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『第百三十八章 蘇る伝説のテイマー』

瓦礫の山の街中を一人の堕天使が歩いていた。

「さてと、この結界を張った犯人は何処へ♪」

ウキウキな表情で歩くヘルズ・ラルマ。

彼女に担がれてるのは先程の戦闘で気絶したリーシャと、尻尾を掴まれてズルズル引きずられるウィンロスだった。

「本当だったら助ける義理はないんだが、白の奴の感情が強いのか放っておけなかったんだよな。全く忌々しい。」

そうため息をつくヘルズ・ラルマ。

「まぁこいつらに死なれても困るしな。早いとこ結界張った奴をぶっ潰しに行くか。」

ニヤリと頬を上げ歩みを進める彼女だった。


 そして、結界を張った張本人エルエナと対峙しているタクマ。

いや、正確にはタクマではなく、

「世界初のドラゴンテイマー?どこかで聞いたような?・・・あ!まさか千年前に地上を騒がせた『黒魔のシーナ』⁉」

「・・・神の世界でもその二つ名が届いていたのか・・・。恥ずかしすぎる・・・!」

手で顔を覆うタクマ、ではなくシーナ。

「千年経った今でもその名が残ってるのは流石に死にたい・・・。あ、もう死んでたわ。アハハ!」

シーナの独り言に反応しづらそうにしているエルエナ。

「それはさておき、これは度が過ぎでるんじゃないかい?」

「何がかしら?」

「本来神々は下界にむやみに干渉してはいけない存在だ。それがどうだ?今までタクマを通してみていたが、君達神はあまりにも下界に干渉しすぎてる。君達の主は何を考えているんだ?」

「創造神様のお考えは決まってるわ。この世界を作り変えるのよ。今の世界は平和すぎて退屈だもの。もっと刺激を求めるために戦乱の世界を創る。それが創造神様の目指す新世界よ。」

エルエナの言葉を聞いたシーナはしばらく沈黙する。

「戦争、か・・・。」

シーナは生前に体験した人同士の醜い争いの出来事を思い出す。

「君達の目的を見ると、不思議と不快になるな!」

シーナは走り出し剣が黒い炎を纏う。

切りかかるシーナの剣筋をかわし光の弓矢を放つエルエナだが、その矢をシーナの黒炎が完全に消滅させた。

「・・・なるほど、貴女の扱う属性、闇ね?」

「闇は君達の使う光と相対。互いに苦手とする弱点同士だからね!」

お互い一度でも攻撃を受けたら致命傷になりかねない状況で激しい戦闘が繰り広げられるのだった。


 一方、アルセラとアムルの戦いに少々風向きが変わり始めていた。

「ハァ、ハァ・・・!」

不完全ながらアーティファクトを開放して戦っているアルセラ。

しかしアーティファクトの力が強くアルセラの身体がついていけてなかった。

「アーティファクトを完全に扱えぬ上にもう息切れとは。先に力を手にしても貴様自身が弱ければ宝の持ち腐れ。やはりその魔聖剣は貴様に相応しくない。」

ゆっくり歩み寄るアムル。

それでもアルセラはカリドゥーンを構える。

「言っただろ・・・。相棒は渡さないと!」

体力の限界が来ているアルセラだがそれでもアムルに攻め入る。

その様子を見ていたカリドゥーンは、

『・・・微量じゃがアーティファクトの力が強まってきている。もしこのまま力が上がり続ければ今の小娘の力量では肉体が耐えられん。・・・一か八かじゃが、あの手を使うか。』

