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『第百二十四章 起動の風刃竜』

完全に日が暮れた大海原。

タクマが海底にそびえるダンジョン塔を登ってこないと何もできないリーシャ達はバハムートの作った魔法壁の上で待ちぼうけていた。

「流石にやることが無さ過ぎる。」

「タクマが我のスキル効果の範囲内まで来んとこちらは何も出来んからな。」

『暇じゃの。子供らはすっかり寝ておるわ。』

リーシャとラル、メルティナは待ち疲れてすっかり夢の中。

ランバルは研究書を持ち歩いていたためそれを読んだりと出来る研究を進めていた。

しかしただ一人、ウィンロスだけはずっと立ったまま暗い海を眺めていた。

「ウィンロス、ずっと気を張っているな。」

「こういう時一番だらける奴がだらけとらん。何をあんなに気を張っておるのだ?」

『・・・てかあやつ鳥目ではないのか?』

後ろの外野が会話している中、ウィンロスは黙って海を眺める。

彼の脳内には先日の早朝、何かを思い詰めたような表情をするリヴが浮かび上がる。

(・・・やっぱり、何かあったんやな。アイツは首を突っ込むなと言っとったが、あんな顔見せられたら、ほっとけるわけないやろ。)

そしてウィンロスは何かを決心した顔をする。

「旦那、頼みがあるんやけど。」

「む?」


 ダンジョン内部、水辺のある場所まで来たタクマは野営をしていた。

「大分登ったとは思うんだが、アイツ等からの連絡はなし。まだ転移範囲に入ってないってことか。」

そう呟きながら焼き魚を食べる。

「・・・ここに来るまで従魔結石の破片を結構拾ったが、本当にこのダンジョン、従魔結石で出来てるんだな。」

集めた破片を手に取り眺めるタクマ。

幾つかは自分の結石に吸収させたが特に変化はなし。

「さて、腹ごしらえも済んだし、もう少し進んでみるとするか。」

火を消し再び歩みを進めるタクマは別の水辺のある空間に迷い出た。

「また水辺。結構な数があるんだな。まぁ魚の調達には事欠かないから助かるんだけど。」

ふと辺りを見回すと、なんと難破船を見つけた。

状態からしてかなり古い船だ。

「ダンジョンに迷い込んだ船か。相当腐ってるしかなり昔の物みたいだな。」

何か使える物がないか船内を探していると、一冊の書物を見つけた。

「ボロボロだけど、まだ読めそうだな?」

書物を開くとそれは古い伝承が記された物だった。

「何だこれ?ドラゴンがドラゴンと戦ってる絵?画風からして壁画を模写したのか?」

文章の一部は破れて読めない部分もあったが読める個所もあった。

「このドラゴン、なんだかウィンロスに似ているな?骨格も近い。でも、どこか雰囲気が違うような?」

その絵には海竜と戦う翼竜が描かれていたが、その翼竜は稲妻を纏ったような描写だった。


 同時刻、白く輝く魔石の前に白髭を生やした男性が立っていた。

リヴの父である。

「ようやくここまで来た。ようやく儂の数百年の悲願、竜王となるその時が!」

男性が魔石に触れようとしたその時、

「海竜様!」

門番のシーサーペントが入ってきた。

「なんだ?騒々しい。」

「先ほど強大な魔力を感知し調べた結果、我が塔の頭上に現竜王、『超天竜バハムート』の存在を確認しました!」

「何⁉現の竜王だと⁉誠か⁉」

「はっ!誠にございます!」

(竜王、まさかこのタイミングでここに現れるとは、実にめでたい日だ!)

男性はニヤリと笑いシーサーペントに命令を出す。

「確か侵入者もいたのだったな?お前はそやつを排除し現竜王を向かい入れろ。奴の目の前で儂が竜王となる瞬間に立ち会えさせてやる。行け!」

「ハッ!」

シーサーペントは退出していった。

「では、儀式の場を設けるとするか。」

男性は魔石に触れるとダンジョン全体が強い揺れに見舞われた。

内部にいたタクマ達は勿論、海上のバハムート達にまでその轟音は聞こえていた。

「な、何だ⁉」

寝ていたリーシャ達も飛び起きる。

「姉さん、これって・・・。」

「とうとう始めたようね。」

海底が土埃に見舞われると次の瞬間、翡翠色に輝く巨大な結晶塔が飛び出す。

そのまま塔は海底を登っていき海上にまで到達する。

「きゃぁぁぁぁ⁉」

「うおぉぉぉぉ⁉」

付近にいたリーシャ達に襲い来る荒波をバハムートが防壁で防ぐ。

ぐんぐん登っていた結晶塔は天高くそびえ立つ。

夜の暗闇に翡翠色の輝きが辺りを照らしていた。

「これは、一体・・・。」

「まさかダンジョン自体が浮上してくるとは・・・、やはり引導するヌシがいるようだな。」

「これが、僕の探していた物の全貌か・・・。」

皆が突然現れた結晶塔に驚いているとリーシャはあることに気付く。

「あれ?ウィンロスさんは?」

側にいるはずのウィンロスの姿が無かった。

アルセラもだ。

「つい先ほどあのダンジョン内に転移させた。タクマはまだ範囲に入っておらず座標は曖昧だが内部には入れたようだ。・・・だがその直後にダンジョン自体が浮上してくるとは思わなかったがな。」

