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『第百三章 禁忌の竜』

『解せぬ。』

「何がや?」

翌日、再会したアルセラと共に禁忌の竜について環境が混在した地域を探索していた。

『今更気づいたのじゃが、何故お主等儂の声が聞こえとるんじゃ?』

確かに。

あまりに自然に会話できてたため気付くのが遅れた。

『儂の声は儂の魔力に適性のある者にしか聞こえんはずじゃが?』

「知らんがな。でも現に俺達全員にあんさんの声聞こえとるで?」

全員が頷く。

『嘘じゃろ・・・。儂の魔力に適性を持つ者はここ数千年で小娘だけじゃったのに・・・。小娘を見つけた時の喜びは一体・・・、やはり解せぬ・・・。』

どうやらタクマ達の異質な強さと魔力が偶然カリドゥーンとの共鳴を可能にしたようだ。

「ホント常識外だな・・・。タクマ達は・・・。」


 探索を続けていると所々に痕跡が見つかり、そしてついに禁忌の竜の居場所を特定できた。

「五核竜ネセルティオンが巣くっている場所はあの氷山の真下。洞窟内は小規模のダンジョンになっておりその最下層にネセルティオンがいる。」

「痕跡を調べた限りネセルティオンは休眠状態らしいで?周辺の木の実や魔獣の残骸があちこちに散らばってたわ。」

皆の証言を元にリーシャが地面に情報をまとめる。

「場所が分かれば後は、タクマさん!お願いします。」

タクマは剣を構え集中する。

「『エコーロケーション』‼」

『鑑定』と『空振動』を組み合わせて作ったスキル『エコーロケーション』で地中を反響させダンジョンの全貌を探る。

「・・・よし!紙くれ!」

素早い対応でメルティナが紙を一枚渡す。

「『念写』!」

もの凄い目力で紙を見るとじわじわと絵が浮かび上がってくる。

そして立派なダンジョン地図が出来上がった。

「相変わらず何でもありだな君は・・・。」

アルセラもタクマの規格外さを思い出したのかうなだれていた。

何だか懐かしい感じだ。

『なるほど。小娘が付いていきたがるのも頷ける。』

何故がカリドゥーンは感心してた。

「地図は手に入った。早速ダンジョンに乗り込むぞ!」

そしてタクマ達は中央にそびえ立つ氷山の真下、ではなくかなり離れた位置にあるダンジョンの入口から投入した。

「なして氷山から入らんのや?あの真下に奴のねぐらがあるんやろ?」

「調べて分かったことなんだけどあの氷山の氷、魔力から作られた氷だったわ。しかも私達でさえ壊せないぐらいの強度でね。」

リヴが説明してくれた。

「アレが意図的に作られたやと?やっぱ五核竜えげつねぇ・・・。」

「ホント、まさか生きてるうちにまた遭遇する羽目になるなんて・・・。」

以前から二人の会話が気に掛かっていたタクマは二頭に話しかける。

「前から気になってたんだが、二人は五核竜と会ったことあるのか?」

「・・・せやな。ハッキリ言っといたほうがええな。」

「そうね。数十年前に無人島から変な魔力を感じてね。興味半分で近づくと海の真ん中なのに島の中央に火山が出来てたわ。そこにいたのがネセルティオンだったってわけ。木々が燃えて島はすす塗れ。油や金属も表立ってたから流石にどうにかしなきゃまずいと思ってネセルティオンを撃退しようとしたんだけど・・・。」

「相手の多種多様な属性攻撃に対処しきれず返り討ち。と言うところか?」

バハムートが答えた。

「えぇそうよ。感電したり火傷したりしてしばらく動けなくなったんだから。」

「オレも似たようなもんやで。大樹の上で熟睡してた時に辺りが寒くなったと思ったら突然森が凍り始めて凍死しかけた事があんねん。あんにゃろ森を自分の住みやすい環境に変えるもんやから先住はいい迷惑やで。」

