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『第百十六章 銃撃の天使』

タクマの決着がついた頃。

「ハァァァ!」

アルセラとヒイラギが一丸となってミレオンに攻め入る。

しかし二人の攻撃を二丁のショットガンを巧みに振り回し美しく立ち回る。

二人の剣士による剣技をいなし隙をついて発砲し二人を大きく吹き飛ばす。

「うわっ!」

「くっ!」

そして入れ違いにバハムートが前に出る。

爪技や魔法で器用に立ち回るバハムート。

ミレオンは先程とは打って変わり避けに専念していた。

一番強いバハムートの攻撃はなるべく受けず避け反撃の射撃をお見舞いしていく。

そしてバハムートの強力なブレスが炸裂し大地を揺らした。

(やっぱこのドラゴンの攻撃だけは当たらないようにしないと!)

バハムートの攻撃を避けながらアルセラとヒイラギを相手するミレオンだった。

「ウィンロスさん、ラルもお願いできますか?」

「お?」

リーシャは未だ気絶しているメルティナに回復魔法をかけてるウィンロスにラルも預けた。

「ラルは私が預かるわ。今の状態じゃまともに戦えないし足手纏いだから。」

ラルをリヴに預けリーシャも戦闘に加わる。

四対一にも関わらずミレオンは楽し気に笑みを浮かべていた。

「笑えるほど余裕があるのか?」

「それもあるけど・・・私はね、笑顔が大好きなのよ。」

発砲しバハムートを後退させる。

「人が笑い合える世界って最高じゃない?笑顔は人を幸せにすることが出来る。いつか神に上り詰めることが出来たらそんな世界を作りたい!それが私の夢!」

背後から迫るヒイラギを見もせずにショットガンで打ち返す。

「夢を叶えるまで私は歩み続けるわ!笑顔、最強!」

四方にショットガンが向けられ、強い銃撃が炸裂し全員を引き飛ばした。

「言ってることは一番まともね。」

「せやな。どっかの自分勝手な七天神とは大違いやで。」

だが今の彼女は倒すべき相手。

消滅はさせれなくともここから退かすことが出来ればそれでいい。

リーシャ達は果敢に攻め続けるのだった。

「はぁ、はぁ、前に戦った天使とは全然違うな・・・。体力が持たない・・・。」

メンバーの中で一般人のアルセラは流石に息が上がっていた。

「カリドゥーン、このまま足手纏いにはなりたくない。どうにか出来ないか?」

『そうじゃな・・・、体力もあるが相手が相手じゃ。バケモンじゃアレは。今の状態で戦闘を続行したいのならアレを使え。』

「アレって、アレか!」

アルセラはベルトからつる下げた革袋から大会で入手したカリドゥーンのアーティファクトを取り出した。

「でもこれどうやって使うんだ?」

手に入れたはいいが未だに使い方が解らないアーティファクト。

手元でグルグルさせながら詮索するがアーティファクトは無反応だった。

『・・・やはりだめじゃったか。』

するとカリドゥーンが意味深な発言をする。

「どういうことだ?」

『アーティファクトを入手した直後から貴様とアーティファクトが儂のように共鳴しとらんかったんじゃ。儂のアーティファクトは意思を持つ魔道具。そやつが認めん限りアーティファクトは使えんのじゃ。』

「そんな・・・。」

アルセラはアーティファクトを握りしめ訴えかける。

「頼む!仲間の危機なんだ!今だけでいい、力を貸してくれ!」

しかしアーティファクトは無反応だった。

『無駄じゃ。今の小娘ではアーティファクトは使えん。』

アルセラは悔しそうに歯を食いしばった。

そんなことをしている内にミレオンが特大大きな攻撃を繰り出し、戦っていた全員を吹き飛ばした。

地面に叩きつけられ疲労も溜まり身動きが取れないでいるリーシャ達。

唯一バハムートだけは戦闘を続行できる様子だが。

「流石の耐久力。人間の子達はもう戦闘不能なのに。」

「我は王だ。並みの竜をも凌駕するほど力を付けた。それだけのことよ。」

二人はしばらく睨み合い、ミレオンは二丁ショットガンの銃口を。

バハムートは口部に炎を溜め始める。

そして同時に強力な攻撃を放ち爆発。

辺りが爆風に見舞われた。

「なんて戦いなの・・・。」

リーシャと合流したヒイラギがバハムート達の戦いを見て息を飲んでいた。

「お姉ちゃんたちはこんなのを相手してきたの?」

「これでもほんの一部程度ですよ。彼女より格上の存在はたくさんいます。」

ヒイラギは言葉が出なかった。

二人はそのままウィンロス達の元へやってくる。

「ウィンロスさん、ラルとメルティナさんは?」

「今回復が済んだところや。メルティナの嬢ちゃんは魔力が枯渇して眠っている。ラルは・・・。」

ラルは既に目を覚ましていてリヴに抱きかかえられていた。

「ラル!良かった・・・!」

ラルはバハムート達の戦いの方を見た。

「・・・今でも思い返すんだ。」

「「「っ⁉」」」

そこにいる全員が驚きを隠せなかった。

「たった一回自力で進化しただけなのに、そのまま気を失いハナちゃんを助けられなかった。挙句の果てにメルティナの怒りに飲まれ、リーシャ達に迷惑をかけた。二人を任されたのに、何一つ守れなかった・・・!」

