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『第百二十三章 海竜脱出』

出口を見つけたはいいが父の配下である蛇の魔獣、シーサーペントがリヴ達の前に立ちはだかっていた。

「父さんの配下・・・!」

「何故お二人はこちらへ?それにリヴ様は今牢の中のハズでは?」

「あんな辛気臭い所出てきてやったわ。それにアイツのいるこの場所から一刻も早く出たいからね。悪いけどそこ、通してくれる?」

「・・・否。私は塔の門番。例えあの御方の親族といえど通すわけにはいかない。」

「・・・大方アイツに私を外に出すなって命令を受けてるんでしょうね。」

「その通り。」

即答だった。

「だけどね、私だってこんな所に居続けるつもりはない。力尽くでもそこを通らせてもらわ!」

そう叫ぶと同時に一気に距離を詰める。

至近距離でブレスを放つも身体をくねらしてかわされ、カウンターの頭突きを食らってしまう。

「あぐっ⁉」

「姉さん!」

「姉の心配をしている場合ではないぞ?」

波音をも立てずに背後に回られ尻尾で大きく薙ぎ払われてしまった。

「くっ、コイツ、強い!」

相手はかなりの手練れ。

一筋縄ではいかない。

「カイレン!アンタは門を開けて!アイツの相手は私がするわ!」

「姉さん⁉」

有無を言わせる間もなくリヴはシーサーペントに攻めていった。

「・・・姉さんを逃がすためだ。僕がやらなきゃ!」

カイレンは底の扉に噛みつき開けようと奮闘する。

その間、リヴはシーサーペントに激しい連撃をお見舞いする。

得意な魔法やブレス、長い体を生かした機動力を駆使し相手に食らいつく。

「流石海竜様のご子息。凄まじい力だ。相手にとって不足なし!」

するとシーサーペントは先程よりも素早い速度でリヴの背後に回り水圧のブレスを食らわせる。

「きゃぁ‼」

リヴはそのまま底に叩きつけられてしまう。

「姉さん!」

「次は貴方だ。」

いつの間にか背後に回られたカイレンはシーサーペントに首元に噛みつかれ大きく薙ぎ払われてしまった。

「ぐっ・・・!」

「大人しく塔に戻られるようお願いしますがね?」

「戻るわけないでしょ!」

急接近で迫るリヴの頭突きを尻尾で難なく受け止める。

「家族を道具のように扱うアイツの下なんて一秒でもいたくないわ!」

「やれやれ、あの御方も随分嫌われたものだ。」

呆れるシーサーペントはリヴを弾き返し、身体を大きくくねらせ渦潮を生み出す。

「うわぁぁぁぁぁ‼」

リヴをカイレンは渦潮に飲み込まれ、まるで洗濯機状態になる。

「くっ!水圧砲!」

カイレンは水圧の弾を吐き出しリヴを渦潮から脱出させる。

「カイレン⁉」

渦潮はカイレンを飲み込んだまま大爆発を起こしてしまった。

「カイレン‼」

崩れる岩と共に落ちるカイレン。

リヴは岩の隙間を通り抜けカイレンを助け出す。

「カイレン!大丈夫⁉」

「ぐふっ、姉さんこそ、無事で良かった・・・。」

重傷を負ってしまい動けそうにない。

「・・・ありがとうカイレン。後は私に任せて!」

カイレンを空洞の端に休ませシーサーペントに向き直る。

「素晴らしい姉弟愛だ。」

「そりゃどうも!」

高速で水中を駆け回りシーサーペントも後に続く。

空洞内を旋回しながら戦う両者。

どちらも一歩も譲らない攻防戦だ。

「理解できんな。海竜様は後に竜王となられる御方。その御方のご子息であることになんの不満がある?」

「大ありよ!アイツはママを生贄とした!大切な家族を自分の欲望のために殺めた!そんなことをする奴なんて、親でもなんでもない‼」

互いに正面からぶつかり力の押し合いとなる。

「それに、今私の中にある魔石の力。アイツはそれを魔石に戻すために今度は私自信をママのように生贄にしようとした!実の娘を殺す親なんてありえない!だから私はここから一刻も早く抜け出したかった!」

強い衝撃波が両者の距離を開ける。

「私達は道具じゃない!ここを出て、自由に生きるのよ‼」

リヴは口部に魔力を溜め始める。

「やはり私には理解できんな。目的のために手段を択ばないあの御方に私は強く共感した。海竜様に忠誠を誓った私の役目は、この場を誰一人通さないことのみ!」

シーサーペントも口部に魔力を溜め始めた。

そして両者同時にブレスが放たれ中央でぶつかり大爆発を起こし、重い水流がシーサーペントにのしかかる。

「ぬぉっ⁉」

水流に堪えていると水蒸気の中から裸の人間が飛び出してきた。

「な⁉人間⁉」

それは人化のスキルで人間となったリヴだった。

「流流水拳‼」

螺旋状に渦巻く水を纏った拳がシーサーペントに炸裂。

「ぐほぁ⁉」

シーサーペントは壁に強く叩きつけられ気を失った。

「ハァ、ハァ、咄嗟に編み出した新技・・・、うまくいった・・・!」

慣れない身体と魔法に疲弊しきっているリヴ。

人間の姿のままカイレンの下へ泳いでいく。

「カイレン、大丈夫?」

カイレンは重い身体を起こす。

「うん、なんとか。でも、僕はここまでみたいだ。」

「何言ってるの。一緒に出るって言ったでしょ?ほら立って!」

リヴがカイレンを起こそうとしたその時、覚えのある気配がこちらに迫ってきているのを感じ取った。

「っ!この魔力!」

「父さんだ・・・!」

異変に気付いて父がこちらに迫ってきているのだ。

「今アイツに見つかったら牢屋に逆戻りだわ!カイレン早く!」

「・・・・・。」

カイレンはだんまりだった。重傷を負った子の身体では姉の逃走を阻害、足手纏いになってしまう。カイレンはその事実を自身が一番よくわかっていた。

「ごめん、姉さん。僕は姉さんに自由に生きてもらいたい。そのためなら・・・!」

カイレンは底の門に向かって水圧砲を放つ。

衝撃で門がこじ開けられ水流が門へと吸い込まれていく。

「カイレン⁉何を⁉」

「父さんは僕が押さえる。その間に姉さんは出来るだけ遠くまで逃げて。姉の幸せを守るのも、弟の僕の役目だ!」

そう叫びカイレンは来た道を戻って行った。

「カイレン!カイレンー‼」

人間の姿では思うように泳げないリヴは水流に抗えず門の中へ流される。

そして水流の影響で門は固く閉ざされたのだった。


 念願の塔からの脱出に成功したリヴは果てのない海を漂っていた。

弟、カイレンが自身の身を挺してまで逃がしてくれた。

その想いを無駄にしないようリヴは野生の海竜として数百年の時を生きていく。

途中人間の姿となり陸の文化にも触れ自身を成長させていき、最終的に西の海域に落ち着いた。

しかし、約二百年たったある日、海域に不純物が溢れるようになり海がどんどん汚れていった。

人間の仕業であると気づいたリヴは怒りを露わにし人類に牙を向く。

だがその後、リヴはある少年と運命的な出会いを果たすのであった。


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