『第一章 始まり』
人生初めてのウェブサイト投稿です。独学ながらこれからも続けて物語を読んでいただけたら幸いです。よろしくお願いします。
すべては、魔術学校の卒業試験から始まった。
ここは自然豊かなフュリア王国。
小さいながらも魔術がとても発達した国で魔法はもちろん、モンスターを従えるテイマーなども存在する。
この国の生活は魔術が必要不可欠だ。
魔術が使えなきゃ生きるのも難しい。
そんなフュリア王国には魔術を習う学校、オルビス学園があった。
この学園は王国内では一番名の知れるエリート学園である。
「やっべ、寝坊した!急がねえと講義に送れる‼」
一人の少年が学園の廊下を勢いよく走ってゆく。
「すいません!遅れました!」
そして勢いよくドアをスライドさせた。
「おい、落ちこぼれのタクマが遅れてきたぞ?」
クラスの一人の少年が笑いながらいうとクラスメイトがクスクスと徐々に笑いを広げていく。
笑われた少年の名はタクマ。
魔術の意欲は高く寝る間も惜しむほど勉学に勤しむツンツン頭が特徴の少年だ。
ただ要領が悪く物覚えがあまり得意ではないのと家が貧乏であることが原因なのか、クラスではよくからかわれていた。
先ほどタクマをからかった少年、オルトはクラスの中でも特にタクマに対してあたりがきつい。
「こらっ!タクマ君は遅刻してきたけどみんなよりは人一倍努力しているのだからみんなも見習いなさい!」
かわいく怒鳴ったのは担任のマリア先生。
大きな丸眼鏡とおさげが特徴で学園でも人気の先生だ。
彼女はタクマの努力を一番知っている唯一の理解者でもある。
「でもタクマ君、勉強はいいけど遅刻はちょっとだめかな?」
「はい・・・気を付けます。」
タクマは先生に謝り、席に着いた。
「さて、今回の講義は進路希望書の作成できれば提出とみんなお待ちかね、卒業試験を行います!」
そうマリア先生が言うとクラスのみんなが歓声をあげた。
「うおおおおおお‼」
「まってました‼」
「かわいい子が来てくれるかな?」
女子も大盛り上がりだ。
そう、このオルビス学園の卒業試験は従魔の召喚。
この世界には様々なモンスターが生息しており、この国ではモンスターを連れた人間がいても珍しくはない。
そしてオルビス学園の卒業試験では召喚した従魔によって進路を決めたり、家族が増えるなど理由は様々。
この卒業試験は学生にとっては人生を変える大イベントなのだ。
「従魔か、俺んとこには何が来るんだろうな・・・。」
タクマがつぶやくと、
「はっ、お前みたいな落ちこぼれには最弱なスライムがお似合いだ。」
と、むかつく声量で言ってきたのはオルト。
彼は学園の成績は常にトップで貴族の息子、剣の実力もあり将来が有望。
ただし性格が最悪で自分のことしか考えておらず人望は厚くない。
しかし後ろ盾が貴族なだけあってクラスのみんなはもちろん学園長ですらあまり逆らえず学園で好き勝手やっている迷惑な男である。
「ああ、言ってろ。どんな従魔が来たって俺は暖かく迎え入れるさ。」
軽くオルトをあしらった。
「ちっ、まあいいこの僕が誰も連れたことのないすごい従魔を召喚して見せてやる!後で羨ましがって交換を申し立ててもしてやらないぞ!」
(何言ってるんだ、こいつ?)