果敢に剣を振るうアルセラだがついに体力が尽きてしまい、纏っていた氷の手甲が崩れ落ちる。

その隙をアムルは逃さず魔法陣に剣を突き刺した。

「天の型、居合・聖滝綴(せいろうてつ)‼」

光の斬撃がアルセラに直撃する寸前、人間体のリヴが飛び込みアルセラ共々建物に叩きつけられた。

「ゲホッ、リヴ⁉」

相手の攻撃を真正面から受けてしまい力なく倒れるリヴ。

「ヤバい・・・、キツイの、貰っちゃった・・・。」

血の出る腹を押さえ起き上がろうとするがアルセラが止める。

「動くな!いくらドラゴンと言えど出血多量で死んでしまうぞ!」

「でも、アルセラも変な氷の奴、砕けちゃったじゃん・・・。アンタも、限界なんでしょ?」

リヴの言う通りだ。

アルセラももう体力も魔力もない。

正直カリドゥーンを振り回せる力も残ってなかった。

それでも相手は容赦なく剣を突き付ける。

「終わりだ。いくら貴様らが強くなろうと、神々には勝らん。天使である私にでさえも。」

剣を振り上げるアムルにリヴを抱えて睨むアルセラだがもう打つ手がない。

(くそ・・・!)

目を瞑り剣がアルセラに振り下ろされた。

だが、

『馬鹿者がぁ‼』

黒剣が自ら動き出しアムルの剣を弾き返した。

と同時に剣から少女に変わったカリドゥーンが黒剣を持ってアルセラ達の前に立った。

「カリドゥーン⁉」

「諦めるとはらしくないぞ小娘!儂を扱う以上最後まで抗え!」

突然現れたカリドゥーンに驚いたアムルだったがすぐに冷静になる。

「まさか貴様自身が私の剣を弾くとは・・・。それに手に持つ黒剣は・・・。」

「儂の分身じゃ!儂だって剣を使える。世界を救った魔聖剣カリドゥーンを舐めるな!」

剣を構えると刀身が水色に変わっていく。

「この一瞬だけ力を借りるぞ!」

刀身から冷気が漏れ出しカリドゥーンの足元が薄く凍っていく。

「『氷斬綴(ひょうざんてつ)』‼」

大きく薙ぎ払い巨大な斬撃がアムルへと放たれた。

「っ⁉」

直感で危機を感じたアムルは己の全力で斬撃を受け止める。

だが予想以上の威力にどんどん後ろへ押されていった。

「ぐうぅぅ⁉ぬあぁ‼」

なんとか斬撃を天へ受け流すことが出来た。

しかしかなり魔力を消耗したのか息が荒くなり膝をつく。

(な、何だ今のは?斬撃が放たれた瞬間・・・、私は、死を悟った?)

「どうじゃ?本来とは言わんが、これが儂の力じゃ!」

勝ち誇るカリドゥーンだが突然持っていた剣が消え膝から崩れ落ちてしまった。

「カリドゥーン⁉」

「やはり、儂一人で自分を振るう、ましてやアーティファクトまで使ったとなると身が持たんか。ブランクとは恐ろしいものだ。」

カリドゥーンももう戦闘を行える状態ではなくなってしまった。

そこに追い打ちをかけるかのように絶望が彼女らに降りかかる。

「まだだ、私はまだ動けるぞ?」

「っ‼」

アムルはまだ健在であった。

カリドゥーンの一撃で魔力がかなり削れたとはいえ動ける体力は残ってたようだ。

(一振りが限界だが、殺せなくてもいい。奴らを無力化し魔聖剣を持ち帰ることが出来できれば私の勝ちだ。)

アムルは座り込むカリドゥーンに歩み寄り手を伸ばす。

「さぁ、来てもらうぞ。」

「・・・ふっ。」

「何がおかしい?」

「いや、貴様はとことん邪魔されまくっておるかな。思わず笑いがこみ上げただけじゃ。」

すると次の瞬間、アルセラ達の頭上から誰かが降ってきた。

「ふんっ!」

大きく剣を薙ぎ払い強烈な風圧がアムルを吹き飛ばした。

「くっ!今度は何だ?」

彼女らの前に立っていたのは。

「お、お婆様!」

最強の剣士、ヒルデだった。

「こやつの到着に時間稼ぎをさせてもらった。後は頼むぞ、老いぼれ・・・。」

そのままカリドゥーンは剣へと戻った。

「ありがとうカリちゃん。おかげで間に合った!」


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