長に聞いてくれ。それじゃ長の家まで案内するぜ。」

鬼の男に案内され里に入る。

里は自然がのどかでいろんな作物の畑が目立っていた。

特に目を見張るのは。

「これ、稲ですか?しかも市販のモノよりずっと良いです。」

「鬼族は自給自足で暮らしてる。外に頼らずとも事足りる事が多いんだとよ。」

料理をするリーシャは極上の稲を見て調理意欲が高まっていた。

「機会があればこの稲でいろんなお米を炊いてみたいです。」

「マジ?嬢ちゃんの料理が更に旨くなるんか?」

「ウィンロス、よだれ・・・。」

そんな会話をしているとタクマは他の鬼族からの視線に気が付いた。

鬼の男が言った通り、タクマ達に対してあまりいい視線を向けては来なかった。

中にはヒソヒソと陰口を叩いてる者もいた。

(これほどの嫌悪。これはデカい何かが関わってるな。)

一同はそのまま大木の上に建つ大きな家まで案内された。

「俺はここまでだ。」

「うん。案内してくれてありがとう。」

リルアナに握手されて男は顔を赤くしながら持ち場に戻って行った。

巨体のドラゴンたちを外に待たせ、一同は家に入る。

「邪魔するぜ。」

ネクトが暖簾を上げると、

「ネクト様ぁ‼」

赤みがかった白髪の和服美少女が飛びついてきた。

額には二本の角が生えている。

「げぇ⁉アヤメ⁉」

飛び掛かる鬼娘を間一髪リルアナが身体を張って阻んだ。

「アヤメ様、いい加減ネクトに抱き着くのはやめて。」

「けち臭い事言うな。お主とわらわの仲じゃろう?」

「ダメなものはダメ!」

状況についていけず唖然としているタクマ達。

「なんか、凄い既視感を感じたんだけど?」

「エリエントのオリヴェイラだな。」

血気盛んな鬼娘を落ち着かせ、やっと長と対面できた。

「よく来てくれた。儂がこの里の長、アラバクと申す。」

小柄だがその圧は凄まじい。

流石は鬼のトップと言った所か。

「タクマだ。ネクトとは友人でライバルな関係だ。」

挨拶を返すタクマ以外は長の圧で硬直していた。

「ハッハッハ!儂の圧に押しつぶされない奴は二人目だ!」

タクマはネクトを見た。

「実に面白い若造共だ。」

そして鬼娘も礼儀正しく自己紹介をする。

「先ほどはお見苦しい所をお見せしました。わらわは長の娘、『アヤメ』と申します。」

「堅苦しいのはいいわ。さっきみたいに素でいていいのよ?」

リヴに言われ肩の力を抜くアヤメ。

「では遠慮なく。」

「お前はもう少し俺に遠慮を覚えろ。」

ネクトに軽いデコピンを当てられた。

「長の娘と随分仲いいんだな。」

「まぁちょっといろいろあってな。長、例の件こいつ等にも手伝わせたくて連れてきたんだが、話してもいいか?」

「他ならぬお主の友人じゃ。良いぞ。」

ネクトは長とも打ち解けている。

そして何かを抱え込んでいた。

「ネクト。俺達をここに連れてきた訳は何だ?」

「あぁ、実はな・・・。」

ネクトの話だと、今いる鬼の里はタクマ達の目的地『和国』と近い位置に属している。

そしてその和国と現在ある問題が発生してたのだ。

「和国の将軍、お偉いさんがこいつ等鬼族に対して酷い扱いをしているらしくてな。既に同族の何人かが和国の連中に殺められてるんだと。」

「和国は人間が住む国だろ?異種族の交流は確かに難しいかもしれないが、何も殺すまでしなくても・・・。」

「それが、将軍率いる和国の軍は異種族、正確には鬼族に対して抹殺対象になっているんだよ。」

「抹殺⁉何故ですか⁉」

話を要約すると、過去に和国の将軍の家系が鬼族の手によって虐殺されたらしい。

あまりにも突然の事件らしく、当時の和国軍は同じ事が起こらないよう鬼族に対し入国禁止令と言う掟を発案したという。