タクマは心の中で呆れた。
昼休み、タクマは昼食を終え裏庭の木陰で寝転んでいると、
「やっぱりここにいた。」
声をかけられ目を開けると見知った顔がいた。
「俺の神聖な眠りを妨げる度胸は誉めてやろう。」
そう言ってかまをかけると、
「何言ってるのタクマは。」
笑いながらそう言われた。
「ははっ、何の用だ?ルナ。」
話しかけてきた金髪ロングの少女ルナ。
牧場農家の娘でタクマとは幼馴染だ。
学園でもたまに一緒に講義を受けたり昼食をともにしている。
「もうすぐ卒業試験だね。タクマはどんな従魔が来てくれると思う?」
そう言いながらタクマの隣に腰を下ろした。
「んん、特に深くは考えてないけど、そうだな・・・ドラゴンとか?」
「えっ?」
ルナの目が点になる。
タクマは冗談で言っただけだがルナは、
「あははっ‼ドラゴン?夢があっていいと思うよ。」
ルナは前向きに答えてくれた。
(こんな会話に純粋に答えてくれるのはルナだけだよ)
と、しみじみ思ったタクマだった。
「じゃあルナはどんな従魔がいいと思うんだ?」
今度はタクマが質問した。
「そうだねえ、私だったらやっぱりかわいい子がいいな。あ、でも牧場を手伝ってくれる子もいいかも。人出が増えればたくさんミルクやチーズとかも作れるかもしれないな。」
ルナは一気に期待が膨らんでいた。
「たしかに、あの牧場のアイスは絶品だなぁ・・・。」
上目になりよだれを垂らすタクマ。
「ああもう卒業試験楽しみ‼タクマ!お互い絶対にいい従魔と出会おうね‼」
ルナはタクマの手を取りそう言った。
「ああ、そうだな!」
タクマとルナはガッとてを握った。
そして午後、いよいよ卒業試験が始まろうとしていた。
学生は白いローブを羽織り広間に集る。
タクマは視線を横に向けるとルナがこちらに小さく手を振っていた。
タクマも小さく手を振り返す。
「学生の諸君‼我がオルビス学園はこれより、卒業試験である従魔召喚を行う‼」
ものすごい声量で号令をかけたのはいかつい顔と引き締まった筋肉で鎧がパツパツの大男。
「相変わらずエリック先生は熱血だな。」
学生がヒソヒソと小声で話す。
この学園の教師の一人であり現役のフュリア王国軍軍隊長エリックである。
この国で彼の名を知らない者はおらず彼に憧れオルビス学園に入学する生徒も少なくない。
「ははは‼生徒たちよ、わかるぞ!卒業試験てのは緊張するよな‼だが心配するな‼お前たちはこの学園でたくさんのことを学んだ‼だから恐れるな‼自分の歩む道へ真っ直ぐ進め‼」
勇ましいエリック先生に生徒は、
「うおぉぉぉぉ‼」
熱狂を挙げる者や勢いについていけず若干引き気味の者もいた・・・。
(エリック先生、もう少し声量小さくしてほしいなぁ・・・。)
タクマはついていけない派だ。
ちなみにルナは勢いに乗れていた。
巨大で重そうな鉄の扉がゆっくりと開き、教師を先頭に生徒もぞろぞろと入ってゆく。
長く暗い階段を降りていくとひらけた部屋にたどり着いた。
薄暗く何本もの石柱が建ち部屋の真ん中には巨大な魔法陣が張られていた。
ここが召喚の間である。
「では、出席番号順に召喚を行います。我々教師も側で待機していますので契約でわからないことがあれば聞いてください。」
マリア先生が注意事項を言う。
トップバッターの生徒が魔法陣の前に立ち、呪文を唱える。
すると魔法陣が光だし徐々に光が強くなる。
光が治まるとそこには一羽の鳥型モンスターがいた。
「ふむ、彼の従魔はロック鳥か。なかなか高ランクモンスターで荷馬車などに広く使われる。」
エリック先生が独り言で解説している。
