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『第百四章 騎士の仲間』

月明かりの照らす氷山の上空で激しく火花が散っていた。

「~~~~‼」

五核竜ネセルティオンの咆哮が夜の空に響き渡る。

「やかましいんじゃい!寝てるご近所に迷惑じゃろがい!」

旋回しながらネセルティオンにキックをお見舞いするウィンロス。

だがネセルティオンは微動だにせず電撃を放ちウィンロスを感電させる。

「あばばばば⁉」

「馬鹿野郎!むやみに接触するな!」

タクマの斬撃とバハムートのブレスで相手を押し返す。

プスプスと丸焦げのウィンロスを救出した。

「死ぬかと思ったで・・・。」

「逆によくその程度で済んだな・・・。」

アルセラがツッコむ。

ネセルティオンにはタクマとバハムートが攻めていた。

宙を飛び回りネセルティオンの背後を取った。

「居合・風裂傷!」

風の斬撃と炎のブレスが合わさり紅蓮の斬撃となり、ネセルティオンの翼に命中した。

「~~~~⁉」

悲鳴を上げ墜落するネセルティオン。

しかし墜落しながらも角に魔力を溜め始め応戦しようともがく。

『小娘!奴の角を狙え!アレが属性変動の糧じゃ!あそこを砕けば勝機は我らにあるぞ!』

「角か!分かった!」

アルセラもネセルティオンを追って急降下しカリドゥーンを構える。

ネセルティオンをもアルセラの接近に気付き大きく口を開けた。

『そのまま突っ込むんじゃ!儂に身を委ねよ!』

「あ、あぁ!」

カリドゥーンを信じ一直線に迫る。

そしてブレスが放たれアルセラは飲み込まれてしまった。

「アルセラ⁉」

「まともに食らったで⁉」

だが次の瞬間、ブレスをかき消し魔力を纏ったアルセラが飛び出してきた。

『へし折れーーー‼』

「あぁぁぁぁぁぁ‼」

彼女の剣先が角に触れた瞬間、固そうな角はいとも簡単にへし折られた。

『もう一発じゃ!』

「『騎士の太刀・皇鉄槌(おうてっつい)』‼」

剣を大きく振りかぶり巨大な一撃がネセルティオンを穿つ。

「――――⁉」

ネセルティオンは完全にノックアウトし氷山内部の氷の大空洞に落ちた。

「何か落ちてきたと思ったら五核竜⁉」

「てことは、タクマさん達がやってくれました~!」

ピョンピョン跳ねて喜ぶ女性陣だった。


 ネセルティオンを倒した一同は再び大空洞で合流する。

「じゃあ止めを刺したのはアルセラさんなんですか⁉」

「あぁ。といってもカリドゥーンの指示をそのまま聞いてただけだから、まだ私がドラゴンを倒したことに実感が持てないが・・・。」

「それでも凄いですよ!私一人ではドラゴンは倒せませんから!」

(いや多分十分倒せるレベルやと思うで?神ぶっ倒しとるし。)