その掟を破った者は問答無用で死刑。

公共の場で公開処刑と言う。

しかしそれだけでは治まらず、国の外へ出た和国の商人が鬼族の手によって国外で殺されたという事件が多発。

この事態を重く受け止めた前将軍は鬼族へ宣戦布告。

戦争を仕掛けた。

それから和国は人間主義の大国となったという。

「だがこの話は矛盾だらけなんだ。」

「と言いますと?」

「そこからは儂が話そう。」

長が割って入った。

「和国の歴史では人間を殺したのは鬼族と言われているが、それは全くのデマじゃ。」

「デマ?一体どういう事だ?」

するとアヤメも話に入った。

「我ら鬼族は太古の昔から和国の人々と共存、手を取り合って暮らしていたのじゃ。」

「え?」

「これが証拠だ。」

長が古い巻物を出してきた。

中に眼を通すとアヤメの言った通り、鬼族と人間が手を取り合い生き抜いてきたことが証拠として記されていた。

「臭いからしても嘘偽りはないわね。」

「そんなことも分かるのかリヴ?」

「クソ親父の集めた魔石を取り込んだせいか嗅覚もエグイくらいパワーアップしてるのよ。」

話を戻す。

昔は手を取り合うほどの仲だったのに何故突如として対立してしまったのか。

「その原因を探っておったのじゃが、里一番の力自慢がまどろっこしいとほざき、無謀にも一人で和国に攻め入ってしまったんじゃ。」

「馬鹿じゃねぇのそいつ⁉」

「失礼ですよタクマさん!」

つい言葉が出てしまった。

すると長は怒りもせずただ呆れたように頭を抱えた。

「君の言う通り、あやつは馬鹿なんじゃ。図体だけはデカい馬鹿じゃ。」

二回言った。

相当やんちゃな奴のようだ。

「しかもだ。」

「まだあるの・・・。」

「その阿呆を止めるべく、儂の息子も後を追っていったキリ帰って来ん。」

「息子?」

「うむ。わらわのあに様じゃ。そこでわらわもあに様を追おうとこっそり里を抜け出したが、運悪く見回りに来てた和国軍の兵士に見つかってしまっての。もう少しで命が狩取られる所をネクト様に救ってもらったという訳じゃ♡」

ピトッとネクトにくっつくアヤメ。

ネクトはしらを切っていた。

「アヤメの暴走はさておき、二人は里にとっても二大戦力且つ大事な子供達じゃ。どうかネクト殿と共に阿呆共を連れ戻してきてはくれませぬか?」

長が頭を下げてまでお願いする。

そしてタクマ達の答えは考えるまでもない。

「俺達は冒険者であり旅人だ。その依頼、承った!」

「おぉ!誠か!」

「それに、俺達は元々和国に用がある。今いざこざの問題があるんじゃ探せるものも探せないからな。」

「ありがとうなのじゃ!・・・あ、ございます!」

「無理すんなって・・・。」

大喜びの鬼二人。

「ネクト様!ネクト様のお友達はとてもいい人達じゃの!アヤメは感激じゃ!」

大喜びでネクトの手を取ると再びリルアナが二人を引き剥がした。

「ネクトにくっつくのはやめて。」

「なんじゃ?やきもちか?リルアナ。」

「・・・違う。」

と言うリルアナだが頬が少し赤くなっていた。

「それで、アホ二人の特徴を教えてくれるか?」

「うむ。力馬鹿の方は肌が赤黒い筋肉マッチョな大男だ。そして息子の方は比較的人間に近くアヤメと同じ赤みが掛かった白髪と二本角をしておる。身長は人間の青年と大して変わらん。」

「要はアヤメにそっくりってことね。」

特徴を覚えたタクマ達は外で待機していたバハムート達にも事情を話し、ネクトたちと共にいざ、和国へと乗り込むのだった。


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