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『第百十八章 異常海域』

ヒイラギたち勇者パーティとはここでお別れ。ヒイラギはリーシャに泣きついていたが彼女はまた会えると約束してヒイラギをなだめる。

お互いにやるべきことをやるためヒイラギも腹をくくった。

再会を約束しそれぞれ旅立つのだった。

そしてタクマ達は王都の港にやってきた。

流石大きな国であって船も巨大で立派だった。

「ガインのおっさんの船がちっぽけに思えるで。」

「失礼ですよ?」

「さーせん。」

乗船の申請に向かうと遠くの方でタクマ達を見る一人の影が。

「へぇ~。」

従魔用の申請も通り巨大な船で王都を出航した。

「デケェ上に早ぇ!」

「これだけ大きいと帆の面積が広いためより多くの風を捉えることが出来るみたいですね。」

「凄い早い・・・、わぁぁ⁉」

「ラルーーー⁉」

あまりのスピードに船の端に乗り上げたラルが吹き飛ばされてしまった。

すると船の後ろにいたフードを被った一人の男性に受け止めてもらえた。

「おっと、気を付けてね?船から乗り上げると今みたいに飛ばされてしまうから。」

そこにリーシャが駆け寄ってきた。

「あ、すみません!ありがとうございます!」

「いいよいいよ。ただちょっと聞きたいことがあるんだけど。」

「はい?」

男はバハムート達の方を見た。

「君達の従魔、ただの従魔じゃないね?」


 男からは何やら不思議な感じが漂ってくる。

「あの、改めましてラルを助けていただきありがとうございます!」

「無事でよかったよ。」

「それで?我らに話とは何だ?」

バハムートが警戒気味に話す。

「そう警戒しないで大丈夫ですよ。竜王様。」

「っ⁉」

一目見ただけでバハムートを竜王だと気づいた。

この男は一体。

「何故我が竜王と分かった?これでも気配を隠してたつもりだったが?」

「我々の種族には魔力による隠蔽はあまり効きませんよ。」

そういいフードを取ると、緑がかった白髪に長い耳。

「エルフ!」

「そう。僕は考古学者のランバル。見ての通りエルフ族だ。よろしく。」

偶然出会ったエルフの男性、ランバルはある物を調査しているとの事。

「もしかしてオレ達ドラゴン?」

「厳密には違うかな。僕の研究対象はこれさ。」

そういいバッグから取り出したのは翡翠色の魔石だった。

「それは!」

「そう。君達が身に着けている物と同じ、従魔結石だ。」

ランバルは従魔結石による従魔の超強化を研究しているらしい。

その超強化というのは恐らく極限状態の事だろう。

「従魔結石は従魔の力を極限まで解放するとてつもなく希少な魔石だ。数が少ないだけあってその理論も謎が多い。だからエルフの長寿を利用してこの魔石を研究しているのさ。」

「確かにずっと持ってたとはいえ分からないことも多かったな。」

「真っ先に疑問に思う事ちゃうんけ?」

ウィンロスが半目でツッコむ。

「実を言うとね。従魔結石を持ってるテイマーに会ったのは初めてなんだ。」

「エルフのくせにか⁉」

「こらウィンロス!」

アルセラに腹をどつかれるウィンロス。

ランバルは苦笑しながら頬をかく。

「アハハ、そう言われると耳が痛い。研究に没頭しすぎて百五十年近く引きこもってたんだ。」

「百五十・・・!」

リーシャとアルセラは絶句した。

「引きこもりすぎや。」

「で?そんなアンタが何で今になって出てきたんだ?」

タクマが本題に戻した。ランバルは真剣な顔になり説明を始める。

「・・・ここ最近、妙な魔力が検出されるようになったんだ。」

ランバルが言うには存在自体が希少で数の少ない従魔結石がこの海域で見つかる事があるようになったそうだ。

しかも、かなりの数が海底に散らばっていると言う。

「本来、従魔結石は人間の生涯で一つ見つかるか見つからないかぐらい数が少ない魔石なんだ。それがこの海域で、それも数えきれない程の従魔結石の欠片が海底で発掘されるようになった。魔石が放つ魔力量からして、その数はダンジョン規模の量なんだ。」

