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『第百三十四章 二人の七天神』

バハムート達と離れたリーシャ達に立ち塞がる七天神の一人、知神レスト。

「我々は存在してはいけない異物を排除するのみ!」

リーシャの背後に隠れるメルティナを見てそう呟くレスト。

メルティナは彼の殺気に気付いたのか恐怖する。

「アイツ、メルティナの嬢ちゃん見てなんか言っとるで?」

「絶対穏便な事じゃないですね。」

ラルも出てきて警戒するリーシャ達。

そしてとうとう相手が動き出す。

「あの白の少女を捕えろ。他の奴は始末しても構わん。」

「ハッ!全軍、突撃!」

天騎士の合図で空を覆っていた天騎士が一斉に掛かってきた。

「ラル!」

杖先の従魔結石が輝きラルは光に包まれる。

『覇王進化!グレイス・ド・ラル‼』

氷の翼竜となり飛翔、天騎士を迎え撃つ。

「オレもやったるで!ウィング・サイクロン!」

横向きの竜巻が天騎士を一掃。

二頭のドラゴンが無数の天騎士を一掃していく。

(この二頭、以前監視していた時より力が増している。これは放置していると後々面倒になりそうだな。)

「おい。」

「はっ、何でございましょう。」

「アレの準備をしろ。特急でな。」

「・・・まさか、アレを持ち出すのですか⁉」

「奴らはここで消した方が得策だと判断した。創造神様にもアレの使用許可は事前に得ている。」

「承知しました。」

天騎士は他の天騎士を数名連れて上空の天界へ戻って行った。

「久々に暴れるとするか。」


 一方、目覚めたタクマは眠らされた霧の元凶である美神エルエナと対峙していた。

「あの時は貴方の他にいたテイマーの子に邪魔されたけど、今回こそ相手してもらおうかしら?」

舌なめずりするエルエナに引きながらもタクマは身構える。

「バハムート、お前は一旦外れて街の人達をこの霧の外へ連れ出してくれ。神との戦いはいつも街を半壊させちまう。安全を保障できない。」

「・・・分かった。我が戻るまで無茶はするなよ?」

「善処するぜ・・・。」

バハムートは『空間転移』でその場を離れていった。

「あら、優しいのね。下界に人間は創造神様の新世界に要らないからついでに駆除しようと考えてたんだけど?」

そう言いながら地上に降りてくるエルエナ。

「無駄な殺傷はさせたくないのでね。」

タクマも剣を抜き構える。

「やだ。乙女に刃物を向けるなんて。」

「何が乙女だ。お前等神は人間の心を弄び、命を弄び、罪のない人達を悲しませる。創造神がどんな奴かは知らねぇが、ロクでもない奴だという事はわかるぜ。」

その途端、エルエナからピリッとした気を向けられた。

「創造神様を侮辱しないでもらおうかしら?私達神はあの御方を深く尊敬している。貴方もそんな御人を侮辱されたら気分悪くなるでしょ?」

先程よりも低い声色で睨むエルエナにタクマは笑い返す。

「そうだな。だが少なくともその創造神て奴には微塵も尊敬してないな。ただの自分勝手で部下をこき使い、自分は安全な場所でふんぞり返ってるビビりな奴には。」

その瞬間、タクマに光の鞭が向けられたが難なく剣で受け止める。

「貴方、気に入らないわね。」

「気が合うな。俺もお前が気に食わねぇ。」

しばらくの沈黙が続き、そこから激しい戦闘へと豹変する。

「見た限りお前は前戦タイプじゃねぇが案外戦えるんだな。」

「神を舐めないでもらえるかしら?」

鋭い一撃同士が互いの攻撃を相殺させる。

エルエナは戦神ジームルエ程ではないがトリッキーな戦法で攻めてくる。

魔法を駆使して徐々にタクマを追い詰めていく。

「どうしたの?大口叩いてた割には必死じゃない?」

彼女の言う通り、一瞬でも気を抜けば致命傷は免れない。

それほどこの光の鞭から嫌な予感がするのだ。

「何を仕込んでやがる?」

「そうね。私が何を司ってる神か分かるかしら?」

しばらく沈黙するとサーッと青くなるタクマ。

「おい、まさか・・・。」

「えぇその通り。この鞭に当てられた者は極上の快楽を感じるようになるの♡」

息を荒くし鞭を舐めるエルエナにドン引きを通り越して嫌悪感がする。

「おえ、吐き気がする。」

「何気に失礼よね、貴方。」


 「おら食らえやーーー‼」

「ぎゃぁぁぁぁ‼」

ウィンロスの起こす暴風が天騎士たちを吹き飛ばす。

まるで自然災害だ。

「ドラゴンに構うな!あの白い少女に狙いを定めろ!」

天騎士が一斉にメルティナに刃を向ける。

だが、

「『ヘルブリザード』‼」

側にいたグレイス・ド・ラルが絶対零度のブレスを浴びせ、攻めてきた天騎士を全て氷漬けにした。

「メルティナは僕が守る!」

二頭のドラゴンに苦戦する天騎士たちを余裕の表情で見下ろすレスト。

(あの神、さっきから見ているだけで手を出してこない。何だか不気味ですね。)