そして生徒たちが次々と召喚を行ってゆく。
高ランクや可愛いモンスター、だが中には低ランクや実用性の薄いモンスターも召喚され喜ぶ者や絶望する者もいた。
(へぇ、召喚ってあんな感じなんだ。)
タクマがそう思っているとルナがやってきた。
「見てみてタクマ!この子が私の従魔だよ!」
そう言い従魔を見せてきた。
その従魔をみたタクマは少し驚いた。
ルナが召喚したのは白い羽毛が美しい人型の鳥モンスター『ガルーダ』だった。
「ルナ・・・、お前すごいな。ガルーダってAランクのモンスターじゃないか?」
「え?そうなの?まあどうでもいいよ♪これからよろしくね、ガルちゃん♪」
もう名前を決めていた。
いい出会いに恵まれてよかったなと思うタクマだった。
「ところでタクマはまだ順番こないの?」
ルナが首をかしげながら聞いてきた。
「ああ・・・、俺出席番号、一番下なんだ。」
「え?」
目が点になるルナ。
それもそのはず、この卒業試験にはほかのクラスも参加し、タクマのクラスはほかのクラスより下の方だ。
そのうえ出席番号が一番下となると、
「こ、この人数の中で一番最後?」
「う、うん・・・。」
とんでもなく先が長い。
あくびが出るほどの時間がたったころ、
「ははは、ついに僕の出番が来た‼待たせたね庶民のみんな‼」
そのむかつく言葉を聞いてタクマは一気に眠気が覚めた。
「そっか、オルト君タクマの一個前だったね」
目をこすりながらルナも起きた。
「ではオルト君、魔法陣の前へ呪文を。」
マリア先生に言われ、オルトは呪文を唱える。
「神聖なるマナよ、我が願いを聴き入れ己が運命を導きたまえ、我が友たる精よ、今ここに‼」
呪文を唱え魔法陣が強く光出す。
光が静まるとそこには、
「これはすごいぞ・・・!」
エリック先生が言い他の教師、生徒が視線を戻すと黒い毛皮に覆われ鋭い爪に牙、そして頭が三つ。
地獄の番犬『ケルベロス』だ。
「嘘だろ?一頭で三頭分の強さを持つSランクのモンスター、ケルベロスだ・・・。」
「オルト君、性格は最悪だけどやっぱり実力者だったんだね。」
生徒のみんなが次々に口にする。
「ははは‼見たかタクマ!これが僕の従魔だ‼お前みたいな落ちこぼれには到底従えることの出来ない最強のモンスターだ‼これで僕は何倍でも強くなった‼はははは‼」
ウザさも倍になった。
「何よ‼タクマだってね、誰よりも一番努力して・・・‼」
「ルナ、ルナ。いいよ。構うだけ無駄だ。」
タクマはルナをなだめた。
そしてついにタクマの番がやってきた。
ルナはまだ頬を膨らませ怒っている。
「なぁルナ、さっきは俺のために怒ってくれてありがとな。」
「だって、タクマの頑張りを馬鹿にされてるみたいで嫌だったもん・・・。」
ルナはしゅんと下を向いた。
そこにタクマは、
「正直に言うと、少し嬉しかったんだ。だからありがと。ルナ。」
と頬を少し赤らめた。
「もう・・・。」
ルナも照れて笑った。
「では次でラスト‼タクマ‼前へ‼」
エリック先生もまだ気合が入っている。
「はい‼」
タクマも気合を入れる。
と後ろからオルトが、
「お前がスライムを召喚するところをしっかり拝んでやるよ!」
いつまで俺=スライムと思ってるんだよ‼と心の中でツッコんだ。
(頑張ってタクマ君!)
マリア先生からの応援をもらい魔法陣の前へ。
ふうと深呼吸をし、手を前に出す。
「神聖なるマナよ、我が願いを聴き入れ、己が運命を導きたまえ、我が友たる精よ、今ここに‼」
魔法陣が光出す。
しかしタクマはその光に違和感を感じた。
(あれ?な、なんか光が強すぎない⁉)
今まで見てきた召喚とは明らかに違う!
