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『第百十七章 覚醒の小竜』

『ラル・ガン・ネオライズ‼』

ガンズ・ド・ラルが覚醒し新たなドラゴンへと進化する。

「それって、覚醒⁉」

天使のミレオンは驚きを隠せないでいた。

「リーシャ!二人で彼女を越えよう!」

「うん!」

機械仕掛けの虹色の翼を羽ばたかせラルは飛翔する。

「っ!今は疑問を叫んでる場合じゃない!」

ミレオンも気を取り戻しショットガンで追撃する。

「『スターショット』‼」

ラルの翼から無数の光がまるで流星のように放たれる。

ミレオンの銃弾を対消滅させた。

「ならこれはどうよ!」

翼を開くと神々しく輝きその光が二丁のショットガンに収束されていく。

「大地をも破壊する弾幕!見せてあげるわ!」

空が薄っすら歪み始めた。

「空間をも影響をもたらせる程の力か。天使であるのが理解できんな。」

強力な魔力にラルとリーシャは身構える。

「リーシャ、今のボク達なら!」

「うん!きっと成し遂げられる!」

従魔結石が輝きを強める。

するとラルはどっしり足腰を固定させ両肩の銃器にエネルギーがチャージされる。

そして両者のチャージが完了した。

「『ギガストライク』‼」

二丁のショットガンからありえない程の威力がある魔力弾が轟音と共に放たれる。

「ラル‼」

「うん‼」

「「『バルゼノア』‼」」

両肩の銃から虹の魔力弾が放たれ、余波で大地にヒビが入る。

放たれた二つの強大な魔弾は上空で激突。

とてつもない爆風が辺りを覆う。

その風圧はウィンロス達の元まで届いていた。

「ぬおぉぉぉ⁉」

「きゃぁぁぁ!なにこれ⁉」

魔弾は互いに勢いが劣らず正面からの押し合いとなっている。

「この技を押しとどめるなんて⁉」

動揺で魔弾の勢いにムラが現れ、リーシャ達はそこに気付く。

「今です!ラル!」

「うおぉぉぉぉぉぉ‼」

ラルの『バルゼノア』がミレオンの魔弾を打ち砕きそのままミレオンを飲み込んだ。

「うわぁぁぁぁぁ‼」

大爆発がおきミレオンは地上に落ちる。

それと同時にラルの覚醒が解除されガンズ・ド・ラルに戻る。

(進化系に戻るんだ・・・。)

だが身体から煙が出ている。

もう戦う事は出来そうにない。

「ケホッ、ケホッ!」

倒れるミレオンにリーシャが近づく。

「・・・これを。」

ミレオンの側に回復のポーションを置いた。

「・・・なんのつもり?敵に情けをかけるなんて。」

「情けではありません。貴女は私達の敵ではないと、そう感じただけです。」

「敵じゃない・・・。今まで戦ってきた神や天使は敵じゃなかったの?」

「確かにそうでした。でも貴女だけは、何故か敵とは思えないんです。私も分かりませんが。」

彼女からは明確な悪意を感じないため、真の敵ではないと思ったのだ。

そこにバハムート、ウィンロス達もやってきた。

「決着はついたか?」

「うん・・・。」

ガンズ・ド・ラルは静かに頷く。

「メルティナの嬢ちゃんも目を覚ましたで。」

メルティナはミレオンの前にしゃがむ。

「・・・君の友達の命を奪っちゃったのは素直に謝るわ。」

「・・・貴女が謝る必要はないよ。悪いのは私が殺した天使だけ。」

メルティナにはヘルズ・ラルマだった時を覚えているみたいだ。

「貴女は何も関係ない。ただ、いきなり戦闘を吹っ掛けたのはちょっといただけませんけどね。」

不意にちょっと笑みを零すメルティナ。

するとミレオンの目にはかつて優しく接してくれた前任の創造神の面影がメルティナと重なるように見えた。

「っ!」

ミレオンはメルティナを見る。

(今の・・・まさかこの子・・・⁉)