不審に思うリーシャだが今はメルティナに迫る天騎士を返り討ちにする。

「エア・ショット!」

空気の弾で天騎士を弾き飛ばす。

「やるな嬢ちゃん!俺も負けてられへんで!」

翼を大きく煽ると風の刃となって天騎士ごと辺りを切り裂いた。

「何ですかその技⁉」

「最近覚えたんや。名付けて『ウィングエッジ』!」

「まんまですね・・・。」

ドヤ顔で言うウィンロスにジト目でツッコむリーシャだった。

その様子を見ていたレストは、

「ふむ、やはり報告通り侮れない連中のようだ。例の準備はどうだ?」

「ハッ!間もなく完了とのことです!」

「よろしい。」

そしてしばらくすると上空の天界から何かが運ばれてきた。

「ん?何やあれ?」

天騎士を一掃したウィンロス達も気付く。

「あれは、ロボット?」

運ばれ来たのはまるで騎士を彷彿とさせる巨大なロボット。

「この世界にも機械が存在してるんですね。」

「いや、ロキも魔械竜やん?」

天騎士たちが光の鎖を離しロボットは大地に降り立つ。

「さぁ、本番といこうか。」

開いた腹部に搭乗するレストは巨大なロボを起動させる。

「守護機神の力、存分に味わうがいいさ!」

動き出した守護機神は巨大な大剣を振り下ろす。

「あぶね!」

ウィンロスとラルはそれぞれリーシャとメルティナを抱え振り下ろされた大剣を避ける。

しかしその一撃は凄まじく、街の地上に地割れが現れたのだ。

「何て破壊力や・・・。」

「はっ!街の人達は⁉」

すると絶妙のタイミングでバハムートから念話が届いた。

「今凄まじい地響きがしたが無事か?」

「バハムートさん⁉」

リーシャは事の顛末を説明した。

「街の住民を全て外へ転移させたのは正解だったな。」

「はい!凄いタイミングですがありがとうございました!」

「我もこちらが片付いたらすぐタクマの元へ戻る。お主等も決して無茶はするな。」

そう言い残し念話は切られた。

「バハムートさんのおかげで街に人は残っていないみたいですが・・・。」

「アレはやばいで。」

そびえ立つ守護機神の圧倒的な存在感に危機感を拭えずにいた。

「ラルはメルティナを守ってて!」

「わ、分かった!」

リーシャはウィンロスの背に乗り守護機神へ向かっていった。

「正面から来るか。」

レストも守護機神を操作し飛翔してくるウィンロスに巨大な剣を振り下ろす。

ウィンロスは剣撃をかわし続け守護機神の上空を取った。

「デケェ分動きがノロいわ。オレのスピードなら上手く避けれるで。」

「行きましょう!これ以上街を壊させるわけにはいきません!」

「しっかり捕まっとき嬢ちゃん!」

空気を蹴るように飛び出し自慢のスピードで守護機神の周りを駆け回る。

しかし守護機神の動きはなくそのまま立ち尽くしていた。

「来ねぇならこっちから行くで!ウィングエッジ!」

無数の風の刃が繰り出されるも機神のボディには傷一つ付かない。

「アイシクル!」

今度はリーシャが宙に氷塊を生み出し、それをウィンロスが次々と蹴飛ばしていく。

しかしそれでも機神にダメージは入らない。

「硬ってぇな!」

そこへ天騎士たちが攻めてきた。

「奴らを自由にさせるな!」

四方八方から攻撃してくる天騎士たちをあしらいながらもう一度機神に仕掛ける。

「フレイムピラー!」

「ウィング・サイクロン!」

リーシャの炎にウィンロスの風が合わさり威力が跳ね上がった炎熱が直撃し大爆発を起こした。

その爆風で一部の天騎士も吹き飛ぶ。

煙が晴れると、

「・・・マジかよ。これでも効かんのか?」

守護機神にはやはり効いていなかった。

「・・・更新完了。」

するとだんまりだったレストは機神の操縦を再開。

