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『第百六章 王都の大会』

ランクを上げると面倒事になりそうなタクマはまずアルセラのランクを上げることにした。

「俺達と同じBランクなら何かとスムーズに動けるだろう。」

「分かった。」

そうして依頼をこなしていき、数日後にはアルセラもBランクの仲間入りとなった。

「やっぱ元が元だけに楽勝だったな。」

「でも慢心はしない。まだまだこれからさ。」

目的が一つ済、一同は街のカフェでお茶をしていた。

「ねぇリーシャ。そのケーキ一口頂戴!」

「わっ!リヴさん!」

女子たちの尊い光景に和んでいると向かいの掲示板の前に人だかりが出来ており、何やらざわざわとしていた。

「何だ?」

興味本位でタクマとアルセラも掲示板を覗くと、何やら大会のポスターが張られていた。

トーナメント形式の大会で冒険者、騎士団、一般人誰でも参加可能な大きな大会だった。

「ほ~ん、場所は王都で開催されるのか。」

「今までこのような大会には参加した事なかったな。どうだタクマ?力試しに参加してみては?」

「アルセラ、こっちはただでさえ目立つドラゴンがいるんだぞ?大会自体は面白そうだがこれ以上目立つのは避けたいんだが?」

「・・・・・。」

「そんな不満そうな顔をするな。」

しかしタクマの言う事の一理ある。

例の勇者パーティに目を付けられている以上目立つのは避けたい。

仕方なく納得し場を去ろうとした時、

『む?ちょっと待て!』

カリドゥーンに止められた。

「どうした?カリドゥーン?」

『あの紙切れの端に書いてある優勝報酬という所、よく見せてくれ。』

言われた通りポスターの下にある項目に目を通すと。

『・・・やはりそうか!』

「やはりって何が?」

『この大会の優勝報酬、儂のアーティファクトじゃ!』


 カフェに戻ったタクマとアルセラはアーティファクトについてカリドゥーンに話を聞いていた。

『アーティファクトは儂と同時に作られた儂と装備者を強化する魔道具じゃ。前回勇者と共に世界を救った際に散りじりにどこかへ消えてしまったんじゃが、まさかこんな所で行方をすることになるとは思わなかったぞ。』

「魔聖剣を強化する魔道具か。そんな物があったんだな。」

アーティファクトがあればカリドゥーンの装備者であるアルセラも更に強くなれる。

「タクマ!」

『小僧!』

二人からキラキラする圧に当てられ、最終的に折れるタクマだった。


 数日後。

アルセラの持っていた地図のおかげで座標が分かっていたのでバハムートの『空間転移』で王都にやってきたタクマ達。

とりあえず王都のギルドに立ち寄りバハムート達を預けてもらう事にした。

「何でオレ等留守番やねん。」

「さっきギルドで聞いた話だが、例の勇者パーティも大会に参加するためにこの街に来てるんだと。奴等には『認識疎外』が効かないから念のためお前等をここに残す。いざとなったら呼び出すから待っててくれ。」

「仕方ない。その代わり大会には我らも出場させるんだぞ?」

「出来たらな。」

二頭を預け、会場であるコロシアムにやってきたタクマ一同。

「まるで古代ローマの闘技場みたいですね。」

「それも前世の知識?」

「はい!」

受付には大勢の冒険者。

少ないが騎士も何人かいた。

一般人は力自慢の男が数人だけだった。

そして、勇者パーティ。

「ホントにいたわ勇者。おじ様たちを置いてきて正解だったわね。」

タクマ達も受付を済まそうとしたその時、

「邪魔だ!」

「きゃ⁉」

後ろから剣士の男にどつかれ転ぶリーシャ。

「ちょっと!何するの⁉謝りなさいよ!」

「あ?そんなとこに突っ立ってんのが悪いんだろうが!」

如何にも質の悪そうな青年だ。

「つーかガキじゃねぇか。まさかと思うが大会に出場する気じゃないだろうな?」

「だったら何よ・・・!」

男はニヤリと笑みを浮かべた。

「いや?俺の優勝率が上がったなと思ってな。お前等みたいな雑魚に当たればラッキーじゃん。ハハハ!まぁせいぜい俺に当たるまで負けるんじゃないぞ?雑魚が消えたら優勝できないからな!」

ケラケラ笑う男に掴みかかりそうなリヴをリーシャが止める。

「ぶつかったことは謝ります。ごめんなさい。気を付けます。」

「・・・ふん!」

不機嫌そうにその場を去る男だった。

「リーシャ!何で謝るの⁉向こうからぶつかってきたのに!」

「今この場で事を荒げるのはご法度です。それに彼も大会にエントリーしています。選抜次第ですが、報いを与えるのは公式試合にしましょう・・・。」

可愛い笑顔で言うが彼女からは黒いオーラが漂っておりリヴは背筋が凍ったのだった。


 それから大会が始まり大勢の観客の前で参加者は自身の強さを見せつける。

トーナメント表が次々と進む中、勇者パーティの金髪女性騎士、ミレーユの番が来た。

「アイツがバハムートの『認識疎外』を見破った奴か。」

すると周りの冒険者たちの話が聞こえてきた。

「勇者パーティの一人、金剣のミレーユ。貴族令嬢の出で剣技は剣星ヒルデ様に教えられてと言われてる時代のカリスマ。どんな戦いを見せるのか楽しみだぜ。」

(そんなに有名で強いのか。)