そう心中ツッコむウィンロス。

「さて、角までへし折ったのだ。この地は安全になり、こやつもしばらくは動けんだろう。」

そうバハムートが閉めた。

「よし!じゃあこの件をルオン街のギルドに報告しなきゃだな。」

するとアルセラの表情がサーッと青くなり冷汗が流れ始める。

「どしたのアルセラ?凄い汗よ?」

リヴが顔を覗き込む。

「忘れてた・・・!私は禁則地に入った君達を連れ戻すために来たんだった・・・!」

「あんさんもガッツリオレ等に協力してたで?これであんさんも共犯やな。」

ニヤニヤと笑うウィンロス。

アルセラも汗が絶頂に達する。

「頼むタクマ!何とか辻褄を合わせてくれないか⁉」

「何急に⁉」

アルセラはタクマに泣きつく。

「そんなもの正直に話せばよいだけではないか?」

「実はそうも言ってられない・・・。ルオン街のギルドのギルドマスターは、恐ろしく怖い人だ・・・!」

あのアルセラがそこまで恐れるとは。

タクマもちょっと怖くなった。

「まぁ良い。とにかく夜が遅い。後は明日に持ち越せばよかろう。皆我の元に集まれ。『空間転移』で街に戻るぞ。」

「・・・あれ?空間『異動』じゃなかったっけ?」

「実はスキルが進化して名が変わったのだ。といっても一度に転移できる容量が増えただけだが。」

そして一同はバハムートの転移で街に戻ったのだった。


 それから数時間後。

静まる氷の大空洞でネセルティオンが目を覚ました。

ゆっくり起き上がるネセルティオンだが、次の瞬間氷山の上から何かが力強く振ってきた。

煙が晴れるとあのネセルティオンが完全に息の根を止められていた。

上に乗る影が大剣を引き抜き肩に担ぐ。

「・・・一足遅かったみたい。もうこの場にいないや。」

現れたのは七天神の一人、戦神ジームルエだった。

「・・・早まって下界に降りちゃったけど、もう少し様子を見てもいいかな。幸い気配はそんなに遠くないし。」

そう言い残し再び目にも止まらぬ速度で夜空へと飛翔していったのだった。


 その後、ルオン街に戻ったタクマ達一同はギルドに足を運んでいた。

最初に会った受付嬢はタクマ達の報告を受け驚きのあまり放心状態となってしまい、アルセラの方はギルドマスターにこっぴどく怒られたそうな。

流石に申し訳が立たなかったためタクマもかなり便乗してくれた。

その晩。

タクマ達は従魔可の宿にて裏の厩舎に集まっていた。

皆で夕飯、リーシャの手料理を堪能していた。

「リーシャの作る食事はどれも美味いな!」

「ありがとうございます♪」

リーシャの美味過ぎる料理を平らげるアルセラを見てカリドゥーンが言葉を漏らす。

『くそ~、儂も全盛期の力が戻れば娘の料理を食えるのに・・・!』

「剣が飯食えるんか?口ないのに?」

『儂は勇者を導いた伝説の剣であるぞ!人に化けられるのも容易かったんじゃ!数千年もの間ただ飾られてたせいで鈍っておるだけじゃ!力が戻れば儂の可憐な美貌に即倒しても知らんぞ?』

人型の容姿に随分と自信があるらしい。

正直興味があった。

「人型・・・。」

「ん?何よ?」

タクマは肉を貪り食うリヴの方を向いたのだった。


 その後、アルセラは改めてタクマの仲間に入れてほしいとお願いをしてきた。

「タクマ。私も心を決めた。そして君と肩を並べられるよう強くなった。随分長くなってしまったが、改めて君の仲間に入れてもらえないだろうか?」

タクマの答えを決まっている。

「勿論だ。これからよろしくな!アルセラ!」

二ッと笑い手を差し出す。

「あぁ!騎士として恥じない活躍をすると約束しよう!」

二人は固い握手を交わしたのだった。

『随分と慕われておるんじゃのう。見た所小僧の方が小娘より年下のようじゃが?』

「アルセラさんは二十歳でタクマさんは十六歳ですからね。」

『おねショタ・・・。』

「変な事言わないでください。」

するとカリドゥーンはメルティナの方を気に掛け始めた。

『・・・のう娘。』

「私ですか?リーシャと呼んでください。」

『ではリーシャよ。あそこの白い娘の事なんじゃが、あやつは何じゃ?』

「何と言われましても・・・、メルティナさんは私達の大事な仲間です。ちょっと不思議な子ですがとてもいい子ですよ。」

『そうか・・・。』

何やら意味深な雰囲気を出すカリドゥーン。

⦅あの白い娘の魔力、どこか覚えがあるような・・・?気のせいかの?⦆

「あ、そうだアルセラ。これ。」

タクマはポケットから髪飾りを取り出す。

以前アルセラから預かった母親の形見の髪飾りだ。

騎士団を辞めてタクマについていくという彼女の覚悟を示し預かっていた物だ。

「覚えててくれたんだな。」

「当たり前だ!母親の形見なんか絶対忘れるか!」

アルセラは髪飾りを受け取り自身の頭に取り付けた。

「お、前より似合ってんじゃん!」

タクマに褒められ顔を赤くするアルセラ。

「・・・垂らしやな。」

「ブッ・・・!」

ウィンロスのツッコみに珍しく吹きそうになったバハムートだった。


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