次第に光が強くなり部屋を飲み込んだ。
「うわああああ‼」
「まぶしい‼」
生徒たちも顔を覆う。
「タクマ‼」
ルナも叫ぶ。
そして徐々に光が治まっていく。
「う~ん、一体何だったんだ?」
驚きのあまり床に座り込んでしまったタクマ。
「あ、ああ・・・。」
ん?とみんなの方を向くと生徒のほとんどは腰を抜かし怯えた表情をしたいた。
「タ、タクマ君・・・。」
マリア先生たちも腰を抜かしている。
タクマは恐る恐る視線を上に向けるとそこには見ただけで声が失うほどのモンスターが立っていた。
「ド、ドラ・・ゴン⁉」
四~五メートルある巨体に白銀に輝く鱗、黄金の翼、鋭い爪、それは間違いなく伝説に出てくる『ドラゴン』そのものだった。
(まてまてまて‼何でドラゴンがここに⁉も、もしかして・・・俺が召喚したのか⁉)
タクマも頭の中でパニックだった。
そこへ追い打ちをかけるかのように、
「ほう、強い魔力に引かれ召喚に応じて来てみれば、なかなか面白いことになっているではないか。」
なんと、ドラゴンが口をきいた。
(しゃ、しゃべったーーー⁉)
この部屋にいる全員が驚いた。
あのオルトも腰を抜かし口をパクパクさせている。
ドラゴンはタクマに向かい顔を下ろすと、
「お主が我を召喚した人間か?」
と話しかけてきた。
タクマは何とか口を動かし、
「は、はい。そうです。俺もまさかドラゴンを召喚するとは思ってなくて少し驚いてます。」
そう答えた。
するとドラゴンは、
「ははは、正直な奴だ。我を見てすぐ会話ができる奴はそうは居らん。お主なかなか肝が座っているな。」
「あ、ありがとうございます?」
なんか褒められた?
「それに我を召喚するほどの人間だ。我の主に相応しいかどうか鑑定させてもらうぞ?」
ドラゴンがそういうとタクマに鑑定スキルを使った。
(なんか内側を見られてる感じだ・・・。)
しばらくドラゴンは鑑定を使ってタクマを見ていると急に眼の色を変えた。
「これは・・・。」
「え?なんすか?」
タクマが首をかしげるとドラゴンは、
「ふふ、ふはははは‼良い、実に良いぞ‼お主、名はなんという‼」
「タ、タクマです。」
思わず答えてしまった。
「よしタクマ‼おぬしは我の主として十分な資格を持っている。我はおぬしを主と認めよう‼」
よくわからないがドラゴンに主として認められたようだ。
「あ、あの~。お話は済みましたでしょうか?」
とマリア先生が訪ねてきた。
あまりの出来事に周りのみんなを忘れていた。
「ん?誰だこやつは?」
ドラゴンが話すとマリア先生はビクッとビビる。
「あ、俺の担任のマリア先生だよ。今俺たちは学園の卒業試験の途中だったんだ。」
タクマが周りを見渡すとまだ腰を抜かしている者や失神している生徒もいて先生方が大慌てで看病をしていた。
ルナはもうぴんぴんしている。
流石牧場の娘、メンタルが固い。
そこにエリック先生が歩いてきた。
「しかし驚いたな。タクマ少年がドラゴンを召喚するとは。」
とドラゴンを見ながら言った。
「そんなに珍しいか?」
ドラゴンが問う。
「そりゃぁね、ドラゴンの従魔なんてこの国じゃ一切聞かないし。」
タクマはすっかりドラゴンに慣れた。
するとマリア先生が、
「あの、従魔の登録をする必要があるのでドラゴンさんのお名前お聞きしたいのですが。」
「む?そうなのか。まぁ主とこれからを共にするのだから当然か。」
ドラゴンは姿勢を正した。
「我が名はバハムート。『超天竜バハムート』である。すべての竜族の王を担っている者だ。」
(え?超天竜バハムートってドラゴンの中で最強の竜王の名前じゃないか?伝説でしか聞いたことないぞ。)
驚いたタクマだがバハムートと聞いたマリア先生とエリック先生は泡を吹いて倒れた。
外伝編
世界最強のドラゴンテイマー外伝 キング・オブ・メモリア
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