「ダンジョン規模⁉」

従魔結石のみでダンジョンが形成される程の量がこの海域にあると推測されたらしい。

これは明らかに異常だ。

「ダンジョン規模の従魔結石・・・。明らかに不自然だ。お主等も結石の存在価値は理解しておるな?」

「はい・・・。そんな大量の従魔結石がこの海域に?」

「まだ確定したわけじゃないけど、魔力量がその証拠を物語っている。僕はその確信を得るため調査に来たんだ。」

それほどの従魔結石が世に流れたら世界のバランスが崩れかねない。

従魔結石を扱う者として放っておけないタクマ達は、

「・・・ランバル。その調査、俺達も加わって良いか?」

「タクマさん?」

「それは願ってもない提案だけど、いいのかい?君達はこの先のラウンガ大陸に用があるんだろう?」

「それでも放っておけない。この魔石の力は扱い方を間違えれば国が滅ぶレベルだ。扱いなれてる俺達ならなんとかできるかもしれない。頼む!」

「・・・分かった。それなら君達を僕が正式に雇うすることにするよ。この解明のため、是非力を貸してほしい。」

「あぁ!その依頼、承った!」

二人は固い握手を交わした。

そんな話の傍でリヴだけは何だか思い悩んだ表情をしていた。

「リヴ?どうした?」

『船酔いに当てられたか?』

アルセラとカリドゥーンが問いかける。

「ううん、なんでもない・・・。」

元気のない返事をしその場を後にした。

「なんや?リヴどうしたん?」

「分からない。タクマ達の話を聞いた時から元気がないように思えたが?」

「・・・・・。」


 翌日、他の乗客が寝静まる早朝。船の後ろでリヴが薄暗い水平線を眺めていた。

「・・・まだ諦めてなかったんだ。」

「何がや?」

ため息をつくリヴの後ろからウィンロスが声をかけた。

「わっ⁉ビックリした⁉急に話しかけないでよ!」

「わりーわりー。・・・なんか悩み事か?昨日から明らかに様子がおかしかったで?」

「・・・・・。」

リヴは黙って再び水平線を眺める。

「アンタに言ってもしょうがないんだけど、ここの海域って、私の生まれた場所なのよ。」

「そうなん?あんさんと出会った海域とは真逆の場所やけど?」

「ちょっといろいとあって西の海域に移り住んでたのよ。」

意外なリヴの生い立ちを知れたウィンロス。

しかし気がかりなこともある。

「・・・この場所で何かあったんか?」

「さぁね。これ以上は言えないわ。さて、そろそろ主様たちを起こさなきゃ。アンタもレディの諸事情にむやみに首を突っ込むものじゃないわよ?」

そうからかいながら船内に戻って行った。

「・・・そんな顔して、よく言うわ。」

いつも通りに笑うリヴだったが、その瞳には密かに曇りが掛かっていた。


 日が完全に上り船旅を楽しむ一同。

「なるほど。君の場合は従魔を進化させる力があるのか。」

「それも複数の進化先があります。最近ですとその進化系から更に上に覚醒した姿がありますね。」

「ラル・ガン・ネオライズだね。ボクもあの力は予想外だったよ。」

「あ。あと旅の途中知り合った人なんですがその人もドラゴンを連れたテイマーでして、彼は従魔を合体させることが出来ました。」

「なんとも興味深い!従魔結石には無限の可能性が秘められているね!」

目を輝かせながら情報を書き溜めていくランバル。

一方でタクマはバハムート達と協力して周辺の魔力を感知しながら従魔結石の異常を探索していた。

「この辺りは特に問題は感じない。バハムート、ウィンロス。そっちはどうだ?」

「同じだな。上空から見てもこれと言った異常は見当たらん。」

「こっちもやで。」

「了解。もうしばらく探索したら戻ってきてくれ。」

そしてアルセラとメルティナの方はアーティファクトについてカリドゥーンにいろいろ聞いていた。

「アーティファクトは全部で三つあるのか?」

『うむ。詳しくは忘れたがそれぞれ『氷』、『炎』、そして『白』の力を持ち合わせた伝説の生物がモデルとされておる。』

「では今私が持ってるのは氷か。しかし、氷と炎は分かるが『白』とはどういうことだ?」

『知らん。というか忘れた。もう何千年も前の事じゃからの。』

「お婆ちゃん?」

『誰がお婆ちゃんじゃ白い小娘!儂の人間体はお主くらいの見た目じゃぞ!』

「でも実際いくつなんだ?」

『知るかアホ!年齢なんて百辺りから数えとらんわ!』

こっちはこっちで賑やかだ。

そんな彼等とは裏腹にただ一人、リヴは船内の小窓から海を眺めていた。

「流石にここまでは届いていないみたいね。このまま出くわさず大陸に着けばいいけど・・・。」

そう思ったリヴは顔を横に振る。

「ダメダメ!余計なこと考えない!変にフラグを立てるものじゃないわ。あ、そうだ。リーシャに頼んで何か軽食作ってもらおうかしら?」

気を取り直して甲板へ向かおうとしたその時、覚えのある魔力を感じ取り歩みを止めた。

「・・・最悪!」

甲板の上では乗客の一人が海を指していた。

「なんだか騒がしいな?」

「何でしょう?」

タクマとアルセラも何事かと集まる。

「ん?あれは・・・?」

船の進行先にどす黒い雷雲が迫ってきていた。

「嵐だ!舵を切れ!進路を変更しろ!」

「は、はい!」

船長の男が慌てて指示を出した。

「どうなってんだ⁉あのような異常気象はこの先一か月は現れないハズなのに!」

急いで船の進路を変えるがもう間に合わない。

船は巨大な嵐に飲まれてしまった。

雷雨に見舞われ船は大波に揺られる。

「わぁぁぁ⁉」

乗客も立ってられないほど振り回されている。

それはタクマ達も同じだ。

「悪天候過ぎる!」

「いくら豪雨でもこれほどの勢いはおかしい!うわっぷ⁉」

海水を思いっきり浴びてしまうランバル。

「うっ!揺れすぎや、オエェェェ!」

キラキラを出すウィンロスを押し退けてリヴが船内から飛び出してきた。

「船長さん!ここから右の方向に無人島があるわ!そこに向かって!」

「お?おう!分かった!」

「リヴ!」

「主様!おじ様と一緒に船に魔法壁を張って!乗客を落とさないようにお願・・・!」

その時、一際大きな波に船体を大きく揺らされリヴが甲板から足を滑らしてしまう。

「リヴーーー‼」

咄嗟に手を伸ばすも間に合わず、リヴは荒波に飲み込まれてしまった。

「くそっ!」

「待てタクマ!何をする気だ⁉」

走り出そうとするタクマをアルセラが引き留める。

「リヴを助ける!いくら海竜といえどこの波じゃ危険だ!」

「だからって君まで海に飛び込めば君の命も!」

「それでもリヴは俺の大切な仲間だ!」

アルセラの腕を振り払いタクマも荒れる海に飛び込んでいった。

「タクマさん⁉」

「あの馬鹿者・・・‼」

タクマの後を追う事も出来ない今、バハムート達は乗客を最優先としリヴの指定した無人島に船を向かわせることしか出来なかった。


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