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『第百九章 会心』

決勝戦バトルロイヤル。

タクマチーム対勇者パーティの戦いは終盤となっていた。


 突如現れた二頭の巨大なドラゴン。

会場は動揺の空気に飲まれる中ぶつかり合う両チーム。

「マグナ!」

リーシャの指示で両肩のキャノン砲から魔力の弾を発射。

魔術師のミルガを追い詰める。

「まさかドラゴンの隠し玉とは!しかも進化と言う存じ上げない力!探求心が途絶えませんね!」

探求者として徐々に興奮気味になるミルガ。

しかし彼は補助魔法を主体とした魔術師。

攻撃手段は最低限のものしか持っておらず、ラル相手に打つ手なしの状態・・・。

「―とでも思いました?」

次の瞬間、ミルガは立ち止まり大きな魔法陣を展開した。

「あれは⁉」

「僕の持つ奥の手!一日一回しか打てない切り札を使わせてもらいます!」

全魔力を振り絞り魔法陣からエネルギー状の狼の頭が現れる。

「小欄あれ‼『ギガハウリング』‼」

強力な音波がリーシャ達に放たれた。

だが、

「ならばこっちもとっておきです!」

リーシャの従魔結石が更に光を増すとラルの両肩両腕に構えたキャノン砲の中心に魔力が集中、凝縮される。

そしてチャージが最高潮に達した。

「『アルビオン』‼」

凄まじいエネルギー弾が轟音と共に発射されミルガの『ギガハウリング』をいとも簡単に粉砕する。

それだけでは終わらず『アルビオン』はミルガ目掛けて一直線に迫っていく。

「う、うわぁぁぁ⁉」

死を覚悟したミルガは目を瞑る。

だが何も起こらずゆっくり目を開けると、ミルガの横スレスレが黒く焦げていた。

ラルがあえて軌道をずらしてくれたようだ。

ミルガは完全に脱力しその場に崩れ落ちる。

「こんなの・・・勝てるわけないよ・・・。」

リーシャ対ミルガの対決はリーシャの勝利だ。


 竜化したリヴと大剣士ジークの勝負。

パッと見ればジークに勝ち目がないように思えるがそうでもなかった。

「フンッ‼」

力強い一撃がリヴの頭部に直撃し地面に叩きつけられる。

「ドラゴンに変身した時は驚いたが俺も勇者パーティの一柱。そこらの戦士と一緒にするなよ?」

ジークは自信たっぷりに言い聞かせる。

すると、

「痛ったぁぁい‼乙女を容赦なく殴りつけるとか酷くない⁉」

「えっ⁉」

瓦礫を押し退け涙目になりながら叫ぶリヴ。

ジークも渾身の一撃だったらしく、それが効いてないリヴに驚きを隠せないでいた。

「俺の一撃を食らっても平気か・・・。大した耐久力だ・・・!」

「それはどうも、ね!」

私念の籠った反撃ブレスを発射。

不意打ちされたジークは会場端まで吹っ飛んだ。

「ドラゴン、相手にとって不足なし!行くぞ!」

大剣を軽々持ち上げリヴとの乱戦が巻き起こる。

互いに譲らぬ攻防の末、追い風が吹いたのはリヴだった。

「貰った!」

ジークの一撃が決まろうとした瞬間、リヴは人化のスキルを発動させ人型になる。

突然のサイズ変更に対応しきれず腹部ががら空きとなる。

「『流流水拳(りゅうりゅうすいけん)』‼」

水を纏った鋭い拳ががら空きの腹部に直撃。

背中から衝撃波が放たれジークは気絶して倒れた。

「考えたこともないでしょ?本来の姿がフェイクなんてね。」

リヴ対ジークの勝負、リヴの勝利。


 アルセラとミレーユの一騎打ち。

騎士であり剣士である二人の戦いは一定線を保っていた。

攻めては守り攻めては守りの互いに譲らぬ攻防が続き、先手を取ったのはアルセラの方。

「『騎士の太刀・奇線(きせん)』!」

剣先からビームを放ちミレーユの耳飾りをかする。

「遠距離技も持っていたの?」

「たしなみ程度にな!」

二人の激闘が続き、アルセラはとある構えを取った。

左足を前に出し、柄を顔横の高さまで上げ、剣先を相手に向ける独特の構え。

その構えを見たミレーユはふと立ち止まる。

「っ⁉」

彼女の目にはある女性騎士の構えと重なって見えていた。

「その構え・・・、何故貴女のような一介の剣士がその構えを⁉」

「あぁ、君の師匠はな・・・、私の師匠でもあるんだ!」

アルセラは目を閉じ神経を集中させ、静寂に包まれる。

そしてある人物から教わった言葉を思い出した。

『アルセラ、お前に強くなれるおまじないを教えよう。』

『おまじない?』

幼いアルセラが首を傾げた。

『いいかい?それはね・・・。』

目を閉じたままアルセラは言葉を発する。

「『我が騎士道に賭けて、お前に勝つ』‼」

目を開けるとアルセラの目は金色に変色しており凄まじい気迫が放たれた。

その圧に当てられたミレーユに緊張が走る。

(この気迫、どこかで・・・?)

ミレーユはその既視感の正体に気が付く。

「まさか、師匠⁉」

「ハァァァァ‼」

先ほどとは打って変わった太刀筋にミレーユは翻弄され始める。

(間違いない!この太刀筋、師匠と同じ!)