ラルは悔しそうに小さな拳を握りしめる。

「ラ、ラル。貴女、言葉を・・・⁉」

『どうやら白娘と融合したことで言語能力が発達したみたいじゃな。』

上空からアルセラも合流してきた。

しかし当のアルセラはアーティファクトが使えなかったことを深く悔やんでいた。

「リーシャ、お願い!あの天使は僕に相手させて!」

「え?でもあの子はハナちゃんの命を奪った天使ではないですよ?」

「分かってる!僕はメルティナを守れず、ハナちゃんも守れなかった・・・。だから、この騒動は僕が鎮めたい!せめてものケジメを付けたいんだ!」

ラルの決意は固かった。

ハナちゃんを守れなかったのはリーシャも同じ。

「・・・分かった。だったら主人である私も力を貸します!終わらせよう、この惨劇を!」

「うん!」

リヴからリーシャの肩に飛び乗りバハムートの元へ走って行った。

『・・・良かったのか?行かせて。』

「かまへん。これはアイツらなりの覚悟や。部外者がでしゃばる真似はせぇへん。」

「えぇ、私もハナちゃんを守れなかった後悔はあるけど、一番近くにいたのに何もできなかったラルが一番思い詰めてるわ。だから行かせてあげたのよ。」

『全く、お主等は。』

ラルの覚悟を受け止め、大人たちはその背中を見送るのだった。


 一歩も退かぬ攻防が収まり互いに睨み合うバハムートとミレオン。

「・・・フフ。」

「?」

「アハハハ!ほんと竜王ってのはデタラメに強いね!私が今使ってる武器はどんな生命も一発なのに!」

大笑いするミレオンにバハムートは気味悪がる。

「やはり天界に住む者は価値観が狂っておるな。命を持て余して何が面白い?」

「なにか誤解してるみたいだけど、私は別に全ての命も平等に思ってるわ。笑ったのは貴方がただ単に想像より強くてつい笑っちゃっただけ。今まで本気で戦えたのは親友のジームルエだけだったから、嬉しくてね。」

