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『第百十一章 少女と白少女』

タクマ達が勇者パーティの四人と共に夕食を楽しんでいる頃。

王都一番の塔の上で一人の少女が佇んでいた。

「勇者・・・。まだそんな者がこの世界にあるんだ。てっきり数千年前の悪魔族との聖戦の時、共に消えたと思ってたのに。」

大剣を背負う六枚の翼を持つ神、戦神ジームルエ。

彼女は塔の上からタクマ達を観察していた。

「大会も見てたけど、あのドラゴンテイマー。やっぱり強い。それに他の仲間たちも。早く戦いたいな。」

うずうずとするジームルエの背後に突然、誰かが抱きついてきた。

「ジームルエ!」

「っ⁉」

心臓が飛び出そうな程驚いたジームルエはつい剣の面で相手を叩いてしまった。

「いったーい!酷いよジームルエ!」

「ミレオン⁉」

バクバクと鼓動する心臓を落ち着かせ、幼馴染の天使ミレオンに回復魔法をかける。

「ごめん。でも急に後ろから抱きつかないでよ。敵かと思ったじゃん。」

「驚かそうとしただけだよ。相変わらず考えるよりも先に手が出るタイプだよね。」

回復が済、隣同士で座る二人。

「どう?あのドラゴンテイマーの事。」

「しばらく観察してたけど、かなり強いよ。レーネ達を倒しただけはある。」

「ジームルエがそこまで言うなんて相当だね。・・・勝てそう?」

「正直分からない。でも本気でやれば私が勝つ。」

「だよね!ジームルエは戦神。天界じゃ負け知らずの戦士だもん!」

ギュッとジームルエを抱きしめるミレオン。

彼女はスキンシップも激しいみたいだ。

当のジームルエは少しうんざりしてるようだが。

「もう少し様子を見てから接触してみようと思う。」

「うん。油断大敵、だもんね!」

二人で仲良く話していると遠く離れた場所で複数の天使が下界に現れた気配を感じ取った。

「・・・ジームルエ。この気配って・・・。」

「うん。レストの配下だ!」


 翌日、昨晩に一旦解散した一同はそれぞれ旅支度をしていた。

「え~と、回復ポーションはこれとあれと・・・。」

「ねぇまだ?」

リーシャとリヴ、メルティナの三人は薬屋で買い出しをしていた。

「ポーションは長旅に必要なアイテムですよ?いつ魔法が封じられる状況になるか分かりません。そんな時のためにアイテムも必要なんです。」

「何回も聞いたわよそれ。」

そんな二人を他所にメルティナは眠そうにあくびをする。

(退屈。外で待ってようかな。)

口論するリーシャ達を残し店の外で待つメルティナ。

すると、

「おら!さっさと歩け!」

「痛い!やめて!」

何処からか叫びが聞こえてきた。

「何?」

メルティナは声のする路地裏に入るとそこには、ボロボロの服を着た少女の腕を無理やり引っ張る男。

見た所少女が連れていかれそうな場面だ。

「何してるの?」

「あ?何だガキ?」

ガラの悪そうな男が睨む。

腕を掴まれた少女は助けを目で訴えている。

「その子、嫌がってるよね?離してあげて。」

「そうはいかねぇ。俺はコイツ自身に用があるんだよ。邪魔だからとっとと失せろ!」

「・・・やだ。」

「あぁ?」

「きっとタクマなら、ここは助ける場面だと言って助ける。だから、私もそうする!」

そう言い通路を塞ぐように立つはだかるメルティナ。

男は苛立ちのせいで完全に頭に血が上り手を出してしまった。

「テメェ、邪魔だって言ってるのが分からねぇのか‼」

メルティナに殴り掛かろうとした時、

「クァー!」

メルティナの背後からラルが飛んできて男の顔に強烈なグーパンを決めたのだった。

小さな拳に殴られた男は見事に吹っ飛びゴミ置き場に倒れ気絶した。

「ク!」

ふんすと鼻息を立てるラル。

「メルティナさん!」

遅れてリーシャとリヴも駆けつけた。

「ラルが急に飛んでいくから何事かと思ったけど、そう言う事ね。」

メルティナはボロボロの少女の手を取った。

「大丈夫?」

「あ、ありがとう・・・。」


 公園広場で助け出した少女を落ち着かせるメルティナ達。

「ねぇ貴女。どうしてあんな男に連れていかれそうになってたの?」

明らかに面倒な事に巻き込まれている少女。

当然リーシャ達は放っておけなかった。

「うん・・・。ハナのお母さん、この前病気で死んじゃった。それでお金が無くなっちゃって、そしたらさっきの怖いお兄さんがお金を貸してくれたんだけど、返せないならヨルノマチで働かせるって言って、ハナを連れてこうとしたの。」

話を聞いた三人は険しい表情になった。

「・・・完全に狙ってやってるわね。」

「はい。もの凄く質が悪いです。」

リーシャとリヴは怒りの表情を見せる。

「そっか・・・。大変だったね。」

メルティナがハナの頭を撫でた。

(いつまたあんな人が来るか分からない。ハナちゃんも凄く幼い。だったら・・・!)

