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『第百二十章 望まぬ再会』

広い大海原をある一席の小船が疾走していた。

『こんなちっこい小舟で大丈夫か?』

「失礼だぞカリドゥーン。これでもないよりはマシだ。」

「アルセラさんも大分失礼だよ?」

「それにしても、ランバルさんも私と同じ異空庫のスキルをお持ちとは驚きました。」

「ははは、職業柄各地へ赴くことが多くてね。このボートは特注だから見た目より頑丈で浮力も抜群だからこの人数が乗っても平気だよ。流石に彼らのような巨体は無理があるけど・・・。」

ランバルの持つ魔導エンジンで走るボートの上空をバハムートとウィンロスの二頭が飛んでいた。

「結局オレ等は飛ぶしかないんやな。」

「休憩時、我の魔法壁で足場を作る故そっちの心配はいらんぞ?」

「そういう意味やないんやけど、なんかはぶられてる感が否めないんや。」

一同はそのまま海を走っているとランバルが何かに気付いた。

「おかしい。」

「何がですか?」

「今僕達がいる場所は先日豪雨にあった場所なんだが・・・。」

「「えっ⁉」」

そこは波も穏やかな快晴の海だ。

「あの規模の嵐なら数日は続いてるはずだ。たった一晩でこの天気はあり得ない。」

そこにバハムートが高度を下げてきた。

「おそらく意図的な影響であの嵐が発生したのだろう。」

「意図的って、一体だれが?」

「考えられるのはリヴと同じ海竜種だ。奴らは時に天候をも操る力を身につけることがある。故に奴等も災害級の魔獣と称されるのだ。」

その話を聞いたウィンロスはここ最近のリヴの様子がおかしかったことを思い出した。

(まさか、アイツと何か関係が?)

「旦那!水面ギリギリに足場頼むわ!」

言われた通りバハムートの魔法壁で足場を作り降り立ったウィンロスは海に顔を突っ込む。

が、

「アカン!濁りすぎてなんも見えへん!」

「何してるんですか?」

「海底に何か手掛かりがないか探りたいんや。何か視力が上がる魔法とか濁りを消す魔法とかないんか?」

「そんな魔法ないですよ。タクマさんなら自分でスキルを組み合わせて新しい魔法を作りますけど・・・。」

「・・・え、待って?彼魔法造れるの?」

反応するランバルを他所にウィンロスはその一言で閃く。

「タクマならスキルを組み合わせて・・・?それや!旦那!旦那の『鑑定』って俺に付ける事出来るか?」

「まさかタクマのようにスキルを組み合わせる気か?」

「物は試しや。で、出来るんか?」

「出来なくもないが、元々『鑑定』を持ち合わせていないお主が使いこなせるかどうか。」

「かまへん!やってくれ!」

「お、おう・・・。」

いつもより勢いが凄いウィンロスに押されバハムートは『鑑定』スキルを発動させ、その魔法陣をウィンロスに渡す。

「眼鏡みたいだな。」

『ドラゴンが眼鏡、おもしろっ。』

「え~と、これにオレの『清潔』魔法を付けて・・・。」

魔法陣を重ねると、出来てしまった・・・。

「出来てもうたわ・・・。」

「「「出来るんかい。」」」

女性陣が総ツッコみを入れた。

予想外に作れてしまった新スキル『透眼』を自身にかけ再び海に顔を入れる。

スキルのおかげで濁りは一切見えず透き通った海底を見ることが出来ていた。

ウィンロスにはまるで南国のような透明度に見えていた。

海底をキョロキョロと見回していると何か光る物を見つけた。

(あれは・・・!)