剣技が鈍ったミレーユの剣を弾き飛ばし足を蹴り転ばせる。

上を取り剣を突き付けるが。

「舐めるな!」

アルセラの突きを受け止め押し返す。

体制を立て直し負けじと攻めるがどんなに激しい剣技も全て受け止められる。

火花が散る中、ミレーユが意を決する。

「ならばこの一撃を見せてあげますわ!」

剣を構え魔力を溜める。

「『騎士の太刀・響音斬綴(きょうおんざんてつ)』‼」

音の振動を乗せた剣で一気に距離を詰め連続切りを繰り出す。

音の振動で威力の上がった剣は重くミレーユがどんどん巻き返してきた。

だが、

『今じゃ小娘!』

カリドゥーンの合図と共にミレーユの剣技を受け流し、流れるように背後に回る。

そして剣を面を首筋に当てミレーユは意識を失った。

『追い詰められた時、一度自分が優勢になれば攻撃が単調になる。そこを突けばいくら強かろうと無意味。強者になった者にありがちな弱点じゃ。』

「・・・いくら()()()に鍛えられようと、私の方が貴女よりずっと長く稽古を付けられた。それが私の勝因だ。」

泡を吹いて倒れるミレーユに言い放つアルセラ。

二人の剣士の戦いはアルセラの勝利で終わったのだった。


 そして残った大将同士の戦い。

タクマと勇者ヒイラギの次元を超えた戦いは終盤となる。

「いい顔してきたな。」

先ほどまで無表情で戦っていたヒイラギだがタクマに鋭い一撃を入れられたことで楽し気に頬が上がっていた。

「こんな感情、久しぶり!お姉ちゃんと手合わせしていた時を思い出すの!」

剣技も鋭くなりタクマも捌くのに少し余裕がなくなってきた。

(流石勇者って所か。一瞬でも気を抜くとそこから一気に負けると直感が叫んでる。だが!)

ヒイラギの連続切りを絡めとり押さえた。

「負けるつもりもねぇ!」

二人は互いに笑みを浮かべ睨み合う。

そこにリーシャの援護が入った。

「アイシクル!」

頭上に発生した氷塊が降ってきて二人の距離を開ける。

「タクマさん!他の皆さんの決着がつきました!」

辺りを見回すと場外へ勇者パーティの三人を運ぶスタッフとこちらに手を振る少々疲労したリヴ達が目に入った。

「オッケー!こっちもケリを付ける!」

リーシャはまだ戦闘可能であるため戦いに参加する。

大してヒイラギは一人で二人を相手しなくてはならない。

だが彼女にとっては不利でもなかった。

それどころか、

「最後の一人、あのスキルが発動する!ハァァァァ‼」

突如ヒイラギの魔力が上昇し始める。

「何だ?」

場外のアルセラが首を傾げていると目を覚ましたミルガが説明をした。

「彼女、ヒイラギはパーティが最後に一人になると能力が格段にパワーアップする特殊スキルがある。その名は・・・、『ロンリードライブ』!」

ヒイラギの身体から溢れ出る魔力が彼女の勇者としての異質さを物語っている。

「・・・リーシャ。ラルは?」

「『アルビオン』の反動で動けないためリヴさんに預けてます。」

「了解。」

そう言うとタクマは水の竜化となり剣を構える。

「俺が合図したら頼むぜ。」

「分かりました!」

「あぁぁぁぁぁ‼」

雄たけびを上げ一瞬の速度でタクマに切り掛かるヒイラギ。

タクマも水の尻尾をうまく駆使し相手の猛攻を受け流し続ける。

「何なんだあの少年・・・。ヒイラギの『ロンリードライブ』についてこられるなんて・・・。」

ジークが場外から二人の戦いを見て息を飲むとリヴが自慢げに話した。

「ふふん!勇者よりももっと強い相手と戦ってきたからね。私の主様は!」

「勇者よりも強い・・・?」

正面からのぶつかり合いに会場の盛り上がりはピークに達する。

そしてヒイラギの猛攻が徐々に勢いを失ってきていることにタクマは気が付く。

(やっぱり、本で読んだことがある。『ロンリードライブ』はとても強力なスキルだが、その発動時間はかなり短い。最後の手段の起死回生の技。これを耐えきれば!)

そして鋭い一撃がタクマの剣を弾き体制を崩させた。

ヒイラギの剣先がタクマに迫った瞬間、

「リーシャ‼」

控えていたリーシャが飛び出し杖でヒイラギの一撃を受け止める。

鮮やかな交代でタクマは後方に下がり、代わりにリーシャが前線に出る。

「あぁぁぁぁぁ‼」

力任せの猛攻、だが威力は最初の頃より衰えリーシャでも対処出来ていた。

「フン‼」

剣を杖でからめとり、ヒイラギを背負い投げした。

その時、ヒイラギは懐かしい感覚に見舞われる。

元の世界で同じように投げ飛ばされる自分ともう一人の女性。

そこで『ロンリードライブ』の効果は切れ、地面に叩きつけられる。

そして額に鋭い杖の先を突き付けられた。

「・・・・・。」

「私の、いえ、私達の勝ちですね・・・。」

会場が静まり返る中、審判が我に返り判決を下す。

勝者はタクマ達のチームとなり会場の熱気は一気に爆発したのだった。

「ま、まさかヒイラギが、負けるなんて・・・!」

ミレーユはあり得ないという顔で固まっており、残り二人も同じように驚いていた。

「やった~!主様とリーシャが勝った~!」

「クゥー!」

飛び跳ねて喜ぶリヴとラル。

アルセラもフッと笑いを零し勝利を喜んだ。

敗北してその場に座り込むヒイラギにリーシャが歩み寄る。

「凄くいい試合でした。ありがとうございます!」

笑顔でお礼を言うリーシャ。

だがヒイラギはずっと黙り込み何かを考えていた。

「リーシャ!戻るぞ!」

「はい!今行きます!」

タクマに呼ばれ会場を後にしようとすると、

「ま、待って・・・!()()()()()()()‼」

その言葉に驚きリーシャは歩みを止め、バッと振り返ったのだった。


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