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『第百十章 世界を越えた再会』

「ま、待って・・・!()()()()()()()‼」

突然の名前に驚き振り返るリーシャ。

「ミオリ?誰の名前だ?」

「前世の、私の名前です・・・。」

「えっ⁉」

リーシャの前世の名前を知っているとは。

この勇者、ヒイラギは一体・・・?

「何故、その名前を知ってるんですか?」

驚きを隠せないリーシャは彼女に問い詰めると、

「私だよお姉ちゃん!明日香(あすか)!昔一緒に遊んでた従妹の明日香だよ!」

「あす、か・・・?」

まだ学生の頃、美織は槍、明日香は剣道の習い事をやっており、よく二人で稽古をしていた時を思い出す。

「明日香、ちゃん・・・?昔、槍と剣道で一緒に稽古していた、あの明日香ちゃん⁉」

「美織お姉ちゃん‼」

リーシャの言葉で確信に変わったのか、泣きながらリーシャに抱き着いた。

「会えた・・・!やっとまた会えた!うわぁぁぁん‼」

ヒイラギは抱き着いたまま泣いてしまい、タクマは何が何だか分からず完全に置いてけぼりだった。


 表彰式も終わり無事カリドゥーンのアーティファクトを手に入れることが出来たタクマ達。

「これがカリドゥーンのアーティファクト・・・。」

手に入れたのは氷のような装飾をした四角い箱の形状をしていた。

しかしあちこちに動くような仕掛けが施されており、まるで、

「変形しそうだな・・・。カリドゥーン、これは一体何・・・?」

話しかけるがカリドゥーンは言葉を発さなかった。

「カリドゥーン?おーいカリドゥーン。どうしたんだ?」

その横でタクマ達は彼等を見下していたミレーユに謝罪されていた。

「申し訳ありません!あなた方をただ一介の冒険者だの罵ってしまって!本当にごめんなさい!」

地に頭が付く程深く謝罪するミレーユ。

貴族と言えどちゃんと心から謝ることが出来るようだ。

「罵って、あれ程度で罵られてると思わないんだが?」

「確かに言葉の重みが薄かったわ。だから気にしてないわよ。」

「あら、そうですの?」

「ホッとしてんじゃねぇ。」

ジークがミレーユにゲンコツを入れる。

「すまないな。後で俺からもキツく言っとくぜ。」

「お手柔らかにな。」

タクマは少し苦笑いをした。

そして、

「お姉ちゃん♡」

「はいはい。」

ヒイラギこと、明日香はこれまで見たことない程笑顔でリーシャの手を繋いでいた。

「まさかヒイラギの探し人がこのような形で見つかるとは。」

「どういうことだ?」

ミルガは説明した。

ヒイラギ、明日香は二年前、突然この世界に召喚され混乱して街中を彷徨っている所をミルガが見つけ保護したらしい。

そしてヒイラギは自身が異世界から呼ばれた異界人である事とある人を探していることを話したという。

それからその探し人を見つけるため勇者として世界を旅し、そして今日、大会で探し人であるリーシャを見つけたという。

「でも前世のリーシャの知り合いと言うなら、年齢が・・・?」

ヒイラギは見た所十五歳くらい。

リーシャは転生として生まれ変わり十二年の時を過ごしている。

リーシャが姉と呼ばれ当てるとなると本来ヒイラギの方が年下のハズ。

「え~っと?前世の二人は割かし歳が近くて、二十代で死んだリーシャは十二年前に転生。そんで妹分のヒイラギは二年前に転移してきた?・・・あれ?」

頭がこんがらがり煙を出すリヴ。

「つまり単純に年齢矛盾が発生してるんだよ。」

するとヒイラギ本人が話始めた。

「実はね。転移する際神様に会ってて、年齢を下げてもらったの。」

神。

タクマ達は警戒の反応をした。

「すっごく綺麗なお姉さんでとても優しかった。なんか天界の均衡を保つため下界を守ってほしいってお願いされた。」

話を聞く限り、その神は『旧創造神派』とみて間違いなさそうだ。

ヒイラギは説明を続ける。

「お願いされる代わりに私の願いも叶えてくれるって言ってくれてね。ダメ元だったけど、私は死んじゃった美織お姉ちゃんともう一度会いたいってお願いした。そしたら美織お姉ちゃんはこの世界に転生しているって分かったの。流石にどんな人に生まれ変わってるのかは分からなかったけどもう一度会えると思ったらいても経ってもいられなくて。」