ウィンロスはそのまま海にダイブした。

「ウィンロスさん⁉」

だがすぐに上がってきた。

「突然潜ってどうした?」

「旦那、こんなん見つけたわ。」

バハムートに翡翠色の小石を渡す。

「これは!」

「従魔結石の欠片やねん。」

一同が前のめりになり欠片を覗く。

「間違いない。これは紛れもない従魔結石の破片だ。でも何でこれだけ海底に?」

ランバルが首を傾げる。

「分からへんけど、なんか海底になぞるように破片が散りばめられててな。それを辿れば何か分かるんやないかと思っとる。」

「何かあるのは確かだろうな。明らかに不自然だ。その辿った先にタクマ達がいると信じ進むしかない。」

全員が頷き一同は散りばめられた従魔結石の破片を辿って行ったのだった。


 リヴを連れ去られ一人洞窟を進むタクマ。

「アイツの弟だって言うから油断した・・・。こんな時カリブル街で見た水中呼吸の付与された指輪が欲しいぜ。」

そんな事を愚痴りながら洞窟を進んでいると壁の隙間から翡翠色の光を見つけた。

「あれ?この色って・・・。」

光の漏れる隙間を覗くと、それは従魔結石の破片だった。

手を伸ばし欠片を掴み取る。

「従魔結石・・・、何故この魔石がこんな洞窟に?」

その時、うっかりその欠片を自分の従魔結石に近づけると欠片がタクマの結石に吸い込まれていった。

「え、吸収した⁉・・・もしかして、持ち主のいない結石は持ち主のいる結石に集まるのか?ほんと分からないことだらけだな・・・。」

従魔結石の謎に当たられるタクマは洞窟を進むにつれて破片の数が増えていることに気付いた。

「奥に進むにつれて破片の数が多くなってる。この先に何かあるのか?」

駆け足で洞窟を抜けると。

「な、なんだここ⁉」

そこは辺り一帯翡翠色に包まれた空洞。

しかもまるで意図的に作られたように螺旋状の道が上へ上へと施されていた。

色からしてもしやと思い地面を擦ると、翡翠色の結晶が顔を出す。

「間違いない・・・、この洞窟、()()()()()()()()()()()()()!」

ランバルが睨んだ通り、ダンジョン規模の従魔結石が存在したのだ。

「少量しか存在しない従魔結石をこれ程とはな。しかもご丁寧に道まである。明らかに自然に出来た物じゃない。誰かがこれほどの結石を集めてこの洞窟を作ったんだ!」

新たな事実が判明したはいいがまず第一に誰かと合流しなければいけない。

「リヴも心配だし、急ごう!」

タクマは走って螺旋状の空洞を登っていくのだった。


 「・・・・・ん。」

目を覚ましたリヴは岩壁を繰り浮いた牢屋に入れられていた。

「そっか、私はカイレンに・・・。」

頭を押さえ起き上がるリヴは過去にカイレンと話した事を思い出す。

「なんで一度逃がしてくれたアイツが私を捕まえるの?」

困惑するリヴの元に一人の中年男性が現れた。

「久しいな。我が娘よ。」

牢屋の前には深い青のローブに身を包み、白い髭を生やした年配の男が立っていた。

「・・・・・。」

「そう睨むな。親子の感動な再会だぞ?」

「何が感動な再会よ。アンタなんて一時も父親なんて思ったことないわ。」

恨みの籠った目で睨むリヴに男はフッと笑いを零す。

「まぁいい。儂の目的にお前が必要になった。カイレンに探させてお前を連れ戻させてもらった。」

「・・・まだあんな下らない事やってたのね。」

「下らないかどうか今に分かるさ。」

そう言い残し男はその場を後にした。

リヴはその場に脱力する。

「カイレン・・・、どうして?」


 数百年前、親の愛情を受けずに育ったリヴは今の環境に嫌気が刺していた。

ましてや父親は自身の子供をある目的のための駒にしてしまうほど酷いものだった。

当時のリヴは父親の拘束によって外に出たことが無い。

だが今の環境に耐えきれないリヴは何度も、何度も何度も逃げ出そうと企てたが悉く失敗。

まだ竜として未熟だった彼女では圧倒的に力不足だったからだ。

だがそんな彼女を想い、逃走に手を貸したのが同じ境遇を持っていた弟、カイレンだった。

彼のおかげでリヴは親の元から逃げられたがカイレンはその場に残ったのだ。

「私を連れ戻させないように足止めするとか言ってたのに、何で?」

リヴは心のモヤモヤが晴れないまま、檻の中で力なくうなだれたのだった。


 迷路のような翡翠色の洞窟を歩くタクマ。

「よいしょっと。室内なのに高低差も激しいな。やっぱダンジョンなんだな。」

とりあえず上を目指して進んでいるが一向に出口が分からなかった。

「念話も繋がらないし、これじゃバハムート達に居場所を伝えることも出来ない。自力で上がってくしかないか。」

道中いくつか従魔結石の破片を回収しているが特に深い意味はない。

何か使えるかも程度で拾っていた。

「しっかし改めて考えると、本当にこのダンジョンは従魔結石で出来てるんだな。これを作った奴は何を考えてるんだ?」

洞窟を進んでいるとまたもや広い空洞に出る。

その時だった。

どこからか地鳴りが聞こえたと思ったら突然壁を打ち破り、巨大な魔獣が現れた。

「おわっ⁉」

タクマはその魔獣に咥えられ、そのまま広い空洞の中心まで連れてこられる。

そして魔獣は咥えたタクマを吐き捨てた。

「いてて、何だ?」

現れたのは滑らかな体表に蛇のように細長い身体。

竜とは少し違った見た目の巨大な魔獣だった。

「本で見たことがある。海に住む巨大な大蛇、シーサーペント!」

薄い青色の大蛇、シーサーペントはタクマを見下ろす。

「・・・侵入者が人間とはな。」

タクマは驚いた。

なんと相手が口を聞いたのだから。

「言葉を話す魔獣、相当な力を持ってるようだな。」

「当然だ。私はあの御方に選ばれこの『神霊の塔』の門番を任されたのだからな。」

塔。

タクマはその単語に引っかかる。

(塔だと?この洞窟が?確かに上に登ってる感じはしてたが、海底に塔?)

疑問が頭を過っているとシーサーペントが急速で攻めてきた。

「理由はともあれ、侵入者は排除する!」

壁を蹴って跳躍しシーサーペントの追撃をかわすタクマ。

「いろいろ疑問に思うが、今はこの場を乗り切るしかねぇ!」

剣を握り抜刀。

斬撃がシーサーペントに直撃するも相手は相当頑丈なのか傷一つ付かない。

(シーサーペントはドラゴンよりも格下だが今の斬撃で無傷か。あの耐久はリヴと同格だな。)

地面に降りるもすぐさまシーサーペントの噛みつき攻撃が迫る。

以外に素早い動きでタクマを追撃し続ける。

(隙がねぇ!)

倒す気はない。

この場から逃げられればそれでいいのだがシーサーペントは俊敏に動き回るため逃げる隙がなかった。

「くそっ!」

逃げ出す隙を掴むため避けに専念するタクマ。

「出し惜しみしてる場合じゃないな!」

タクマは水の竜化へと変身し、水の尻尾で大きな岩をシーサーペント目掛けて弾き飛ばした。

「っ⁉」

予想外の反撃にシーサーペントの攻撃が止まる。

「貴様、その姿は・・・、海竜⁉」


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