二人の不運を聞く限りやはり五核竜は環境を一瞬で変えれてしまうほどの力を持っているよう。

「奴は万年周期で力が強大になり世界のバランスを崩してしまう。二人の話を聞く限り今が丁度その周期であろうな。早いとこ鎮静化させ大人しくさせねば。」

『それが妥当じゃろうな。』

一同はダンジョンを進むと途中魔獣が行く手を阻んできた。

「そりゃぁいるよな。ダンジョンだし。」

丁度洞窟は剣を降れるほど広い。

タクマは剣を抜こうとすると、

「待てタクマ。ここは私に任せてもらえないか?」

アルセラが前に出た。

「この数週間ただ準備をしてただけじゃない。君の隣に立てるよう努力してきた。カリドゥーン!」

『仕方ない。』

アルセラはカリドゥーンを装備し魔獣の前に立つ。

「グルアァァァ‼」

魔獣がアルセラに襲い掛かる。

「『騎士の太刀・破極牙線(はきょくがせん)』‼」

鋭い一閃が音もたてずに繰り出され、魔獣は真っ二つに切り裂かれた。

「まずは一体・・・。」

彼女の技を見たリーシャはどこか既視感を覚えた。

「今の構え、タクマさんの居合の構えに似てました。」

「そうか?」

「いやぁ、実はタクマの技を元に自分なりにアレンジして技の威力を上げてみたんだが、どうだった?」

アルセラが頬をかきながらこちらを向く。

「なるほど。居合の瞑想(めいそう)を既存の技に合わせたのか。なかなか面白い発想だ。」

バハムートが先に答えた。

「主様は?」

「・・・・・。」

タクマは黙ったままアルセラに歩み寄り、頭を撫でる。

「俺からは何も言う事はねぇ。これからよろしくな。アルセラ。」

いい笑顔で笑うタクマ。

まさか頭を撫でられると思ってなかったアルセラは顔を赤くし俯いてしまった。

『ウブじゃのう。』

声からカリドゥーンがニヤニヤしているのが丸わかりだった。


 見違えるほど強くなったアルセラと共にダンジョンを進み、一同は氷山の真下に位置する氷の大空洞にたどり着いた。

「うわ~!氷山が透き通ってて日の光が綺麗すぎます!」

確かに透明度の高い氷で氷山が出来ており日の光が大空洞内をより美しく際立たせていた。

「はぁ~♡私もこんな場所に住んでみたいな~♡」

氷属性を扱うリヴにとってはこの場所は豪邸に等しいらしく目を輝かせていた。

「これをあんの五核竜が作ったと思うとなんかムカつくで。」

逆にウィンロスは眉間にしわを寄せていた。

「・・・む?妙だ。」

バハムートが何かを感じ取った。

「ネセルティオンの気配が消えた。先ほどまでここから発してたはずだが?」

「気配が消えた?移動したのか?」

「かもしれん。」

周囲に警戒しつつタクマ達は降りていき中央地点に着く。

「渦巻のような跡。ここが五核竜の巣みたいだな。」

だが今は出払っているのか五核竜の姿はない。

「今のうちに迎撃の準備を進めても良いかもしれんな。」

「トラップ?なら私の氷で作ってみようか?」

「そんな事が出来るんですか?」

「楽勝よ!」

リヴとリーシャ、メルティナの三人が周辺に氷のトラップを作りに行った。

残ったメンバーでバハムート達から五核竜の情報を少しでも多く教わる。

「前にも言った通り、奴は炎、水、氷、雷、無の五つの属性を扱う。正面から挑んでも予期せぬ反撃にあってしまう。」

「改めて聞いてもずば抜けて厄介だな。」

バハムートでさえ属性は炎と光の二つ。

リヴはバハムートよりも多い三つの属性を持ってるが。

「そういや複数属性持ちって珍しいのか?」

「当たり前だろ!本来だったら多くても二つまでが常識だ!」

アルセラがツッコむ。

「じゃぁバハムートは常識の範囲内か。」

「いや彼はその代わりほぼすべてと言っていい程のスキルを持っている。彼も彼で常識外れだ。」

「何故か心外だな・・・。」

その間、リヴお手製の氷のバリスタやチェーンなどのトラップを確認や試し打ちなどして時間を潰しているとすっかり夜になってしまった。

だが今宵は満月で光が強く、大空洞に降り注ぐとそれはそれで神秘的な光景へと変わった。

「夜でもこんなに綺麗なんですね。」

「自然界にとってはお城よ♡」

ご機嫌なリヴとリーシャが団らんと話す中、大人組はまだ最下層で話し合いをしていた。

「―という感じで立ち回ってだな。」

その時、全員が迫りくる強大な気配に気が付いた!