そう思ってると隣のアルセラが何やら顔を青くしてた。

「アルセラ?」

「ハッ!すまない、なんでもない・・・。」

「大丈夫か?気分が優れないのなら休憩室に・・・。」

「いや、本当に大丈夫だ。心配いらない。」

「ならいいが・・・。」

そうしている内に試合が始まった。

ミレーユの相手は武闘家の男性だ。

「いざ、尋常に勝負!」

武闘家が拳を繰り出した瞬間、いつの間にかミレーユは背後に立っていた。

「何⁉いつの間に背後に⁉」

追撃しようとする武闘家。

「悪いけど、もう勝負はついたわ。」

そう言った瞬間、武闘家は斬撃に見舞われバタリと倒れてしまった。

あまりの一瞬の決着に会場が静まり返る。

「・・・ハッ、勝者!金剣ミレーユ!」

我に返った審判にジャッジでミレーユの勝利となった。

同時に会場も盛り上がりを取り戻す。

「・・・今の見たか?」

「いえ、見えませんでした。」

「私は辛うじて見えたけど、一瞬過ぎて言葉にするのが難しいわ。ハッキリ言えるのはあの女は相当な実力者だってことだけ。」

三人が感想を述べてる横でアルセラだけ、ずっとだんまりだった。

(やはり今の剣技・・・。)

そしてどんどん試合が進んでいき残り四ブロック。

タクマ、リーシャ、リヴ、アルセラの番が回ってきた。

「まずは私ですね。対戦相手は・・・。」

「うげっ!アイツじゃない!」

リーシャの対戦相手は何の因果か受付前にリーシャにぶつかった男だった。

「まさか初戦でぶつかるなんて。まだ相手の手の内も分からないのに・・・。」

「心配いりませんよリヴさん。」

「何で・・・ヒッ⁉」

リーシャから再び恐ろしい圧が放たれておりリヴは恐怖する。

「それにあの人、散々私達を子供だと馬鹿にしてくれましたよね・・・。子供を舐めてると痛い目を見る事、思い知らせてやります。フフフフフ♪」

(怖い・・・。)

本気で怒っているらしく恐怖で震えが止まらないリヴだった。

そしていよいよリーシャの試合が始まる。

会場に入り互いにステージに立つ。

「まさか序盤に当たるとは。ついてなかったなガキ。」

余裕の表情で剣を振り回す男。

完全にリーシャを舐めている様子だ。

「確かに私は子供です。でも、子供だからって見下していると痛い目見ますよ?」

ずっとニコニコ笑顔で話すリーシャ。

笑顔でいればいるほど恐怖がにじみ出てきた。

「なんか・・・彼女を見てると凄い寒気がするんだが?」

流石のアルセラも気づいたようだ。

ちなみにリヴはガタガタ震えながらタクマにしがみ付いていた。

「リーシャの強さは俺と匹敵する。あの男、死んだな。」

試合開始の合図が出され先に出たのは男の方だった。

「先手必勝!ブレイズソード!」

炎を纏った剣で切りかかる男を難なくかわすリーシャ。

しばらく攻防の戦いが続いていく。

「おいおい避けてるだけか?そりゃそうか、怖いもんな!ガキrに剣が振り下ろされるなんて恐ろしいもんな!ガキはガキらしくママのおっぱいでもしゃぶってな!」

その時、何かがブチッと切れる音がしたと思ったらリーシャは杖で男の剣を受け止めた。

そしてそのまま剣を上空へ弾き飛ばし、杖の先端を押し付ける。

「エアロスト。」

笑顔で技を唱えると男の回りの空気が無くなり真空状態となる。

「ガッ~~⁉」

息ができず苦しむ男をリーシャは見下ろす。

「子供を見下してると痛い目見ますと言いましたよね?」

もはや恐怖を通り越して狂気だ。

「どんな気持ちですか?散々舐めていた子供にやられる気分は?あぁ、このままじゃ聞こえませんよね。」

そういい魔法を解除し男の顔色が瞬時に元に戻る。

「かはっ!ハァ、ハァ!テメェ、ガキのくせに俺をコケにしやがって!」

「黙りなさい。」

ドスの効いた声で今度は空気圧縮で男を地面に押しつぶす。

「貴方の言動は度々目に余ります。私はですね、見た目は子供でも中身は大人と大して変わりません。あまり年上を舐めないでくださいね?」

そのまま圧縮を強め、男を気絶させリーシャの勝利となった。

「ふぅ~、タクマさ~ん!勝ちました~!」

先ほどの冷徹な笑顔とは裏腹に可愛い笑顔でこちらに手を振るリーシャ。

タクマも手を振り返すが彼の背中にしがみ付くリヴと隣に立つアルセラが顔面蒼白の状態で震えていた。

「私、絶対リーシャを怒らせないようにするわ・・・。」

「わ、私もだ・・・。」

「あんなの可愛いくらいじゃないか?」

「「え~・・・。」」

タクマの大物発言に引く二人だった。


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