ミレオンは再びショットガンを構える。

「さぁ、続きをやろう!」

「・・・・・。」

黙り込むバハムート。

その時だった。

二人の間を鋭い光の一閃が横切った。

下を見るとそこにはリーシャとラルがいた。

「貴女の相手はこちらです!」

覚悟の眼差しで見る二人にミレオンはゆっくり地上に降りてきた。

「私と一対で戦うつもり?」

「えぇ、でも戦うのは私ではありません。」

「ボクだ。」

ラルが前に出る。

「この戦いはボクが終わらせるんだ。」

ラルの決意を知ったバハムートは後ろに退く。

「我も見届けよう。お主の覚悟を。」

リーシャの従魔結石が輝き出しラルは光の球体に包まれる。

『覇王進化‼ガンズ・ド・ラル‼』

球体が弾け飛び、銃火器を装備したガンズ・ド・ラルへと進化。

「へぇ、銃を扱うドラゴンか・・・。」

ミレオンもショットガンを構えた。

暫くの静寂が続き、二人は激しく撃ち合いを始めたのだった。

これまでもラルとは違い機敏に動き回り発砲。

ミレオンもラルの銃弾を相殺しながら様子を見る。

リーシャとバハムートはそんな二人の戦いを見守る。

『マグナ!』

両肩から撃ち込まれる魔力の銃弾がミレオンに迫るが彼女も二丁のショットガンを持ち魔力弾を相殺。

だがその魔力弾から煙幕が発生し視界が効かなくなる。

「煙幕、中々面白い芸をするじゃない。」

神経を研ぎ澄ませ気配を探す。

すると背後から強い気配を感じた。

「そこ!」

後ろを見ずに発砲し、ラルに直撃した。

「あぐっ⁉」

突き上げられるように攻撃を食らいよろめくラル。

ミレオンはその隙を逃さず二丁拳銃を構えた。

「『ツインガンマ』‼」

強力な二つの銃弾がラルの腹部に命中、ラルは打ち飛ばされてしまった。

「っ!」

リーシャが駆け寄ろうとするがバハムートに止められる。

「バハムートさん・・・。」

「これは奴の戦いだ。我らが手出ししてはならぬ。」

助けに入りたい気持ちを必死にこらえ二人の戦いを見守るリーシャだった。

天使とドラゴンの攻防は夜明け近くまで続き、空が薄っすら明るくなっている。

「ハァ、ハァ・・・。」

互いに息が上がるラルとミレオン。

ラルは魔力が底をつきそうになり、ミレオンは手持ちの弾が残りわずかだった。

おそらく次の一手で勝負がつく。

「まさかここまで粘るなんてね。正直舐めてたわ。だから、この一撃は本気よ・・・!」

一丁のショットガンを構えるとレバーが火花を散らしながら何度も往復し魔力がチャージされる。

ラルも迎え撃つべく四本の銃口を固定させ中心点に魔力が集まっていく。

「いかん!離れるぞ!」

「わっ⁉」

危険を感じたバハムートはリーシャを連れて場を離れる。

そして両者のチャージが完了される。

「『メテオガンマ』‼」

「『アルビオン』‼」

両者の最高威力の大技が炸裂し技の押し合いとなる。

「オォォォォォ‼」

「ハァァァァァ‼」

アルビオンが徐々に押しており決着がつきそうになる。

しかしラルのアルビオンがミレオンの技に押され始めたのだ。

「そんな⁉『アルビオン』はラルの最強の技なのに‼」

「あの天使、想定以上に強い力を持っているようだな。」

押されるアルビオンが貫かれ、メテオガンマがラルに直撃してしまった。

「ラル‼」

煙が晴れると銃器が火花を散らし床に伏せるラル。

そんなラルの眉間にショットガンを構えるミレオン。

「最後の技は良かったよ。でも覚悟だけじゃ何も成し遂げられない。成しえるための力も必要なのよ。」

ミレオンが引き金を引こうとすると、なんとリーシャが前に現れラルをかばった。

「リーシャ・・・?」

「邪魔しないで。その子は勝負に負けたの。君はその子の覚悟を踏み指示るつもりなの?」

「例え踏みにじってしまっても、家族の命は奪わせない。もう二度と、目の前で家族を失いたくない!」

ラルの前世、ラシェルはリーシャの目の前で亡くなった。

寿命での別れは仕方がなかったが殺められるのは違う。

リーシャは頑なにその場を退く気はなかった。

「それに、勝負はまだ終わってません!」

「何言ってるの?どう見てもその子は戦える状態じゃない。戦闘不能よ?」

「ラルを見て、まだそんなことが言えるんですか?」

リーシャの背後ではラルが砕けた銃器で身体を起こそうとしていた。

「惨めね。潔く負けを認めなさい。でないとその子はもっと傷つけることになるわよ?」

「構わないよ。」

「「っ!」」

「ボクは自分の意志で戦ってるんだ。一人で勝たなきゃいけないと思ってる。・・・いや、思ってたかな?」

ふらつきながらも立ち上がったラルは意味深な事を言う。

「一人で勝って、この騒動に決着をつけたかった。でも、それはハナちゃんやメルティナも助けられなかった自分を許せなくて、責任を取ろうとした。でもそれはボクのただの自己満足。ボクの気持ちが晴れても、失った命は戻ってこない。メルティナの悲しみは永遠に残り続ける。それだけじゃダメだ。」

重い足を動かしゆっくり歩きだす。

「一人で戦っちゃダメだ。仲間の悲しみに寄り添わなきゃ、本当の仲間じゃない。失った悲しみは、ボク一人じゃない。」

ラルはリーシャを見た。

リーシャも席を外していた間にハナちゃんを殺された。

その悔しさはリーシャにもある。

「リーシャ。ボクと一緒に、支え合ってくれる?」

「・・・当たり前じゃない。ラルは一人じゃない。私達は仲間で、家族なんだから!」

その時、リーシャの従魔結石が眩い光を放ち始めた。

「うわっ!眩し!」

驚いたミレオンは咄嗟に離れる。

「これ、新たな力を感じる・・・!行くよ!ラル!」

「うん!ボクは一人じゃない!リーシャと、皆と一緒に!」

結石の光が最高潮に達し、ガンズ・ド・ラルは光の球体に包まれた。

天王開眼(てんおうかいがん)‼』

球体が弾け飛ぶと両肩の銃器には流れる流血のように輝くラインが施されており、両腕の銃器は無くなり代わりに逞しい腕、そして背中には機械でできた美しい虹色の翼が開き、ガンズ・ド・ラルより一回り大きな白竜が姿を現す。

『ラル・ガン・ネオライズ‼』


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