「来るぞ!」

バハムートの掛け声と同時に氷山の上から巨大な影が舞い降りてきた。

地面に降り立つと強烈な風圧がタクマ達を襲い、そこには一本の大きな角に黒く輝く鱗、そして分厚い翼を持った四足歩行型のドラゴンが立っていた。

「~~~~~~~っ‼」

金属音のような咆哮を上げタクマ達を吹き飛ばす。

「こいつが!」

「五核竜ネセルティオン‼」

ついにその姿を現した禁忌の竜。

ネセルティオンの角が赤く光ると口部に炎が収束されていく。

「避けろ!」

ブレスが放たれ爆発。

間一髪かわし体勢を立て直す。

「アルセラ!ウィンロス!作戦通りに行くぞ!」

「あぁ!」

「任せとき!」

二人はネセルティオンに左右から攻める。

するとネセルティオンは突如飛翔し二人の攻撃を避け、角が水色に輝き始める。

「~~~~‼」

咆哮と共に宙に氷の塊が現れた。

「あれは、リーシャと同じ『アイシクル』⁉」

「魔法も使えるんかい!」

アイシクルがアルセラとウィンロスに落とされる。

二人はアイシクルを避け攻め入ろうとするが次々と現れる氷塊に阻まれうまく近づけない。

「邪魔や氷!」

その時、アルセラの目の前の氷塊が砕け散った。

「リーシャ!」

崖の上でリヴの作った氷のバリスタを構えるリーシャ。

氷の矢が錬成、装填され再び放たれ氷塊を砕いた。

「私達がサポートします!皆さんは攻めに集中してください!」

リヴとメルティナも他のトラップに待機する。

「よし!これ以上環境がめちゃくちゃにされる前に大人しくさせるぞ!」

「「「おう‼」」」

リーシャ達が援護してくれるため前衛組は心置きなく火力に回せる。

しかし相手は属性を使い分ける禁忌の存在。

予測してない属性の攻撃に悩まされることも多かった。

「くそ!角が光っても直前で属性を切り替えられて対処しきれない!リヴ達が苦戦するのも頷ける!」 辺りには水たまりや氷柱、氷が解けた個所など酷い惨劇になっている。

「バハムート!何か有効なスキル持ってないか?」

「あるにはあるがどれも決定打に欠ける!技量と力量が全てだ!」

「分かった!ウィンロス!行くぞ!」

「あいよ!」

タクマはウィンロスの背に飛び乗り高く飛翔する。

「突っ込め!」

翼を折りたたみ急降下する。

(久々にやるか!)

ウィンロスの頭にまたがり剣を突き出す。

「『極滅の聖槍(ロンギヌス)』‼」

二人の奥義『極滅の聖槍(ロンギヌス)』がネセルティオン諸共地面に激突。

煙からウィンロスが華麗に飛び出し着地する。

「久々に決まったで!」

ガッツポーズするウィンロス。

「油断するな!奴はこれしきで倒れる相手ではない!」

バハムートの言う通り、ネセルティオンはゆっくりと立ち上がった。

「マジか。一応アレ全力なんやけど?」

「場所が狭いからな。力をセーブしないと空洞が崩れ兼ねない。」

その時、ネセルティオンが力を溜め始める。

角が黄色に光っていた。

「まずい!岩陰に隠れろ!」

ネセルティオンの咆哮と共に身体から全方位の雷を放射する。

辺り一帯に激しい稲妻が迸り氷の大空洞を砕いていく。

「きゃぁぁぁ‼」

リーシャ達は岩陰に隠れてやり過ごすが砕かれた氷がガラスのように降り注ぐ。

タクマ達も雷をスレスレで避け、アルセラはバハムートが魔法壁で守る。

「羽少し焦げた!」

「雷属性は要注意だな。皆無事か⁉」

「こっちは大丈夫だ!」

「女子三人も無事!」

(くそ!室内じゃ向こうが上だ。外なら全力で戦えるのに!)

そう思ったタクマはあることに気が付く。

「そうだよ!外に連れ出せばいいじゃん!」

「あっ!」

ウィンロスもハッと気づく。

タクマも念話で全員に伝達した。

「相分かった!」

「了解!」

『ふん!』

「任せて主様!」

「行きますよメルティナさん!」

「うん!」

それぞれの役割でネセルティオンに仕掛ける一同。

バリスタと前衛の攻撃で誘導していき氷山の上まで追い詰める。

ネセルティオンも気づいたのか出入口付近でホバリングする。

「アイツ気づきよったで!」

「構わねぇ!このまま押しきれ!」

ウィンロスの蹴りとバハムートの拳が同時に炸裂。

ネセルティオンを上空ほ果てまで叩きだした。

「カリドゥーン!私を飛ばせ!」

『今度は目を回すでないぞ?』

カリドゥーンの力を借りてアルセラも氷山の上空へやってくる。

「~~~~~‼」

咆哮を上げ威嚇するネセルティオン。

「行くぞ!」


 遠く離れた月の下。

雲を切り裂き音速で夜空を駆ける大剣を背負った天使の影があったのだった。


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