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『第百十九章 海竜の親族』

「・・・うっ、ここは?」

リーシャが目覚めたのは綺麗な砂浜。

近くには先ほどまで乗っていた巨大な船が挫傷していた。

「ハッ、ラル!メルティナさん!」

「こっち・・・。」

岩の上でぐったり横たわるメルティナに砂浜に頭が埋まってるラルが倒れていた。

急いでラルを引っこ抜きメルティナに回復魔法をかける。

周りを見ると他の乗客も放り出されただけで無事のようだ。

「あ、バハムートさん!」

近くの浜で犬神家状態になってるウィンロスを引っこ抜いてるバハムートもいた。

「アルセラさんとランバルさんは・・・?」

「こっちだ、リーシャ・・・。」

声のする方を向くと挫傷した船の縄にグルグル巻きに吊るされている二人がいた。

『いやそうはならんじゃろ。』

カリドゥーンにツッコまれるも全員無事・・・、とはいかなかった。

「タクマさんとリヴさんは・・・。」

「海に消えたきりだ。」

船から落ちたリヴを助けにタクマまで海に飛び込み、そのままはぐれてしまったのだ。

「早く探しに行かないと!」

「どこへ向かおうと言うのだ。二人は荒れる海へと落ち、行方は闇へと消えている。宛もなくこの広い海を探すのは無謀だ。」

バハムートに言われ悔しそうに歯を噛みしめるリーシャ。

「それでも・・・、何もしないよりはマシです!」

海へ飛び出そうとするリーシャをアルセラが間一髪引き留める。

「まったく・・・。揃いも揃いよって。」

バハムートが呆れているとランバルがある提案を出してきた。

「それなら僕に任せてもらえるかな?」


 「・・・ま、・・・じ様。主様!」

「っ‼」

リヴの呼び声に目を覚ますタクマ。

「リヴ、無事だったか。」

「バカ!何が無事だったかよ!一番危なかったのは主様なんだからね⁉」

海に投げ出されたリヴは竜化して荒波に耐えていた所にタクマが現れたものだから大急ぎで助け出したとの事だ。

「助けに行ったのに逆に助けられたか・・・。すまん・・・。」

「肺に海水が沢山入っちゃってたから本当に危なかったんだから!もう無茶しないでよ~!」

感情が高まり泣いてしまった。

「でも良かった~!」

「ごめんごめん・・・。それにしても、ここは?」

タクマ達がいるのは薄緑色に輝く洞窟の中にいた。

側には水溜まりもある。

おそらくここから洞窟に入ったのだろう。

「ここは水深数百メートルの海底にある地下洞窟の一部よ。」

「そうなのか。海底にこんな洞窟があるなんて・・・。」

壁に生えている緑色の鉱石が光源となり視界は良好だった。

しかし、

「くしゅんっ!」

「リヴ、寒いのか?」

「うん。普段だったら平気なんだけど荒波に無理やり抗ってここに来たから魔力がほとんどないし竜化する体力もないのよ。」

ずぶ濡れの服を押さえて震えている。

タクマの衣服もずぶ濡れだ。

このままでは風邪を引いてしまう。

「とにかくどうにかしねぇと。」

立ち上がってローブを脱ぐと袖の中から小柄の魚が二匹出てきた。

「・・・・・。」

「・・・・・。」

顔を見合わせる二人だった。

「行動を起こすためにはまず服を乾かしてっと。」

側にあった岩に熱の魔法陣を掘って熱石にし、その上に服をつり下げる。

「ほら、リヴも。」

「うん。」

リヴも服を脱いで薄着になる。

(主様が女性に無頓着で良かった。いや良くないか。将来の妻として、女として見てもらわなきゃ。)

次にタクマはローブの袖に入っていた魚の鱗を剣で削り、熱石の上に置いて焼く。

「腹にも何か入れなきゃ肝心な時に動けないからな。」

シャコガイの殻で海水をすくい塩も作る。

「今更だけど、主様ってサバイバル慣れしてるわよね。」

「バハムートと出会う前は数年間キャンプ生活だったからな。頼りにしていいぜ?」

「端からそのつもり♪」

リヴの氷魔法で食器も作り簡単な魚料理が出来た。

「いただきます。」

手を合わせ魚を食べる二人。

「え、美味しい!」

「塩があれば大抵のものは食えるな。」

そんなサバイバル飯を食べ終え、服が乾くまで少し落ち着く。

しかし、

「ブルブル・・・。」

「・・・やっぱ薄着は寒いよな。」

タクマはローブを優先的に乾かし羽織る。

そしてバハムートのスキル『クリエイト』で石を石炭にし火をつける。

「流石に器用すぎでしょ。」

「いいからいいから。ほら、おいで。」

「・・・え?」

簡易な焚火を前に二人でローブに包まる。

「・・・ごめんね主様。本来なら私が主様を守らなきゃいけないのに。全部主様に任せっきり・・・。従魔として面目ないわ。」

「気にするな。自分の従魔を気遣うのも主の務めさ。」

暖かな火を見て次第に心まで落ち着いてくるリヴ。

(こんな気持ち・・・いつぶりかな。)