メルティナはある決意をしてリーシャ達に話を降る。


 リーシャ達女子三人組は竜化したリヴに乗って王都の外れにあるスラム街にやってきた。

「あそこがハナの家!」

とある一軒のボロい家の前に降り立った。

「見るからに貧乏ね。」

「リヴさん!」

人型に変身するリヴに怒るリーシャだった。

メルティナが出した話はまた悪い奴等がハナを連れてこうと現れるかもしれないと思い、自分が付き添ってハナを守ると言い出したのだ。

当然彼女一人では危険なのでリーシャ達も同行することにした。

その間、タクマ達に悪い男たちが取り閉める闇借金のねぐらを潰すことをお願いしたのだ。

「タクマさん達も気前よく承諾してくれましたよね。」

三人と一匹はハナの家にお邪魔し、おもてなしを受けた。

部屋の隅には神棚が設けられており一人の女性の遺影が飾られていた。

「この人が・・・。」

「うん。ママ・・・。」

ハナは悲しそうな顔をする。

(辛いわね・・・。まだこんなに幼いのに母親を無くすなんて。)

元気をなくすハナにメルティナが寄り添う。

「元気出して。何か美味しいものを食べようよ。」

「美味しいもの?」

メルティナはリーシャを見た。

「・・・まさか、私に作らせる気ですか⁉」

「お願い・・・!」

うるうるした目でお願いしてくるメルティナにリーシャはあっけなく敗北した。

「しょ、しょうがないですね。分かりました、作りますよ。」

「言い出しっぺだから手伝う!」

そうして二人は小さな調理場を借りて料理を作り始めた。

(メルティナ、アンタ割と策士ね・・・。)


 一方、タクマとアルセラは闇金の悪徳業者のアジトを見つけ出していた。

「ここがリーシャ達の言っていた闇金業者のアジトか。」

「これほどの規模とは。陰に隠れて随分と好き放題していたみたいだな。では皆さん、頼みますよ。」

元近衛騎士団団長アルセラのカリスマのおかげで王都の自警団を動かすことに成功。

後ろにスタンバイする自警団の団員達。

タクマの合図で一斉に建物に突撃、瞬く間に闇金業者を取り押さえることに成功したのだった。

「それにしてもリーシャが出くわした男からこの不正契約書の書類を渡された時は驚いたぜ。」

そう、昼間ハナを連れ去ろうとした男から証拠の書類をラルにこっそりくすねてもらっていたのだ。

「有能過ぎないか?あの小竜・・・。」

「俺もそう思う・・・。」

こうしてタクマ達のおかげでハナ達を苦しめる闇借金は無くなった。

だがそこから遠く離れた上空で無数の白い影が飛来していることにタクマ達は気づかなかった。


 スラム街のハナの自宅。

メルティナ達はリーシャの作ってくれた夕飯を食べ終えメルティナとハナは楽しそうに遊んでいた。

「もうすっかり友達ね。」

「そうですね。」

尊い光景に和んでいるとタクマから闇金業者を取り押さえたと念話が届いた。

「タクマさん達が借金の問題を解決してくれました!やっぱり黒だったそうです。」

「でしょうね。こんな幼い子に下町で働かされるなんてありえないもの。」

話し合いのため一度合流したいとの連絡だったのでリーシャとリヴは一度タクマ達と合流することになった。

「ラル、メルティナさんとハナさんをしっかり守ってね?」

「クッ!」

ビシッと敬礼をするラル。

夜中だが二人は王都の方へ出かけていった。

「ふあ・・・。」

もう深夜なためハナも眠そうだ。

「ク、クゥクゥ。」

以外に面倒見のいいラルは少女二人の身支度を整えさせ就寝させた。

「ズズ、けぷっ!」

寝ずの番をするためリーシャに貰ったコーナーを苦いながらも飲んでいた。

するとメルティナが目をこすりながら起き上がった。

「ク?」

「・・・おトイレ。」

寝ぼけているのかフラフラで危なっかしいのでラルが付き添ってトイレに連れてく。

しかし室内にトイレはなく小屋の周辺を探し回っても見つからなかった。

ラルは少し高い所まで飛び辺りを見回すと結構離れた位置に厠を見つけた。

「ク!」

「こっち・・・?」

ラルに腕を引かれ厠まで行き用を済ませる。

「ちょっと目が覚めちゃった。戻ったら少しお水貰っていいかな?」

「クゥ!」

元気よく返事をし小屋に戻ろうする。

だが、その時、突如背後から眩い光と轟音と共にスラム街の一部が大爆発したのだ。

「ク⁉」

「何⁉」

複数の小屋は燃え、住民が大慌てで外に飛び出してきた。

「ハナちゃん!」

急いでハナの小屋へ走る。

パニックの人混みの中何とか突き進み抜け出す。

すると目の前に薄っすら光り輝く誰かがいることに気付く。

それは白い鎧を身に纏い背中に翼がある人物。

天使だった。

「天使⁉」

メルティナとラルは見つかる前に物陰に隠れる。

天使はしばらく辺りを見回すと目にも止まらぬ速度で駆け抜け、なんとスラム街の住民を蹂躙し始めたのだ。

「ヒッ!」

突然の殺人の光景に咄嗟にメルティナの目を隠すラル。

そのまま気づかれないようにその場を離れた。

(何で、どうして天使が⁉)

訳が分からぬまま走っていると前方の上空に一際大きい魔力反応を感じ取った。

「おや?」

それは四枚の翼を有した男性の天使だった。

片目眼鏡をかけており知的な雰囲気だ。

男はゆっくり地上に降りメルティナの前に立つ。

「貴女はもしや、例のドラゴンテイマーのお仲間ですか?」

「⁉」

タクマを知っている。

という事は、

「七天神の配下、なの?」

「ご名答です。私は知神レスト様の配下、名持の天使、カシャと申します。」

礼儀のいいお辞儀をし自己紹介をする。

「此度、創造神ラウエル様直々の命によりスラムなどの余分な存在を排除すべく下界に参りました。」


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