するとそこにタクマが戻ってきた。

「おーい!」

「ん?主様!」

飛びつこうとするリヴをアルセラが止めた。

「待て。あれは?」

タクマの背に誰かが背負わされていた。

よく見るとそれは・・・。

「ジームルエ⁉」

瀕死のハズのミレオンが飛び起きタクマに走り寄る。

「ちょっとアンタ!私の親友に何したの⁉」

「待て待て!こいつ誰⁉」

当然タクマはミレオンとは初対面である。

「・・・アイツ瀕死ちゃうんけ?」

「天使っての頑丈だね・・・。」

初めて見た天使に驚くヒイラギだった。

「ジームルエを返して!」

タクマからジームルエを引き剥がそうとする。

が、ジームルエを引き剥がせなかった。

「え?」

「・・・・・。」

よく見るとタクマのローブをジームルエががっしり掴んでいたのだ。

「ジームルエ?何してるの・・・?」

「・・・やだ。彼と離れたくない・・・。」

頑なにタクマを離そうとしないジームルエ。

「私・・・、()()()()()()!」

「「「・・・ハァァァァ⁉」」」

その場に居る全員が叫んだのだった。

「ちょっとジームルエ!アンタ今なんて言ったの⁉」

「彼は私に勝った唯一の存在。そんな強い人と一緒になりたいと思うのは必然!」

「いやいやいや!ついさっきまで私達殺し合いしてたじゃない!第一神が人間と結婚なんてできるわけないでしょ!」

「じゃぁ私、神やめる!」

「そういうことじゃなーーーーい‼」

状況が理解できない一同。

「いやさ、コイツに勝った後何故か異様に懐かれて・・・。俺も混乱してる・・・。」

タクマが説明するがやはり理解できない。

「てかジームルエ!生まれてから一度も負けたことが無いアンタがこの人間に負けたの⁉」

「うん。初めての敗北だった。」

「嘘でしょ・・・?あのジームルエがこんな人間に負けるなんて・・・、くっ!」

ミレオンはジームルエをタクマから無理やり引き剥がし彼女を連れて飛翔した。

「いつか絶対リベンジしてやるんだから!覚えててよね‼」

「あ、待って!ねぇ君!名前教えて!」

「えっと、俺はタクマだ。約束通りもう俺達の旅の邪魔はすんなよ?ジームルエ!」

タクマに名前を呼ばれ明らかに頬を赤くするジームルエ。

「タクマ・・・、憶えた・・・!」

そしてミレオンとジームルエは空の彼方へと消えていったのだった。

「行っちゃった・・・。」

「なんやねんアイツ等・・・。」

何はともあれ、天使によるスラム街襲撃騒動は終わりを告げた。


 他のスラム街の住人は駆けつけたミルガ達勇者パーティの避難誘導のおかげで大勢の人が救われた。

しかし失われた命もある。

彼女を含めて・・・。

「・・・・・。」

小さな丘の上に立つメルティナの前には小さなお墓が建てられていた。

ハナちゃんの物である。

初めての友達だった彼女を想うメルティナ。

「メルティナさん・・・。」

そんな彼女を遠くから見守るリーシャとラル。

「・・・ごめん、リーシャ。ボクがもっとしっかりしてればハナちゃんは・・・。」

「ううん。ラルのせいじゃない。ラルは自分の出来る精一杯でメルティナさんを守ったんだから。」

「メルティナを守れても、あの子の心までは守れなかった。・・・もっと強くなりたい。助けられる命を絶対に守れるように!」

ラルは小さな拳を握り固く決意する。

「メルティナさん!そろそろ戻りましょう!」

「・・・っ!うん!」

こみ上げる涙を拭き、二人の元へ走っていくメルティナは途中で立ち止まりお墓に振りかえる。

「天国で、お母さんに会えますように。」

そう願いを込め小さな丘を降りていったのだった。

するとお墓の近くにある人影が現れる。

黒いフードを被り、大きな鎌を持っているショートカットの死神少女。

エトナだ。

彼女の手には青白く燃える人魂が添えられている。

「送り届けるんだろ?その子の母親の元へ。」

「ひゃっ⁉」

突然背後から話しかけてきたのは美しい女性の女神、ルシファードだった。

「ルルル、ルシファード様⁉何故貴女のような御方が下界に⁉」

もの凄い動揺するエトナにルシファードはクスクス笑う。

「少し野暮用でな。訳あって彼女たちの動向を見守ってる。」

「そ、そうですか・・・。」

エトナはルシファードに強い憧れを抱いている。

突然憧れの相手が目の前に現れたらそりゃ動揺してしまう。

早い脈を落ち着かせルシファードに向き直る。

「勿論、この子は母親の元へ送り届けます。あの御方の願いですから。」

「そうだな。頼むぞ?」

「は、はいっ‼」

(ひゃ~!ルシファード様としゃべっちゃった!ヤバい!顔がにやけちゃう・・・!)