「その条件を承諾して勇者になって転移してきた。てことか。」

「スケールがデカいな・・・。」

アルセラが言う。

「転生した時と転移した時の時間がズレたから年齢が噛み合わなかったんだな。」

あまりよく理解できてないがとりあえず年齢矛盾の理由はこういう事にしておこう。

「さて、ギルドでバハムート達も待たせてるし、早いとこ迎えに行こう。」

「あ、でしたらその後一緒に食事でもどうですか?せっかくお互い知り合えましたし、何よりヒイラギの探し求めていた人との再会も祝って。」

「あら、いいじゃない。」

「異論はない。」

「し、仕方ありませんわね!折角ですから私もご一緒してあげてもよろしくてよ?」

「無理やり上から目線しなくてもいいわよ。逆に見苦しいから。」

「ぐはっ⁉」

リヴの言葉に刺されたミレーユだった。


 「・・・ねぇ明日香ちゃん。何でヒイラギって名乗ってるの?」

「元の世界で遊んでたゲームのアバター名なんだ。カッコいいでしょ?」

リーシャにはイマイチカッコよさは分からないがヒイラギが気に入ってるのならそれでいいと思った。


 ギルドに足を運んだタクマ達。

入るや否や超有名な勇者パーティが現れたことでギルド内は大騒ぎとなってしまった。

群がる人々を掻い潜りバハムート達の待つ裏庭までやってくる。

勇者パーティの四人は更なるドラゴンに驚きミルガは昏倒してしまう。

二頭はすっかりくつろいでおり、真ん中で冒険者から貰ったお菓子を食べてるメルティナがいたのだった。


 一同は王都一のレストランにやってきていた。

勇者パーティの顔を立ててもらい恒久の屋上テラスを貸し切ってもらった。

ちなみに従魔もオーケーである。

「うまい!リーシャの作る飯は美味いな!」

彼女の料理に絶賛するおっさんジーク。

屋上テラスでリーシャも自身の料理を振舞っていた。

「昔からよく作ってましたから。」

当然ながらドラゴンたちはもの凄いがっつきぶりだ。

一方、リーシャの料理を頑なに食べようとせずレストランの料理を食べてるミレーユ。

まだタクマ達を罵倒してしまったことを気にしているようだ。

「彼らはもう気にしてませんよ?」

ミルガが励ますが。

「彼らが許しても私が私自信を許せませんわ・・・。」

楽しい食事場なのにテンションの低いミレーユ。

すると一口食べた料理が格別に美味しかった。

「・・・美味しい!」

手元を見るとニヤニヤしたメルティナがリーシャの料理とこっそり入れ替えていた。

ミレーユは思わず漏らした言葉にハッとする。

「は、図りましたわね?」

「フフフ。」

まんまと策にハマったミレーユは悔しそうにリーシャの料理を一口、また一口と食べるのだった。

「お次はこれです!」

最後の料理はチャーハンだった。

「なんて香ばしい香り・・・。見たことない料理ですね?」

「私とヒイラギの世界の料理です。どうぞ。」

異世界の人間にとってチャーハンは初めての料理。

一口食べるとそれはもう頬が落ちるほど美味だった。

「うま!」

「美味しい!」

「酒が進みそうな味付けだな。」

「これは研究のし甲斐がありそうです。」

しかしただ一人、ヒイラギだけはチャーハンを食べてもずっとだんまりだった。

「ヒイラギ?」

するとポロポロと涙が落ちた。

「グスッ・・・お姉ちゃんの味だ~・・・!」

死んでもう二度と会えないと思ってた姉の懐かしい味にヒイラギは改めてリーシャと再会できたことに涙を流したのだった。


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