すると今度は海中から海の魔獣たちがバハムート達を囲むように次々と現れ始める。

「な、魔獣⁉」

「ランバルさん下がって!」

一同は戦闘態勢に入ると魔獣の一体が魔獣語で話しかけてきた。

『竜王バハムート様。我が主、海竜様が貴方様をご招待しています。』

バハムートも魔獣語で答える。

『海竜が我を招待?何を考えてる?』

『我が主は直に竜王へと進化なされるのです。その立会人として現竜王様に見届けていただきたいのです。』

『竜王、か。竜王は世界にただ一体のみ存在が許される。生憎我は座を降りる気は微塵もない。よって貴様らの主の下へは行かん。断らせてもらおう。』

すると他の魔獣が身構える素振りを見せる。

『力づくで連れていくつもりか。王に楯突くとどうなるか、その身を持って教えてやろう!』

バハムートの鋭い眼光から凄まじい威圧を放たれる。

彼の持つスキル『竜王の威圧』だ。

放たれた威圧に当たられた魔獣の何体かが気絶し倒れる。

残った魔獣たちは完全に戦闘態勢だ。

「リーシャ!ラル!お主等はメルティナとランバルを守れ!ここは我に任せてもらおう!」

「っ!バハムートさん、今私の名前を!」

バハムートは二ッと笑いかける。

リーシャは初めてバハムートに名を呼んでもらい一気に気合が入った。

「分かりました!」

「二人は僕達に任せて!」

「ふっ。さぁ!我に挑む者、抗う者はまとめてかかってこい!全て相手してやる!」


 「・・・ふん‼」

朽ちた船の残骸の山からタクマが勢いよく起き上がる。

「いてて、急に地震が起きるとか・・・。何だったんだ?」

見つけた書物は破れて粉々になってしまっていた。

「まぁ読めるところは読んだしいいか。早く先へ進もう。」

タクマが船から飛び降りた瞬間、足元が突然崩れ落ち、あのシーサーペント現れた。

「っ⁉」

出会い頭にタクマを捕まえシーサーペント共々階層を突き破って上昇していく。

そして磁場で幾つもの岩が浮遊した上部階層にまで到達しタクマを投げ捨てた。

タクマは受け身を取り剣を構える。

「また出たか!シーサーペント!」

「今度こそは逃がさん!次こそ息の根を止めてやる!」

「怖っ!」

シーサーペントは完全に殺気を放っている。

これは一筋縄ではいかなそうだ。

「オォォォ‼」

「チッ!」

シーサーペントの噛みつきを正面から受け止めるも勢いが強く、大きく弾き飛ばされる。

何とか耐えるもすぐさまシーサーペントは大きく口を開け迫ってきた。

「居合・炎突‼」

再度正面から炎の突きを繰り出し大爆発が起きた。

互いに後方へ飛ばされ距離が空く。

「二度も正面から私の攻撃を凌ぐとは・・・。やはり貴様は危険!」

「人間からしたらお前も大分危険だがな?」

そして圧巻のスピードで駆け回り激しい戦闘が繰り広げられた。

タクマも剣術で対抗するがシーサーペントもかなり強い。

門番を任されるだけはあった。

「フロストファング‼」

シーサーペントの牙が氷を纏い巨大な氷の牙となる。

その攻撃を寸前でかわしたタクマだがシーサーペントが噛みついた浮遊岩が一瞬にして凍ってしまった。

(あれに触れたら一発アウトだな。バハムートの炎でもすぐに溶かせない。)

相手は氷属性を中心に使うようだ。

例え受けたとしてもあの氷はバハムートの炎でも溶かすのに時間がかかってしまう。

(つか蛇が氷って大丈夫なの?)

そんな事を思っていると一瞬にして距離を詰められた。

咄嗟にかわすも相手の尻尾の追撃に当たってしまい体勢が崩れる。

その隙にシーサーペントの氷の牙に捕まってしまった。

その瞬間タクマの身体が凍ってしまい身動きが取れなくなってしまった。

「ぐっ⁉」

「これで貴様も終わりだ。」

上へと頬り投げ大きく口を開けた。

(っ⁉まずー・・・‼)

凍った身体ごと、タクマはシーサーペントに食われてしまった。

「・・・これでいい。忌々しいが奴の力も奪えるしな・・・。」

タクマを食らいその場を離れようとしたその時、

「テメェ何してやがる‼」

突如ウィンロスが現れシーサーペントに鋭い蹴りを入れた。

「ぐはっ⁉」

そして吹っ飛ばされた先にはカリドゥーンを構えるアルセラも現れる。

「ハァァァ‼」

「ぐあっ⁉」

大きく薙ぎ払いシーサーペントを浮遊岩に激突させる。

「オレ達の主を食いやがって‼」

「タクマを、返してもらうぞ‼」

颯爽と現れた二人の表情が完全に激怒していたのだった。


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