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『幕間の外伝 肥満の魔聖剣』

タクマ達がヒルデの屋敷に来て数日。

「ギャァァァァァ⁉」

早朝の屋敷内でカリドゥーンの悲鳴が響き渡った。

悲鳴を聞きつけたタクマ達は急いで脱衣所に駆け寄る。

「何だ⁉どうした⁉」

「ぎゃぁ⁉タクマは入って来るな‼」

そこには風呂上がりのアルセラと、体重計を見て驚愕している人間体のカリドゥーンがいた。

「カリドゥーンさん?どうしたんですか?」

「ふ、・・・。」

「「ふ?」」

「太っておる・・・!」


 カリドゥーンが悲鳴を上げた原因、それは体重の増加だった。

「なんということじゃ・・・、この儂が、体重増加じゃと・・・?」

頭を抱えて顔面蒼白のカリドゥーン。

「剣でもデブるんか?」

「デリカシー‼」

バルコニーから顔を覗かすウィンロスに蹴りを決めるリヴ。

「そんなに気にするものなのか?」

「女の子はちょっとの体重増加でも気にするんです!」

一先ずカリドゥーンを落ち着かせる一同だった。

「でも何で急に体重が増えたんだ?」

アルセラが聞いてみると、

「原因は分かっておる。そこの娘じゃ。」

「私ですか?」

紅茶をすすりながらリーシャを指した。

「久々に人型になってやっとお主等と同じように食事を出来るようになった矢先、なんじゃあの料理は!美味すぎるぞ!何千年も断食しておった儂にはまさに至高の料理!つい食べ過ぎてしまったではないか!」

「いや完全に自業自得じゃない・・・。」

ノータイムツッコみを決めるリヴ。

リーシャ自身は自分の料理を褒められて嬉しそうだった。

「とにかくこのままでは魔聖剣形態になっても重量が増して剣を振り回せなくなる。」

「それは私が一番困るんだが⁉」

使用者のアルセラにとっても深刻な問題だった。

「決めたぞ。儂は、ダイエットをするぞ‼」


 ダイエットを決意したカリドゥーン。

彼女の体重削減のためタクマ達も手伝う方針となった。

カリドゥーンを始め、アルセラ、リーシャ、タクマ、リヴの五人は全員ジャージに着替えて中庭に集まる。

「ジャージなんて前世ぶりです♪」

「へぇ、結構着心地いいじゃない。」

「動きやすいな。」

準備運動を済ませ、まず行うのはダイエットの定番、ランニング。

「あたしの中庭は広いからね。ランニングするには持って来いさね。」

「・・・何でアンタまでいんの?」

いつの間には混ざっていたジャージ姿のヒルデ。

「カリちゃんが困ってるんだろ?子供のため年長者が手を貸すのは当たり前さ!」

「カリちゃん・・・。」

「儂は子供ではないんじゃが?」

「いやその容姿じゃ無理ないでしょ・・・。」

とりあえず各々のペースで中庭を周回する一同。

「おうおう、グルグル回っとるで。」

彼女らのランニングを見学しているドラゴン三頭とメルティナ。

「メルティナは行かないの?」

メルティナに抱えられたラルが問う。

「私はこうして見てるだけで楽しいよ。」

「見た目的にあんさんも育ちざかりやと思うんやけどな?」

「まぁ良いではないか。見守るのも立派な仕事よ。」

「旦那、爺臭ぇで・・・。」

「おい。我はまだ若いぞ?」

そんな会話をしている中、タクマとアルセラは順調なペースで走っていたが後方のリーシャが結構バテていた。

「ハァ、ハァ、最近運動してませんでしたから、体力が、落ちてますね・・・。」

「ほらほら!遅いわよ?」

すぐ横をリヴが通りかかった。

「リヴさん、常に全力疾走してますけど、疲れないんですか?」

「私はドラゴンだからね。体力は人間の倍以上はあるのよ。」

そう言い残しリーシャを追い越していった。

そして当の本人カリドゥーンも疲れて歩いていた。

「人間の姿で動くのも久々じゃからまだ感覚が戻らんな・・・。」

「少し休憩するかい?カリちゃん。」

追い越すヒルデが声をかけ、一同は休憩に入った。

「ふう、普通に走るのも気持ちいな。」

「だな。私も近衛騎士団の下っ端時代を思い出す。」

普段剣を扱うだけあって二人はまだ体力の余裕があった。

そしてその後ろで限界を迎えていたリーシャはリバースしてしまいリヴに背中を擦られていた。

「はい、カリちゃん。」

ヒルデがカリドゥーンに飲み物を渡す。

「貴様も世話好きじゃの。一応言っておくが儂は剣じゃぞ?」

「剣でもこうしてお話しできるじゃないか。意思があれば剣も人間も変わらないよ。」

「・・・変わった奴じゃ。」

飲み物を受け取り休息を済ませ、再び運動を再開したのだった。


 その夕暮れ。

一日中身体を動かしまくった結果、いつも以上にお腹が空いた。

「食べ過ぎは禁物ですよ?油断するとリバウンドしてしまいますから。」

「わ、分かっておるわ!」

「じゃぁ今日はここまでだな。リーシャ、飯頼むぜ。」

「はい!」

一同が屋敷に向かう途中、カリドゥーンはヒルデに寄った。

「なんだい?」

「その、飲み物をくれた時もそうじゃが、今日は儂の我儘に付き合ってくれて、感謝するぞ・・・。」

絵にかいたようなツンデレっぷり。

その可愛さにヒルデはたまらずカリドゥーンを抱きしめた。

「なんだいなんだい、ちゃんとお礼言えるじゃないか!ホント可愛いねぇ!」

「ぎゃぁぁ!やめろぉ!くっつくなぁ‼」

そんなダイエット生活が続き、数日後ついにカリドゥーンの体重削減に成功した。

「やったーー‼」

「ついでに俺らも体力が上がったな。」

「あぁ、どんなに動いてもあまり息切れしなくなったな。」

「私はやっと平均体力に戻りました・・・。」

「これからは普段も運動しましょ?」

「はい・・・。」

飛んで喜ぶカリドゥーンをヒルデが抱きかかえる。

「よく頑張ったね。これからもうちの孫をよろしく頼むよ。」

「任せろ!儂がいなければ小娘など小童同然じゃ!」

「一番(見た目)子供なのはカリドゥーンだろ!」

「なんじゃとーー⁉」

二人の掛け合いに和んでいるとふと疑問に思った。

「あれ?カリドゥーンさん、ヒルデさんに抱えられてるのに前のようにすぐ抵抗しませんね?」

「そう言えばそうだな。なんかあったのか?」

「別にいいんじゃない?あの三人、凄く楽しそうだし。」

カリドゥーン達の笑顔が凄く眩しいものに見えたタクマ達だった。


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