うずくまって震えるエトナを他所にルシファードは急に表情が険しくなる。

(今回、新生創造神は手出ししてこなかった。だが警戒は続けたほうが良さそうだ。ジームルエに『心理の指輪』を使わせるわけにはいかない。彼女の心を、守るために。)


 丘を下ってタクマ達を合流したリーシャ達。

しかし何やらアルセラの元気がないようだ。

「アルセラ、まだ気にしてるのか?」

タクマが問いかける。

「アーティファクトが使えず仲間のピンチに何も出来なかった。それで悔やんでんだろ?」

「あぁ、その通りだ・・・。」

カリドゥーンと同時期に作られたアーティファクト。

これには自らの意志が宿っており力を解放できるのはアーティファクトが認めた者のみ。

しかし、カリドゥーンの使い手であるアルセラはアーティファクトに認められておらず力を解放することが出来なかったのだ。

「このままではいずれ君達の迷惑になってしまう。タクマの仲間として、それだけは絶対に避けたい!」

アーティファクトを強く握りしめる。

『仲間のピンチに自分だけ見てることしか出来ぬというのは相当悔しいからな。』

「カリドゥーン!どうやったらアーティファクトに認めてもらえるんだ?君は過去の勇者と共にこの力も扱えたのではないか?」

『確かに前の勇者は儂と共にアーティファクトを使いこなせておった。だがアーティファクトは自らの意志を持っておる。そやつらがどのような基準で主を認めるのかは儂にも分らんて。』

「そうか・・・。」

明らかにしょんぼりしている。

「でもその魔道具に認められればアルセラの嬢ちゃんは更に強くなれるんやろ?」

「みたいね。」

「古の勇者、その話に詳しい情報を探すのがいいんじゃないか?」

「でも何千年以上も前の話でしょ?そんな昔の話を知ってるなんて長命のエルフでも難しいんじゃ?」

「「「う~ん・・・。」」」

一同が頭を悩ませていると、

「それでしたら師匠を訪ねてみてはいかがです?」

突然勇者パーティの一人、ミレーユがひょっこり現れた。

「びっくりした!急に出てくんなや!」

「ミレーユさん、師匠を訪ねるとはどういう事です?」

リーシャが聞くとミレーユは少し苦笑いしながら話し始めた。

「えっとですね・・・。私が師匠の元で修業していた時期、師匠からある昔話を聞かせてもらったんですの。それが何千年も前の伝説の勇者の話でしたわ。」

ミレーユが言うには修業時代、世界最強の剣士として名高い『剣星』に貴族でありながら弟子入りし、その剣技を学んだとの事。

そしてその間に師匠から古の勇者の話をそれはもう具体的に話されたという。

「師匠、その伝説に詳しすぎてもう何度も聞かされましたわ・・・。おかげで耳にタコができるレベルに・・・。」

当時を思い出したのかげっそりし始めるミレーユ。

「確かに()()()はその手の伝説に詳しかったな。」

「・・・ん?ちょい待て。今お婆様って言った?何?その世界最強の剣星はアルセラの嬢ちゃんの婆ちゃんなん?」

「言ってなかったっけ?」

「聞いとらんわ!」

タクマ達もチラッと聞いたくらいだ。

改めて考えると凄い人を祖母に持っていたアルセラ。

「アルセラが強いのも納得がいくわ。」

「つまり?その剣星に会いに行けばアーティファクトの事を詳しく知れるってことか?」

「おそらくそうかと。」

ならば今後の目的は決まった。

アルセラのアーティファクトを解放するため、最強の剣士であり彼女の祖母でもある剣星に会いに行かなくては。

「お婆様はここから東に位置する別大陸『ラウンガ大陸』という所に住んでいる。丁度この国から船が出ているはずだ。」

「よし!次の目的地が決まった!剣星に会いに行くためにラウンガ大陸に向かうぞ!」

「「「おぉ!」」」

一同が王都に向かうとリヴがハッと何かを思い出したかのように立ち止まった。

(待って?ここから東の海域って・・・。いやいや、流石にぶち当たることはないか。・・・何の因果かしらね。()()()()()()()()()()()()()()()()・・・。)

「リヴ?どうした?置いてくぞ?」

「あ、待ってぇ!」

リヴは考えるのをやめ急いでタクマ達の後を追ったのだった。


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