守護機神は再び動き出した。

大剣を構えウィンロスに狙いを定める。

「そんなノロい攻撃当たらんわ!」

速度を上げ背後に回ろうとしたその時、

「貴様らの動きは完全に読めている。」

その巨体で有り得ない動きで身体を捻らせ、素早く飛んでいるウィンロスを完全に捉え地面へと叩き落した。

「ぐおっ⁉」

「きゃぁぁ⁉」

大きくバウンドし横たわるウィンロスとリーシャ。

「何や、今の動き・・・?」

守護機神は地鳴りを上げ歩み寄ってくる。

「貴様の動きを完全に把握するため暫し様子を見た。貴様の動きは完全に見切っている。」

レストは知識を司る神。

ウィンロスの動きを予想、学習し完全に動きを読めるようになったらしい。

「お前たちは例の少女を捕えろ。守ってる竜は始末しても構わん。行け。」

「ハッ!」

天騎士たちは全てラルとメルティナの方へ向かっていった。

「まずい、メルティナさん達の下へ行かないと・・・!」

起き上がろうとするも先ほどの衝撃でかなりのダメージを負ってしまい上手く動けない。

それでも、這いずってでも彼女たちを守らなくては。

だが二人の前に立ちはだかるのは巨大な守護機神とレスト。

「貴様らの存在は脅威。創造神様が直々に力を測るまでもない。俺一人で事足りる。」

大剣を掲げ重い一撃がリーシャに振り下ろされ、爆発音と共に土煙が街から上がったのだった。


 その頃、グレイス・ド・ラルはメルティナを乗せ追ってから逃げていた。

「レスト様の命により、あの少女を捕えろ!」

無数の天騎士がラルに迫るも絶対零度のブレスで帰り討つ。

しかし数が多くキリがなかった。

(ハァ、ハァ、まずい・・・。リーシャと離れすぎたせいか進化を維持する力が薄れていく。このままじゃ・・・!)

息を挙げるラルにメルティナも心配する。

「ラル・・・。」

(私に、私にも戦える力があれば・・・!)

すると街の外れが見えてきた。

靄は街を覆うように降りかかってるためあそこを抜ければ一先ずメルティナの安全は確保できる。

ラルは速度を上げ街から出ようとしたその時、

「うわっ⁉」

何故か見えない壁のようなものに弾かれ外に出られなかった。

「ラル⁉」

「なにこれ?」

触れてみると魔法陣のような模様が幾つも浮かび上がり街を覆うように展開されていた。

「これって、結界⁉」


 その頃、人差し指が光、天にかざしているエルエナ。

「おい、今何しやがった?」

睨むタクマにエルエナは笑いながら答える。

「ん?私のお庭から逃げ出そうとした小鳥さんがいたからちょっとね?」


 どんなに蹴りを入れてもビクともしない。

「これじゃ出られない・・・。」

そうこうしている内に天騎士に囲まれてしまった。

「大人しくその娘を渡してもらうぞ?」

全員がラルに剣を向ける。

後ろは結界、前方は天騎士、もはや逃げ場はない。

もう取れる選択肢は一つ。

「僕はね、守れるものは必ず守ると誓ってるんだよね。だから・・・。」

次の瞬間、ラルは結界を蹴り急加速で天騎士の包囲を突き破った。

「何も、誰も渡さない‼」

「くっ!小癪な!追え!」

一斉に天騎士がラルを追いかける。

するとメルティナに突如頭痛が走った。

そしてあるノイズのかかった記憶を思い出す。

自分を抱え助け出そうとする見覚えのある天騎士とそれを追う別の天騎士達。

そして自分を抱えた天騎士が語り掛けている光景を。

(この感じ、前にも何処かで・・・?)

頭を抱え悩む彼女の心に深い心音が鳴り響いたのだった。


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