リヴはとある女の子と洞窟で雨宿りしていた時を思い出し、いつの間にかタクマの腕の中で眠っていた。

タクマもそんな彼女にローブをかけ直し自身も少し眠る事にしたのだった。


 「・・・ハッ!」

目が覚めたリヴはガバッと起き上がる。

「あれ?主様?」

そこにタクマの姿はない。

焚火の火も消えている。

するとそこへ、

「お、起きたか?リヴ。」

洞窟の陰からタクマが出てきた。

「どこに行ってたの?」

「ちょっと洞窟の探索をな。お前はここの事知ってるみたいだけど俺は知らないから。」

「・・・気付いてたの?私が、ここに来たことがあるのを。」

「従魔の考えくらい見当がつくさ。」

乾いた服を着て洞窟の奥へと歩みを進める二人。

「・・・やっぱ念話は届かないか。相当遠くまで流された可能性があるな。」

「おじ様たちに教えた無人島からこの洞窟まではかなりの距離があるわ。外に出られれば私が飛んでおじ様たちと合流できるんだけど・・・。」

リヴは辺りをキョロキョロしていた。

「一度来たことがあるのに道が分からないのか?」

「うん・・・。前に来た時より構造が複雑になってる。落盤の個所も多数見かけたし、ちょっと苦戦するかも。」

自身のない声で言うリヴにタクマが励ます。

「だったら二人で出口を見つければいい。それだけさ。」

「・・・うん。そうね。」

少し元気が出たリヴは記憶を頼りに洞窟を進んだり、タクマに壁を崩して道を作ってもらったり。

途中掘りすぎて道を塞いでしまったりとあったが順調に上へ上へと上っていた。

「確かこの辺りは・・・。」

「リヴ!あれ!」

前方に光が見えた。

「出口だ!行くぞリヴ!」

「わっ!主様⁉」

リヴの手を引き駆け上がり、ようやく外に出ることが出来た。

かに思えたが、

「外じゃねぇな。広い空間だ。」

かなり広い空洞に出た二人。

天井には光源の鉱石が幾つも重なり巨大なクリスタルとなって空洞内を照らしていた。

「すげぇな。下手したら観光名所だぜこれは。」

「こんな海底に観光客なんて来ないわよ。」

冷静なツッコみを入れられたタクマだった。

「でも体感温度からするとさっきまでいた場所より暖かい。上には来てるはずよ。」

「よし!もうひと踏ん張りだな。」

二人が再び歩み出そうとしたその時、突然地響きが空洞内を揺らした。

「うわっ!」

「何だ⁉」

すると地面を突き破り激流が溢れ出してきた。

タクマはリヴを抱え間一髪岩の上に飛び乗った。

そして激流が溢れた穴から巨大な影が姿を現す。

「あれは、ドラゴン⁉」

現れたのはリヴと同じ海竜だった。

「ここはアイツの住処だったってことか?」

タクマが剣を手にかける。

が、リヴはその海竜を見て様子がおかしかった。

「リヴ?」

しばらくの沈黙が続いた後、海竜が眩い光に包まれる。

タクマ達が目を開けるとそこには、リヴと同じ美しい青い髪に灰色のトレンチコートを着た好青年が立っていた。

「人化のスキル⁉リヴ以外にも持ってる奴がいたのか!」

人となった竜の青年はゆっくり二人に歩み寄ってくる。

タクマは警戒を続けるが、

「・・・久しぶりだね。()()()・・・。」

「・・・はっ⁉⁉」

青年の一言にタクマは唖然とした。

「えぇ、久しぶり。カイレン。」

「ちょっと待て!どういうことだリヴ⁉」

「どうもこうも、あの子はカイレン。私の実の弟よ。」

リヴに姉弟がいたことにも驚きだが一つ疑問があった。

「何故リヴの弟がこんな洞窟に?」

「・・・・・。」

カイレンはだんまりだった。

「・・・やっぱり、あの嵐はアンタの仕業ね?カイレン。」

「・・・そうだよ、姉さん。父さんの命令なんだ。悪いけど、一緒に来てもらうよ。」

「いやよ。()()()()の元へなんて戻りたくない!第一あそこから逃がしてくれたのは・・・。」

「ごめん・・・。」

すると突然カイレンはリヴの腹に拳を突きつけた。

「カ、カイ・・・レン?」

リヴはその場に倒れてしまう。

「お前!何しやがる!」

タクマが剣を薙ぎ払うもかわされる。

「申し訳ないけど、姉さんは連れ帰させてもらうよ。」

「さっきのリヴの言葉からして戻りたくなさそうだったが?」

「それでもだ。」

カイレンは再び海竜の姿へとなりタクマに襲い掛かる。

「うおっ!」

カイレンが激しく動き回ったことで大波が発生しタクマは押し流されてしまう。

その隙にカイレンはリヴを咥え出てきた穴へと潜っていった。

「待て!」

後を追うとするももう彼らは水中の奥深くだった。

「くそっ!リヴーーー‼」

タクマの叫びが洞窟に響き渡ったのだった。


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